相続対策1.遺産相続対策、2.節税対策①

相続対策

1.相続財産の推定

(1)相続税の課税対象となる財産で主なもの

①相続時点の所有財産


  日本国内に所在する財産のほか、国内に住所を有する相続人等が相続等により取得した日本国外に所在する財産も、課税対象となります(くわしくは税理士等にご相談ください)。
  財産の名義にかかわらず、被相続人の財産で、家族等の名義となっているものや無記名のものなども課税対象となります。


②みなし相続財産


被相続人の死亡に伴い支払われる生命保険金(被相続人が負担した保険料に対応する部分に限ります。)や退職金など
ただし、生命保険金や退職金のうち、これらの区分毎に一定の金額までは非課税となります。
一定の金額とは、500万円×法定相続人の数

③被相続人から生前に取得した相続時精算課税適用財産


④被相続人から相続などによって財産を取得した方が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産

(2)相続財産から控除できるもの

債務、葬式費用
ただし、相続時に日本国内に住所を有しない者等は控除できない場合があります。くわしくは税理士等にご相談ください。

2.相続税の試算

まず、相続税がかかるかどうか、概算でいいですので計算してみてください。
相続財産の価格合計が遺産に係る基礎控除額を超える場合は、相続税がかかる可能性があります。
遺産に係る基礎控除額は、
   3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続税額の計算は、少し複雑ですので、当ホームページの「相続税・贈与税シミュレーション」コーナーもご参考にしてください。
ご不明な点は税理士等にご相談ください。

3.遺産相続対策又は相続税対策の認識・立案・実行

このうち、相続税対策には、節税対策と相続税納付資金対策があります。

これらについて以下、概略を説明いたします。

1.遺産相続対策

いざ相続が発生した場合、相続人は、遺産を相続人間でどのように分けて相続するのか、あるいはどの遺産をだれが相続するのかという課題に直面する。この相続が争族になることがあるのは、現実ですが、このようなことがないようにしたいものです。 この遺産相続対策としてどのようなことがあるのでしょうか。

(1)生前中、考えを皆に理解してもらっておく、そのためにも皆が仲良くしておく


遺産相続は、被相続人が遺言書を作成している場合は、基本的にはそれによることになり(ただし、遺留分の問題は生じ得ますので注意が必要です。)、遺言書がないか又は遺言書に記載のない事項の場合は、相続人間で遺産分割について協議して決めます。この遺産分割協議で考え方の大きな拠り所となるのは、被相続人の生前中の生き方や考え方、その家の先祖からの考え方等ではないでしょうか。そのためにも、被相続人は生前中から折りに触れ考え方を皆に理解してもらうことが基本ではないかと思います。また、被相続人の生前中から相続人の皆が仲良くしておくことではないでしょうか


(2)遺言書の活用


遺言書を活用した方がいいという場合もあると思います。
例えば、
①相続がもめないよう手続きしておきたい。
②相続人がいないのでお世話になった人に遺贈したい。
③相続人が配偶者と兄弟姉妹のみのとき、財産の全てを配偶者に相続させたい。
④相続権のない孫や兄弟に遺贈したい。
⑤財産の一部を国や地方公共団体、公益事業等に寄付したい。など
ただし、遺言書がある場合にも、 遺言内容と異なる相続人の遺産分割協議も、遺言執行者がない場合は共同相続人全員の合意に基づく場合は許され、遺言執行者がある場合も、共同相続人全員が遺言と異なる内容の遺産分割を希望し、かつ、協議内容が遺言の趣旨に反するようなものでない場合は有効であると解されています。ほかにも、特別受益や寄与分などの問題もありますので、詳しくは弁護士等の専門家にお尋ね下さい(ご要望があれば協力関係にある弁護士をご紹介します。)。


(3)相続税の申告期限までに遺産の分割が未了の場合に、不利益になること


遺産の分割が未了で、相続税の申告書を申告期限までに税務署に提出しなかった場合は、配偶者の税額軽減の不適用、小規模宅地等の相続税の課税の特例の不適用、非上場株式等について相続税の納税猶予の不適用等による不利益が考えられますので、このようなことのないようくれぐれも注意が必要です。

2.節税対策

節税対策のうち代表的なものをいくつかご紹介します。

(1)生前贈与

これは、生前中に推定相続人等に財産を贈与するというものです。基本的に、贈与した財産はもはや贈与者の財産ではないので相続財産を減らすという効果を持ちますので、相続税の節税になります。
しかし、贈与すると贈与税の課税が考えられます。この贈与税は、基礎控除額や税率構造により、相続税よりも税金が高くなる場合がありますので、贈与前によくご検討をされたらと思います。
この贈与税についてその概要を次に説明します。
①贈与税の納税義務者と課税財産の範囲


ア贈与により財産を取得した者が、その財産を取得した時において日本国内に住所があるときは、贈与により取得し
 た財産の所在が日本国内にあるか国外にあるかを問わず、その年中に贈与により取得した財産の全部について贈与
 税の納税義務があります(居住の無制限納税義務者)。

イ贈与により財産を取得した日本国籍を有する個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有しない者
 (受贈者又はその贈与をした者が、その贈与前5年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたこと
 がある場合に限ります。)は、贈与により取得した財産の所在が日本国内にあるか国外にあるかを問わず、その年
 中に贈与により取得した財産の全部について贈与税の納税義務があります(非居住の無制限納税義務者)。

ウ贈与により財産を取得した者が、その財産を取得した時において日本国内に住所が有しないとき(上記イに該当す
 る場合を除きます。)は、贈与により取得した財産のうち日本国内にあるものについてだけ納税義務があります(制限納税義務者)。

以上の納税義務者と課税財産の範囲は、相続税の場合と考え方は同じです。

年の中途で出入国した者が贈与により財産を取得した場合のように、その1年をみると無制限納税義務者と制限納税義務者の両方にあてはまるときは、日本国内に住所がある期間内に贈与により取得した全部の財産(財産の所在が日本国内か国外を問わず)と、日本国内に住所がない期間内に贈与により取得した財産のうち日本国内にあるものを合計したものが贈与税の課税対象になります。


②非課税財産


財産の贈与でも次のようなものは贈与税が課税されません。代表的なものをいくつかご紹介します。

ア扶養義務者から生活費又は教育費として贈与を受けた財産のうち通常必要と認められるもの。

イ社交上必要と認められる香典等。

ウ特別障害者が信託受益権を取得した場合の非課税制度。

エ直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度。

オ直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度。

カ直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度。

くわしくは税理士等にご相談ください。