第15回 会社の真の支配者はお客様である
会社というものは、お客様があるから生まれたのである。お客様のいないところに会社が存在するはずがない。お客様の要求を満たすことこそが会社の役目であり、お客様に見限られたら、そのときに会社はつぶれるのである。こんな当たり前のことを、声を大にして言わなければならないほど、お客様のことを無視し、あるいは結果的に無視してしまっている会社が多すぎる。
「事業経営とは社員の管理のことだと考えている」、「能率とコストと品質だけで経営がうまくいくと信じている」、「いい製品・いい商品・いい技術を第一に考える」、「自分の好みをお客様に押しつけようとする」、「お客様の都合より社内の都合を優先する」、こういう会社がいかに多いことか。
そして、それらの会社は努力すればするほど業績が悪化している。当たり前である。努力する順番がまちがっているのだ。会社の収益はお客様の要求を満たすことによってのみ得られるのであり、その収益は会社の外にあるのであって、会社の中のどこを探しても見つかるはずはないのである。
会社の中にはいない、直接目に見えないお客様こそ、会社の真の支配者であるという基本的な認識がなくて事業経営はできない。この認識の上に立って、お客様を考えてみよう。
まず第一に、この支配者は、被支配者である会社に対して、何も命令しないということである。何も命令されないものだから、そこにお客様が会社の支配者であるという感じが生まれないのである。
命令はしないけれど、自分の意に沿わないときには無警告首切りをやる。つまり、だまってその会社の商品を買わないということである。そのために会社は業績不振に陥り、倒産への道を歩まなければならないのだ。
たまにクレームをつけるお客様がある。このようなお客様こそ、本当にありがたいお客様である。「お前の会社はそんなことをしているとつぶれるぞ」という警告を発してくれる人だからである。
第二に、この支配者は、自分の都合だけを考えて商品を買い、その都合は絶え間なく変化し続けているということである。当然、会社の都合はまったく考えてくれない。であるから、過去にどのような優れた商品を提供し、大量に買ってくれていても、現在の商品が自分の要求に合わなくなれば、サッサと他社の商品に乗り換えてしまうのである。
何も命令してくれず、その好みを次々と変化させていくこの支配者に対して、わが社のとるべき態度は、ただ一つである。すなわち、「どうすれば買ってくれるのか」、「買わなくなったのはどういう理由か」を直接聞いて、教えてもらうのである。そして、その理由が分かったならば、わが社の事情はいっさい無視して、お客様の都合に合わせて、ただひたすらサービスしなければならないのだ。
それは時間がかかり、コストがかかり、面倒くさく、社員のいやがる要求であることも多いのである。たとえそうであっても、わが社のすべての都合に優先してこれに取り組まなければならない。
ここに、『経営とは変転する市場と顧客の要求を見きわめて、これに合わせてわが社をつくりかえることである』と定義される。そして、『凡庸な企業は、わが社の現状にもとづいて目標を設定するが、優れた企業はお客様の要求にもとづいて目標を設定する』のである。
参考文献:一倉定の社長学「新・社長の姿勢」