第35回 組織の論理
組織というものは本来の目的よりも、組織それ自体の存続のほうが常に優先する
組織と言うものは、いったんこれが生まれると、「組織自体の存続」のみが最重要な命題となってしまうという恐ろしいものである。組織を存続させるための最重要条件は「変化を阻止する」ということである。変化は常に組織のピンチを意味し、指導者失墜の危険を伴うからである。それは「事業経営」とは相容れないものである。
「事業経営とは、変転する市場と顧客の要求を見極め、これに合わせて我社をつくりかえること」なのである。会社はお客様がなければ、存在し得ない。お客様の要求に応えなければ、企業はつぶれてしまう。そして、お客様の要求は常に変り続ける。変り続けるお客様の要求に応えるためには、企業体自身もこれに合わせて変り続けなければならないのである。組織の存続と事業経営の存続は相矛盾することを認識しなければならない。
「責任の明確化」自体が無責任社員をつくりだす
組織論者は、責任の範囲を明らかにしないから仕事がうまく行われないのだと思い込んでいる。これは全くの見当違いであって、責任の範囲を明確にすると「それ以外のことには責任がない」ととるのが人間というものである。他の部門がいくら忙しくとも、となりの社員がいくら忙しくとも、それは「自分の責任の範囲外のことである」として、「われ関せず」ということになってしまうのである。
こうして人々は自分の部門のこと、自分の仕事のことだけしか考えなくなり、会社の業績をあげようという意識すらも無くなってしまう。そしてお客様にサービスするということより自分の責任を果たすことが優先していき大変危険なのである。会社の業績を落とし、人々の魂を腐らせてゆくという、大きな罪悪を犯すものが『責任の明確化』なのである。
仕事の管理は、高度な管理やきめの細かい管理ではなくて「最小限管理」が正しい
管理とは、会社の内部の繰り返し仕事だけを対象にしたものである。管理は事業経営には必要ではあっても、事業経営ではないのだ。それは、仕事を円滑に運ぶためには役に立つけれども、その反面に必ず「費用」を生むのだ。費用を上回る何らかの成果が上がってはじめて「管理」は意味があるのである。
事業経営の要請からすれば、できれば「仕事の管理」はしないで済ませたい。管理費がかからないからである。しかし、現実の問題として管理しないためのロスが発生するので、ロスの減少より少ない費用で管理できる場合に限って、管理したほうが有利なのである。当然のこととして高度な管理や、きめの細かい管理ではなく「最小限管理」でなければならない。
口頭による指令は忘れられ、文章による指令は守られる
口頭による指令は、もともとあやふやなものである。そのあやふやな口頭で社長の大切な指令がだされるというのは、いったいどういうことなのだろうか。
社長自身が、口頭の指令ではそれが的確に実施されていないことをイヤというほど思い知らされているのに、それを改めないというのは、「社長の指令は的確に行われなくてもよい」と社長自身が認めているようなものである。本当のところ「口頭の指令は独り言にしか過ぎない」ことを知ってもらいたいのである。
私は声を大にして「指令メモ」を書くように社長にお勧めする。メモを書くことなど簡単なものなら数秒で済むし、1分以上かかることなど滅多にない。社長が自らの指令を的確に行わせるためには、「指令は絶対に書いて行う」ことをやらなければならない。そうしなければ「社長の指令は守らなくて良い」ということが社員の間で広まってしまうのである。
参考文献:一倉定の社長学「内部体制の確立」