経営改善(会計参与の活用)

会見参与とは?

会計専門家として、会社の役員に就任し業績向上の為の支援をしています。
どのような役割を果たしているか、ご紹介いたします。

会計参与行動日誌 第1回 『〝業務の適正を確保する体制〟が重要』

 企業の経営者は、目先の利益をだすことのみに神経を集中していた時代から、健全な経営を行っていないと、簡単に足元をすくわれる時代となりました。そこで、日本の中小企業が世界的な競争のなかで継続的に発展していくためにも、内部統制の重要性が認識されるようになったわけです。
 会計参与の仕事は、取締役と共同して計算関係書類を作成することが任務ですが、その作成にあたり、企業の活動内容を充分に理解した上で業務にあたります。特に中小企業の現場では、当該業務が不透明であり、「内部統制」や「法令遵守」を前提とした事業活動を行っているとは言えません。
 こうしたなかで、企業統治の重要な柱としての内部統制やコンプライアンス(法令遵守)経営に不足している事項を補う形で経営への参画を経営者から求められ始めています。
 「法令遵守」は、実際は「法令」の「遵守」に限られたものではなく、企業倫理や社会的要請、健全な慣行などを踏まえた活動が含まれ、あらかじめ決められたルールに従うだけでなく、より積極的、建設的な取組みが求められます。
 具体的に、不祥事を未然に防止するための社内体制はどうあるべきか、どのように権限の委譲するべきか、あるいは問題が起きたときの対処など、心構えから始まって、具体的な実践方法、取組み方、仕組みづくりが関係してきます。
 「内部統制」という切り口からみまして、まさに会計参与は、経営者と「内部統制」の機能していない部分を取り出し業績にどのような影響を与えているのかを洗い出し、また、赤字の要因やリスクが包含されているか否かを検討した上で是正の機会を作ることを期待されているのです。
 そのなかで特に重要なのは「業務の適正を確保するための体制」です。「業務の適正」とは、法律に準拠のみならず公正や企業倫理を含んだ体制を構築しているかどうかです。また、「確保するための体制」が求められており、単に守ることからより積極的な組織的な取り組みを求められています。これらを経営者と作り上げていく機会を創出することが会計参与に対する期待でもあり、取締役と共同して計算関係書類を作成することができるのです。

会計参与行動日誌 第2回 『健全経営をサポートするのが役割』

 会計参与の仕事は、取締役と共同して計算関係書類を作成することが任務ですが、その作成にあたり、企業の活動内容を十分に理解した上で業務に当たります。
企業の健全な経営を行うにあたり内部統制が求められています。内部統制とは、基本的に、
(1)業務の有効性及び効率性
(2)財務報告の信頼性
(3)事業活動に関わる法令等の遵守並びに(4)資産の保全

の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいいますが、中小企業の現場では、内部統制における四つの目的が達成されることが極めて困難なため、会計参与にこれらの目的達成のための一部を補完する機能が求められています。
 この4つの目的は、内部統制をしても絶対的ではありませんが、会計参与にその一部の補完を求めることにより、中小企業の現場ではその目的が達成されないリスクを一定の水準以下に抑えることができるという効果が期待されます。
また、経営環境や組織は常に変化していくことから、その変化に対応しながら内部統制を機能させていく必要があるため、継続的な見直しが必要とされます。よって、内部統制は仕組みが完成したら終わりではなくて、経営が続く以上は継続的な見直しが不可欠です。この継続的な見直しの機会を行う者として会計参与に期待が込められています。
 企業のなかには、「内部統制に関する作業を簡単に済ますために、雛形やサンプルなど具体的なものはないのか?」といった質問を受けますが、企業を取り巻く環境は異なりますし、事業の特性、規模、従業員の風土などさまざまな要因が全て異なることから、一律の形式で取り組むことは適切でないこととなります。
 ところで、内部統制を構築するにあたり、
(1)業務プロセスを洗い出すための業務フロー体系図
(2)業務中のリスクとこれに対する低減策を一覧表にしたリスク・コントロール・マトリックス
(3)業務の詳細な内容を文書で明らかにする業務記録簿

