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利用者負担額の条例通知

グループホーム等における利用者負担額の取扱いの法令・通知について(利用者負担額は実費相当額の範囲内であることが必要かどうかの検討)

グループホーム、ケアホーム等の指定障害福祉サービス事業者における、利用者負担金の取扱いを規定している法令・通達の内、共同生活介護に関するものを以下のとおり取りまとめましたので、参考にしてください。

1.法令・通知

(1)障害者自立支援法第29条(介護給付費又は訓練等給付費)
(2)障害者自立支援法施行規則第25条(特定費用)
(3)指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準
第19条(利用者負担額の受領)
(4)指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準
(以下、指定基準といいます。)
第143条(利用者負担額の受領)
(5)障発第1206002号厚労省部長通知
「障害福祉サービス等における日常生活に要する費用の取扱いについて」
(以下、取扱通知といいます。)

2.上記1の法令・通知の概要は以下のとおりです。

(1)障害者自立支援法第29条1項(資料集1頁参照)で市町村が支給する介護給付費又は訓練等給付費から除くもの(つまり事業者が障害者から利用者負担額として徴収するもの)として、次の4つの特定費用を列挙しています。
イ 食事の提供に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用
ロ 居住若しくは滞在に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用
ハ その他の日常生活に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用
ニ 創作的活動若しくは生産活動に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用
(2)前記(1)の「厚生労働省令で定める費用」について障害者自立支援法施行規則第25条(特定費用)(資料集3頁参照)に規定されています。
この内、共同生活介護については同条1項5号に次のとおり規定されています。
障害者自立支援法施行規則第25条5号
五 共同生活介護又は共同生活援助 次に掲げる費用
イ 食材料費
ロ 家賃
ハ 光熱水費
ニ 日用品費
ホ その他共同生活介護又は共同生活援助において提供される便宜に要する費用のうち日常生活において通常必要となるものに係る費用であって、その利用者に負担させることが適当と認められるもの
(3)前記1の(4)の基準143条(資料集7頁参照)において、指定共同生活介護に係る利用者負担額について同条3項に次のとおり規定されています。
指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準143条3項
3 指定共同生活介護事業者は、前ニ項の支払を受ける額のほか、指定共同生活介護において提供される便宜に要する費用のうち、次の各号に掲げる費用の支払を支給決定障害者から受けることができる。
一 食材料費
二 家賃
三 光熱水費
四 日用品費
五 前各号に掲げるもののほか、指定共同生活介護において提供される便宜に要する費用のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、支給決定障害者に負担させることが適当と認められるもの
(4)前記1の(5)の障発第1206002号厚労省部長通知「障害福祉サービス等における日常生活に要する費用の取扱いについて」(資料集8頁参照)は、同通知の本文に記載されているとおり、前記(3)の部分の「日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、支給決定障害者に負担させることが適当と認められるもの」の具体的な取扱いを定めたものです。同通知の記の2「その他の日常生活費」の受領に係る基準の(4)には、「「その他の日常生活費」の受領は、その対象となる便宜を行うための実費相当額の範囲内で行われるべきものであること。」と規定されています。

3.結論(当職の意見)

(1)以下の理由から、障害者から受領する特定費用等収入のうち、「その他の日常生活費」以外の食材料費・家賃・光熱水費・日用品費については、必ずしも、実費相当額にこだわって、清算する必要はないものと考えます。もちろんこの「特定費用等収入」の金額の取り決めは、施設と障害者〈利用者〉との間の契約によって決まるものですから、契約書によって、実費清算を謳うことは可能ですが、制度としてはそこまでは求めていないと考えます。
イ 障害者自立支援法・障害者自立支援法施行規則に規定されている「特定費用」、及び、指定基準に規定されている利用者負担額の内、実費相当額と規定されているのは、前記2の(4)のとおり「その他の日常生活費」についてだけです。
ロ 食材料費・家賃・光熱水費・日用品費についての利用者負担額につては、実費相当額との規定は見当たりませんし、指定基準及び取扱通知の規定の仕方からすると、食材料費・家賃・光熱水費・日用品費について実費相当額という考え方はないと考えられます。
(2)食材料費は「1食○○円」、家賃は「月○○円」、光熱水費は「月○○円」、日用品費は「一般店頭価格を基にした定価」という具合に契約書に謳い、たとえ実費と比較して余っても精算還付せず、また、逆に不足しても追加徴収しないということと考えられます。
食材料費は朝食と夕食では異なる料金を契約書に謳うことが可能であり、光熱水費は夏と冬で異なる料金であってもいいと考えられます。
また、食材料費は「食事の提供に要する費用」とは異なりますので、人件費は含みません。
(3)もちろん、事務所通信(平成21年4月1日号)で触れたように、食堂や貸家業を経営するわけではありませんから、利潤を追求してはいけませんので、適正家賃、適正食費料金の判断が重要になります。その適正額を判断する要素となるのが、実費のみではないということです。
実費だけにとらわれると、例えば家主さんが社会福祉事業を支援したい考えで通常より低廉な家賃で事業所に貸している場合に、その家主さんのご厚志が特定の利用者にのみ向けられて、社会福祉とは言えないものにもなりかねないということです。適正額と比較して、多寡が生じた場合の対処方法としては、精算・還付・追加徴収をするのではなく、今後の分について料金改定・契約内容の変更をすることになります。

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