「社会保障・税番号制度」(マイナンバー制度)とは、主として社会保障と税の行政手続において1人に1つ付番された「個人番号」(マイナンバー)を利用することで、行政機関が名寄せして情報を管理したり他の行政機関に情報を問い合わせできるようにし、社会保障の公平な支給と正確な所得把握等を行うためのものです。
本制度に伴い、民間企業は、個人番号関係事務実施者として、社会保険や税に関して行政機関等に提出する書類に、従業員・取引先・株主等の個人番号を記載して提出することが義務付けられています。
(図①の対象者から、個人番号の提供を受け、保管し、行政機関に提出する書類に記載する必要があります)
対象者 | 個人番号の記載が必要となる書類 | 書類への記載開始時期 |
---|---|---|
従業員・ 扶養親族 |
(税) ・源泉徴収票 ・扶養控除等(異動)申告書 (保) ・雇用保険の書類 ・健康保険・厚生年金の書類 |
2016年の給与所得から 2016年1月1日から 2017年1月1日から |
取引先 |
(税) ・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 ・不動産使用料等の支払調書 |
2016年の支払から |
株主・出資者 |
(税) ・配当、余剰金の分配及び基金利息の 支払調書 |
2016年の支払から (既存の株主について 3年間の猶予あり) |
民間企業にとっては、「マイナンバー法」対応とは
準備(「個人番号及び特定個人情報取扱規定」「就業規則」など諸規則の改定等)
①個人番号の収集
②個人番号の管理・保管
③行政機関への提出
の3のステップとなります。
従業員数が100人超の企業は「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」により、
特定個人情報等の具体的な取扱いを定めた取扱規程を作成することが義務付けられています。
従業員数が100人以下の企業(中小規模事業所)については、ガイドラインにより取扱規程の作成は義務付けられていませんが、特定個人情報等の取扱いを明確化することが定められています。
従いまして、中小規模事業所であっても取扱規定を作成することをお勧めいたします。
取扱規程については、書式サンプルをご参照ください。
1-1 従業員への周知
●全従業員に伝えるべき事項●
①マイナンバーはどのような手続きで使用するのか?
源泉徴収事務や、社会保険関係事務で使用します。重要な番号なので、家族分を含め、なくさないように保管すること。
②マイナンバーはいつ、どのように通知されるのか?
平成27年10月以降、住民票記載の住所に簡易書留で「通知カード」が送付されること。
③禁止事項
1)マイナンバーが表示されている書類を、机の上などに放置しないこと。
2)自分、他人を問わず、マイナンバーを法令で定められた目的以外で他人に知らせないこと。
3)他人(お客様など)のマイナンバーを法令で定められた目的以外で取得しないこと。
④「通知カード」と「個人番号カード」
前述の「通知カード」には顔写真が表示されないため、単独で身分証明書として使うことはできません。
これに対し、平成28年1月以降、申請によって自分の「個人番号カード」が交付されます。
「個人番号カード」には顔写真が表示されるため、身分証明書として使用できるほか、市区町村が提供する
サービスを受けるときや、電子申請を行う際の本人証明などの用途でも使えます。
●総務・経理業務担当者に伝えるべき事項●
①マイナンバーを法令で定められた利用目的以外で取得・利用・他者へ提供しないこと。
②マイナンバーを法令で定められた利用目的以外で保管しないこと。
また、業務で使用する必要がなくなったら破棄すること。
③情報漏えいなどへの対策を確実に行うため、マイナンバーを取り扱う業務の社内ルールを決めて遵守すること。
1-2 従業員へマイナンバー提出のお願い
従業員のマイナンバーを収集する際、会社としては下記の3点を行う必要があります。
①従業員へ利用目的を説明する
従業員へのマイナンバー提出のお願い文書(サンプル書式)を参考に、従業員へ説明しましょう。
②従業員からマイナンバーが記載された「扶養控除等申告書」等の提出を受ける
1)例えば源泉徴収票の作成事務であれば、「扶養控除等申告書」の提出を受ける際、
マイナンバーを記載して提出してもらう事になります。
2)マイナンバーは源泉徴収票の作成事務以外にも、雇用保険や健康保険等の手続きでも必要になります。
③従業員の本人確認を行う
1)「番号確認」と「身元確認」の仕方は3通りの方法があります。
・個人番号カード(平成28年1月以降、申請により取得できるカード)
※番号確認と身元確認の両方を行えます
・通知カードと運転免許証など(写真付身分証明書)
・住民票の写し等と運転免許証など(写真付身分証明書)
2)既に雇用関係にある従業員は、通常は採用時に本人の身元を確認済みであると考えられます。
このため、通知カード等による番号確認のみ行い、身元確認を省略することも認められます。
ただし、運転免許証などの提示による身元確認をせずに採用しているような場合は、改めて
身元確認を行わないと本人確認としては不十分です。
3)本人確認はマイナンバーを取り扱う総務・経理担当者が対面で確認するほか、本店と営業所が
分かれているような場合は、営業所のとりまとめ担当者(部署の責任者など)が本人確認をする
ことも可能です。
あらかじめ本人確認を誰が担当するかを決めておき、本人確認を行った事実を記録しておく
必要があります。
1-3 従業員以外(取引先・株主等)からのマイナンバー提出のお願い
法定調書作成のため平成28年1月1日以後の金銭の支払いに係るものから、従業員以外からも
マイナンバーを取得しなければならない場合があります!
具体的な取引 マイナンバーの収集先(支払先)
報酬や原稿料、講演謝金の支払等 → 税理士、社会保険労務士、原稿の著者、講師等
地代・家賃 → 地主・大家
不動産等の譲渡対価の支払 → 不動産等の譲渡者
不動産売買や貸付の斡旋手数料の支払 → 不動産の売買や貸付の斡旋をした者
利益の配当、剰余金の分配又は基金利息の支払 → 株主
マイナンバー収集時の留意点
①法定調書作成のためにマイナンバーを取得する旨を説明する必要があります。
②不動産の使用料等の支払調書は、年間の支払合計額が15万円以下の者については提出義務は
ありません。契約時点で年間支払額が15万円以下になることが明らかな場合、マイナンバーの取得は
できません!ただし、提出が免除されている法定調書であっても提出が禁止されているわけではありません。
このため、マイナンバーを取得してしまった場合は、提出不要の場合であっても提出してしまえば
利用目的の範囲内と考えられます。
3-1 組織的安全管理措置
①特定個人情報等を取り扱う事務の範囲と実際に取扱う事務担当者と事務責任者(事務取扱担当者が複数の場合)を決める。
②特定個人情報等の取扱状況の記録(書式サンプル)を保存する。
3-2 人的安全管理措置
事務取扱担当者への適切な監督・教育が必要です。
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3-3 物理的安全管理措置
①特定個人情報の取扱場所(管理区域の限定)を検討する必要があります。
②電子機器及び媒体の盗難防止対策する必要があります。(施錠付のキャビネットや、チェーンロックなど)
③電子機器において、使用するユーザー権限やパスワードの対策も必要です。
④特定個人情報が記憶されている電子機器及び媒体の持出は、追跡可能な移送手段など安全な方策を講じる必要があります。(持出データの暗号化やパスワードの保護)
3-4 廃棄・削除
特定個人情報等の関係事務を処理する必要が無くなった場合には、所管法令に定められている保存期間後に速やかに廃棄又は削除します。ただし、個人番号部分を解読不能程度にマスキングしている場合には保管を継続できます。
(準 備)
(収 集)
(管理 ・ 保管)
(その他)