などの三つの実施基準があります。
 重要性の判断を行い、外部に丸投げするのではなく、経営者自らが内部統制のあり方を直視して、自分たちの会社はどうすべきなのかを真剣に取り組んでいく必要があるのです。
 中小企業の現場では、これらを作成することが極めて困難であることが予想されますので、その業務を補完し継続した健全経営を行えるようにサポートする役割が求められるのです。

会計参与行動日誌 第3回 『業務プロセス見直しへフローチャート作成是正事項が明らかに』

 内部統制を構築するにあたっては、(1)業務プロセスを洗い出すための業務フローチャートの作成が必要となります。中小企業の現場では、これらを作成することが極めて困難でありますから、その業務を補完し継続した健全経営を行えるようにサポートする役割が会計参与に求められています。
 業務フローチャートは、業務プロセスを体系化することで誰にでも現状を把握することができるのです。業務プロセスと一体となって遂行される内部統制の現状を把握する意味でも、是正後のあるべき姿を検討するためにも、業務フローを明らかにすることは有効な手段となります。
 業務フローチャートの作成にあたっては、次の6つの手順で確認していくこととなります。
(1)業務をいくつかのプロセスに区分します。区分のよりどころとして財務諸表を基準にします。特に、債権債務のフロー「売上→請求→回収→残高」「仕入→請求→支払→残高」と物の流れ「受入→出荷→在庫」の視点は特に重要な業務フローとして位置づけられます。
(2)ヒアリングにあたって、原始記録・伝票・帳票類の閲覧を通じて、現状のフローチャートを作成します。
(3)是正前のフローチャートのレビューを行いながら、考えられるリスクの洗い出しを行います。
(4)現状の業務に照らしてリスクが存在する場合において、防止する手段を考えます。
(5)続いて不足している業務プロセスを補完していきます。
(6)実際に運用を行ったうえで、業務プロセスに組み込まれ一体となって業務が遂行されているかどうかを評価します。

 業務フローチャートの作成をすることは、是正前と是正後の仕組みを評価するときに有効な手段となることが分かります。ところで、業務フローチャートの作成にも限界はあります。情報の補足・充足に業務記述書を利用することとなります。業務手続や手順の一つ一つを細かく文書で記述することによりフローチャートでは表現できない箇所について補足・充足をすることとなります。
 ここに会計参与の業務の範囲として、取締役と共同して計算関係書類を作成することが任務ですが、その作成にあたり、業務プロセスを十分に理解した上で職務に当たることで財務データに影響を及ぼす原因が見えてくることがわかるのです。
また、会計監査人の役割である「批判的機能」とは異なり、会計参与に求められる「指導的機能」を果たすのに有効です。

会計参与行動日誌 第4回 『「批判的な機能」より「指導的機能」が求められる』

 会計参与の役割としては、会計監査人の役割である「批判的機能」とは異なり、「指導的機能」を果たすことが求められていますので、会計参与の業務は、取締役と共同して計算関係書類を作成することが任務ですが、その作成にあたり、業務プロセスの中から財務データに影響を及ぼす原因の発見に努める必要があります。そこには、会計監査人の役割である「批判的機能」とは異なり、会計参与には「指導的機能」を果たす役割が求められています。
「批判的」とは、組織とは独立な立場からみたものであり、「指導的」とは、組織の一部からみたものです。会計参与は、会社の組織内の立場に立って行う活動であり、「批判」のみならず「提案・助言・指導」を含む活動を行うことが業務の範囲となります。
 ところで、業務プロセスのうち中心的な業務である販売業務のプロセスの視点でみますと、
(1)受注→(2)出荷依頼→(3)出荷→(4)検収→(5)請求書の発行→(6)会計処理→(7)代金回収→(8)未回収の把握
という順序で行われることとなります。
 このなかで、誤りや不正が起こりえる可能性として、例えば、(3)出荷~(4)検収のプロセスにおいて、出荷数量が依頼された数量と異なる場合があります。仮に依頼された数量より多く出荷された場合には、返品されることとなりますが、この返品された商品は売上返品として処理されるとともにその商品は再出荷できない場合には商品ロスとして取り扱われます。そして、この商品は充分使用に耐えうるので横流し品対象として個人的に販売される可能性が起こりえます。
 この場合、(1)の受注数量と(3)の出荷数量が異なることから問題が発生します。この場合には(3)の出荷フプロセスの段階で、(1)の受注簿の数量(A)と(3)出荷における商品の実在数量(B)と発行伝票の数量(C)に誤りがあるので、当該誤りが起こる可能性を前提として、必ず担当者以外の者が(A)(B)(C)の記録の照合を行うなどの対応が必要となります。
 また、商品返品時の業務プロセスの一部が不完全なために起こりえることもあります。返品された商品の伝票が発行されず口頭にて行われているとか、伝票が発行されたとしても、その商品自体が商品ロスとなるのか。あるいは、再度出荷できる商品の在庫として取り扱うことになるのか。これらが不明瞭なため、時には、商品が横流し(横領)される場合も考えられます。
 よって、商品を横流しされないように業務プロセスの全体を充分に確認した上でその原因を洗い出して、その一部の見直しを図るように指導する必要がでてきます。

