節税対策③ 3.納付資金対策 経営承継

(2)遊休地に賃貸用建物を建築

下記のように遊休地に賃貸用建物を建築した方が課税価格の合計は通常少なくなります。上記2(1)③(ケ)でも類似の紹介をいたしました。

① 遊休地のまま

課税価格の合計=土地の更地価格

② 遊休地に賃貸用建物を建築

ア土地の評価
貸家建付地としての評価になります。
更地価格×(1-借地権割合×借家権割合×建物の賃貸割合)
イ建物の評価
借家としての評価になります。
建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×建物の賃貸割合)
ウ小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例を受けられる可能性があります。
アの評価額のうち200㎡までの価額×50%
エ建築費
現金支払又は借入金
オ課税価格の合計=ア+イ-ウ-エ

さらにこの場合、相続税と所得税をトータルして見るため、建物所有者をだれにするか、土地の貸借契約をどうするか等を検討されたらと思います。
例えば、ア.地主が建築、イ.地主と生計を一にする親族が建築、ウ.地主と生計別の親族が建築、エ.同族会社が建築(土地は使用貸借)、オ.同族会社が建築(土地は賃貸借契約)などいろいろ考えられます。

(3)遺産分割の工夫

①居住用財産の有利な分割

相続開始時まで被相続人と同居していた相続人が2人以上いて、いずれも相続後も居住する場合は、居住用財産(家屋又は家屋と敷地)をそれら相続人の共有にした方が、その後に居住用財産を譲渡したときの租税負担が減少することがあります。それは、居住用財産の特別控除の特例(3千万円控除額)は共有者全員で3,000万円ではなく、この特例を受けることができる共有者一人につき最高3,000万円だからです(敷地だけを共有としている場合は一定の要件に該当する場合を除いてこの特例を受けることはできません。)。それから、場合によっては、居住用財産の譲渡に係る軽減税率の2段階税率のうち低い税率の適用が拡充される場合があります。
ただし、共有物の変更、処分等は共有者の全員の同意を必要とする(民法251条)などがあり、共有にしない方がよいということもありますので、検討が必要と思われます。

②宅地の評価単位

宅地の価額は、評価方法を定めた財産評価基本通達では、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)ごとに評価することとされています。
しかし、例えば、相続で、1画地の宅地をAとBに分割区分して、Aは相続人Xが相続し、Bは相続人Yが相続した場合は、AとBは別々に評価されますので、分割区分前と比較して評価額の合計は下がる場合があります。評価額の合計が下がれば相続税も下がります。

ただし、不合理分割のような場合は、その分割前の画地を1画地として評価するものとされており、したがって全体の評価額は下がりません。
この不合理分割とは、例えば、分割後の画地が宅地としての通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるものをいいます。

3.相続税の納付資金対策

納付資金対策のうち代表的なものをいくつかご紹介いたします。

(1)生命保険契約の加入

例えば、次のような生命保険契約に加入しておき、相続税の納税資金対策とします。
①契約者~被相続人、あるいは相続人
                   保険料を負担
被保険者~被相続人
受取人~相続人
保険料~生前中、契約者が被相続人から保険料相当額の資金の贈与を受け、それを元手に保険料の支払いをすることも節税対策を兼ねて考えられる。

その後に
保険事故発生→保険金を相続人受取
相続人:相続税納付資金に充てる

②契約者~会社
被保険者~被相続人
受取人~会社
契約目的:被相続人の退職金の支払財源

その後に
保険事故発生→保険金を会社受取
退職金支払い:会社→相続人
相続人:相続税納付資金に充てる

(2)残す土地と処分する土地とに区分

被相続人及び相続人は、例えば次のように土地を区分して考えておく。
残す土地は、利用と評価引き下げ対策地を想定する(節税対策にもなる。)。
処分する土地は、処分性を重視し、相続後に処分し相続税の納税資金に充てる。

(3)相続財産を相続後に譲渡して、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例を適用

相続又は遺贈により取得した財産を、その相続の開始があった日の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内の間に、譲渡した場合には、その人に課された相続税のうち、この譲渡した資産に対応する部分の金額として所定の方法により計算した金額を、その資産の取得費に加算して譲渡所得の金額の計算することができます。これにより譲渡所得の税金が少なくなります。
なお、このような特例がありますので、土地等をどのように誰が相続するかという遺産分割案次第で、譲渡所得に係る税負担が異なることがありますので、分割にあたり慎重な検討が必要です。

4.経営承継に関する特例

  経営承継に関する特例として、非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例、非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例、中小企業経営承継円滑化法の遺留分に関する民法の特例がありますが、くわしくは税理士等にご相談ください。