税務調査を上手に受けるポイント

毎年7月10日は、税務署の定期異動があり新事務年度(税務署の会計期間は7月1日から翌年6月30日です)が始まります。

9月の夏休み明けから12月の年末までは、調査官の勤務評価に最も反映する時期といわれているので、熱心な調査が予想されます。

また、財務省が発表した2008年7月の税収実績によると、法人税は1040億円の赤字(前年同月は1204億円の黒字)となり、これは景気低迷で企業業績が悪化し、3月決算法人への予定納税した法人税を会社に返還する還付税額が法人税収を上回ったためです。

この法人税の赤字転落は5年ぶりとのことで、税務調査への影響も考えられます。

今後は、より厳しい税務調査が行われることが予測されます。

◆一般的な任意の税務調査を受けるポイントは

◎税務署から連絡があった時

……調査をしたい旨の連絡があったときは、調査の目的・日時・予定日数・担当部門・調査官全員の氏名を聞き、すぐ顧問税理士に連絡します。

病気や冠婚葬祭など正当な理由があれば日時を変更することができるので、税理士に相談して税務署と日程の調整をします。

◎連絡がなく突然に調査に来た場合

……現金収入業種などに対して例外的に来たときは、税務職員であるかどうかを身分証明書で確認して、任意の調査ですから慌てずに責任者が対応すると同時に顧問税理士にすぐ連絡して指示を仰ぐようにします。

◎事前準備

……税理士は納税者の味方ですから、隠し事をせずに不利なことも含めて事前に相談します。

税理士に言っていない隠し事を調査で指摘された場合は対応ができないこともあります。

◎調査に対応する社長や経理担当者は

……机・金庫・〔ロッカー・書庫などを整理して公私をはっきり区別し、個人の印鑑や預金通帳など私物があれば、別の場所に保管するか自宅に持ち帰ります。

◎メモ類

……社長の手帳や営業マンなどのメモ書き・卓上カレンダーなどの書き込みの確認をしておきます。

意外に思われるかもしれませんが会社の調査であっても社長の個人の預金通帳を見せてくださいと言われることがあります。

これは、会社の売上げのうち遠隔地の取引やスポット売上げの代金を、会社の売上げを抜いて社長個人の通帳に入れていないかを確認するためです。特に個人事業を会社組織にしたばかりのような場合には、得意先が間違って以前の個人事業の通帳に振込をする場合があるからです。

社長さん個人の預金通帳に、給料日以外の日に入金があるような場合には説明を求められます。

◎パソコン

……会社にあるパソコンのワードやエクセルのデータ・電子メールの内容・インターネットの履歴なども確認しておきます。

◎帳簿類の確認

……帳簿・証憑類・各種議事録・契約書・内部書類などを、調査官の要求に応じてすぐ提出できるようにしておきます。

整理が悪くて提出に手間取り時間がかかると、調査官に一緒に探されて余計なものまで見られる恐れがあります。

◎社内への周知は

……従業員に税務調査がある旨を知らせることです。

現場や営業担当者に突然調査官から質問があっても憶測や推測で回答をしないように周知しておきます。

「よく覚えていないので、後で調べてお答えいたします。」と言うように従業員を指導してください。

◎調査を受ける場所は

……従業員が日常の業務を落ち着いてできないと困るので、会議室や応接室など隔離された場所がよいでしょう。

◎調査の当日は

……自然な態度で臨み必要以上にへりくだったり、逆に高圧的な態度は慎みます。

妙なへりくだりは、何か弱みがあるのかと勘繰られます。

また、逆に高圧的な態度で政治の不満を言ったり、頼まれた資料を提出しなかったりすると調査に非協力的だと思われ、調査官も人間ですから、より厳しい態度で調査に臨むことでしょう。