会計参与行動日誌 第5回 『まずは社長の〝相談相手〟に』

 当初、来期の業績について相当の赤字が見込まれていました食品の小売り、卸売りのA社からの依頼で、同社のグループ2社の会計参与に就任しました。
 社長は、関与当時から経営について直接税理士と話したいとの希望を持っているなかで、会計参与という制度が、取締役会に税理士が会計参与として同席してくれることを知りました。そこで、社長は税理士に就任を依頼したのです。最新の試算表をもとに、財務状況を説明した上で経営の話をしたり時には人生について語るなど、3ヶ月に1回3時間程度、社長と話すことになりました。
 会社の過去の業績は順調でしたが、社長は「いつ業績が悪化するか分からない状況である」という危機感を感じているようでした。経営の相談相手が少ない社長にとって「いまやっていることは、これで正しいのか?」という確認をしたかったようです。
 相談を繰り返すなかで、会計参与として取締役と共同で計算関係書類を作成するに至るまでのプロセスのなかで、たとえば、食品業界での粗利益率の低下の主な原因である「賞味期限を過ぎたロス」「人的能力によるロス」「不正によるロス」などのさまざまな問題点が浮かび上がってきました。経営陣といっしょになり問題点の洗い出しを行い課題を設定した上で、各取締役に対して、社長と会計参与が経営陣に指示を与えることになりました。
 そして、3ヶ月に1回行われていた取締役会の回数が頻繁になり、会計参与の出席する回数も増えていきました。経営陣と綿密な打合せを繰り返し、数ケ月の取り組みで更なる黒字決算の継続実現も視野に入ってきたのです。
 外部にいる顧問税理士と異なり、会計参与は会社の内部機関なので意思決定の参考になる指導的な役割を含めた助言があり、社長から喜ばれています。
 ここに、会計参与に就任するに当たってこのような関係を築くためには、会社と会計事務所との「関与の度合い」がどのような状況であったのかが重要になりました。
まずは、会社側から就任の依頼があるということです。会社側から就任依頼がある場合の理由としては、「金融機関からの評価を高めたい」ということが一番でしょう。更には、取締役を含めた幹部社員の「教育の機会」あるいは、経営者に対する「指導の機会」としての側面があることが分かります。
 社長は、企業経営という側面からみますと極端に相談相手が少なくなるので孤独感を味わっています。その一助として会計参与が期待されています。

