20年税制改正のポイント
平成20年度税制改正のポイント
現在の経済・財政状況を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するなどの観点から、法人関係税制、中小企業関係税制、金融・証券税制、住宅・土地税制等について適切な措置を講じることとされています。
不明な点があれば、当事務所にお気軽にお問い合わせください。
改正点のもくじ
<企業関係>
1.減価償却の区分・耐用年数を大幅に簡素化
2.中小企業向けの教育訓練費の特別税額控除など
<個人所得関係>
3.住宅省エネ改修工事の住宅借入金等の特別税額控除の創設
<相続・贈与関係>
4.相続時精算課税制度の特例延長と新事業承継税制(予定)
<登録免許税関係>
5.登録免許税の軽減税率の見直しなど
<地方税関係>
6.地方公共団体への寄附金税制の見直し(ふるさと納税)
1.減価償却の区分/耐用年数を大幅に簡素化
Q 平成20年度税制改正の内容は、どのようなものですか?
A 様々な改正がありますが、中小企業経営に影響のある改正点から説明します。
(1)減価償却制度の耐用年数区分を390区分から55区分に変更
国際競争力強化の視点から、次の見直しが行われます。
@法定耐用年数区分を大くくり
機械及び装置を中心に、法定耐用年数の区分けを40年ぶりに見直し、実態に即した耐用年数をもとに390ある区分を55に集約すると同時に、耐用年数が見直されます。これは海外に比べて業種区分が細かく税務計算が煩雑であるという産業界の要望に応えたもので、米国並みに簡素化されることになります。
適用は、既存の減価償却資産を含めて、法人の場合は、平成20年4月1日以後開始する事業年度からです(個人の場合には、平
成21年分以降)。
【主な国の法定耐用年数】
日本 ⇒390区分(設備の種類ごと) から55区分へ
米国 ⇒ 48区分(業種ごと)
英国 ⇒ 1区分(償却率25%)
韓国 ⇒ 26区分(業種ごと)
中国 ⇒ 1区分(耐用年数ごと)
2.中小企業向けの教育訓練費の特別税額控除など−1
(1)教育訓練費に係る税額控除へ簡素化
教育訓練費が増加した場合の特別税額控除について、その対象が中小企業者等に限定され、労務費に占める教育訓練費の割合(教育訓練費割合)が0.15%以上である場合に、教育訓練費の総額に12%(教育訓練費割合が0.25%未満の場合は次の算式による特別税額控除割合)を乗じた金額の特別税額控除ができる制度に改められます。つまり教育訓練費の増減にかかわらず、教育訓練費の総額に基づき税額控除できる制度に拡充され、従来より利用しやすくなります。なお大企業の場合は適用期限の到来をもって廃止されます。
※「特別税額控除割合」は次の計算式で算出します。
(教育訓練割合が0.25%未満)
8%+(教育訓練費÷労務費−0.15%)×40
(2)情報基盤強化税制の要件緩和
情報基盤強化税制の対象となる中小企業のソフトウェア投資の要件を大幅に引き下げるなど、次のような見直しをした上、その適用期限が2年延長されます。
@法定耐用対象設備等の中に、部門間・企業間で分断されている情報システムを連携するソフトウエアとして一定の要件を満たしているものが加えられます。
A資本金または出資金が1億円以下の法人等については、対象設備等の取得価額の合計額の最低限度が70万円(従前300万円)に引き下げられます。 など
・個人の外国税額控除に係る証明書
・住宅借入金等特別控除に係る借入金年 末残高証明書(適用2年目以降のもの)
・バリアフリー改修特別控除に係る借入金 年末残高証明書(適用2年以降のもの)
・政党等寄附金特別控除の証明書
適用は、原則的には、平成20年1月4日以 後に、平成19年分以後の所得税の確定申 告書の提出を電子申告で行った場合で す。
(3)試験研究開発に係る特別税額控除制度の拡充
試験研究費に係る特別税額控除制度について、試験研究費の増加額に対する特別税額控除割合を上乗せする制度が改められ、平成20年4月1日から同22年3月31日までの間に開始する各事業年度で、次の特例のいずれかを選択適用できる制度が創設されます。
@試験研究費が前3期の平均額を超え、かつ、前2期のうち多い額を超える場合に、その試験研究費が比較試験研究費を超える部分の金額の5%相当額の特別税額控除ができます。
A試験研究費が平均売上金額の10%相当額を超える場合に、その超える部分の金額に特別税額控除割合を乗じた金額の特別税額控除ができます。
※「特別税額控除割合」は次の計算式で算出します。
(試験研究費割合−10%)×0.2
この制度は試験研究費の総額に係る特別税額控除制度または中小企業技術基盤強化税制とは別で、その法人の法人税額の10%
相当額が限度とされます。したがって税額控除上限は、合計で法人税額の最大30%まで拡充されます。
(4)交際費等の損金不参入制度の2年延長
交際費等の損金不参入制度について、中小企業者が対象の400万円までの90%損金算入の適用期限が2年延長されます。
