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『建物附属設備・構築物に係る減価償却の改正への実務対応』2016/06/13

~既存の設備と新規設備、資本的支出の取扱い、企業会計上の取扱い~

公認会計士 太田達也


■平成28年度税制改正の内容

 建物附属設備・構築物および鉱業用の建物等の償却限度額の算定方法について、定率法が廃止されました。すなわち、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備・構築物については定額法のみが認められ、同日以後に取得する鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備および構築物に限る)については、定額法または生産高比例法によることになりました。 改正後の償却方法(平成28年4月1日以後取得分)
資産の区分           償却限度額の算定方法
建物附属設備および構築物     定額法
鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備および構築物に限る) 定額法または生産高比例法

■既存の設備と新規設備

 平成28年3月31日以前に取得した建物附属設備・構築物は、定率法または定額法のいずれかを選択できるとされていました。定率法を適用している企業が多いと思われます。平成28年3月31日以前に取得した建物附属設備・構築物に定率法を適用している場合は、耐用年数終了まで定率法をそのまま適用することになります。一方、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備・構築物については、選択の余地はなく、定額法によることになります。

■資本的支出の取扱い

  資本的支出については、原則として、新規資産の取得とみなして償却します(法令55条1項)。したがって、既存の建物附属設備・構築物が定率法適用であっても、それらに対して平成28年4月1日以後に行われた資本的支出については、定額法が適用されます。本体と資本的支出に異なる償却方法が適用されるケースが生じますので、留意が必要です。 また、平成19年3月31日以前に取得された旧定額法または旧定率法が適用されている建物附属設備・構築物に対して行われた資本的支出については、それが平成28年4月1日以後に行われたものであっても、既存の建物附属設備・構築物の取得価額に資本的支出の金額を加算して、一体として旧償却方法で償却計算する特例(法令55条2項)の適用も認められます。
 しかし、資本的支出を行った事業年度の翌事業年度の期首に既存の資産の帳簿価額と資本的支出の帳簿価額を合算した金額を取得価額とする1つの減価償却資産を取得したとみなして償却する特例(法令55条4項)の適用は認められません。定率法同士でないと、この特例は認められないからです。
    根拠規定    適用の可否原則
原則 法令55条1項     ○
特例   法令55条2項       ○
特例 法令55条4項             ×

■会計上の取扱い

 企業会計基準委員会が本年4月22日に公表した「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(案)」によれば、従来、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理している企業において、建物附属設備および構築物の減価償却方法について定率法を採用しているときに、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備および構築物の減価償却方法を定額法に変更する場合、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うものとされました。 この取扱いに従えば、会計上も、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備・構築物から定額法に変更することが容易にできます。この場合は、会計と税務で償却方法を一致できますので、二重計算の問題を避けることができます。

   税務研究会HP ―2016年6月―

『平成28年度税制改正における税率に係る改正動向』2016/01/22

~法人税率、地方税率等が全面的に改正~

 公認会計士 太田達也

■成長志向の法人税改革と地方法人課税の偏在是正

 先日公表された与党税制改正大綱(以下、「大綱」)によれば、成長志向の法人税改革を一層進める観点から、法人実効税率を「20%台」に引き下げ、課税ベースの拡大等による財源確保(減価償却制度の改正、繰越欠損金の改正等)が併せて行われるとされています。
また、地方法人課税の偏在是正の観点から、暫定措置である地方法人特別税の廃止、法人住民税法人税割の一部を国税である地方法人税に税源移譲するものとされています。

■税率の改正内容

1.法人税率

大綱によると、法人税の税率(改正前23.9%)を次のように段階的に引き下げるとされています。
①平成28年4月1日以後に開始する事業年度について、23.4%とする。
②平成30年4月1日以後に開始する事業年度について、23.2%とする。

2.法人住民税法人税割

 大綱によると、法人住民税法人税割の税率を次のとおりとし、平成29年4月1日以後に開始する事業年度から適用するとされています。  一方、地方法人税の税率を10.3%(改正前4.4%)に引き上げ、平成29年4月1日以後に開始する事業年度から適用するとされています。
 結果として、法人住民税法人税割と地方法人税を合わせた合計税率は、改正前と変わりません。本改正は、地方法人課税の偏在を是正するための改正であり、国税である地方法人税のウェイトを上げ、それを各地方自治体に適正に配分することにより、地方自治体間の財政格差が生じないようにするものです。

3.地方法人特別税

大綱では、図表中の「平成28年4月1日以後に開始する事業年度」について図表中の改正前から改正後の税率のように改めるとされています。なお、改正前の税率は、平成27年度税制改正後の税率です。  ただし、平成29年4月1日以後に開始する事業年度から、地方法人特別税は廃止し、法人事業税に復元するものとされています。これについても、廃止した税源がそのまま法人事業税の税源に移譲されるものと考えられます。

4.外形標準課税

外形標準課税は、資本金の額または出資金(以下、「資本金」という)の額が1億円超の普通法人を適用対象法人としていますが、大綱によると、図表中の「平成28年4月1日以後に開始する事業年度」について図表中の改正前から改正後の税率のように改めるとされています。
なお、改正前の税率は、平成27年度税制改正後の税率です。
(注1)記載している税率は、標準税率です。
(注2)所得割の税率下段のカッコ内の率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率です。
(注3)3以上の都道府県に事務所または事業所を設けて事業を行う法人の所得割に係る税率については、軽減税率の適用はありません。 外形標準課税の外形基準のウェイトを8分の5(平成27年度税制改正段階で8分の4)まで引き上げる改正です。

          ※税務研究会HP―2016年1月―

『固定資産の「取得の日」と「事業の用に供した日」の違い』2015/12/03

公認会計士 太田達也


■固定資産の「取得の日」とは

 固定資産の取得の日は、原則として、その固定資産の引渡しを受けた日です。引渡しを受けるにあたっては、検収をすることもありますが、その場合は検収が終わり、引渡書にサインした日であると考えられます。実務上は、この取得の日に、固定資産を資産計上します。

■固定資産の「事業の用に供した日」とは

固定資産を事業の用に供した日は、取得の日と一致することもあり得ますが、両者の日付は異なる場合が多いと思われます。  事業の用に供した日とは、いつでも本来の用途に供することができる状態に至り、使用を開始する日をいいます。したがって、機械装置等の設備を取得し、据付作業を行っている場合は、その据付作業中の期間はまだ事業の用に供していないことになります。また、検収目的で試運転を行っている期間は、本来の用途に供することができるかどうかを確かめている段階であり、まだ事業の用に供していないことになります。
さらに、技術者による技術指導を受けてから稼働するような場合も、技術指導を受けている段階はまだ事業の用に供していないことになります。  なお、事業の用に供した日とは、資産を物理的に使用し始めた日のみをいうのではありません。例えば、賃貸ビル・賃貸マンションの場合には、建物が完成し、現実の入居がなかった場合でも、入居の募集を始めていれば、事業の用に供したものと考えられます。

■「事業の用に供した日」を確認する必要がある

 実務上、事業の用に供した日を必ず確認する必要があります。  まず減価償却は、事業の用に供した時から開始されます。「取得の日」と「事業の用に供した日」がずれるケースでは、その点に注意しなければなりません。償却限度額の計算は月割りですので、取得した日の属する月と事業の用に供した日の属する月が同じ月であるときは問題ありませんが、その両者の月がずれるときに注意を要します。
 また、租税特別措置法上の特例税制の適用においては、この事業の用に供した日が重要になる場合が多いと考えられます。例えば、生産性向上設備投資促進税制では、平成28年3月31日までに生産性向上設備を取得し、事業の用に供した場合には、即時償却または取得価額の5%の税額控除のいずれかの選択適用が認められますが、たとえ平成28年3月31日以前の取得であっても事業の用に供した日が平成28年4月1日以後の場合には、取得価額の50%の特別償却または4%の税額控除のいずれかの選択適用となります。
中小企業投資促進税制の上乗せ措置の適用においても、平成29年3月31日までに取得し、事業の用に供したものが適用対象とされています。

※税務研究会HP ―2015年12月―

『減資の手続と地方税申告書の添付書類』2015/11/06

~法人住民税均等割に係る改正により減資の事例が増加~

公認会計士 太田達也


■減資とは

減資という言葉を最近よく耳にします。減資とは、資本金の額を減少することをいいます。会社法上、最低資本金規制がなくなったことから、資本金の額の減少額についても、下限規制がなくなりました。ただし、資本金の額の減少額は、資本金の額の減少の効力発生日における資本金の額を超えてはならないと規定されていますので(会社法447条2項)、資本金の額がマイナスとなるような減資はできません。(ゼロまでの範囲での減資は可)
 会社法上は、減資は資本金の額を減少するという計数(数字)の問題でしかないという整理がされていますので、そこで併せて株主に対する払戻しを行うのであれば剰余金の配当として払戻しを行うことになります。また、併せて株式数を減少させるのであれば、株式併合または自己株式の取得により行うことになります。

■欠損てん補に充てる場合

 資本金の額の減少または資本準備金の額の減少によって発生したその他資本剰余金を利益剰余金のマイナスに充当することはできます。これを「欠損てん補」といいます。  減資により欠損てん補する場合は、①減資(資本金の額の減少)に係る決議と、②減資によって発生したその他資本剰余金を欠損てん補に充てる決議(会社法上、会社法452条の剰余金の処分という手続になります)、以上の2つの決議を行うことになります。
 この2つの決議を同じ株主総会で行うことができますが、その場合は①を先順位の議案とし、②を後順位の議案にしたうえで、②の決議については、①の決議が成立することを条件として決議することになります。

■議案の記載の仕方

 減資によって発生したその他資本剰余金を欠損てん補に充てる決議をした株主総会の議事録の記載例(該当部分の抜粋)を以下に示します。

第1号議案  資本減少の件


議長は、本日の議案たる資本減少の件につき、その提案理由を詳細に説明し、その審議を求めたところ、満場一致をもって、次のとおり承認可決された。

1. 減少する資本金の額 金10,000,000円
2. 効力発生日 平成○○年○月○日

第2号議案 剰余金の処分の件


第1号議案における資本金の額の減少により生じる剰余金について、平成○○年3月31日現在の欠損のてん補に充てるため、下記のとおり処分したい旨を説明し、その理由を詳細に説明し、その審議を求めたところ、満場一致をもって、次のとおり承認可決された。

1. 増加する剰余金の項目  その他利益剰余金
2. 減少する剰余金の項目  その他資本剰余金
3. 処分する各剰余金の項目に係る額 金10,000,000円
4. 効力発生日 処分の効力は、第1号議案における資本金の額の減少の効力発生日に生じるものとする。

■地方税申告書の添付書類に注意

 平成27年度税制改正により、法人住民税均等割の税率区分の基準となる額の算定において、法人税法上の資本金等の額に、平成22年4月1日以後に行われた無償増資(利益剰余金の資本金への組入れ)の額を加算し、平成13年4月1日以後に行われた無償減資による欠損てん補額を減算するものとされました。平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
 平成27年4月1日付で公表された「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」(以下、「取扱通知」)によれば、無償減資による欠損てん補額の減算が行われる場合には、無償減資の欠損てん補額の内容を証する書類を地方税申告書(第6号様式)に添付することが必要であるとされています(取扱通知48の3)。
 添付書類の例示が、「平成27年版 地方税申告書記載の手引」(総務省)に次のとおり示されています。通常は、株主総会議事録を添付すると思われます。