会計参与行動日誌 第6回 『「業務量」と「責任の度合い」を参考にした報酬』

 会計参与に就任にあたり重要なのは、「業務の範囲はどこまでか」ということと、「報酬金額の妥当性」が挙げられます。会社側において、導入後の効果が分からないのに値段(報酬)の付けようがないとのが現状です。また、会計参与側も「業務量」と「責任の度合い」が不透明ななかで値段をつけることは容易でありません。
 会社側が期待していることとして、(1)経営について直接税理士と話したい、(2)取締役会に税理士が会計参与として同席してほしい、(3)最新の試算表をもとに、財務状況を説明した上で経営の話をしたり時には人生について語りたい、(4)経営陣といっしょになり問題点の洗い出しを行い課題を設定した上で、各取締役に対して、社長と会計参与が経営陣に指示を与えることを望みたい、(5)経営陣と綿密な打合せを繰り返し、数ケ月の取り組みで更なる黒字決算の継続実現を支援してほしい、(6)会社の内部機関にいて意思決定の参考になる指導的な役割を果たしてほしい等が挙げられますが、各々の期待に対して「いくらの値段をつけたらよいのか?」ということとなりますと誰もが答えをだすことができません。
 ついては、会計参与に就任するに当たって、会社と会計参与との「関与の度合い(程度)」と「業務量」が重要になってきます。
 まずは、(1)就任前から関与先であったかどうか、(2)関与先であった場合、月次決算・年次決算が会社側でできるかどうか、(3)関与先でない場合、関与先になってから会計参与に就任する場合、(4)関与先でない場合、関与先とならずに会計参与にのみ就任する場合、また、(5)月次決算に合わせて巡回監査を行っている場合や(6)税理士法第33条の2(1)の書面添付をしている場合等、あらゆるケースが考えられます。
 また、会社側では内部統制制度があり定着している場合とそうでない場合もあります。更には、取締役会や株主総会が会社側で開催・運営できる場合と、会計参与の支援が必要な場合が考えられます。
 このように、会社と会計参与との関係には様々なケースが考えられますので、当該ケースについてそれぞれどの程度の「業務量」がかかるか、また、「責任の度合い」がどの程度になるのかを評価・測定した上で、報酬を決定することとなります。
 「業務量」については、時間数で評価することができますが、「責任の度合い」については、評価する基準があいまいですので、「関与の度合い」を一つの基準として評価・測定することとなります。

会計参与行動日誌 第7回 『請負契約での評価基準に説得力』

 会計参与の月額報酬については、かつて税理士事務所で利用していた「税理士報酬規定」と同様の考え方に基づいて、会社の「総資産の額」「有利子負債の額」「資本金の額」「売上規模」等を参考にした「報酬料金表」を作成することが考えられます。一方では、「業務の類似性」という視点から「監査役報酬」を参考にした報酬金額の決定も考えられます。
 この「税理士報酬規定」的な考え方や「監査役報酬」的な考え方は、会計参与がこれを用いて会社側に対して納得してもらえる金額を提示することができるかどうか、不安を抱くこともあるでしょう。
 会社側を納得させるためにはこれらの考え方よりも「業務量」や「責任の重さ(程度)」について何らかの形で提示できたほうが、報酬の交渉が苦手な人にとっては、効果的な方法と言えます。
 ここに、「業務量」や「責任の重さ(程度)」を加味した請負契約に準じた評価基準が必要となります。あらかじめ「業務量」や「業務の範囲」を特定し積み上げ計算を行ない「責任の重さ(程度)」を明らかにした上で報酬金額を提示することは、説得力のある金額提示ができることとなります。
 ところで、「業務量」や「責任の重さ(程度)」を検討する前提として重要なことは、会社側の現状が(1)税務・会計の顧問契約をすでに交わしているかどうか、(2)月次決算・年次決算の取り組みと精度が高いかどうか、(3)月次決算に合わせて巡回監査を行っているかどうか、(4)税理士法第33条の2①の書面添付をしているかどうか、(5)内部統制制度の有無や定着の度合いが高いか、(6)取締役会・株主総会の開催運営ができるかどうか等が挙げられます。
 (1)~(6)について、「業務量」が多くなると報酬金額も高くなり、少なくなると報酬金額も低く「責任の重さ(程度)」も軽くなります。例えば、会社側で月次決算を行い巡回監査が実施されている場合で税理士法第33条の2(1)の書面添付を実践している会社の場合は、基本料金を10万円として、内部統制制度の一部の補完が必要な場合は「業務量」を加味した上で2万円程度の増額を行い、内部統制制度が定着している場合は2万円の減額をしたり、取締役会・株主総会の開催・運営の支援が必要な場合は2万円増額し、不要な場合は2万円減額したりします。
 当然、巡回監査を行っていない会社への就任や書面添付の実践がない会社への就任は、増額した上で報酬を決定することとなります。

