第30回 「我社の自己資本比率」を知らない社長は会社をつぶす
会社はどんなことがあってもつぶしてはいけない。社長の最大の任務がここにある。
世の中のためになるすばらしい事業を企画したが、残念ながらもう一歩のところでつぶれてしまった会社があるとしよう、果たしてそういう会社に何か意味があるであろうか。会社はつぶれてしまったらお終いである。どんなに儲かる事業であっても結局はつぶれてしまった会社よりは、小さくても、何年でも存続している会社のほうが立派なのである。
事業経営の本質は「つぶれない会社」創りの範囲内で「儲かる会社」創りをしていくことであり、「儲かる会社」と「つぶれない会社」はその中身は全く違うということを理解していただきたいのだ。
「自己資本比率」というのは「自己資本÷総資産」で算出されるが、平均的企業なら20%位である。(要するに会社の資産の80%は他人のお金ということだ。)しかし、それでは思い切った設備投資ができず、安定した企業とはいえない。「つぶれない会社」を目指すのであれば40%(他人のお金はそれでも60%である)は必要である。
例えば総資産5億円の会社の自己資本が1億円ならば自己資本比率は20%である。この会社が5千万円の赤字を出すか、又は利益はトントンでも5億円を借りて本社ビルを建てると、どちらの場合も自己資本比率はたちまち10%に転落するのである。そしてそれから数年間は「つぶれそうな会社」の仲間入りであり、外部環境の変化では一気に倒産に至る確率が高くなるのである。
ある事業を計画した。収益性といい、将来性といい、我社にとってどうしてもやらなければならない事業だということがはっきりしている。銀行も資金をだすという。ところが“今”その事業をやることで数年間は「我社の自己資本比率」が大変危険な水準になってしまうという場合には、残念ながらその事業は中止するか計画を変更し、「自己資本比率」が発する独特の危険シグナルを捉え、それに従わなくてはならないのである。
すなわち、現在の我社の利益を生み出す力、借入金を返済する力、これらに見合った事業というものを見極め、我社の体力を越えた事業には決して手を出してはいけないということなのである。
中小企業の多くの社長は、「儲かるための比率」には相当の興味を示すが、どうも「我社がつぶれるかもしれない比率」すなわち「我社の自己資本比率」には興味はないらしい。
事業は「売上高」をのばす方が面白いし、店舗展開を派手にやる方が見た目もかっこいいということなのであろうか。売上高は世間に公表されるが、借入金はほとんど公表されないために、ここに大きな落とし穴があるのである。世の中では表に見える部分よりも見えない部分のほうが重要だということを知っておいていただきたいのだ。
本当に優秀な会社というのは、どんなに儲かると分かっている事業であっても、必ずそのための長期的な「我社の自己資本比率」を確認し、現在の我社の体力に応じた事業だけを選択しているのである。そして、自己資本比率が悪化する事業には決して手を出さず、たとえそれが、絶好の参入時期を逃しているとしても、そんなことには平気なのである。会社はつぶれてしまったら元も子もないことを知っており、そんなものに手を出さなくても、身の丈にあった儲かる事業が必ずやってくることを知っているのである。
真の優良企業となるために、長期的な「我社の自己資本比率」の目標を立て、「つぶれない会社」創りにじっくりと取り組んでいただきたいのである。