・株主総会議事録
・債権者に対する異議申立の公告(官報の抜粋)
・株主資本等変動計算書

 なお、「平成27年版 地方税申告書記載の手引」(総務省)によれば、無償増資を行った場合にも、地方税申告書(第6号様式)にその無償増資を行ったことを証する書類の添付が必要であるとされています。こちらについては、適用要件ではありませんが、法人住民税均等割の税率区分の基準となる額が増加した理由を把握するために、各自治体から株主総会議事録等の提出を求められることがあるとされています。

※税務研究会HP ―2015年11月―

『個人番号の保存期間』2015/10/08

~マイナンバー導入に伴う帳票の保管期間等~

公認会計士 太田達也


■本人確認書類の保管

 個人番号の付番がいよいよ本年10月以降に行われます。個人番号を取得するに際しては、本人確認(番号確認+身元確認)が必ず必要になります。本人確認書類のコピーを保管する法令上の義務はありませんが、本人確認の記録を残すためにコピーを保管することはできるとされています(特定個人情報保護委員会「マイナンバーガイドラインQ&A」Q6-2)。
ただし、コピーを保管する場合には、安全管理措置を適切に講ずる必要があります。個人番号を含む個人情報は、番号法上の「特定個人情報」に該当します。紙媒体で保管する場合は、鍵のかかるキャビネットに保管するのは当然ですが、その鍵の管理も含めて、安全管理措置について特に留意が必要かと思われます。

■扶養控除等申告書のように保存義務があるものの取扱い

 扶養控除等申告書は、法令上、申告書の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存する必要があります。マイナンバーガイドラインでは、個人番号関係事務を行う必要がなくなった場合で、所管法令等に定める保存期間を経過した場合には、個人番号を速やかに、かつ復元できない手段で削除または廃棄をしなければならないとされています。
 このように所管法令により保存期間の定めがあるものについては、保存期間が経過するまでは保管することになります。安全管理措置が必要であることはいうまでもありませんが、従業員等から紙の形で(手書き)で提出を受けるケースが多いこの申告書について、紙媒体で保管するのかどうか、検討する余地があると考えられます。紙媒体で保管することを避けるのであれば、PDFファイル化して電子保存する方法が考えられますが、コストと手間との比較考量も必要かと思われます。

■保存義務がないものの取扱い

 給与所得の源泉徴収票や支払調書の控えについては、法令上保存期間の定めはありません。ただし、それらの帳票が適切に作成されているかどうかを後でも確認できるように、その控えを保管しておく対応が一般的かと思われます。その場合は、システム上で保存している場合も多いと思われます。
 この点について、支払調書を正しく作成して提出したかを確認するために支払調書の控えを保管することは、個人番号関係事務の一環として認められると考えられる旨の見解が出されています(マイナンバーガイドラインQ&A・Q6-4-2前段)。
 また、給与所得の源泉徴収票や支払調書の控えを保管する期間については、確認の必要性および特定個人情報の保有に係る安全性を勘案し、事業者において判断する点が示されています。ただし、税務における更正決定等の期間制限に鑑みると、保管できる期間は最長でも7年が限度であると考えられるということですので(マイナンバーガイドラインQ&A・Q6-4-2後段)、この点については何年間保管するのかをあらかじめ取扱規程等で明確化しておくことも考えられます。

※税務研究会・HP ―2015年10月―

『マイナンバー制度導入に係る費用の取扱い』2015/09/07

~システム対応のための費用は?~

公認会計士 太田達也


■マイナンバー制度に対応するための費用

 平成28年1月以降に、マイナンバー制度が実施されます。マイナンバーを管理するために、システム整備等の対応を検討している企業も多いと思われます。給与計算ソフトの年末調整システムにマイナンバーを紐付けるためのプログラムの更新、源泉徴収票や支払調書の作成ソフトにマイナンバーを記載するプログラムの更新等、ソフトウェアの改訂を行うことが考えられます。

■修繕費と資本的支出の違い

 固定資産を使用していく上で、固定資産の原状の効用、原状の価値を維持するために必要な費用は修繕費とされます。一方、固定資産に対して新たな機能の追加や機能の強化を図るための費用は資本的支出とされ、資産計上する必要があります。先に説明したようなマイナンバー制度に対応するためのプログラムの更新費用については、どのように考えたらよいのかが問題となります。

■法律改正等に伴い、不可避的に発生する必要の取扱い

 消費税率が5%から8%に引き上げられる時に、会計ソフトなどのプログラムを8%に対応する内容に更新したことは記憶に新しいところです。また、それ以前にも、減価償却限度額の算定方法に係る税制改正に伴い、減価償却計算システムを更新しました。  このように法律の改正等に伴い、その固定資産(この場合はソフトウェア)の原状の効用(価値)を維持する上で必要な費用、言い換えるとこれまでどおりに使用し続けていく上で必要な費用は、原則として修繕費に該当します。今回のマイナンバー制度に対応するためのプログラムの更新のための費用についても、同様に取り扱われるものと考えられます。

■新たな資産の取得は要注意

 マイナンバー制度に対応するために、新たにパソコンやサーバーを購入することもあり得ます。この場合は、新たな資産(器具備品)の取得に該当しますので、資産計上することになります。ただし、取得価額が10万円未満であれば損金経理による損金算入、10万円以上20万円未満であれば一括償却資産として取り扱うことができます。また、中小企業者等であれば、取得価額30万円未満であれば(1事業年度当たり300万円を超えない範囲で)損金経理による損金算入が認められます。
 また、情報セキュリティの強化対策のために、暗号化ソフトを導入する場合も、新たな資産(ソフトウェア)の取得に該当し、原則として資産計上することになります。(それが少額減価償却資産または一括償却資産に該当する場合は、先ほどと同様です)  なお、修繕費として損金算入できるものと資産計上が必要なものが両方発生することもあり得ますから、業者からの請求書に内訳をきちんと記載してもらう対応が必要になります。

      ※税務研究会HP・今月のキーワード ―2015年9月―

『結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度のポイント』2015/07/02

~教育資金の一括贈与との相違点等~

公認会計士 太田達也


■結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の創設

 平成27年度税制改正により、少子化対策として、一括贈与により若年層の経済的不安を解消し、結婚・出産を後押しするために、次の非課税制度が創設されました。すなわち、個人(20歳以上50歳未満の者に限る)の結婚・子育て資金の支払に充てるために、その直系尊属(贈与者)が金銭等を拠出し、金融機関に信託等をした場合には、信託受益権の価額または拠出された金銭等の額のうち、受贈者1人につき1,000万円(結婚に際して支出する費用については300万円を限度)までの金額に相当する部分の価額については、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととする制度です。

■教育資金の一括贈与に係る非課税制度との共通点

 手続の面では、平成25年に創設された教育資金の一括贈与に係る非課税制度と類似した点が多いと思われます。すなわち、受贈者は、本特例の適用を受けようとする旨等を記載した非課税申告書を、金融機関を経由し受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。また、受贈者は、払い出した金銭を結婚・子育て資金の支払いに充てたことを証する書類を金融機関に提出し、金融機関は提出された書類により払い出された金銭が結婚・子育て資金の支払いに充当されたことを確認し、その確認した金額を記録するとともに、その書類および記録を「結婚・子育て資金管理契約」の終了の日の翌年3月15日後6年を経過する日まで保存しなければならないとされています。

■契約終了時の課税の取扱い

 結婚・子育て資金管理契約は、次のいずれかの事由により終了します。
① 受贈者が50歳に達した場合
② 受贈者が死亡した場合
③ 信託財産等の価額がゼロとなった場合において、終了の合意があったとき
上記の①または③の事由により契約が終了した場合に、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額(いわゆる「使い残し残額」)があるときは、これらの事由に該当した日に当該残額の贈与があったものとして受贈者に課税が行われます。一方、上記の②の事由により契約が終了した場合は、贈与税は課されません。

■教育資金の一括贈与に係る非課税制度との相違点

 両者に課税上の取扱いに大きな違いがある点に留意する必要があります。契約終了の時の使い残し残額について贈与税が課される点は共通しますが、契約期間中に贈与者が死亡したときの取扱いに重要な相違点があります。  すなわち、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の場合、契約期間中に贈与者が死亡したときは、当該死亡の日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額について、受贈者が贈与者から相続または遺贈により取得したものとみなして、贈与者の相続税の課税価格に加算されます(この場合、孫でも2割加算の対象にはなりません)。この取扱いは、相続税回避の防止を図る趣旨かと思われます。  一方、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の場合は、契約期間中に贈与者が死亡しても、使い残し残額について相続税の課税対象にはなりません。

■各種非課税贈与特例の重複適用

 住宅取得資金の贈与非課税特例、教育資金の一括贈与非課税特例、結婚・子育て資金の一括贈与非課税特例と、直系尊属からの贈与に係る非課税特例制度のメニューが増えてきました。これらの非課税特例は重複適用できますので、うまく計画的に活用していくと、かなりの額の贈与について非課税の恩恵を受けることができます。次世代への資産の移転を計画的に行いやすい環境が整備されてきたとみることができます。

※税務研究会HP・今月のキーワード ―2015年7月―

『所得拡大促進税制における新設法人の特例』2015/06/04

~平成25年4月1日以後に設立された法人は、特例により100%適用可~

公認会計士 太田達也


■所得拡大促進税制の適用要件

 平成25年度税制改正により創設された所得拡大促進税制ですが、平成26年度税制改正および平成27年度税制改正と2度にわたる要件緩和が行われ、現在では次のとおりとなっています。

所得拡大促進税制の適用要件
① 当期の「雇用者給与等支給増加額」/「基準雇用者給与等支給額」 ≧ 2%(注)
② 当期の「雇用者給与等支給額」 ≧ 前期の「雇用者給与等支給額」
③ 当期の「平均給与等支給額」 > 前期の「平均給与等支給額」 (平均給与等支給額の対象給与等 → 継続雇用者(適用年度およびその前年度の両方で給与等の支給を受けた国内雇用者)に対する給与等支給額で、一般被保険者に該当する者に対して支給するものに限る。)

(注)平成25年度および平成26年度は2%以上であるが、平成27年度以降は次のとおりである。
          25年度 26年度 27年度 28年度 29年度
中小企業者等 2%以上 2%以上 3%以上 3%以上 3%以上
 上記以外    2%以上 2%以上 3%以上 4%以上 5%以上

■新設法人の特例

 上記の①の要件における分母の「基準雇用者給与等支給額」は、本来、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度(基準事業年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額と規定されています。  しかし、平成25年4月1日以後に設立された法人(以下、「新設法人」といいます)については、基準事業年度がありません。そこで、新設法人の「基準雇用者給与等支給額」は、最も古い事業年度(設立の日を含む事業年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額の70%相当額と規定されています(措法42条の12の4第2項4号ハ)。
 なお、上記の新設法人から、合併、分割および現物出資により設立された法人を除きます(措法42条の12の4第2項4号ハかっこ書)。