会計参与行動日誌 第8回 『提示を受けた帳簿などの問題検討を』

 会計参与は、取締役と「共同して」計算書類等を作成することが主たる業務となりますが、株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものと、会社法第431条に規定されています。したがって、会社が計算書類等を作成する場合、中小企業が準拠すべき「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」を適用することとなり、具体的には、「中小企業の会計に関する指針」に拠り、(1)計算書類(2)付属明細書(3)臨時計算書類(4)連結計算書類(5)会計参与報告書を作成することとなります。
 なお、会計参与は税理士として会社と顧問契約をして税理士法第33条の2①の書面添付を実践している場合には、すでに社会的信頼を高めた計算書類等を作成していることとなります。それは、書面添付制度自体が、税理士法第1条の「納税義務の適正な実現を図る」という税理士の公共的使命を具体的に実務面で展開したものです。
 つまり、税理士が作成した申告書等について、税務の専門家の立場からその調整方法を明らかにすることによって、正確な申告書の作成及び提供に資するとともに、税務当局もこれを尊重することで、税務行政の円滑化と簡素化が図られ、また税理士の社会的信頼も高まるとの趣旨によるものです。
 したがって、会計参与に就任する以前より書面添付を実践している会社に対して就任する場合には、すでにある程度の社会的信頼を得られた計算書類などを作成していることとなるのです。
 ところで、書面添付を実践していれば、その他に「中小企業の会計に関する指針」によるだけで良いのか?という疑問がわいてきます。
 書面添付を実践している場合には、会計帳簿や証憑書類の提示を受けた範囲で業務を行うこととなります。当然ながら、提示を受けなくとも税理士法第45条2項による相当注意義務の履行を果たすことが要求されます。
 会計参与の場合は、提示を受けた帳簿・書類について問題があるかないかも検討することが求められます。特に、(1)帳簿・書類の不正による改ざん、(2)売上・固定資産・人件費・経費の架空計上、(3)資産の過大/過少計上、(4)費用の資産計上、(5)現金・棚卸資産・固定資産の横領、(6)簿外の借入など、さまざまな角度から、会社の不正が行われる要因が内在しているかどうかを把握する力が求められます。さらには、帳簿外の取引等についても見抜く力が求められるのです。

会計参与行動日誌 第9回 『会計参与側からみた就任の可否判断にあたって』

 会計参与の仕事は、取締役と共同して計算関係書類を作成することが任務ですが、その作成にあたり、企業の活動内容を十分に理解した上で業務に当たります。
企業の健全な経営を行うにあたり内部統制が求められています。内部統制とは、基本的に、
(1)業務の有効性及び効率性
(2)財務報告の信頼性
(3)事業活動に関わる法令等の遵守並びに(4)資産の保全

の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいいますが、中小企業の現場では、内部統制における四つの目的が達成されることが極めて困難なため、会計参与にこれらの目的達成のための一部を補完する機能が求められています。
 この4つの目的は、内部統制をしても絶対的ではありませんが、会計参与にその一部の補完を求めることにより、中小企業の現場ではその目的が達成されないリスクを一定の水準以下に抑えることができるという効果が期待されます。
また、経営環境や組織は常に変化していくことから、その変化に対応しながら内部統制を機能させていく必要があるため、継続的な見直しが必要とされます。よって、内部統制は仕組みが完成したら終わりではなくて、経営が続く以上は継続的な見直しが不可欠です。この継続的な見直しの機会を行う者として会計参与に期待が込められています。
 企業のなかには、「内部統制に関する作業を簡単に済ますために、雛形やサンプルなど具体的なものはないのか?」といった質問を受けますが、企業を取り巻く環境は異なりますし、事業の特性、規模、従業員の風土などさまざまな要因が全て異なることから、一律の形式で取り組むことは適切でないこととなります。
 ところで、内部統制を構築するにあたり、
(1)業務プロセスを洗い出すための業務フロー体系図
(2)業務中のリスクとこれに対する低減策を一覧表にしたリスク・コントロール・マトリックス
(3)業務の詳細な内容を文書で明らかにする業務記録簿

