事務所通信

当事務所では、月に1回事務所通信を発行しています。

2024年2月号(354号)

TKC会計人の基本理念(13)

 所長・税理士 今林重夫

今月は、25項目中13番目を紹介します。

 

TKC会計人は、自利利他の理念を、自己の実践原理として位置づけた、職業会計人の集団である。

 

大乗仏教の教論等には、実に頻繁に自利利他という言葉が出てくる。自利利他の意義をどう解釈するか、には諸説があるようだ。例えば善戒経には「身心静寂なる、これを自利と名づけ、身心静なるが故に衆生を悩まさず、これを利他と名づく」と出ている。わたくしは、自利利他を自利とは利他をいう(最澄伝教大師伝)と解するのが、いちばん解り易く、かつ、素直だと感じている。最澄によれば、自利の「自」とは、一心のこと、即ち人間の終極的主体性のことだと解しているようであり、利他の「他」とは、諸法即ち万象のことだと解しているようである。

 

第一義的には、そのようなわけだが、世俗の感覚からいえば、自分の真の利益は、他を利することをいうのだと解しても良かろう。別言すれば他のために徹底的に奉仕することが、即ち、本当の自分のためなのだと解してもよい。これを理念として捉え、自分の実践上の原理として位置づけている職業会計人は実に少ない。

 

大多数の会計人は、直接間接を問わず、自分の利益(利己)を発想の原点に置き、自分は心底で利己を中軸として発想し行動しているのだから、他人もそうであるに違いない、と勝手な臆断を下している。

 

かくして会計人中には大人物といわれる者は稀であり、真の成功者といわれる者も少ない。それは顛倒妄想を気付かずに生活の常態としているからである。

 

TKC会計人は、そうであってはならない。

 

ただ一度のこの人生で、職業会計人たることを誇り高き天職と心得ている人達のはず。とすれば心底から関与先のため、職員のため、国家社会のため、と念じて徹底奉仕すべきなのだ。これが本格的な成功者の条件でもあるのである。