第17回 弱者こそ「ランチェスター戦略」を使いこなせ
弱者、小規模企業者にとって敵に勝つ唯一の法則はランチェスター戦略である。これを知らない多くの企業が、儲かる商売、儲かる商品を追い求め、大市場、大消費地こそ売上増大とばかりに、自らの数少ない限られた戦力を分散し、無惨な敗北を喫している。また、いたずらにテリトリー拡大主義をとって無駄な努力を繰り返している。
儲かる商売には、百戦錬磨の強者がうようよしているのだ。極端に言うと、弱者は、儲かる商売を避け、強者のいない小市場、小消費地を目指すべきなのである。
ランチェスター戦略とは、市場を細分化し、優先順位を決め、これに従って一つひとつの最小の地域、あるいは得意先ごとに、敵に勝る戦力を投入することにより、その地域または目標とする得意先の占有率を高めていく戦略である。すなわち、「選択して、集中する」ことであり、その最小の局地戦ではいつでも一番をとりにいくという戦略である。
事業経営は勝つか負けるかの市場戦争であり、限られた我社の戦力で勝ち続けるためには、常に、勝てる地域・相手を選び出し、戦うことが鉄則である。この場合、正々堂々とすべての敵と戦うことは大きな間違いなのである。
ランチェスターの法則ほど変幻自在、応用範囲の広いものはない。それを使う人の知恵と能力によって絶大な威力を発揮する。“強”が“弱”に勝ち、“大”が“小”をやっつけてしまうのは当然として、“弱”が“強”を破り、“小”が“大”をキリキリ舞させるのも、ランチェスターの法則の威力である。その理由を考えてみよう。
第一は、「相手の知らないうちに先手、先手と働きかける」ということである。テリトリーの細分化は自らの意思でどのようにでも決められる。敵が弱ければ大きく、強ければ小さく決めればよい。特定の得意先における特定商品にまで細分化が可能である。どのように決めようと、それは無形なるが故に敵には分からない。相手は攻められても、なかなか気がつかないし、気がついたときには、すでに痛めつけられている。いや、痛めつけられて初めて気がつくのである。これが先手でなくて何であろうか。攻撃の優先順位の決定も、投入兵力の大きさも、敵に知らせるわけではないのだから、敵がそれに気づいた時には、すでに手遅れである。
敵に勝る戦力を投入するという、その戦力の最強のものは“訪問回数”である。これは、社長自らのお客様訪問回数で敵に勝り、役員、管理職、セールスマンの定期訪問回数で敵に勝ることこそ、心がけ次第でどんな会社でもできることなのである。
第二は、「変幻自在な戦略」であるということである。テリトリーの細分化は、状況の変化により、いつでも集約分割が可能であり、優先順位は戦況の変化――競合相手の対応の変化、商品構成の変化、得意先の方針転換、市場の変貌――などの要因変化で必然的に変わってゆかなければならないのだ。
毎月の営業会議で、「売り上げが伸びない」、「得意先を取られた」、「値引き要請が多い」等の問題点が、3ヶ月以上も続くのであれば、基本的な戦略の変更点にきているのであるから、勝てない市場でいつまでも頑張り続ける愚を止めて、「今の市場でいいのか、今の得意先でいいのか、今の商品でいいのか」、を再度見直し、現在の市場または得意先を細分化し、そこへ戦力を集中投入し、勝てる市場・得意先を、また少しずつ増やしていくことからはじめなければならないのだ。
最終的には小さな局地戦での勝ちを増やしていくことが、市場戦争に勝ち抜く道なのであるから、いつでもここに帰ってきていただきたいのである。
参考文献:一倉定の社長学「社長の販売学」