などの三つの実施基準があります。
 重要性の判断を行い、外部に丸投げするのではなく、経営者自らが内部統制のあり方を直視して、自分たちの会社はどうすべきなのかを真剣に取り組んでいく必要があるのです。
中小企業の現場では、これらを作成することが極めて困難であることが予想されますので、その業務を補完し継続した健全経営を行えるようにサポートする役割が求められるのです。

会計参与行動日誌 第10回 『計算書類などに虚偽記載 記録の保存で責任が変わる』

 今後は、金融機関から融資を受けるときに会計参与が作成した適法性・適正性が証明されている計算書類によって、融資が実行されることもあるでしょう。
ところが、会社が倒産した場合には取締役と会計参与に損害賠償の請求がきます。会計参与が、重要な事項について計算書類の虚偽記載をした場合、第三者に対する損害賠償責任が生じます。なお、会計参与の責任は、民事上の責任、刑事上の責任、過料に処すべき行為、行政上の責任があります。
 民事上の責任として、(1)会社に対する責任、(2)第三者に対する責任があります。
 会計参与が任務を怠り(過失責任)、会社に損害を与えたときは、会社に対して損害を賠償する責任を負います。株主代表者訴訟の対象にもなります。
会計参与には、社外取締役に認められる責任限定制度が認められていますので、職務を行うにあたり善意でかつ重大な過失がないときは、一定の手続きを経て、会計参与が会社から受ける報酬の2年分を超える部分について責任を免除することができます。
 第三者に対する責任については、会計参与が職務を行うにあたり悪意又は重大な過失があり、これによって第三者に対して損害を与えたときは、その第三者に対して損害を賠償する責任を負います。第三者に対して生じた損害の賠償は、責任の免除や軽減がありません。
 また、会計参与に限定された罰則ではありませんが、刑事上の責任を負うこととなるケースや、計算書類及び会計参与報告の虚偽記載や正当な理由なしに株主総会などで説明をしなかった場合には100万円以下の過料にあたる責任を負うこともあります。さらには、税理士法、公認会計士法の行政処分の対象にもなるのです。
 いずれの場合においても、計算書類及び会計参与報告に記載又は記録すべき重要な事項について、虚偽の記載又は記録をしたときは、注意を怠らなかったことを立証しない限り損害を賠償する責任を負います。
 したがって、過失がないように職務を適正に遂行することは当然ですが、注意を怠らなかったことを立証できるように記録や証明を残す手段を講ずる必要がでてくるのです。特に、
(1)会社から提示を受けた書類や帳簿の範囲をしっかりと特定しておく作業
(2)本来あるべき書類や帳簿の記録・保存が行われているかどうかの指導
(3)現状の業務プロセスを確認する中で不正が起こり得る可能性の洗い出し
(4)問題があったときの指導履歴の記録・保存