また、交際費等の損金不算入制度そのものの適用期限も2年延長されます。
2.中小企業向けの教育訓練費の特別税額控除など−2
(5)欠損金の繰戻し還付制度の2年延長
欠損金の繰戻しによる還付の不適用制度として、中小企業者の設立後5年間に生じた欠損金額に係る適用除外措置の適用期限が2年延長されます。
また、この欠損金の繰戻しによる還付の不適用制度の適用期限も2年延長されます。
(6)少額減価償却資産の一括損金算入制度の2年延長
この中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入制度について、1個の取得価額が30万円未満の少額減価償却資産で、その年間合計金額が上限300万円までについてはその取得時に損金算入できるという特例制度の適用期限が2年延長されます。
(7)公益社団・財団法人の公益目的事業の所得が非課税に公益社団法人及び公益財団法人について、公益目的事業から生じる所得が非課税とされるとともに、すべての公益社団法人と公益財団法人が寄附優遇の対象となる特定公益増進法人とされます。
同時に、公益目的事業を行うために使われる収益事業からの繰入れについては、全額の損金算入が認められます。
(8)特定公益増進法人等への寄附金の損金算入限度額が拡大
一般法人が特定公益増進法人等へ寄附金を支出した場合の損金算入限度額について、制度創設の昭和36年以来初めて、所得基準が以下のとおり大幅に拡大されます。
所得基準 (従前) 所得金額の2.5%
(改正後)所得金額の 5%
(9)地方法人特別税を創設
法人事業税(所得割)の税率を引き下げたうえで、その引下げで減少する部分の税額を国税として申告納付する地方法人特別税が創設されます。同時に地方法入特別税の税収の全額を人口等一定の基準により都道府県へ譲与する地方法人特別譲与税が創設されます。
(10)租税特別措置の縮減・廃止・延長
(縮減)
@中小企業等基盤強化税制
その対象から中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の異分野連携新事業分野開拓計画に係る措置が除外されます。
(廃止)
@経営革新計画を実施する中小企業者に対する特定同族会社の特別税率の不適用制度
同制度は、適用期限をもって廃止されます。ただし、経営革新計画の承認を受けている中小企業者には、経過措置が講じられます。
(適用期限の延長)
@適用期限が3年延長される事項
・退職年金等積立金に対する法人税の課税 の停止祖措置
A適用期限が2年延長される事項
・中小企業者等が機械等を取得した場合の 特別償却または特別税額控除制度
・使途秘匿金の支出がある場合の課税(そ の支出額の40%の法人税)の特例制度
・優良賃貸住宅の割増償却制度における中 心街地優良賃貸住宅に係る措置 など
3.個人課税の改正−1
上場株式等の配当などに係る軽減税率の特例延長や住宅ローン減税の特例創設などがあります。
(1)上場株式等に係る配当・譲渡益の軽減税率の特例を1年延長
上場株式等の配当等に係る軽減税率の特例の適用期限が1年延長されます。
また上場株式等に係る譲渡所得等の軽減税率の特例の適用期限が1年延長されます。
(2)エンジェル税制の適用期限が2年延長
特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の課税の特例(エンジェル税制)の適用期限が2年延長されるとともに、適用対象となる企業の要件の緩和及び確認手続きの合理化が行われます。
(3)住宅ローン減税の特別控除額の特例創設
住宅を取得等して平成19年または同20年に居住した場合について、住宅借入金等がある場合の所得税額の特別控除の控除額の特例が創設されます。
この特例は、現行の住宅借入金等がある場合の所得税額の特別控除との選択適用とされ、この控除期間等は次のとおりとされます。
居住年 19年
控除期間 15年間
住宅借入金等の年末残高 2,500万円以下の部分⇒ 1年目から10年目まで・・・0.6%、11年目から15年目まで・・・0.4%
居住年 20年
控除期間 15年間
住宅借入金等の年末残高 2,000万円以下の部分⇒ 1年目から10年目まで・・・0.6%、11年目から15年目まで・・・0.4%平成19年
(4)住宅のバリアフリー改修促進税制の創設
一定の居住者が、その居住家屋について一定のバリアフリー改修工事等を行った場合に、その家屋を平成19年4月1日から同20年12月31日までの間に居住したとき、一定の要件の下で、その改修工事等に係る住宅借入金等の年末残高の一定割合を所得税額から控除するという制度が創設されます。
この特例は、住宅の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除及び前記(3)との選択適用とされ、その控除率等は次のとおりとなります。
(居住の用に供する時期)
平成19年4月1日から同20年12月31日まで