■新設法人は必ず適用要件を満たす

 新設法人の設立事業年度については、雇用者給与等支給額が1円以上発生していれば、上記の適用要件の3つを必ず満たすことになります。適用要件①については、基準雇用者給与等支給額が設立事業年度の雇用者給与等支給額の70%相当額と規定されていることから、70%相当額が100%相当額に増加したという判定になりますので、必ず要件を満たします。適用要件②と③については、設立事業年度には前期がありませんので、前期の雇用者給与等支給額および平均給与等支給額はゼロということになり、必ず要件を満たします(なお、平均給与等支給額の分子にくる当期の継続雇用者給与等支給額がゼロであっても、1円とする規定が置かれているため、③の要件を満たします)。
 新設法人の設立事業年度において納税が発生する場合には、必ずこの制度の特例を受けるべきです。適用を失念している例が結構あるようです。  なお、別の税制である雇用促進税制(措法42条の12)は、設立事業年度を対象外にしていますので、適用できません。

※税務研究会HP・今月のキーワード ―2015年6月―

『生産性向上設備投資促進税制における共用資産の取扱い』2015/01/06

~本店用と店舗用に共用される資産の取扱いは~

公認会計士 太田達也


■適用対象は生産等設備

 生産性向上設備投資促進税制(措法42条の12の5)は、生産等設備を適用対象としています。生産等設備とは、例えば、製造業を営む法人の工場、小売業を営む法人の店舗または自動車整備業を営む法人の作業場のように、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を稼得するために行う活動(生産等活動という)の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいいます(措通42の12の5-1)

■共用資産の取扱い

 生産等設備に該当するかどうかを判断するうえで、共用資産の取扱いが問題となります。これについては、一棟の建物が本店用と店舗用に供されている場合など、減価償却資産の一部が法人の生産等活動の用に直接供されているものについては、そのすべてが生産等設備となるとされています(措通42の12の5-1の注)。その減価償却資産の取得価額を按分することなく、その全体について税制措置を適用することが認められます。
 例えば、本店と店舗が一体となった建物に、その両方で使用される全館空調(冷暖房設備)や昇降機設備を取得等し、それらが最新モデル要件、旧モデル比生産性向上要件その他の要件を満たしており、先端設備(A類型)に該当する場合には、その全体を「生産等設備」として、取得価額の按分をすることなく、取得価額の全体について税制措置を適用することができます。
また、営業部と管理部が同じフロアで働いており、共通して使用する照明設備を導入する場合も同様であると考えられます。 さらに、常設の社員食堂を併設した工場を新設し、工場全体の投資について投資計画を作成し、投資利益率要件その他の要件を満たしており、それが生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)に該当する場合、その工場全体を「生産等設備」として税制措置を適用することができます。

■店舗部分のみを投資計画に記載する場合

例えば、1階部分が店舗、2階以上の部分が本社(管理部門)となる1棟の建物を新規取得する投資の場合に、店舗部分のみを合理的に区分し投資計画を作成し、生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)として経済産業局の確認が得られたとします。この場合は、あくまでも投資計画に記載された店舗部分だけが税制措置の対象となる点に留意する必要があります。投資計画に記載されたのがあくまでも店舗部分のみですので、その投資計画について経済産業局の確認が得られたとしても、税制措置の適用が受けられるのはその店舗部分のみということになります。

※税務研究会HP・今月のキーワード-2015年-1月

『メンテナンスと改良が同時に行われたときの少額基準の取扱い』2014/12/10

~品質・性能のより高いものに取り替えた場合の20万円基準の判定~

公認会計士 太田達也

■通常の維持管理のための費用

通常の維持管理のための費用または原状回復費用のいずれかに該当する費用は、修繕費として損金算入することが認められます。このうちの通常の維持管理のための費用であるかどうかの判断が実務上は重要です。  固定資産は反復継続して使用されるものですので、予定された機能や性能を維持するために、その維持補修(メンテナンス)は、点検、清掃、給油、補修などの態様により日常的に行われます。そのような支出が行われても、その固定資産の使用可能期間が延びるわけではなく、また、価値が高まるわけではなく、その固定資産の現状の効用、現状の価値を維持するうえで必要な費用であるという考え方に基づいています。通常の維持管理のための費用は、反復性および予測可能性の2つの性格を持っていると考えられます。

■部品の交換費用

 機械装置や器具備品の部品を交換する場合、その部品が主要部品ではなく補助部品であり、その機械装置等を耐用年数にわたって使用していくうえでその交換が予測されるもので、反復性が認められるものであれば、原則として修繕費になるものと考えられます。例えば機械装置の歯車が常時回転しており、一定期間使用することにより摩耗が発生するため、定期的に交換するような場合が典型的に当てはまると思われます。

■より品質・性能の高い部品と交換する場合

上記のように、通常の維持管理として想定される部品の交換であれば、本来であればその全額が修繕費となりますが、より品質・性能の高いものに交換した場合は、通常の取替の場合にその取替に要すると認められる金額(同じ品質・性能のものと取り替えた場合の費用)を超える部分の金額が資本的支出になると考えられます(法基通7-8-1(3))。このようなケースにおいては、通常の取替を行った場合の費用を業者から見積書をとるなどにより明らかにし、その金額について修繕費として処理し、それを超えて要した部分の金額を資本的支出として処理することが考えられます。

■少額基準の判定の取扱い

 一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等で、その一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円未満であるときは、修繕費として損金経理をすることができるとされています(法基通7-8-3(1))。  先に説明しましたように、通常の維持管理として行われる部品の交換で、かつ、より品質・性能の高いものと交換した場合は、通常の取替の場合にその取替に要すると認められる金額が修繕費となり、それを超える部分の金額が資本的支出となります。
 この場合の少額基準の判定はどのように行うべきでしょうか。例えば通常の取替の場合にその取替に要すると認められる金額が18万円、それを超える部分の金額が12万円で、合計額が30万円である場合に、20万円未満であるかどうかを12万円または30万円のいずれで判定するのかという論点です。これについては、支出額の合計額である30万円で判定することになります。したがって、このケースの場合、少額基準に基づいた修繕費処理は認められないことになります。

 ※税務研究会HP・今月のキーワード ―2014年12月―

『所得拡大促進税制における「一般被保険者に該当する者」とは』2014/11/07

~平均給与等支給額の算定方法に係る留意点~

公認会計士 太田達也


■平均給与等支給額の算定方法に係る改正

 所得拡大促進税制(措法42条の12の4)における平均給与等支給額の算定方法が、平成26年度税制改正により大きく改められました。改正前の平均給与等支給額は、日雇いを除く国内雇用者に対する給与等支給額の平均とされていましたが、改正後の平均給与等支給額は、継続雇用者への給与等支給額の平均額で算出するものとされました。

■継続雇用者とは

 継続雇用者とは、適用年度およびその前事業年度において、給与等の支給を受けた国内雇用者をいいます。すなわち、適用年度である当期と前期のいずれにおいても給与等の支給がある国内雇用者は、一律、その支給をした法人の継続雇用者に該当することになります。継続雇用者には、一義的に、適用年度と前事業年度の両方の事業年度においてそれぞれ一度でも給与等の支給がある国内雇用者に該当すれば、改正前の平均給与等支給額の計算でも除外していた日雇いの方や、短期契約の方も含まれます。しかし、これらの者の賃金形態やその支給額などを考慮すると、いわゆる平均給与額を比較する趣旨にそぐわない、または不向きであると考えられたため、一般被保険者に該当する者に支給したものに限ることとされています。

■継続雇用者給与等支給額

 平均給与等支給額の計算の基礎(分子の額)となる継続雇用者給与等支給額は、雇用者給与等支給額のうち、継続雇用者に係る金額とされています(措令27条の12の4第11項)。また、この金額は、一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限るとされていますので、継続雇用者に対して支給された雇用者給与等支給額であっても、一般被保険者に該当する者に対して支給されたもののみをカウントする必要があります。
 また、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する「継続雇用制度」の対象である者(継続雇用制度対象者といいます)に対して支給したものを除くとされていますので、例えば定年が65歳未満の会社で、65歳未満で定年退職した者を対象とする継続雇用制度を採用している会社の場合、定年以降の継続雇用制度対象者に支給した金額は除かなければなりません。

■一般被保険者に該当する者とは

 雇用保険法では、①65歳に達した日以後に雇用される者、②1週間の所定労働時間が20時間未満の者および③同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者以外のものを被保険者と定義していて、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く被保険者を一般被保険者と規定しています(雇用保険法60条の2第1項1号)。すなわち、被保険者のうち高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者のいずれでもない者は、一般被保険者ということになります。ということは、一般被保険者に加入する手続をしているかどうかは関係なく、加入手続をしていない場合であっても、上記の一般被保険者に該当する者に係る金額はカウントしなければならない点に留意する必要があります。

※被保険者でない者
・65歳に達した日以後に雇用される者
・1週間の所定労働時間が20時間未満の者
・同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者

※被保険者
①高年齢継続被保険者
②短期雇用特例被保険者
③日雇労働被保険者
④一般被保険者(上記の①から③のいずれにも該当しないものであり、加入手続をしているかどうかは関係ない。)

(参考)継続雇用制度対象者とは 継続雇用制度対象者とは、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9 条1項2 号に規定する継続雇用制度の対象である者として財務省令で定める者をいい、それを受けて財務省令で定める者とは、その法人の就業規則において継続雇用制度を導入している旨の記載があり、かつ、次の書類のいずれかにその導入している継続雇用制度に基づき雇用されている者である旨の記載がある場合のその者をいいます(措令27条の12の4第11項、措規20条の9)。・雇用契約書その他これに類する雇用関係を証する書類・その法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳

※税務研究会HP・今月のキーワード―2014年11月―

『中小企業者等がソフトウェアを取得したときの特例税制の活用』2014/10/31

~中小企業投資促進税制の適用を視野に~

公認会計士 太田達也

■中小企業投資促進税制の上乗せ措置
平成26年度税制改正により、生産性向上設備投資促進税制(措法42条の12の5)が創設され、注目を集めています。 また、同じ税制改正により、中小企業者等が従来からの中小企業投資促進税制(措法42条の6)を適用する場合に、その対象設備が生産性向上設備投資促進税制における生産性向上設備にも該当するときは、中小企業投資促進税制の適用において上乗せ措置(資本金3,000万円以下の法人等は即時償却または取得価額の10%の税額控除の選択適用、資本金が3,000万円を超え1億円以下の法人については即時償却または取得価額の7%の税額控除の選択適用)を適用することができるとされました。

特に、対象設備がソフトウェアの場合で、かつ、生産性向上設備のうちの先端設備(A類型)に該当するときは、生産性向上要件は不要とされ、最新モデル要件のみを満たしていることで工業会の証明書が入手できることになります。

■生産性向上設備投資促進税制の活用は限定的か
 しかし、ここで注意しておかなければならない点があります。生産性向上設備に該当するためには、そもそもその設備が「生産等設備」に該当するものである必要があります。すなわち、生産等設備とは、生産活動、販売活動、役務提供活動など法人が収益を稼得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産をいいます。したがって、会計ソフト、給与計算ソフト、税務申告ソフトなどは当てはまりません。(逆に、販売管理ソフト、生産管理ソフトなどは当てはまります。)  したがって、中小企業者等が会計ソフト、給与計算ソフト、税務申告ソフトのような管理業務用のソフトを取得しても、中小企業投資促進税制の上乗せ措置は適用できないことになります