などを行うことで立証することができるのです。

会計参与行動日誌 第11回 『「正しい経営・会計」に導くことが必要』

 会計には「報告用会計」(財務会計)と「戦略用会計」(管理会計)があり、会計参与が携わる会計は、「報告用会計」に属し、いわゆる外部の利害関係者に会社の状況を報告するために使用します。「報告用会計」で作成される決算書は、貸借対照表、損益計算書、キャッシャフロー計算書、株主資本等変動計算書、製造原価報告書などがあります。
「戦略用会計」は、会社が経営の意思決定をするために活用します。損益分岐点売上の算定、販売・仕入価額の決定、設備投資計画の決定、業績賞与の決定、経営戦略やマーケティング戦略を考えるときに必要なツールとなります。
「報告用会計」により作成された計算書類などは、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従い、中小企業が準拠すべき「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」を適用することとなり、具体的には、「中小企業の会計に関する指針」に拠り、(1)計算書類(2)付属明細書(3)臨時計算書類(4)連結計算書類(5)会計参与報告書を作成することとなります。 ここでいう「報告用会計」の目的は、外部に積極的に説明をするという「主張用会計」(アサーションアカアンティング)といえます。一方、「戦略用会計」の目的は、経営理念から行動計画までの経営戦略を策定しその実践した結果を評価し、この結果に基づいて継続的改善につなげていくことに用いる「打ち手用会計」(マメジメントアカウンティング)といえます。 「主張用会計」と「打ち手用会計」を理解し、会社経営に有用な情報を活用し業績向上につなげていくことになるのです。
 これらの前提には、「正しい経営」と「正しい会計」が必要となります。いずれは「正しい経営・会計」をしようと思っているが、いまは規模も小さいので・・・、と思っている経営者に限ってもうかっていませんし、「不正」という「仕組み」によりもうかっている会社は、一回倒産しない限り変わることができません。余裕ができたら「正しい経営・会計」という訳にはいきません。「正しい経営・会計」を理解することで生まれ変わることができます。「正しい経営・会計」の結果として、集まってきた得意先や取引先と経営をしていくことで、会社は成長しさらに長く継続し発展することが可能となります。
「正しい経営・会計」は「主張用会計」や「打ち手用会計」を必要とし、その必要性を広めていくことが、将来の会計参与に求められる役割となるでしょう。

会計参与行動日誌 第12回 『会社側にメリットがあるかが重要』

 会計参与の実務の現場において、考えておく必要がある事項として、
(1)「会社にとってどんなメリットがあるのか」
(2)「業務量」や「責任の重さ(程度)」と報酬についての理解
(3)実務能力・対応能力等を含めた個人の力量
(4)内部統制制度の理解 
(5)批判的な役割から指導的役割をもつた対応
(6)「報告用会計」と「戦略用会計」を相互活用
(7)「正しい経営・会計の指導」などがあげられます。

そのなかで、一番大切なことは、会計参与制度を導入したことで会社側にメリットや効果があるかないかです。特に、「金融機関からの評価が高まり資金調達が容易になるんだったら」という声を経営者からよく聞くようになりました。
 ところで、会社が倒産した場合には、取締役と会計参与に損害賠償の請求を求めることもあるでしょう。会計参与が、重要な事項について会社からの要求で計算書類の虚偽記載をした場合、第三者に対する損害賠償責任が生じます。なお、会計参与の責任は、民事上の責任、刑事上の責任、過料に処すべき行為、行政上の責任にまで及ぶことも想定されます。これらを加味した上で就任するかどうかを判断することになりますが、その他、会計参与自身の知識や実務能力・対応能力などを含めた個人の力量によって就任できるかどうか大きく左右します。現在のところ、すでにスクールが開講されていますので知識の習得は可能ですので、あわせて実務能力や対応能力が身につくと自信をもった業務を行うことが可能となります。会計参与の仕事は、取締役と共同して計算関係書類を作成することが任務ですので、その作成にあたり、企業の活動内容を充分に理解した上で業務にあたります。特に中小企業の現場では、当該業務が不透明であり、「内部統制」や「法令遵守」を前提とした事業活動を行っているとは言えませんので、これらの目的を達成のためにその一部を補完する機能が求められています。特に、会社の組織内の立場で活動することになるので、「批判」ではなく「提案・助言・指導」を含む活動が要求されます。
 また、会計参与の仕事として、会社経営に有用な情報を提供し、業績向上につなげていくきっかけをつくることが望まれます。そのためには、「報告用会計」のほか「戦略用会計」を用いることになります。「戦略用会計」を用いることにより、経営理念から行動計画までの経営戦略を策定し、その実践した結果を評価し、この結果に基づいて継続的改善につなげていくことで会社の発展に寄与することができるのです。そのためにも「正しい経営・正しい会計」が必要となり、その大切さと必要性を広めていくことが、これからの会計参与に求められる役割となるでしょう。