会計事務所ですべて処理して欲しいという方へのご案内
領収書の束を渡すから、後はすべて事務所の方で処理をしてほしいと仰る方がたまにおみえになります。又、このようにしてくれる会計事務所が世間では多いようです。
しかし、当事務所では、種々の理由からこのようなご依頼はお断りしています。
理由の一つに、このように作成された帳簿には裁判上の証拠能力がなくなることがあります(刑事訴訟法第323条)。
記帳は、理解いただけるまで親切・丁寧にお教えしますので、ご自身(自社)でお願いします。
【刑事訴訟法】
第三百二十三条 前三条に掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。
一 戸籍謄本、公正証書謄本その他公務員(外国の公務員を含む。)がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面
二 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面
三 前二号に掲げるものの外特に信用すべき情況の下に作成された書面
理由の二つ目に領収書だけでは、支出の目的が分からないことがあります。
領収書を見れば、いつ、誰に、いくら支出したのかは分かります。領収書によっては、何をどれだけ購入したのかということまで分かる場合もあります。
しかし、その支出の目的は、実際に購入し、支払いをしたご本人にしか分からないことです。
つまり、会計事務所では、「但し、上寿司2人前代金として」と明記してある領収書を見ても、直ちに、経費(損金)にすべきなのか、ましてや、その科目が「会議費」なのか「交際費」なのか「福利厚生費」なのか、或いは、他の科目にすべきなのかもまったく分かりません。
刑事訴訟法が「通常の業務の過程」で作成された商業帳簿のみに証拠能力を認める理由がこの辺にあると思います。