※税務研究会HP・今月のキーワード-2014年10月-

『生産性向上設備投資促進税制と圧縮記帳との関係』2014/07/28

~税額控除・特別償却の適用を受ける資産と圧縮記帳との関係~

公認会計士 太田達也


■法人税法上の圧縮記帳と租税特別措置法上の圧縮記帳
 圧縮記帳制度は課税の繰延を認める特例税制ですが、法人税法上の圧縮記帳と租税特別措置法上の圧縮記帳とがあります。国庫補助金等を取得して対象資産を取得したときの圧縮記帳(法法42条)は法人税法上の圧縮記帳制度ですが、特定資産の買換えに係る圧縮記帳(措法65条の7)は租税特別措置法上の圧縮記帳制度です。このいずれの法律に基づく圧縮記帳制度であるかが実は重要です。

■租税特別措置法上の特例税制の重複適用は不可
 同じ租税特別措置法上の複数の特例税制の重複適用は基本的に認められていません。例えば、中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却または税額控除(いわゆる中小企業投資促進税制)を適用する機械装置等について租税特別措置法上の圧縮記帳制度を重ねて適用することはできません。
 ところが、租税特別措置法上の特例税制の適用を受けた資産について、法人税法上の圧縮記帳制度を適用することは認められています。例えば、国庫補助金や助成金を受けて中小企業投資促進税制の適用要件を満たす機械装置等を取得したものとします。取得価額が2,000万円で国庫補助金等が1,500万円であったものとします。この場合に、国庫補助金等を受けて取得した機械装置等について1,500万円の圧縮記帳を適用した場合には、圧縮後の取得価額である500万円に対して7%を乗じた35万円の税額控除(ただし、適用年度の法人税額の20%相当額が限度)、または500万円に対して30%を乗じた150万円の特別償却のいずれかの適用を受けることができます。

■国庫補助金等の交付が翌期となる場合
 国庫補助金等の交付が翌期となる場合に、どのように取り扱うのかが問題となります。国庫補助金等の交付が翌期となる場合は、圧縮記帳の適用も翌期となります。先の例の場合、取得価額2,000万円に7%を乗じた140万円の税額控除の適用を受けたうえで、翌期に国庫補助金等の交付を受けたことに基づいて、取得価額2,000万円について国庫補助金等で取得した固定資産の圧縮記帳の適用を受けることができると考えられます。
 しかし、平成26年度税制改正で創設された生産性向上設備投資促進税制(措法42条の12の5)については、国庫補助金等の交付が資産取得の翌年度以後となる場合には、税額控除額は交付見込額を控除した額を基に計算するものとする内容が通達等で示されることが検討されているようです(週刊税務通信No.3302ご参照)。通達は早ければ7月にも公表されることが予想されていますが、その点をご確認していただければと思います。

※税務研究会HP・今月のキーワード-2014年07月-

『「生産性向上設備投資促進税制」における先端設備』2014/05/01

~適用要件の判定に係る留意点~
公認会計士 太田達也
■先端設備の適用要件
平成26年度税制改正により創設された「生産性向上設備投資促進税制」(措法42条の12の5)は、①先端設備または②生産ラインやオペレーションの改善に資する設備、以上の2つのいずれかに該当する設備等について適用が認められます。本稿では、このうちの「①先端設備」について解説します。
 先端設備は、「機械装置」、一定の「工具」「器具備品」「建物」「建物附属設備」「ソフトウェア」のうち、下記の要件をすべて満たすもの(サーバーおよびソフトウェアについては中小企業者等が取得するものに限る)です。なお、機械装置については用途・細目の制限は一切ありませんが、それ以外の設備(「工具」「器具備品」「建物」「建物附属設備」「ソフトウェア」)について用途・細目の制限が付されている点に留意が必要です。
① 最新モデル
② 生産性向上(年平均1%以上)
③ 最低取得価額以上
 このうちの最低取得価額要件は、形式的な要件ですので簡単に判定できるものと思われます。本稿では、最新モデル要件と生産性向上要件の2つについて、具体例を交えながら解説します。

■最新モデル要件
 最新モデルであることが必要ですが、最新モデルとは、各メーカーの中で、次のいずれかのモデルをいいます。「各メーカーの中で」ですから、他のメーカーのモデルを考慮する必要はありません。
イ 一定期間内(機械装置:10年以内、工具:4年以内、器具備品:6年以内、建物および建物附属設備:14年以内、ソフトウェア:5年以内)に販売が開始されたもので、最も新しいモデル
ロ 販売開始年度が取得等をする年度およびその前年度であるモデル
以下、具体例で判定してみます。
例1 前提条件
2014年に設備を取得したものとします。
A機械(甲社製) 2012年販売開始(以降の新モデルはなし)
→ 10年以内の最新モデルであり、要件を満たします(上記のイに該当)。
B機械(甲社製) 2010年販売開始(2012年に最新モデルであるA機械販売開始)
→ 販売開始は10年以内ですが、旧モデルであり、要件を満たしません。C
機械(乙社製) 2013年販売開始(2014年に最新モデルであるD機械(乙社製)販売開始)
→ 旧モデルですが、販売開始年度が取得の前年度であるため、要件を満たします(上記のロに該当)。
E機械(丙社製) 2002年販売開始(以降の新モデルはなし)
→ 最新モデルですが、販売開始から10年超であり、要件を満たしません。

■生産性向上要件 旧モデル(最新モデルの一世代前のモデル)と比較して、「生産性」が年平均1パーセント以上向上していることが必要です。この「生産性」の指標については、「単位時間当たりの生産量」「精度」「エネルギー効率」等、メーカーの提案に基づき、各工業会が設備の性能を評価するために妥当であるとする指標により判断します。
なお、比較対象となる設備は、あくまで同メーカー内での新モデル・旧モデルであり、他メーカーのモデルや、ユーザー(設備の導入者)がそれまでに使用していたモデルとの比較は行いません。また、特注品であっても、ベースとなる汎用モデルや中核的構成品がある場合は、そのベースとなる汎用モデルや中核的構成品の旧モデルが比較対象となります。

例2
F機械(2012年販売開始)         単位時間当たり生産量 156
一代前モデルG機械(2010年販売開始)   単位時間当たり生産量 150
{(156-150)÷150}÷2年=年平均2%の向上 → 要件○
H機械(2014年販売開始)          単位時間当たり生産量 156
一代前モデルI機械(2004年販売開始)    単位時間当たり生産量 150
{(156-150)÷150}÷10年=年平均0.4%の向上 → 要件×
(2014年に最新モデルであるJ機械販売開始)一代前モデルK機械(2013年販売開始)   単位時間当たり生産量 126
二代前モデルL機械(2011年販売開始)   単位時間当たり生産量 120
{(126-120)÷120}÷2年=年平均2.5%の向上 → 要件○
(旧モデルですが、販売開始年度が取得の前年度であるため、最新モデル要件を満たしています。)

■メーカーの役割が重要 最新モデル要件および生産性向上要件のいずれの内容をみても、基本的に同一メーカー内での判定ですので、メーカーの役割が重要になります。メーカーが要件を満たしているかどうかをまず確認して、要件を満たしていると判断されるものについて工業会の証明書を入手するという流れになります。したがって、ユーザーにはあまり実務負担が発生しないと思われます。

 ※税務研究会HP・今月のキーワード ―2014年5月―

『所得拡大促進税制の改正に係る留意点』2014/04/02

~平均給与等支給額の算定に係る「継続雇用者」とは~

公認会計士 太田達也


■平成26年度税制改正による適用要件見直し

平成26年度税制改正により、所得拡大促進税制(措法42条の12の4)の適用要件が改正されます。改正前の適用要件および改正後の適用要件を比較すると、次のとおりです。改
正前の要件
① 当期の「雇用者給与等支給増加額」/「基準雇用者給与等支給額」 ≧ 5% ② 当期の「雇用者給与等支給額」 ≧ 前期の「雇用者給与等支給額」 ③ 当期の「平均給与等支給額」 ≧ 前期の「平均給与等支給額」  (平均給与等支給額の対象給与等 → 日雇い労働者を除く国内雇用者への給与等)
改正後の要件
① 当期の「雇用者給与等支給増加額」/「基準雇用者給与等支給額」 ≧ 2%(注) ② 当期の「雇用者給与等支給額」 ≧ 前期の「雇用者給与等支給額」 ③ 当期の「平均給与等支給額」 > 前期の「平均給与等支給額」  (平均給与等支給額の対象給与等 → 継続雇用者への給与等(適用年度およびその前年度の両方で支給を受けた一般被保険者への給与等)
(注)平成25年度および平成26年度は2%、平成27年度は3%、平成28年度および平成29年度は5%です。

■継続雇用者とは

 当期の「平均給与等支給額」が前期の「平均給与等支給額」を超えるかどうかを判定(注)するときの平均給与等支給額の算定における対象給与等が見直されることになりました。 (注)改正前は、「超える」ではなく、「以上」でよいとされていましたが、この点も改正されます。  改正前は、日雇い労働者を除く国内雇用者への給与等の平均での判定でしたが、改正後は、継続雇用者への給与等の平均で判定することになります。
 継続雇用者に対する給与等とは、適用年度およびその前年度において給与等の支給を受けた国内雇用者に対する給与等のうち、雇用保険法の一般被保険者に対する給与等をいいますが、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の継続雇用制度に基づき雇用される者に対する給与等を除きます。
 「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の継続雇用制度に基づき雇用される者が、一般被保険者として適用年度およびその前年度において給与等の支給を受けている場合は、その一般被保険者として受けた給与等の支給額はカウントします。ただし、適用年度の途中で継続雇用制度に移行している場合は、継続雇用制度への移行以後の給与等はカウントしません。

■パート、アルバイトの取扱い

雇用保険の法律関係では、事業所に使用され31日以上の雇用の見込があって(注)、週所定労働時間が20時間以上の65歳未満の者については、基本的に一般被保険者として取り扱います。正社員だけでなく、常時雇用されているパートは一般被保険者に該当します。(注)1年以内の期間を定めている者であっても、更新される見込のある者は含まれます。  なお、日雇労働者および季節労働者(短期雇用特例被保険者)については、それぞれ特別の被保険者制度が設けられていますので、一般被保険者には該当しません。

※税務研究会HP・今月のキーワード-2014年 4月-

『生産性向上設備投資促進税制の活用』 2014/03/14

~平成26年度税制改正の注目改正~

公認会計士 太田達也


■生産性向上設備投資促進税制の創設  青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法の施行の日である平成26年1月20日から平成29年3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物およびソフトウェアで、産業競争力強化法に規定する生産性向上設備に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等をして、その生産性向上設備を国内にあるその法人の事業の用に供した場合に、特別償却(平成26年1月20日から平成28年3月31日までの間に取得等したものについては即時償却可)または税額控除の選択適用が認められます。  また、平成26年4月1日前に終了する事業年度において平成26年1月20日から平成26年3月31日までの間に対象資産の取得等をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において、特別償却または税額控除の対象になるとされています。したがって、例えば3月決算法人の場合、平成26年1月20日から平成26年3月31日までの間に対象資産の取得等をした場合には、平成27年3月期で特別償却または税額控除の適用が受けられることになります。

