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中小企業を元気にする方法
中小企業に対する融資制度がこの2,3年、変わってきたことにお気づきでしょうか。バブルの崩壊により不動産担保価値が下落し、不況により第三者保証をとることがますます困難になりました。このような中、日本経済の屋台骨を支える中小企業に対する金融の円滑化は日本経済再生には避けることができない重要なテーマです。いま、中小企業が作成する「計算書類(決算書)の信頼性」を与信とする融資制度が注目されています。平成18年8月から11月にかけて「日刊工業新聞」に13回に亘って7人の職業会計人によって掲載されたシリーズ「中小企業を元気にする方法」の中の私が書きました一文をここに転載いたします。ご一読いただければ幸いです。(税理士 馬服一生)
中小企業を元気にする方法−会計参与制度の活用
最近、金融機関から中小企業向け融資として、無担保・無保証のいわゆる経営者ローンが多くなってきたことにお気づきでしょうか。従来、金融機関が中小企業へ融資する場合には、経営者本人はもちろん第三者からの個人保証や、不動産の担保提供を求めてきました。しかし、バブル崩壊により、不動産の担保価値が急落し、また構造的不況の中で第三者保証を取り付けることが困難となりました。このような状況において金融機関が中小企業に対して円滑に融資を行うため、決算書の信頼性を与信として融資するスキームの形成、すなわち、「計算書類の信頼性向上」を図るための法や会計基準の整備が求められるようになりました。このような時代背景のもと、平成17年6月29日に「会社法」が成立し、平成18年5月1日に施行されました。また、平成17年8月3日、中小企業の会計基準である「中小企業の会計に関する指針」が公表されました。この新しい会社法には、諸外国に例を見ないわが国独自の制度として「会計参与制度」が導入されました。会計参与は、会計に関する専門家である税理士(もしくは税理士法人)または公認会計士(もしくは監査法人)が株式会社の任意の設置機関として、取締役と共同して計算書類(決算書など)を作成し、その計算書類を取締役とは別に保存して、株主や会社債権者(金融機関や取引先)からの求めに応じ、適切に開示することをその職務としています。また、会計参与には作成した計算書類の正確性や適法性について、就任した会社に対してはもとよりその会社の取引先や金融機関等の第三者に対しても重い責任が課せられています。このような新しい会社法の施行や中小企業の会計基準の公表を受け、信用保証制度の見直しや金融機関から特色のある中小企業向けの融資制度が出てくるようになりました。その具体的な現れとして、信用保証協会が保証業務を行う場合には、平成18年4月から第三者保証人を求めることを原則禁止としたことに見ることができます。これに併せて、保証申込みの際に、その中小企業者の計算書類の作成に携わった税理士・公認会計士により中小企業会計指針のすべての項目について一定の確認が行われていることを示す書類(確認書類)の提出があった場合、あるいは、その中小企業者が会計参与を設置している場合には、保証料率を0.1%割り引くこととされました。またいくつかの金融機関では、会計参与を設置した場合には第三者保証はもとより代表者本人の保証を免除したうえに貸付利率を割り引くという、まさに「計算書類の信頼性」を与信とする融資制度を発表しました。
このような法や基準の整備により「計算書類の信頼性」を確保する制度が充実してきましたが、同様の役割を果たすものとしてすでに金融機関に広く認められ、定着している「決算申告確認書(税理士法第33条の2第1項の添付書面)」とよばれ、税理士法に規定する書面添付制度があります。書面添付制度は、@税務の専門家である税理士が決算書および申告書の作成過程においてその企業とどの程度関わったのかを一定の書面により具体的に明らかにすること、A税務調査官が税務調査着手前に税理士に意見を聴取し、税理士は真正の事実に基づいて積極的に意見を述べ、情報を開示する、Bこれにより税務調査官の疑問が解決した場合には調査に着手しないこともある、という制度であり、納税者の利便性の向上と税務行政の円滑化、簡素化をはかりつつ、税理士の地位向上を目指す制度です。つまり書面添付制度は税務と会計の専門家である税理士が毎月の綿密な巡回監査を通して決算書の作成から税務申告書の作成まで深く関わった過程を明らかにするものであることから、金融機関はこれを「決算書の信頼性を確保する制度」として高く評価し、この制度を利用した経営者ローンがすでに50を超える金融機関で実施されています。
会社法第432条において「株式会社は・・・適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」と規定され、日々、正確な記帳をすることが法律により義務化されました。このことは、会計帳簿から導かれて作成される計算書類の信頼性を高めることにつながり、経営者自らが会社の経営実態を適切に把握し、これを経営管理に役立つ情報として活用することにより、金融機関や取引先からの信用獲得にもつながります。
「法は社会を形成する」という言葉があります。会社が存続し発展するためには、これまで以上に決算書の信頼性の向上が求められていることを経営者はしっかりと認識しなければなりません。
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