相続手続きでお悩みの方

 相続については、「うちは財産がないから関係ない」「親がなくなってから考えればいい」などとお考えの方が多いのではないでしょうか。相続では、なんといってももめずに財産の承継ができることが一番です。そのために打つべき手は?

1.特定の人に多くの財産を残したいのですが、よい方法はありますか。また、注意すべきことがあれば教えてください。

 まず、相続でもめないために打つ手の第一は、遺言の活用です。たとえば、相続人が妻と子供2人のときの法定相続分は、妻が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつになりますが、子供に妻の世話を頼むので、子供に法定相続分より多く(それぞれ5分の2ずつ)財産を残したいときは、遺言が必要です。
 そこで遺言についてですが、法律上の要件を満たした文書による遺言でなければ、法律上の効力はありません。また、内容について誤解が生じないように書く必要があります。代表的な遺言の種類と注意点は以下の通りです。

(1)自筆証書による遺言
遺言者が自筆で全文を書く遺言です。

  1. 遺言には、遺言した日の日付と氏名の記載と押印が必要です。
  2. ワープロやテープレコーダーによるものは無効です。
  3. 家庭裁判所の検認の手続きが必要です。


(2)公正証書による遺言
遺言者の口述にもとづき、公証人が遺言書を作成します。

  1. 公証人が筆記した遺言書を2人以上の証人に読み聞かせ、または閲覧させ、その筆記が正確なことを承認したあと、遺言者・証人が自署・押印し、さらにどのように遺言書がつくられたのかを公証人が付記します。
  2. 遺言の原本は公証人役場に保管されます。

(3)秘密証書による遺言
遺言の存在を明らかにしながら、その内容を秘密にして作成します。

  1. 遺言者が署名・押印した遺言書を封じ、封印(遺言書と同一のもの)します。
    公証人1人、証人2人以上の前に提出して、自己の遺言である旨、氏名と住所を申述し、さらに公証人が日付と遺言者の申述を封書に記載したあと、遺言者と証人とともに署名・押印します。

 この3種類の遺言書のうち、争いを防止するという点では、公正証書がよいでしょう。
 遺言は何回での書き直すことができます。ただし、自筆証書や公正証書等の形式にかかわらず、日付の一番新しいものが有効となります。

2.さあ、これで大丈夫。いやちょっと待った。遺留分て何?

 遺言書を書けば、もめないで相続ができると書きましたが、民法で規定された遺留分まで我慢しろとはいえません。遺言書1通ですべてが解決とはいきません。
 遺言によって相続人に財産を残すとき(遺贈)は、法定相続分より優先します。しかし、相続人の利益を保護する観点から、一定の遺留分が定められています。
 相続人が遺贈によって財産を取得しようとしても、他の相続人が遺留分の権利を主張すれば、遺留分に相当する部分の遺贈は認められません。
 遺留分の額は、法定相続分の2分の1となっています。
 ところで、遺産を分割する方法には、次の3つがあります。

(1)現物分割
もっとも一般的な方法です。この方法の欠点は、割り切れないことです。土地、建物等の場合、共有にすると後の処分とかが難しくなるため、できれば共有にすることは避けたいです。


(2)換価分割
この方法は、分けにくい財産を売却して、その代金を分ける方法です。土地等を売却して所得税、住民税を払った残りの現金を分割することになります。


(3)代償分割
分割しにくい財産や、売却したくない財産の場合、相続人のうち1人がその財産を相続して、他の相続人にはその代償として金銭などの財産を渡す方法です。この方法が、もめない相続のために今、1番よくつかわれています。

 上記の遺留分の問題を解決するため、遺言書の作成とあわせて、この代償分割を活用することをお勧めします。他の相続人に渡す金銭がない場合、生命保険を見直して財産を相続する人が、保険金を他の相続人に支払うことでもめないようにします。この方法のためには、まず生命保険の見直しが必要になります。

3.遺産分割協議書は必ず作成しましょう。

 最近私の事務所に相談に来てくださる方に多いのが、「土地の名義が祖父の名義のままになっている。」という相談です。相続税がかからず、登記費用が大変だからという理由で分割協議もせず、登記もせずに何十年かたってしまったのかもしれません。しかしちょっと待ってください。その登記しなかった土地を処分しよう、有効活用しようというとき、先代の名義のままでは何もできません。結局大変な思いをするのは、お孫さんです。なぜなら、その土地の名義を書き換えるには、遺産分割協議を最初からやりなおさなければならないからです。お父さんの兄弟が存命で、近くにいればそれほど手間はかからないかもしれません。しかし、すでにその子の代になっていて、さらに兄弟が数人いて、遠方にいる、あるいは所在がつかめない。こうなると大変です。そうならないように、必ず遺産分割協議書を作成する。そして、土地建物の名義変更の手続きを実施しておいてください。
 当事務所でも名義変更のお手伝いをさせていただいております。どうぞお気軽にご相談ください。

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