■対象設備  対象設備は、①先端設備および②生産ラインやオペレーションの改善に資する設備の2類型から成ります。  先端設備については、最新モデル要件、生産性向上要件、最低取得価額要件の3つをクリアしたものであることが必要であり、メーカーが所属する工業会の証明書が必要になります。メーカーに証明書の発行を依頼し、工業会が要件を満たしていることの確認を行い、証明書を発行します。次に説明する生産ラインやオペレーションの改善に資する設備とは異なり、経済産業局の確認は不要ですので、比較的適用しやすい面があると思われます。
 一方、生産ラインやオペレーションの改善に資する設備については、年平均の投資利益率が15%以上(中小企業者等の場合は5%以上)となることが見込まれているものであることが必要です。投資計画案を作成し、それについて(企業の規模にかかわらず)公認会計士または税理士の事前確認を受け、経済産業局に対してその事前確認書を添付した確認書発行申請を行います。適用にあたっては、経済産業局の確認書が必要ということになります。
 なお、経済産業局の確認は、設備の取得等の前に行うことが必要である点に留意する必要があります(先行取得は不可)。


■投資利益率とは  2つ目の類型である生産ラインやオペレーションの改善に資する設備ですが、対象となる設備はその投資計画に記載されている設備で、その事業者にとって投資目的を達成するために必要不可欠なものとされています。また、年平均の投資利益率が15%以上(中小企業者等の場合は5%以上)となることが見込まれていることが必要であるとされていますが、年平均の投資利益率は、次の算式によって算定されます。

「営業利益+減価償却費」の増加額/設備投資額

分子にある減価償却費は、会計上の減価償却費です。また、「営業利益+減価償却費」の増加額は、設備の取得等をする年度の翌年度以降3年度の平均額であるとされています。さらに、分母の設備投資額は、設備の取得等をする年度におけるその取得等をする設備の取得価額の合計額であるとされています。  公認会計士または税理士の事前確認の中で、上記の要件を満たしていることが確認されます。

■経済産業局の確認手続  経済産業局の確認手続にどのくらいの期間がかかるのかが気になるところです。ある地方の経済産業局の事例ですが、現時点での申請がまだ少ないため、申請(説明を含む)から確認まで短期間で確認が下りた事例が確認されています。  ただし、地方自治体によって一様ではないでしょうし、申請が立て込んできたときにより時間がかかる可能性もありますので、その点をお含みおきください。
※税務研究会HP・―2014年3月―

『圧縮記帳の会計処理』 2013/12/03

~剰余金の処分方式とは~

公認会計士 太田達也

■圧縮記帳制度の趣旨 国庫補助金に係る受贈益、保険差益、収用等によって生じた譲渡益などは、本来、益金として課税所得を構成しますが、原則どおり課税するとさまざまな弊害が生じ得ます。例えば、国庫補助金を受けたときの受贈益に対して課税すれば、予定していた資産の取得が場合によってはできなくなり、補助効果が減殺されてしまうという問題があります。収用等に伴う譲渡益についても、これに課税すると公共事業の促進を阻害するという問題が生じます。圧縮記帳という制度は、政策的観点から、国庫補助金に係る受贈益、保険差益、収用等により実現した譲渡益等について、一定の適用要件を備えていることを条件として、その利益を原資として取得した資産の取得価額を減額することにより、課税の繰延べを行うことを目的としているものです。取得価額が減額されることによって、その後の減価償却の計算の基礎となる金額、または譲渡原価・除却損失がそれだけ少額となり、課税所得がその分多くなります。すなわち、繰り延べられた税金は、翌期以降において最終的には取り戻しされることになります。

■圧縮記帳の会計処理 圧縮記帳の会計処理には、①直接減額方式と②剰余金の処分方式の2つがあります。企業会計上は、このうちの剰余金の処分方式を採用するケースが多いです。なぜならば、圧縮記帳はあくまでも税務上の政策的な観点から設けられた制度であって、損益計算書の損益に影響させてしまうと、適正な期間損益計算ができなくなってしまうからです。剰余金の処分方式は、決算手続として、決算日の日付で(借方)繰越利益剰余金/(貸方)圧縮積立金という処理を行い、その事業年度の法人税申告書の別表4で減算を入れることにより課税所得を圧縮する方法です。ただし、税効果会計を適用している企業の場合、将来加算一時差異に該当するため、法定実効税率を乗じた額について繰延税金負債を計上する必要があります。その場合は、圧縮積立金の積立額は、税効果控除後の金額になります。 翌事業年度以後の各事業年度においては、税務上の取得価額が圧縮されるため、償却限度額が少なくなります。会計上の取得価額は圧縮前の金額ですので、償却超過額が毎期発生することになります。別表4で「償却超過額」の加算を行っていきます。

繰越利益剰余金 / 圧縮積立金   ×××
繰越利益剰余金 / 繰延税金負債  ×××

■交換による圧縮記帳の会計処理 交換により取得した固定資産の圧縮記帳等は、税務上直接減額方式しか認められていません。圧縮記帳損を計上することにより、譲渡益と相殺関係になり、課税が繰り延べられることになります。ただし、企業会計上は、そのような両建て計上は行わず、交換取得資産の取得価額を、交換譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額と取得のために要した経費の合計額とする処理が適切であると考えられています(注)。 (注)日本公認会計士協会・監査第一委員会報告第43号「圧縮記帳に関する監査上の取扱い」ご参照。 税務上も、交換取得資産につき、その帳簿価額を損金経理により減額しないで、譲渡直前の帳簿価額とその交換取得資産の取得のために要した経費との合計額に相当する金額を下らない金額をその取得価額としたときは、これを認めるとされています(法基通10-6-10)。次の仕訳のように、圧縮記帳損も譲渡益も発生しません。

土地105(取得価額)  /  土地(譲渡直前の帳簿価額)  100
/   現金(取得経費)         5
(注)上記取得価額とは交換譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額100と取得経費5の合計額

※税務研究会HP・今月のキーワード ―2013年12月―

『生産等設備投資促進税制の適用要件の判定と留意点』2013/10/31

~対象設備の範囲、償却費、共用資産の取扱い…etc.~

公認会計士 太田達也

■生産等設備投資促進税制の適用要件 平成25年度税制改正により、生産等設備投資促進税制が創設されました。大企業でも税額控除を適用できる点など、非常に注目されている特例税制です。この特例税制の適用要件を満たしているのかどうかについて、各企業において確認が必要になるものと思われます。先般、通達が公表されましたので、実務上の細かい点まで明らかになりました。なお、適用要件ですが、次の2つの要件を両方とも満たすことです。
・ 当期に取得等した生産等設備の当期末の取得価額 > 当期に償却費として損金経理した金額
・ 当期に取得等した生産等設備の当期末の取得価額 > 前期に取得等した生産等設備の取得価額(比較取得資産総額)×1.1

■判定の対象と特別償却または税額控除の対象は異なる 上記の適用要件の判定は、生産等設備が対象ですので、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品と範囲が広いわけですが、適用要件を満たしているときの特別償却または税額控除については、生産等設備のうちの「機械及び装置」の取得価額に対して30%または3%を乗じた額について認められる点に留意が必要です。判定の対象と特別償却または税額控除の対象は異なることになります。

■生産等設備の範囲 生産等設備の範囲は、例えば、製造業を営む法人の工場、小売業を営む法人の店舗、自動車整備業の作業場など、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を稼得するために行う活動(生産等活動)の用に直接供される減価償却資産で構成されているものが該当するとされています(措通42の12の2-1)。そのため、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、複利厚生施設などが対象外となります。ただし、「収益を稼得するために行う活動(生産等活動)の用に直接供される」ものが対象ですので、乗用自動車であっても、役員用の社用車は当然に対象外ですが、生産または販売等の用に直接供しているものは対象になります。

■研究開発用設備の該当性 研究開発用設備の場合、基礎研究や応用研究などは生産等活動に直接供しているとは言い難いものが多く、その多くは対象外になると考えられますが、工業化研究に供する設備については、生産等活動用に直接供しているものもありますが、間接的な貢献しかしていないものもあります。該当するかどうかは個別にみていくことになります。

■「償却費として損金経理した金額」とは 適用要件の1つに「当期に取得等した生産等設備の当期末の取得価額が、当期に償却費として損金経理した金額を超えること」があります。この「当期に償却費として損金経理した金額」には、減損損失のように償却費として損金経理したものとして別表の4の加算調整を行うものが含まれるのかどうかが問題となります。この点については、有税の評価損や減損損失のように、償却費として損金経理した金額とみなされるものは、判定の償却費から除外されます(措通42の12の2-2)。

■圧縮記帳した資産の取扱い 圧縮記帳の適用を受けた生産等設備について、適用要件の判定上どのように取り扱うのかが問題となります。この点については、適用要件の判定における「取得価額」や「比較取得資産総額」は、圧縮記帳前の本来の取得価額によります(措通42の12の2-3)。

■共用資産の取扱い 1棟の建物に本店用と店舗用が共用される場合は、適用要件の判定上どのように取り扱うのかが問題となります。この点については、①共用資産のすべてを生産等設備とするか、②共用資産を合理的に区分して生産等設備の取得価額合計額や比較取得資産総額の計算をするか、いずれかを継続適用を条件として選択できるものとされています。 一見すると、①を選択適用した方が取得価額の金額が多くなるため、適用要件を満たす確率が高くなり、有利であるかのように見えますが、必ずしもそうではありません。①を選択した場合、当期に適用要件を満たす確率は高くなりますが、翌期においては比較取得資産総額が大きくなりますので、翌期に適用要件を満たす確率は低くなります。したがって、①を選択した結果、当期は適用できて翌期に適用できないよりは、②を選択して当期と翌期の両方とも適用できた方がトータルでは有利になるケースも出てきます。あるいは、翌期に多額の設備投資を予定している場合は、①を選択しても当期と翌期の両方とも適用できてトータルで有利になるケースもあり得ます。 企業の置かれた個々の状況に応じて、その有利不利を判断する必要があると考えられます。

※税務研究会HP・今月のキーワード ―2013年10月―

『平成25年度税制改正の内容が明らかに~投資の促進と雇用の拡大~』2013/02/05

~平成25年度税制改正大綱が公表される~

公認会計士 太田達也

■税制改正大綱が公表される!
本年1月24日に、自民党から「平成25年度税制改正大綱」が公表されました。法人税関係の改正案の内容をみると、設備投資の促進と雇用の拡大という2点に力点が置かれているようです。この2つの改正内容を整理すると、次のようになります。

