第21回 「捨て去る」ことのできない社長は会社をつぶす

 

 どんなに売れている商品でもいつかは売れなくなる。どんな商品であれ、永久に成長し、永続的に高収益を得られるものではない。あるのはただ、その寿命の長短だけなのである。それにもかかわらず、「この商品は永久に成長し、永久に高収益が得られ、わが社の発展にいつまでも貢献する」という信念に凝り固まっている社長があまりにも多すぎる。

 外部環境は常に変化し、お客様の要求はどんどん変わっていくのであるから、商品やその業界自身も変化しなければ衰退していくのは当然なのである。ここで社長が考えるべきことは、叱咤激励して売れない商品を売らせることではなく、売れない商品を捨て去り、売れる商品を投入することなのである。

 ところが実際には、なかなか捨てられない。かつてはわが社のホープ商品であり現実にはかなりの売上もある。しかも、それを捨てることは、それによって得られている収益がなくなるということであり、頑張ればまた売上が回復すると思うため、なかなか決心がつかないのだ。そうしてずるずると業績低下に落ち込んでゆくのである。

 ここに大きな勘違いがある。「捨て去る」の本当の意味は「いついつまでには捨て去る」と、未来形で使うのが正しいのであって、現実には次の有望商品が育っていなければ「捨て去る」ことなどできないというのが正論である。

 ボンクラ社長はある商品が売れて、過去最高の売上高になったときには、いつまでもこれが続くことを祈り、次の手を打つことを怠るが、優秀な社長は、そういう時にはすでにその商品の寿命を察知し、「後何年でこの商品は捨てる」と決め、社長自ら必死になって次の商品を探し歩き、「捨て去る」時にはすでに次の柱となる商品を探し出しているものなのである。そして、この同じことがいつまでも繰り返しおこなわれていくのである。このことは商品に限らず、新事業、新店舗等についても全く同じことが言えるのである。

 「いついつまでに捨て去る」ことを決意するからこそ、本気で次の商品を探すことができるのであり、どうしても探さなければならないという信念が社長自身の行動を変えるのである。結局、「捨て去る」ことのできない社長はただ単に、次の新商品を探しにいく努力を怠っているだけであり、怠慢以外の何ものでもないのである。

 「企業の分析」で一番大切なのは財務分析ではあるけれども、「わが社の分析」で一番大切なのは「何を売ったらいいのか」という「商品別売上分析」である。

 企業分析の目的は、銀行と投資家のための、「与信」の優劣をきめるための判定であるから、各種の財務比率の分析でもよい。けれどもこれをわが社に対して行っても、そこからは抽象的な評価のみで、具体的に「どう動けばいいか」のための情報はなにも得られないのである。唯一「商品別売上分析」のみが社長に対して「この商品を続けるか、捨てるか、捨てるとしたらいつか」という具体的な判断をさせてくれるのである。

 会社で何を売ろうがそれはその会社の勝手である。しかしその決定はその会社の運命を左右する非常に大切な問題であることを強く認識しなければならない。そのためには、社長たるものは外部環境の変化に応じて、去年良かった商品といえども今年は捨て去ることを決断し、その前提として、明けても暮れても「売れる商品はないか、次の柱は何か」と、常に情報を追い求め、アイデアを練って、売上増大に貪欲に挑戦していくことを自らの行動指針としなければならないのである。そして、それだけが会社を赤字から救う道なのである。

 

参考文献:一倉定の社長学「社長の条件」