◎挨拶や雑談も調査のうちです

……うっかり何気なく話したことが重大な結果を招くことがあるので、調査官のペースに乗せられないようにします。

社長の経歴や、事業の中身の具体的な話が中心です。

その会社の事業の特殊性は何かを判断していきます。

売上が上がるまでのプロセスを順に、注文を受けてから納品、請求、入金までの流れを聞いてきます。

◎調査官の質問に対しては

……質問されたことだけを簡潔に回答し、それ以外の不用意な発言は慎みます。

なお、質問の意味がよく理解できないときは即答せず、納得できるまで聞き直した上で回答します。しかし、その場で明確な回答ができないときは曖昧な返事をせず、後日回答する旨を伝えます。

◎協力的な姿勢で臨む

……税務調査は協力的な姿勢で臨むことが大切ですが、納得できない指摘に対しては感情的にならず、はっきり反論することも大切です。

◆税務調査にはどのような種類があるか

◎税務署課税部門による調査

……個人事業者や一般の会社(資本金1億円未満)が通常受ける税務調査です。調査対象になったからといって、気にすることはありません。

循環周期といって申告内容に疑いがなくても、調査対象に選定する場合があります。

設立後1度も調査を受けたことがないような場合には要注意です。

通常1~2名の調査官で2日~3日程度の調査日数で終了するのが一般的です。

ところで調査に非協力的であったり、資料がそろっていないなど、その会社だけの調査だけでは不明な箇所がある場合には、その会社の取引先にまで調査に行くことがあります。これを「反面調査」といいます。

その会社の取引先まで行かれると、相手先の会社も迷惑ですし、何か不正でもしているから反面調査になったんでないかと取引先に勘繰られますので、資料の提示や不明事項の説明などは十分にしてください。

◎国税局調査部による調査

……資本金が1億円以上の法人の調査を行います。上場企業などを担当するのは同部の特官部門です。

◎国税局資料調査課(リョウチョウ)による調査

……同課はミニマルサと呼ばれるほど強烈な調査をしますが、あくまで任意調査であって裁判所の「令状」を携行した強制捜査ではありません。

◎国税局査察官(マルサ)による調査

……この調査は、国税犯則取締法に基づくもので、裁判所が発行する「令状」を携行しての強制調査です。

一つの事案に数百名が動員され、関係箇所の一斉捜査が行われることもあります。

当事務所が税務調査に立ち会います

調査官は税理士が関与していない会社に調査にいくことがあります。

その理由は、税理士会では税理士が1年で一番忙しい確定申告時期の2月から3月にかけて税務署に対して、新たな税務調査の着手をしないでほしいと要望しているからです。

また、税務調査を飛び飛びの日にしないようにも要望しています。

すべてが聞き入れられる訳ではありませんが、税理士会の税務調査のアンケートを基に税務署に要望を続けています。

税理士が関与していると調査官は立ち会いの都合など税理士の都合も聞かなければなりません。

調査官は、自分の都合による自由な調査ができませんから、税理士が関与していない会社で税務上、異常値が点滅している会社に突然来ることがあります。

あくまで任意調査ですから、日程など仕事の都合で伸ばしてもらえることもあるのですが、突然の電話で動揺してしまい、相手の言いなりで調査が始まってしまうこともあると思います。

そのような場合には当事務所にご連絡ください。

税務調査の立ち会いをして差し上げます。

今まで税務調査を受けたことが無い場合、税務署が言っていることが、よく理解できないことがあります。

それは税務の専門用語を話すことがあるからです。

個人的な経費のつけ込みや売上の計上漏れなどの修正事項が出てきた場合にも、1年分が100万円なんだから5年分で500万円分を修正申告して納税しろ。などと言われたら、どのように切り返しますか?

荒っぽいことを言うな?と思われるかもしれませんが、現実なのです。

夜も眠れない日々が続きますし、修正申告した税金を払えるほどの資金は無いのが通常でしょう。

納税のための資金を銀行で借りなければならなくなります。

結果として経営がおかしくなる会社も多いのです。

経理や税務をいいかげんにしておくと足元をすくわれてしまいます。