■設備投資を促進するための特例税制
これは、国内の設備投資を促進する観点からの特例税制です。生産設備等を取得して、国内の事業の用に供する場合において、その生産設備等の期末時点の取得価額の合計額が一定額を超えるときに、特別償却または税額控除のいずれかを選択適用できるという改正案です。すなわち、青色申告書を提出する法人の平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度(設立事業年度を除く)において取得等した国内の事業の用に供する生産設備等で、その事業年度終了の日において有するものの取得価額の合計額が次の①および②の金額を超える場合において、その生産等設備を構成する資産のうち機械装置をその法人の国内にある事業の用に供したときは、その取得価額の30%の特別償却とその取得価額の3%の税額控除との選択適用ができるとされています。ただし、税額控除における控除税額は、当期の法人税額の20%を限度とします。
① その法人の有する減価償却資産につき当期の償却費として損金経理をした金額
② 前事業年度において取得等をした国内の事業の用に供する生産等設備の取得価額の合計額の110%相当額
「①と②の合計額を超える場合において」とされていますので、当期の投資額が前期の投資額に比べて一定の程度多く、それを国内にある事業の用に供することが適用を受けるために必要であると考えられます。当期に取得等した生産等設備の当期末の取得価額>当期に償却費として損金経理した金額+前期に取得等した生産等設備の取得価額×1.1 一定の程度設備投資を活発化した場合に税務メリットが得られる内容ですので、これによって国内の設備投資を促進しようというねらいであると考えられます。

■雇用の促進のための特例税制雇用を促進する観点から、給与の支給額が一定の増加をした場合に税額控除の適用を受けることができるとする内容です。すなわち、青色申告書を提出する法人が、平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者(法人の使用人のうち法人の有する国内の事業所に勤務する雇用者であり、役員および役員の特殊関係者は除かれます)に対して給与等を支給する場合において、その法人の「雇用者給与等支給増加額」の「基準雇用者給与等支給額」に対する割合が5%以上であるときは、その雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができることとされています。ただし、控除税額は、当期の法人税額の10%(中小企業者等については、20%)を限度とします。
ここで「雇用者給与等支給増加額」および「基準雇用者給与等支給額」のそれぞれの用語の意味は次のとおりです。
※雇用者給与等支給増加額
雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額

※基準雇用者給与等支給額
平成25 年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度(基準事業年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額

上記の「雇用者給与等支給額」とは、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。「「雇用者給与等支給増加額」の「基準雇用者給与等支給額」に対する割合が5%以上であるときは」と規定されていますので、適用を受けようとする事業年度の給与等支給額がその直前期(基準事業年度)の給与等支給額に比べて5%以上増加している場合に、原則として適用が受けられることになります。
なお、上記の特例を受けるためには、併せて次の①および②の要件を満たす必要がある点に注意する必要があります。 ① 雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと ② 平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないこと

■既存の税制の拡充既存の税制の拡充も提案されています。
第1に、試験研究費の税額控除制度について、税額控除の控除限度額を当期の法人税額の30%(現行20%)に引き上げるとされています。
第2に、エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却または特別控除(いわゆるグリーン投資減税)について、①即時償却の対象資産に熱電供給型動力発生装置(コージェネレーション設備)を追加し、適用期限を平成27年3月31日までとし、②対象資産に定置用蓄電設備等を追加するとともに、対象資産から補助金等の交付を受けて取得等したものを除外するなどの見直しを行うものとされています。
第3に、雇用促進税制について、税額控除限度額を増加雇用者数1人当たり40万円(現行20万円)に引き上げ、適用要件の判定の基礎となる雇用者の範囲について所要の措置を講ずるとされています。これについては、厚生労働省から、雇用者の数に高年齢継続被保険者を含めてほしいという平成25年度税制改正に対する要望書が提出されていました。65歳以上の従業員を継続雇用する場合も新規雇用と認める改正が行われる可能性がありますので、実際に今後国会に提出される法案をご確認していただければと思います。

※税務研究会HP・今月のキーワード ―2013年2月―

『復興特別税への実務対応』2013/01/25

~平成25年1月から開始される復興特別所得税の源泉徴収~

公認会計士 太田達也

■復興特別所得税の源泉徴収「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号)が公布され、平成25年1月1日から施行されます。いよいよ復興特別所得税の源泉徴収の実務が始まります。復興特別所得税は、所得税の源泉徴収義務者が所得税と併せて源泉徴収することとなるものとされています。また、所得税を源泉徴収することとされている支払については、復興特別所得税の源泉徴収の対象となります。

■所得税と併せて徴収復興特別所得税の源泉徴収は、所得税の源泉徴収に際して併せて行うため、次のように支払金額に対して合計税率を乗じて計算した金額を源泉徴収することになります。
支払金額 × 合計税率(%)(注) = 源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額 (注) 合計税率(%)=所得税率(%)×102.1%
上記の算式により計算された「源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額」に1円未満の端数が生じるときは、1円未満の端数金額を切り捨てます。あくまでも端数処理は、支払金額に合計税率を乗じて計算した「所得税および復興特別所得税の合計額」に対して行う点に留意する必要があります。また、源泉徴収した所得税と復興特別所得税は、その合計額を1枚の所得税徴収高計算書(納付書)により納付することになります。例えば講演料として100,000円を支払う場合、次のように「源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額」は、10,210円になります。 100,000円×10.21%=10,210円

■法人が源泉徴収された復興特別所得税の取扱い法人が受け取る利子、配当等に係る所得税の源泉徴収については、平成25年1月1日以後に支払を受けるべき利子、配当等に関しては、所得税のほかに復興特別所得税が併せて徴収されることになります。この源泉徴収された所得税および復興特別所得税は、法人の確定申告書において税額控除の対象になります。ここで注意しなければならないことは、源泉徴収された復興特別所得税は、復興特別法人税から税額控除されるという点です。すなわち、復興特別所得税の額を法人税の額から控除することはできません。したがって、復興特別法人税の確定申告書において、源泉徴収された復興特別所得税を税額控除することになります(復興特別法人税申告書の別表二「復興特別所得税額の控除に関する明細書」の添付が必要)。

■所得税と復興特別所得税の配分方法復興特別所得税は所得税と併せて源泉徴収されるので、控除を受けるべき金額の計算の基礎となる復興特別所得税の額は、源泉徴収された「所得税及び復興特別所得税の額」に2.1/102.1を乗じて計算した金額となります(復興財源確保法28条6項)。
控除を受けるべき金額の計算の基礎となる復興特別所得税の額= 源泉徴収された所得税および復興特別所得税の額 × 2.1/102.1 まず「源泉徴収税額 × 2.1/102.1」(算式①)で復興特別所得税の額を求め、次に「源泉徴収税額 - 復興特別所得税額」(算式②)で所得税額を算出します。算式①の段階で、求めた復興特別所得税額の1円未満の端数処理について50銭超は切上げ、50銭以下は切捨てという端数処理を行います。

■源泉徴収された復興特別所得税の還付を受ける場面課税事業年度(復興特別法人税が課される事業年度)以外の事業年度に課される復興特別所得税の額がある場合は、当該各事業年度は課税事業年度とみなされます(復興財源確保法45条3項、復興特別法人税令3条8項)。 ただし、その課税事業年度とみなされる事業年度の課税標準法人税額はないものとされるため(復興財源確保法47条4項)、復興特別法人税申告書を提出することにより、復興特別所得税の額の還付を受けることができます。また、基準法人税額がゼロで復興特別法人税の額がゼロの事業年度についても、源泉徴収された復興特別所得税があるときは、復興特別法人税申告書を提出することにより、復興特別所得税の額の還付を受けることができます。

※税務研究会HP・今月のキーワード ―2013年1月―

『信用保証協会の割引制度において「中小会計要領」の適用が可能に』2013/01/08

現行の信用保証協会における信用保証割引制度は以下のとおりです。

信用保証協会は、「中小企業の会計に関する指針」(以下「中小指針という」)の準拠を確認するチェックリストが提出された場合、信用保証料率の割引を行っております。 日本税理士会連合会が制定するチェックリストを利用する場合は、「『中小企業の会計に関する指針』の適用に関するチェックリスト」をご利用ください。 「『中小企業の会計に関する要領』の適用に関するチェックリスト」は、「中小指針」の準拠を確認するチェックリストには該当しませんので、ご注意ください。

すなわち、現行の割引制度を適用するためには、「指針」の提出が必要とされ、「要領」では認められていませんでした。しかしながら、この「中小指針」による保証料率割引は、平成25年3月末で終了し、これに代わって、平成25年4月から3年間、「中小会計要領」適用による保証料率の割引が開始されます。割引率は引き続き0.1%です。 細目はこれからですが、今までと同様に税理士等の署名のあるチェックリスト等の提出が求められるでしょうし、非違事項における結果責任に対するペナルティもそのまま引き継がれることになるでしょう。

『実態貸借対照表における租税債務の取扱い』2012/12/17

~「残余財産がないと見込まれるとき」の判定との関係~

公認会計士 太田達也

■残余財産がないと見込まれるときの期限切れ欠損金の損金算入平成22年度税制改正により清算所得が廃止され、財産法ではなく通常の損益法により所得金額の計算を行うものとされたことは周知のとおりです。残余財産がないと見込まれるときは、清算中に終了する事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額は、青色欠損金だけでなく、「期限経過欠損金」も損金算入できるものとされました(法法59条3項)。「残余財産がないと見込まれる」に該当するかどうかの判定は、法人の清算中に終了する各事業年度終了の時の現況によります(法基通12-3-7)。

■実態貸借対照表の作成清算中に終了する各事業年度終了の時において残余財産がないと見込まれることを説明する書類として、一般には実態貸借対照表を用います。実態貸借対照表において、純資産の額がマイナス(またはちょうどゼロ)であるときは、残余財産がないと見込まれることに該当するため、期限切れ欠損金を損金算入することが認められます。

■実態貸借対照表における租税債務の取扱い先日、国税庁から『法人が解散した場合の設立当初からの欠損金額の損金算入制度(法法59条③)における「残余財産がないと見込まれるとき」の判定について』という標題の質疑応答事例が公表されました。この取扱いによれば、実態貸借対照表において租税債務(未払法人税等)を含めて残余財産がないと見込まれるかどうかを判定して問題ないものとされています。例えば、解散日(X1年8月31日)現在の貸借対照表が次のとおり債務超過であったとします。

貸借対照表(X1年8月31日)
資産 20,000 負 債 100,000
純資産 △80,000

解散後のX1年10月31日において土地(帳簿価額10,000)を譲渡し、譲渡益が120,000発生したものとします(譲渡対価の額は130,000)。そのため、土地譲渡後の貸借対照表が次のとおり資産超過になったものとします。

貸借対照表(X1年10月31日)
資産 140,000 負 債 100,000
純資産 40,000

その後X1年12月31日に残余財産が確定したことから、X1年9月1日からX1年12月31日までの事業年度(=最後事業年度)における所得金額の計算をしたところ、法人税等の額が48,000発生するため、純資産の部の額がマイナス8,000となったものとします。

貸借対照表(X1年12月31日)
資産 140,000 負 債 148,000 (内未払法人税等48,000)
純資産 △8,000

先の質疑応答事例によれば、この適用年度について残余財産がないと見込まれるときに該当するかどうかは、上記実態貸借対照表において未払法人税等を含めたところで判定して差し支えないものとされましたので、期限切れ欠損金の損金算入規定(法法59条3項)を適用することが認められます。従来から見解が分かれていた論点について、明確な取扱いが示された点に重要な意義があると考えられます。

※税務研究会HP・―2012年12月―

『医療機関が診療機器等を購入した際の消費税について』2012/11/06

~悲願のゼロ税率 ~
1.野田首相が驚異の粘り腰を見せて(実は財務省の言いなりになって)、消費税が2014年に8%、15年には10%まで引き上げられることが決まりました。診療報酬は基本的に非課税扱いですから患者の負担が増えることはありません。しかし医療機関は医薬品購入や設備投資などに課税され、診療報酬に転嫁できない消費税分が「損税」となって経営を圧迫すると主張します。増税によりこの「損税」が拡大します。ですから、日本医師会(日医)などからは「損税をなくすゼロ税率に」との声が上がっています。

