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開業請負人八木澤宏昌の開業塾

開業をお考えの先生は、すでに開業医の実態を、先輩や友人などから聞いて、漠然としたイメージをもっていることと思います。また、開業してから「想像していたものとは全然違う!」などと、開業そのものを後悔されている先生が意外と沢山いらっしゃるのも悲しいかな事実です。

先生方にとって開業は第2の人生のスタートであり、失敗は絶対に許されない1度きりの真剣勝負です。開業にかかった数千万円の投資を「自分は開業に向いていなかった!」といってあきらめ、簡単に勤務医に戻れるはずがありません。

そのようなことにならないために勤務医から開業医への意識改革をしておくことが大切です。このコンテンツでは、これから開業を目指す先生方に「開業後に直面する勤務医と開業医のギャップ」や「経営者という視点からみた医療」等について、数十件の開業に直接携わってきた開業請負人の私(八木澤宏昌)が経験を踏まえてご紹介します。

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開業支援の流れ

開業支援の流れ

医院経営の家計簿と現実

1日20人を、月25日稼動して診察して、月間500人。

レセプト1枚、約1万円として月商500万円、年商にして6000万円

これなら、開業資金の返済を考えても充分にやっていける。

こんな計算で開業しようというのでは、経営者として無謀というほかはありません。

「1日20人ぐらい勤務医でも当たり前」などと反論される先生方もいらっしゃると思いますが、これは大きな間違えです。大切なポイントを見落とされているからです。

ここで注目していただきたいのはレセプト500枚。

レセプト500枚とは、500人という患者様の延べ人数ではなく、毎日違う患者様を診察して500人ということ。つまり、月に2~3回来院される患者様を考えると、実質は1日に40人~50人の患者様を診察して、はじめてレセプト500枚が達成される計算に成ります。

これには、1日8時間の診察をするものとすると、一人の患者様につき9分36秒の割合で、ロス無く診察をし続けなければなりません。

これが可能な数字であるか否かの判断は先生方に委ねるとしても、勤務医時代と比べて、開業医の労働が決して楽なものではないということ、むしろより過酷なものになるという覚悟だけはしておく必要があると思います。

ここで経営という視点からもう1度考えて見ましょう。

仮に月間のレセプト枚数が500枚、年商6,000万円として、先生の手許にいくらのお金が残るでしょうか?

仮に利益率1/3で計算をしますと、開業医としての先生の個人所得が約2,000万円。

そこから所得税と住民税を引いた税引後の先生の手取り額が約1,200万円。

コンピューターや医療機器等の什器類は、リースで賄うので経費算入したとしても、借入金の元本の支払を税引後の手取りからしていくとすると、はたして自分の手許に残る本当のお金はいったいいくらになるのでしょう?

少し、不安をあおるような話になってしまいましたが、それだけ開業前のしっかりとした経営計画が大切なのです。

事業計画書の策定

開業戦略をより具体化し、数字等で補うものが、事業計画書です。
事業計画書に基づき、診療科目、医療方針、運営方針、診療体制などの概要をまとめ、この形態で開業した場合の採算性にまで踏み込み、金融機関との融資交渉にも十分利用することができるものを完成させます。

開業地の決定

最も神経を使うのがこの作業です。
失敗は許されません。先生の出身地、居住地、競合診療所、勤務先、病院-診療所連携、将来の発展性などを考慮して、開業候補地を選定します。
その後、予算や、規模、などを含めさらに検討を重ねます。
この選定の過程で、診療圏調査が重要になってきます。診療圏の調査が、緻密にかつ正しく行われなければ、患者様増加の核となる初期患者さまを集めることができなくなり、その後の収支計画に大きな影響を及ぼすこととなってしまいます。

資金調達

先に作成した事業計画書に基づき、地元の金融機関と融資交渉を行います。
地元金融機関の中には、クリニック開業融資に積極的な機関と、そうでない機関とがあります。いずれを利用するにしても、総事業費の8割近くの金額になるので、0.1%の金利の違いで大きな影響を及ぼすものですから、できるだけ有利な条件で実行されるように、粘り強く交渉に当たることが重要です。

医院建築(設計と施工)

医院の設計と施工は開業前の作業の中で夢のある楽しいものです。
どのような建物にすれば、患者様が満足し、自身の利用勝手を満足させることができるか。
設計士といろいろと打ち合わせをするなかで、思いが形になり、それが現実のものとなるのですから。
しかし、予算には限りがあり、医院建築には様々な法規制があることも忘れてはなりません。
地元で医院建築に実績のある設計士並びに工務店を選んで、オリジナルな医院にするのか、それとも大手ハウスメーカーに任せてしまうのか、いずれの場合でもしっかりと対応できるように万全の準備がしてありますからご安心下さい。

医療器械・レセプトCP・電子カルテ

高額な医療器械が多くなった今日では、クリニック開業の戦略をたてる段階で、どのような医療サービスを提供しようと考えているのか、具体的にイメージすることによって、医療器械に対する過剰投資を防ぐことができます。
とくに、大きな病院で日常的に様々な検査を行ってきた先生方は、実際に必要なものより多くの医療機器を導入したがる傾向があり、注意が必要です。
いずれにしても、この分野は、お金をかけだしたらきりのない部分です。納入業者は、できるだけ多くの機器をこれを機会に購入してもらおうと必死でしょう。冷静な対応が要求されます。

採用・研修

はじめにしっかりとした戦略をねり、運営方法や医療方針、診療体制などを作っておかないと、採用基準があいまいとなり、結果として組織としてうまく機能しなくなったりします。
開業戦略を立案した原点に戻り、しっかりとした医院としての方向性を確かめながら行うぐらいの慎重さが求められます。

いかにして広めるか?(広告宣伝)

開業の際に、患者様にクリニックを認知していただくために欠かせないのが広告戦略です。
電柱広告、野たて看板、紙媒体、交通広告、インターネットのホームページなど、様々なものがあります。
それぞれ、初期費用・維持費用、それぞれの媒体が強みとする患者様の年齢層など大きく異なります。少ない投資で最大の効果が得られるようにするためには、戦略を立案する段階で少なくともメインとなる患者様の具体的なイメージは押えておく必要があります。

各種届出

クリニック開業をお考えの先生方の殆どは、病院に勤務しており、自分の休日を利用して準備を進めているのが現状です。
ところが、開業時に必要な届出や、申請手続きを受け付けている各官公庁は、土日祭日は閉まっているので、早めに予定を作り、開業に向けて、何日までに提出すればよいかを必ず確認する必要があります。

開業直前準備

開業直前はいろいろな準備で忙殺されます。
開業日までのスケジュールをしっかりと作って、一日一日消化していくことが大切です。
忘れてはならない行事としては、近隣同業者(医院・病院)へのあいさつ回り、会員案内の配布、内覧会の実施など。
これらは、いずれもスムースなスタートを切るためにとても重要な行事です。
また、模擬診察などを通して、開業後の業務プロセスを従業員一同で確認しあうのも大切な作業です。