(控除期間)
5年間
(住宅借入金等の年末残高)
1,000万円以下の部分
(控除率)
ア.一定のバリアフリー改修工事に係る工事費用から補助金等を控除した金額(200万円を限度)に相当する住宅借入金等の年末残高・・・2%
イ.ア以外の住宅借入金等の年末残高・・・1%
なお、この「バリアフリー改修工事」とは、次に該当する工事でその合計額が30万円を超えるものとされます。
・「廊下の拡幅」「階段の勾配の緩和」「浴室改良」「便所改良」「手すりの設置」「屋内の段差の解消」「引き戸への取替え工事」「床表画の滑り止め化」
※「一定の居住者」とは、
@50歳以上の者
A介護保険法の要介護または要支援の認定を受けている者
B障害者である者
C居住者の親族のうち上記AもしくはBに該当する者
または65歳以上の者のいずれかと同居している者とされます。
※「一定の要件」とは、以下のとおりです。
@住宅借入金等について、償還期間5年以上の一定の住宅借入金等及び死亡時一括償還に係る借入金等を適用対象とする。
A本税制の適用については、住宅の品質確保の捉進等に関する法律に基づく登録性能評価機関、建築基準法に基づく指定確認検査機関または建築士法に基づく建築士事務所に所属する建築士が発行するバリアフリー改修工事等の証明書を要するものとする。
Bその他現行の住宅の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と同様の要件とする。
(5)特定の居住用財産の買換え等の長期譲渡所得の課税の特例
特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例について、買換資産である家屋の床面積要件の上限(従前は280u)が撤廃され、その適用期限が3年延長されます。床面積要件の上限撤廃の適用は、平成19年4月1日以後に行う居住用財産の譲渡からです。
(6)相続等により取得した居住用財産の買換え等の長期譲渡所得課税の特例の廃止
相続等により取得した居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例が廃止されます。適用は、平成19年4月1日以後に行う居住用財産の譲渡からです。
(7)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の延長
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等及び、特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等のそれぞれの適用期限が3年延長されます。
3.個人課税の改正−2
(8)寄附金控除の控除対象限度額の引上げ
寄附金控除の控除対象隈度額が次のとおりに引き上げられます。
控除対象限度額:従前→総所得金額等の30%
:改正後⇒総所得金額等の40%
(9)再チャレンジ支援寄附金税制の創設
個人などが、次世代育成支援対策に取り組む会社等に対する助成事業等の一定の事業で、認定地方公共団体が指定する公益法人により行われるものに関連する寄附金を拠出した場合には、所得税法の特定寄附金とみなして寄附金控除が適用されることになります。
個入、法人または相続もしくは遺贈により財産を取得した者が、
ア. 地域再生法に規定する地域再生計画の認定を受けた地方公共団体(認定地方公共団体)が指定する会社により行われる障害者の雇用の機会の確保等の当該認定地域再生計画に記載された一定の事業に充てられる寄附金(その認定地方公共団体が証明したものに限る)
イ.次世代育成支援対策に取り組む会社等に対する助成事業等の認定地域再生計画に記載された一定の事業で認定地方公共団体が指定する公益法人により行われるものに関連する寄附金(当該認定地域再生計画に定められた地域内に、寄附者及び公益法人の本店、支店、工場、営業所、事務所等が存在するものに限る)を支出した場合には、次の特例措置が講じられます。
@個人が上記イの寄附金を支出した場合には、当該寄附金は所得税法の特定寄附金とみなして寄附金控除を適用する。
A法入が上記ア及びイの寄附金を支出した場合には、一般の寄附金の損金算入限度額とは別に、当該損金算入限度額に相当する金額の範囲内で損金算入ができる。ただし、限度額の計算は、特定公益増進法人及び認定NPO法人に対する寄附金と合わせて行うものとする。
B相続または遣贈により財産を取得した者が相続税の申告期限までに上記イの寄附金を支出した場合には、その者またはその者の親族等の相続税等の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除き、当該寄附金の額を相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない。
法人が同様に寄附金を拠出した場合、一般の寄附金の損金算入限度額とは別に、その損金算入限度額に相当する範囲内で損金算入ができます。