2.健康保険が適用される治療については「公定価格」である診療報酬が定められていて非課税とされています。一方で医療機関が仕入れる薬剤、診療機器の購入費などは消費税が課せられるため、医療機関側の持ち出しとなり「損税」と呼ばれています。 ただし、全ての治療で「損税」が発生するわけではなくて、診察だけで済む場合は、資材購入を伴わないので損税はそう発生しません。一方、高額の機器を使ったり治療のための資材が多数必要となる手術などの処置が多い医療機関は「損税」の割合が増えます。また、病院建物を新築する際には1億円を超える「損税」が発生する可能性があります。

3.ところで、今回の消費増税率引き上げに関連して、一定の基準を満たす「高額の投資」については、一律の診療報酬引き上げとは別に、個別に診療報酬を上乗せるとされています。(消費税法の一部を改正する等の法律7条1号ト)

4. だが日医は損税対策としての診療報酬引き上げには否定的です。1997年の消費税率5%への改定時に診療報酬は引き上げられましたが、対象がほんの一部の項目だったために「かえって医療機関による不公平感が出てしまった」結果となりました。 日医などが損税対策として求めているのは、医療機関が仕入れる薬剤や購入する診療機材などは非課税にする「ゼロ税率」です。日医は「仮に増税分を転嫁して診療報酬を引き上げてしまうと、患者負担が増える。ゼロ税率なら、患者負担を増やすことなく、医療機関の損税をなくすることができる」と説明しています。

5.私見ですが、これだけでは不完全ですから、現行税制の輸出免税と同様な制度にまで踏み込むべきかと思います。例えば、病院を新築した場合、原則として、課税(自由診療)、非課税売上(社保診療)に共通する課税仕入を、がめつい財務省がおいそれとゼロ税率と認めるでしょうか。

6.ところで、皆さんは下記の裁判をご存知でしょうか。

『尼崎中央病院など兵庫県協会の4病院は2010年 9月、消費税は憲法の平等原則や財産権などの侵害にあたるとし、国に払いずみの消費税の一部(各病院1000万円)を払えとの訴訟を起こした。その一審判決が今年10月16日に予定されている。
○○さんによると、公判で国は「 3%導入時の1989年に12項目、 5%に上げた1997年に24項目の診療報酬で消費税分を補填した」「多少の負担は厚生労働省の裁量権の範囲」などと説明している。しかし、病院ごとで違う消費税をわずかな項目で解消できるわけはなく、現に大学病院や大病院では年に億円単位の損金が出ており、経営を圧迫している、との調査がいくつも出ている。
外国でも非課税の国はあるが、ほとんどが公立病院だったり、特別な制度で対応したりしている。 ○○さんは、同じく消費税が取れない輸出業者には払い戻しがあるように、国は医療機関にも払い戻せる制度 (仕入税額控除) を作るべきで、判決のいかんにかかわらず医療機関が団結して要求していくように訴えた。』

既に結審されているはずですから、その公開が待たれます。

『金融円滑化法の期限終了に伴い注目される企業再生手法』2012/11/05

~増減資、会社分割・事業譲渡、DES…etc.~

公認会計士 太田達也          

■金融円滑化法の適用期限が近づく!金融円滑化法の適用期限が来年3月31日に切れる見込みです。事業の継続を断念せざるを得ない企業が出る一方で、事業の再生を図っていこうとする事案も増加することが予想されます。

■企業再生の手法企業再生の手法には様々なものがあります。増資と減資を組み合わせる、いわゆる増減資は、減資に際して自己株式の取得プラス自己株式の消却を行うことにより、既存の株主の権利を消滅させます。会社法における株式消却は、自己株式の消却のみと整理されていますので、いったん自己株式の取得を行い、その自己株式を消却する方法を用います。実質債務超過会社の場合、自己株式の取得を無償取得で行う場合もあります。同時に行う増資により新たなスポンサーが株主となり、以後会社の再建を図っていきます。法人税法上の資本金等の額が増加することにより法人住民税の均等割負担が増える点はありますが、財務内容が大幅に改善することはいうまでもありません。また、会社分割により、継続を図る事業のみを分割し別会社化し、残った分割会社を特別清算などにより整理する、いわゆる第二会社方式は広く知られているところです。このスキームについては、次項で詳しく解説します。さらに、デット・エクイテイ・スワップは、債権者の持つ金銭債権を現物出資することにより、債務者企業の債務を消滅させ資本の増加を行う手法であり、財務内容の改善効果も得られ、企業の再建場面でよく用いられます。

■会社分割・事業譲渡方式のメリット会社分割や事業譲渡により、継続を図る事業を移転し、残った法人を特別清算などで整理するスキームは、従来からよく用いられています。この手法については、次のようないくつかのメリットを指摘することができます。第1に、再生企業をスポンサーが合併したり、株式の買取りをしたりすると、簿外債務を承継するリスクを伴うため、スポンサーは避ける傾向があります。会社分割や事業譲渡であれば簿外債務の承継リスクがないという点で、スポンサーの同意を得られやすいという点があります。第2に、金融機関にとって、安易な債権放棄を行うと、貸倒損失の損金算入の可否の問題も生じ得るし、また、他の債務者企業からの債権放棄の要求が生じることもあり、法人格を残したままの債権放棄を行いにくいという事情があります。この点、裁判所の監督下で行われる特別清算の手続により、法人格が消滅するし、また、債権が法的に切り捨てられ、貸倒損失の損金算入メリットが得られる場合が多いという点があります。第3に、会社分割や事業譲渡を利用することにより、処分価額(スクラップ価値)ではなく継続価値(事業の継続を前提とした価値)による回収が期待できる面があります。分社型分割を行い、残った分割法人が分割承継法人株式を取得し、それを債権者に対する弁済原資にするケースもあります。事業譲渡の場合は、取得した譲渡代金を債権者への弁済に充てるという方法をとります。

※税務研究会HP・今月のキーワード ―2012年11月―

『250%定率法適用資産について200%定率法に変更する場合の留意点』2012/10/19

~税制上の経過措置の活用と留意事項~                                                                                

公認会計士 太田達也

■250%定率法から200%定率法への見直し 平成23年12月2日付公布の改正税法により、250%定率法が200%定率法に見直されることになりました。原則として、平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産について定率法を採用する場合に、200%定率法が適用されます。

■250%定率法適用資産について200%定率法に変更する場合 250%定率法資産と200%定率法資産が併存する管理上の煩わしさから、すでに250%定率法を適用している減価償却資産についても200%定率法に変更したいというニーズがあるようです。平成24年4月1日以後に最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることを条件として、250%定率法を適用していた既存の固定資産について、200%定率法に変更した場合においても当初の耐用年数で償却を終了することができる経過措置が設けられています。 250%定率法を適用していた既存の固定資産について、200%定率法に変更した場合、取得時期は平成19年4月1日以後、かつ、平成24年3月31日以前であることから償却限度額は250%定率法で計算された額となります。したがって200%定率法に途中で変更すると、本来であれば償却不足額が発生することになるため、法定耐用年数内に償却が終了しないことになります。ところが、この経過措置を適用した場合(届出が要件)、法定耐用年数で償却を終了させることができます。

■経過措置を適用したときの具体的な処理は? この経過措置を適用した場合、取得価額を変更事業年度(注1)の期首簿価とし、耐用年数を「法定耐用年数-耐用年数省令附則別表(経過年数表)で求めた経過年数」とみなして、200%定率法で償却限度額の計算を行うことになります。経過年数表上、法定耐用年数と未償却割合(変更事業年度の期首簿価/取得価額)の2つの要素によって経過年数が決まる仕組みになっています。変更事業年度の期首簿価を取得価額とみなし、「法定耐用年数-耐用年数省令附則の経過年数表で求めた経過年数」を耐用年数とみなして200%定率法を適用するため、残存年数内に償却が終了します。(注1)①平成24年4月1日よりも前に開始し、平成24年4月1日以後に終了する事業年度、②平成24年4月1日以後最初に開始する事業年度、以上のいずれかを選択できます。届出書の記載事項とされています。

■200%定率法に変更後に資本的支出があった場合の取扱いは? 250%定率法適用資産について、経過措置を適用して200%定率法に変更した場合、耐用年数が短縮されます(法定耐用年数 → 「法定耐用年数-経過年数」)。200%定率法に変更した後に、当該資産に資本的支出が行われた場合に、この資本的支出の減価償却について適用される耐用年数の取扱いが問題となります。これについては、当該資産の耐用年数自体がより短いものに変換されたものとして取り扱われるため、当該資産に対する資本的支出についても、その返還後の短い耐用年数が適用されることになります。その点において、有利な取扱いであるとみることもできます。

■企業会計上の取扱いに要注意 監査法人の監査を受けている法人や連結決算の対象になっている連結子会社等は、企業会計上の取扱いに注意が必要です。 250%定率法適用資産について途中から200%定率法に変更する場合は、企業会計上、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更には該当しない点に留意が必要です。この経過措置を適用する場合であっても、企業の選択により決定できるものであるため、自発的な会計方針の変更に該当することになります。税制改正のみを理由とした変更は認められません。変更理由の合理性と適時性を考慮する必要があります。


※税務研究会HP・今月のキーワード ―2012年9月―

『青色欠損金の控除限度額の制限に係る留意点』2012/08/06

~期限経過欠損金の損金算入との関係にも要注意~
公認会計士 太田達也

■青色欠損金の繰越控除法人税法上の課税所得の計算は、事業年度ごとに行うものとされています。したがって、ある事業年度で発生した欠損金を他の事業年度の所得から控除することは、原則としてできません。しかし、青色申告法人については、欠損金を繰越控除することが認められています。すなわち、ある事業年度で発生した欠損金を翌事業年度以後の事業年度の所得から控除することができるものとされています。青色申告法人における欠損金の繰越期間は、平成23年12月2日付公布の改正税法により、平成20年4月1日前に終了した事業年度で発生した欠損金については 7年間、平成20年4月1日以後に終了した事業年度で発生した欠損金については 9年間とされました。この場合、繰越欠損金は、古い年度のものから順次使用します(法基通12-1-1)。
■控除限度額の制限平成23年12月2日付公布の改正税法により、青色欠損金の控除限度額が制限されることになりました。すなわち、青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、その繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額の100%ではなく80%相当額とするものとされました(法法57条1項)。平成24年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます(改正法附則10条)。ただし、次の法人を除きます。すなわち、中小法人等などの下記①から③に掲げる法人等は、従来どおり繰越控除前の所得の金額の100%相当額の控除が認められるとされています。 ① 普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの(資本金の額が5億円以上の法人による完全支配関係がある法人等を除く)、または資本もしくは出資を有しないもの(相互会社を除く) ② 公益法人等または協同組合等 ③ 人格のない社団等
■清算法人における取扱い清算法人について上記の制限規定は適用されます。したがって、中小法人等でない限り、青色欠損金の控除限度額は繰越控除前の所得の金額の80%相当額に制限されます。ただし、繰越控除前の所得の金額の80%相当額について青色欠損金の控除を行い、残りの20%相当額について期限経過欠損金を有するのであればそれを控除に充てることはできます。期限経過欠損金が使えない場合(期限経過欠損金がない、残余財産がないと見込まれることに該当しない場合など)には課税が生じることになります。その場合は、事前に減資を行い資本金の額を1億円以下にするなどの対策も検討する必要があると思われます。
■期限経過欠損金の損金算入との関係別表7(1)の新様式が公表されています。また、期限経過欠損金の損金算入を行う場合にも、通常清算の場合(法法59条3項を適用する場合)には、新様式である別表7(3)を用いることになります。中小法人等を除いて、青色欠損金の控除限度額が繰越控除前の所得の金額の80%に制限されることにより、青色欠損金を使い残した状態で期限経過欠損金を使う場面が生じ得ますが、その場合は青色欠損金を使い残した状態で使った期限経過欠損金の金額だけ翌期以降に繰り越す青色欠損金を減額する調整を行うことになります。新様式の別表7(3)の13欄から15欄はその調整を行うために設けられている記載欄です。

