第33回 「未来事業・新事業」に取り組む(1)

 

(1) どんな優れた商品でも斜陽化してゆくことは避けられない

 どんな優れた商品でも斜陽化していくことは避けられない。という社長の認識こそ大切である。この認識の上に立って、我社の将来を考えなければならないのが社長である。

 商品が斜陽化していく限り、我社の現在の商品が、我社の収益を保証することはできないのである。

 とするならば、我社の将来の収益を得るための商品を、まだ現在の商品の収益力があるうちに開発しておかなければならないのである。

 社長たるものは、現在の好調に酔うことなく、絶えず、我社の商品、事業をチェックし、長期的な視野から、どうすべきかを考えていなければならない。

 

(2) 社長とは、企業の将来に手を打つ人である。

 新事業というものは、それが軌道に乗って、我社の収益の柱になるには少なくとも3年はかかると思わなければならない。ということは、年後のことを今日から始めなければ間に合わないことを意味しているのだ。私が会社のお手伝いをして、まず短期経営計画を社長とともに作り上げると、そこには大きな収益不足を生ずるのが常である。その収益を売上高に直すと、その大きさに、たいがいの社長がびっくりしてしまうのである。ということは、社長が如何に我社の将来━━それもたった年後のことである━━を知らないか、ということを意味している。

 前向きに物を考え、前向きの手を打つ、これが社長の仕事である。社長とは企業の将来に関することをやる人である。そしてそれは社長以外に誰もやってはくれないし、また、社長以外には誰にもやらせてはいけないのである。

 

(3) 社員に任せても良いような新事業は、はじめから「我社の将来の収益」など期待できない

 新事業というものは、第一に、社長自ら身を挺してやるものだ。

 世の中の社長の中には、新事業には自らはたずさわろうとせず、他人任せにする人がかなりいる。難しい新事業は他人に任せ、自らは長年手馴れた事業のほうを見ている。やさしいほうを自分がやり、難しいほうを他人に任せるとは、いったいどういう了見なのだろうか。成功など夢のまた夢である。

 新商品・新事業の成否は、そのまま企業の将来の運命に直結する。社長の役割が企業の未来をつくることにある限り、社長自ら新事業に取り組み、総指揮をとるのが当たり前である。

 

(4) 「危険がない」と感じた事業こそ失敗の危険が大きい

 ブームというのは供給過剰の直前の状態だと思うべきである。

 その時に乗り出してもすでに時期を失している。だから、ブームになったものは、いくら食指が動いても、絶対に乗り出してはいけない。特に大企業が乗り出したときは、供給過剰が間違いなく起こると思って良い。

 新事業のタイミングというものは、まだブームにならず、先行きがどうなるか見通しの難しいときにあるのだということを知らなければならない。そして、その時には失敗の危険も多いのであり、危険のないと思われるときはすでに時期を失しているのである。

 「成否相半ばする」と感じた時が、「失敗の危険の少ない最後の時期」というべきである。

 

参考文献:一倉定の社長学「新事業・新商品開発」