4.相続・贈与関係
相続時精算課税についての見直しなどが行われます。
(1)取引相場のない株式等の贈与について相続時精算課税制度の特例を創設
推定相続人の1人が、平成19年1月1日から同20年12月31日までの間に取引相場のない株式等の贈与を受けた場合、次の要件を満たすときに限って、60歳以上の親からの贈与について、相続時精算課税制度の適用を選択することが可能になります。同時に、その株式等の贈与については同制度の非課税枠が3,000万円(原則は2,500万円)とされます。
【適用要件】
・その会社の発行済株式等の総額(相続税評価額ベース)が20億円未満であること
・この特例の選択に係る贈与税の申告期限から4年を経過する時において以下の要件をすべて満たしていること
a.その受贈者が、その会社の発行済株式等の総額の50%超を所有し、かつ、議決権の50%超を有していること
b.その受贈者が、その会社の代表者としてその会社の経営に従事していることなど
(2)取引相場のない種類株式の相続税等の評価方法の明確化
株主総会での決議権がない株式等の種類株式のうち、次の種類株式についてその評価方法が明確化されます。
ア.配当優先の無議決権株式
イ.社債類似株式
ウ.拒否権付株式
5.登録免許税の軽減税率の見直しなど
(1)登録免許税の軽減税率の見直しと適用期限の延長
土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の軽減税率を次のとおり見直した上、その適用期限が3年延長されます。
@土地の売買による所有権の移転登記
従前 1,000分の10
改正後 平成20年4月1日〜
同21年3月31日 1,000分の10
平成21年4月1日〜
同22年3月31日 1,000分の13
平成22年4月1日〜
同23年3月31日 1,000分の15
A土地の所有権の信託の登記
従前 1,000分の2
改正後 平成20年4月1日〜
同21年3月31日 1,000分の2
平成21年4月1日〜
同22年3月31日 1,000分の2.5
平成22年4月1日〜
同23年3月31日 1,000分の3
(2)長期優良住宅の所有権保存登記
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(仮称)の制定に伴い、個人が、同法の施工の日から平成22年3月31日までの間に新築又は取得(未使用のもの)する一定の長期優良住宅(仮称)に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税が次のとおり軽減されます。
@所有権の保存登記
本則 1,000分の4⇒軽減税率1,000分の1
A所有権の移転登記
本則 1,000分の20⇒軽減税率1,000分の1
以上が国税の改正の主要な事項です。
6.地方公共団体への寄附金税制の見直し(ふるさと納税)
Q 一時「ふるさと納税」が話題になりましたが、地方税については改正はありますか?
A ふるさと納税として、地方公共団体に対する寄附金税制が見直されています。
また所得税などの改正に準じて地方税においても改正がされると同時に、固定資産
税などについて改正が行われています。
(1)地方公共団体に対する寄附金税制の見直し(ふるさと納税)
個人住民税における寄附金税制については、控除対象寄附金の拡大等が行われるほか、都道府県または市区町村に対する寄附金税制(ふるさと納税)が見直され、以下で計算した金額★が別枠(特例控除額)として、★の5分の2が道府県民税から、5分の3が市町村民税からそれぞれ税額控除されます。
(寄附金額−5,000円)×(90%−その人の所得税の限界税率)・・★(個人住民税所
得割額の10%相当額限度)
なおこの改正は、平成21年度分以後の個人住民税について適用されます。
(2)省エネ改修を行った既存住宅に対する固定資産税の減額
平成20年1月1日に所在していた既存住宅で、同20年4月1日から同22年3月31日までに、一定の省エネ改修を行ったもの(賃貸住宅を除く)について、改修工事が完了した年の翌年度分に限り、その住宅に係る固定資産税額(1戸当たり120u相当分までに限る)の3分の1が減額されます。この適用に当たっては、改修後3ヶ月以内に省エネ基準に適合する証明書を添付して市町村に申告することになります。この用件、省エネ改修工事の内容等については、所得税の場合と同様です。
(3)認定長期優良住宅に対する固定資産税の減額
長期優良住宅の普及の促進に関する法律の施工日から平成22年3月31日までに新築された認定長期優良住宅について、認定を受けて建てられたことの証明書を添付して市町村に申告した場合には、新築後5年度間(中高層耐火建築物は7年度間)、その住宅に係る固定資産税額(1戸当たり120u相当分までに限る)の2分の1が減額されます。
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