34回 「未来事業・新事業」に取り組む(2)

 

(5) 自分の性格に合わない事業には手をださないほうが無難である

 新事業といっても業態が大きく違ったり、技術的に未知なものにいきなり飛び込んだり、社長の性格に会わなかったりすると、どうも上手くいかないケースが多い。

 人間というものは、急に大きな意識改革をしようとしても、なかなか一気にはできない動物らしい。過去の経験や考え方が障害になってしまうのである。社長の性格も急に変えることはできないのである。

 とするならば、そのような大きな意識改革を要するものや性格に会わない事業には手を出さないほうが無難である。何も自ら苦手の分野に乗り込んで苦労することはない。自らの企業の特質を生かす事業、自らの性格にあった事業を見つけるべきである。

 

(6) 一切のコストを無視して、まず完璧な試作品を作れ

 はじめからコストを考えると、優れた新商品はできない・・・・・。

 試作品ではまずコストを考えずに、考えられる最高の品質を追求するのが正しい態度である。そして期待した品質が得られた後に、今度はコスト低減に取り組む。そのコスト低減も、あくまでも「品質を落とさない」ということを大前提にしなければいけない。

 世の中に次々と出てくる商品の品質を見ると、欠陥の多いのに驚かずにはいられない。その根本原因は「安くなければ売れない」という「コスト病」である。コストのためには、平気で品質や性能を無視する。

 商品というものはお客様の要求を満たすために存在するのだ。「安かろう悪かろう」ではやがてお客様から見放されてしまうのである。

 

(7) 今ある商品の欠陥を見つけだし、これを直す

 新商品開発といっても、その狙いは新商品そのものにあるのではなくて、そこから得られる新たな収益が狙いである。新たな収益をあげる最も早く、確実な道は、今ある商品の欠陥を見つけだし、これを直すところにあるのだ。

 いたずらにアイデアだオリジナルだと格好良いことを考える前に、じっくりと現在の商品の改良に取り組むべきである。

 今ある商品の欠陥を見つけだす最良の道は、社長自らが外に出て、流通業者、エンドユーザー、消費者の要求や意見、不満に耳を傾けることである。

 そこには、思いもかけなかったような欠陥が見つかるのである。見つけだした欠陥を、我社の責任と感じて、これを直す。これこそ社長に最も必要な基本的態度なのである。

 

(8) 「世の中になくてよいもの」は高収益を期待できることを知れ

 世の中になくてよいものは、顧客が値段のことをあまり言わない。本人の好みに合ったものならば、値段は二の次だからである。おまけに、こうした商品はマーケットがあまり大きくない。そのために人々の注目をひかない。

 多くの社長は、「たくさん売れるもの」に魅力を感じ、「市場が大きい」というだけで、たくさん売れ、儲けも大きいと思い込むらしい。全く逆である。そういうものは、たくさんの人が手を出し、過当競争に陥り、低収益に泣くことになるのである。

 高級品になると収益性も良くなるし、過当競争も緩和されてくるものだ。だから、中小企業の狙いは常に高級品にあるというのが私の年来の主張である。大企業とは競合せず、他の中小企業もあまり目を向けず、高収益を得られる結構な事業こそ「世の中になくてよいもの」なのである。

 

参考文献:一倉定の社長学「新事業・新商品開発」