※税務研究会HP・今月のキーワード―2012年8月―

『減価償却資産の耐用年数等に関する省令の改正~経過措置について~』2012/02/09

平成23年税制改正に対応して改正された「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」が1月25日に公布されました。

公布の内容は1月25日の官報号外第16号の88ページ以降に記載されています。現時点(02/09)であればインターネット版『官報』で確認することが可能です。ただし、無料で閲覧可能な期間は初出から30日間のみとなっていますのでご注意下さい。

http://kanpou.npb.go.jp/

別表の改正については、以下のとおりとなっています。

①別表第八・・・定額法の償却率
②別表第九・・・250%定率法の償却率・改定償却率・保証率
③別表第十・・・200%定率法の償却率・改定償却率・保証率

この改正「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」ではもう一つ重要な点が明らかにされています。

平成23年税制改正では、250%定率法適用の既存資産について、税務署に届出すれば200%定率法の償却率による償却でも、当初の耐用年数で終了できるという経過措置が設けられており(改正法令附則3③)、かつ、その場合の耐用年数等の算出方法が明らかにされています。(改正耐用年数省令附)

新耐用年数=法定耐用年数-経過耐用年数

※経過耐用年数は、残存簿価÷取得原価で未償却割合を求め、附則別表の経過年数表(附則第二項関係)から未償却割合に対応した経過年数を求めます。

例えば、経過年数表の一部を抜粋してみると、法定耐用年数が15年の資産について上記算式で計算された未償却割合が0.480と計算されたとしますと経過年数が5年となります(読者の皆様は必ずご自分の目で経過年数表をご覧になってご確認下さい)ので、新耐用年数は10年となります。そして、この経過措置を適用する場合は、残存簿価を取得価額とすることとされています(改正耐用年数省令附則③)ので、残存簿価に耐用年数10年の200%定率法の償却率0.200(別表第十より)を適用して償却を行うことになります。

『繰越欠損金の改正に要注意!』2012/01/12

~平成23年度税制改正により不利な結果になることも?~

               公認会計士 太田達也

■繰越欠損金の控除とは?
法人税法上、ある事業年度で欠損金(=所得がマイナス)が生じても、その欠損金は7年間(今回の改正により9年に延長されますが、これについては後で解説します)にわたって繰越が認められており、翌事業年度以後の7年間の所得から差し引くことができます。将来の税金の減額効果を持っているわけです。また、欠損金は、古く発生したものから使用しなければなりませんが、繰越期間を経過したものについては期限切れということで使えないことになります。
例えば平成23年3月期に発生した欠損金は、平成24年3月期から平成30年3月期までの7年間に生じる所得の金額から控除できます。平成23年3月期に600万円の欠損金が発生したものとします(それよりも前の繰越欠損金は残っていないものとします)。平成24年3月期の所得が200万円、平成25年3月期の所得が450万円発生したものとしますと、平成24年3月期の所得から200万円、平成25年3月期の所得から残りの400万円を控除することになります。その結果、平成24年3月期の課税所得はゼロ、平成25年3月期の課税所得は50万円になります。

■繰越欠損金の控除限度額の引下げ
平成23年11月30日に成立し、同年12月2日に公布された改正税法によると、繰越欠損金の控除限度額は、所得の100%ではなく、所得の80%を限度とするものとされました。適用時期は、平成24年4月1日以後に開始する事業年度からです。ただし、次の法人を除くとされていますので、中小法人等などの下記①から③に掲げる法人等は、従来どおり(所得の100%まで控除できる)となります。

①普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの(資本金の額が5億円以上の法人による完全支配関係がある法人等を除く)、または資本もしくは出資を有しないもの(相互会社を除く)
②公益法人等または協同組合等
③人格のない社団等

この改正によって、上記の法人を除く法人については、各事業年度において所得の80%までしか控除できなくなりますので、繰越期間を経過してしまう確率が高くなると考えられます。また、改正前であれば繰越欠損金の控除により課税所得がゼロになるケースでも、改正後は課税所得が発生することになります。明らかに不利な影響を及ぼす改正ということになります。
先の例で説明しますと、平成24年3月期はまだ適用時期ではないため200万円まるまる控除できますが、平成25年3月期については所得450万円×80%=360万円までしか差し引けず、平成25年3月期の課税所得は90万円(450万円-360万円)発生します。また、繰越欠損金の残額40万円を平成26年3月期以降に繰り越すことになります。

■繰越期間の延長
今回の改正では、同時に繰越欠損金の繰越期間が7年から9年に延長されることになりました。適用時期ですが、平成20年4月1日以後に終了する事業年度において生じた欠損金について適用されます。例えば平成23年3月期に発生した欠損金は、平成24年3月期から平成32年3月期までの9年間に生じる所得の金額から控除できます。
改正前では、繰越期間7年内で所得から控除できないと、期限切れで切り捨てられてしまいますが、改正後は9年まで控除できることになります。有利な影響をもたらす改正といえます。こちらについては、中小法人等も対象ですので、中小法人にとってはプラスの改正だけが適用されることになります。この改正に伴い、その欠損金が生じた事業年度の帳簿書類の保存が適用要件とされている点に注意が必要です。

※税務研究会HP・今月のキーワード ―2012年1月―



「解散時の利益積立金額がマイナスのときの取扱い」2010/10/08

~国税不服審判所の裁決事例の趣旨と影響~

公認会計士 太田達也

■平成22年9月30日以前の解散について適用される課税方法(財産法)
平成22年9月30日以前の解散については、平成22年度税制改正前の旧法が適用され、財産法に基づく所得計算が適用されます。すなわち、残余財産確定時の残余財産の価額から、解散時の資本金等の額と(解散時の)利益積立金額の合計額を控除した額を清算所得として課税対象とします(旧法人税法93条1項)。
なお、残余財産の価額および解散時の利益積立金額のそれぞれについて、一定の調整項目が置かれており(旧法人税法93条から96条)、別表20(3)の明細書において調整を記載することになります。
■解散時の利益積立金額がマイナスの場合は!?
残余財産の価額から控除すべき金額は、「解散時の資本金等の額と利益積立金額の合計額」です。「解散時の資本金等の額と利益積立金額の合計額」とは、解散時の資本金等の額がプラスで、解散時の利益積立金額がマイナスであるときは、両者を相殺した金額であると解されます。
ただし、「残余財産の価額から控除」と規定されており、「残余財産の価額から減算」とは規定されていませんので、「解散時の資本金等の額と利益積立金額の合計額」がマイナスとなるときは、ゼロとして取り扱います。「減算」と規定されている場合は、マイナスをマイナス(=プラス)することになりますが、「控除」と規定されている場合は、マイナスをマイナスしません。
解散時の資本金等の額はプラスであるケースがほとんどですので、解散時の利益積立金額がマイナスであるときは、(プラスの)資本金等の額を上限としてマイナスすると表現すれば、結果的には正しいことになります。
計算例を示すと、次のようになります。
残余財産の価額 -(解散時の資本金等の額 + 利益積立金額)= 260

300            100             △60


残余財産の価額 -(解散時の資本金等の額 + 利益積立金額)= 300

300            100             △200

■裁決事例の意味するところは?
旧法人税法93条1項は、残余財産確定時の残余財産の価額(=残余財産確定時の時価純資産額)から解散時の資本金等の額と利益積立金額の合計額(=解散時の簿価純資産額)を控除した差額がプラスであるときは、その額は清算期間中に実現した含み益として課税するという考え方に基づいています。
ここで重要なポイントは、解散時の簿価純資産額を基準として、それに対して残余財産確定時の時価純資産額が大きいのかどうかをみるという点です。



解散事業年度までの課税関係は終了(完結)していますので、あくまでも解散時の簿価純資産額を起点としてとらえます。それに対して、残余財産確定時の時価純資産額が増加していれば、清算期間中に実現した含み益であり、課税対象になるという考え方になります。会社設立時の簿価純資産額である資本金等の額を基準にしているわけではないということになります。

(参考文献)
太田達也「解散・清算の実務」完全解説(税務研究会出版局、2010年8月刊)、P133

※税務研究会HP 今月のキーワード ―2010年10月―

「リース税制 まとめ①」2008/07/17

~リース税制と減価償却等及び消費税等との関連について~

-ma-

今年の4月1日以降のリース取引(所有権移転外リース取引)に係る税制改正については、チェックポイントが様々な情報誌から公開されておりますので、皆さんも大方の内容について把握されていることと思います。以下、私なりに整理した事項を列挙してみますね。

①圧縮記帳との関連                         対象外
②少額減価償却資産等との関連
(イ)少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度(令133) 対象外
(ロ)一括償却資産の損金算入制度(令133の2)      対象外
③少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例との関連
上記②(イ)と違い1個当り30万円未満の場合の一時損金算入規定
(措法67の5)                            対 象!
④特別償却等との関連
(イ)各種特別償却制度                     対象外
(ロ)従来認められていたリース税額控除           除 外
(ハ)新たに取得等した場合の特別税額控除         対 象!
⑤賃借料処理した場合の留意点
(イ)会計処理  未経過リース料を個別注記することが要件となります。
(ロ)消費税等との関連  引渡し等を受けた日の属する課税期間において仕入れに係る消費税額の控除の適用があります。今までのように支払う都度税込処理をした場合には次年度以降の課税仕入れは全額否認されますのでご注意下さい。(改正消基通11-3-2(注))

⑥私見 以下、私の個人的な意見なので、参考程度にお考え下さい。

(イ)リース資産として資産計上するも、従前通りに賃借料として費用計上するも、それは各事業者が任意に選択できるわけですが、私は関与先様にはリース資産として資産計上をする方をお勧めしようかと思っています。それは賃借料とした場合の上記⑤の煩わしさを避けるためと、同時に上記③及び④(ハ)の規定を積極的に活用するためです。
(ロ)法人税と消費税との同時調査が当り前ですから、リース取引に関連して具備しておくべき疎明資料としてリース申込書の裏表(大抵裏面にリース約款がありますよね)と、支払明細書の整理保存が必要となります。所有権移転外リース取引であることの証明と課税仕入れとするための書類保存規定の充足です。
考えてみると今までと同じですね。