第24回 能率主義の危険

 

 P社の社長は、他社で引き合わない製品を引き合うようにするのが経営だと思い込み、またこのきびしい経営環境の中、他社との競争による値下げをするのは当然であり、その埋め合わせは内部努力による合理化で補うことを誇りにしている。業績は赤字にこそならないがお世辞にもいいとはいえない。このままでいくと数年後には明らかに倒産する会社である。それはP社長がいくら懸命に内部努力をしても合理化には限界がなく、値下げ競争はいつまでも続くからである。

 K社は上から下まで実に見事に原価意識が徹底している。数年前、大きな赤字の連続のために潰れかけた会社である。無論現在の業績もきわめて低い。主力製品は特許であり、洋々たる需要の将来性がありながら、原価主義による安売りをしてしまったという。価格政策の誤りが赤字の根本原因なのである。アイデア料という価値を知らず、安売りの行き着く先が倒産ということを知らない。

 大幅赤字に泣くD社の社長の机の上には、能率関係の本が常時何冊も置いてある。繰り返し読んでいるということであった。D社の赤字の原因は能率が悪いからではなく、いつまでも過去の商品にこだわり、値下げ競争から抜けきれないのがその原因なのである。赤字脱却のための唯一の方法は、社長が安易な値下げ競争を止め、採算の取れる仕事を見つけてくる以外にはないのである。会社が真に生き延びる方法はそれだけである。

 これらの会社の社長は真剣に経営と取り組んでいる。しかし、その努力も能率主義を捨てて効率主義へ転換しない限り、永久に赤字から脱することはできないであろう。 

 商品はそれがどのような高性能・高品質であろうとも、売れなければスクラップ同然であり、いくら能率的に生産しても、それが低収益製品であれば、労多くして効は少ないのである。ましてや、仕事そのものが不足して、操業度が低下すれば能率も合理化もあったものではない。

 親会社の値下げ要求を、その代償として、「仕事をたくさんもらう」ことを条件にして、泣く泣くのんでいる会社がいかに多いことか。それにしても、なんというオメデタイ条件であろうか。相手はウンというに決まっているし、だからといって、仕事を継続的にもらえる保証など何もないからである。

 もしも営業力が強ければ、限度を超えた値下げ要求なんかはねつけて、仕事をくれなければ自力で仕事をみつけてくることができる。

 親企業や得意先から、叩かれても搾られても、じっと耐えている我慢強さには感心するけれども、なぜそんな受身の態度をとる必要があるのか。その理由はただ一つ営業力の弱さにあることを考えてみてもらいたいのだ。社内をいくら能率的に、合理化したとしても、値下げの要求はとどまることはなく、これでは会社を救うことはできないのである。

 私は安易に安値を受け入れ、後はなんとか内部の能率主義で切り抜けようとしているあまりにも多くの社長に、声を大にして警告したいのである。「能率から関心を遠ざけ、効率に関心の焦点を集めよ」と。収益性のよい製品を探し出して、これを採り入れ、収益性の悪い製品を非情に捨ててゆくという効率主義こそ本当に会社を発展させる道なのである。

 安売り競争を避けるために、2日も3日も眠れず、それこそ地を這うような苦しみの中から、収益性の良い製品を探し出す。これこそ社長の、第一の心構えなのである。

 

参考文献一倉定の社長学「社長の条件」