メディア掲載情報

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株式会社TKC発行の企業向け情報誌「戦略経営者」2023年11月号に当事務所のお客様である、株式会社あしあと様がご紹介されました。

職員の7割超が60歳以上の住宅型有料老人ホーム

有料老人ホームのスタッフとして高齢者を積極的に採用しているのが、鹿児島県鹿児島市のあしあとだ。柔軟な勤務体系とDXによる業務の効率化で高齢者でも働きやすい職場を実現している。

鹿児島市中心部から路面電車に乗り、終点の谷山駅。徒歩すぐの場所に、あしあとが運営する住宅型有料老人ホーム「それいゆ東谷山」はある。6階建てビル1棟で運営している施設の特徴について、松林秀実社長は次のように語る。
「当施設の特徴は、要介護度3以上などの要介護度の高い入居者を多く受け入れている点です。また身寄りのない方や生活保護を受けている方なども受け入れています。ほぼ全員が車いすの利用者で、寝たきりに近い状態の方も少なくありません。80名を超える方のターミナルケア(看取り)を行っており、多くの入所者、そのご家族についのすみかとして選んでいただいています。近隣の医療機関と緊密に連携をとっている点などが評価され、オープン後10年が経過し認知度も向上しており、施設稼働率は常に95%を上回っています」
入所者の平均要介護度は3・9。医療機関や訪問看護ステーションとの連携により、胃ろうや酸素吸入、脳・心疾患等医療ニーズの高い高齢者を多く受け入れている。
体力の衰えが生じる高齢者が働くには厳しい職場環境にみえるが、松林社長はむしろ積極的に高齢者を採用。その最大の理由は、入居者とのよりよいコミュニケーションを通じたケアの質の向上だ。
「介護では入居されている高齢者の方との意思疎通が極めて重要です。入居者のほとんどは、仕事や子育てを終え人生のステージの一番後に来ている段階。しかし若い職員は、入居者が抱える高齢者特有の悩みなどに共感できる年齢にはまだ達していません。その点、高齢スタッフは同じ目線で接することができます」(松林社長)
職員の7割以上は60歳以上で、最高齢はなんと79歳の女性。体力や健康状態に応じ勤務日数・時間は柔軟に対応しているため、看護師などの有資格者も多く活躍している。

セラピー犬のアッシーを抱く松林秀実社長

セラピー犬のアッシーを抱く松林秀実社長

株式会社あしあと


業 種 住宅型有料老人ホーム、
    コミュニティデイサービスの運営
設 立 2014年1月
所在地 鹿児島県鹿児島市東谷山2丁目6番1号
売上高 約1億5000万円
従業員数 27名(パート含む)

採用では「定年なし」を強調

勤務日数・時間の柔軟な対応に加え、高齢者が働きやすい職場づくりに貢献しているのが、DX化への取り組みだ。例えばナースコールへの対応業務については、呼び出し音と同時に居室の画像をスマートフォンなどで確認できるワイヤレスのコールシステムを導入。
入居者から一番近くにいるスタッフへの対応を指示することができるため、無駄な上下階の移動などを防ぐことができる。入所者との受け答えの記録もスマホなどのデジタル端末から記録できるので、手入力の手間を削減することに貢献できるという。DX化は業務効率の向上と入所者家族の安心感につながっているという。
「主要スペースにカメラを設置し事務室で一元的にコントロールできる仕組みを構築したことにより、23名の入所者に対する1日当たりの従業員稼働数は6~7名に抑えることが可能になっています。またカメラの撮影記録等により介護現場の見える化にもつながっており、施設での虐待などのニュースが流れるなかご家族には安心していただいています」(松林社長)
一部の居室には最新の介護ベッドも導入予定。マットに設置してある脈拍や体温等のセンサーがバイタル情報を取得、入居者の健康状態を常にモニタリングすることができるようになる。
採用はウェブ媒体を通じて行っている。最大のメリットは広告の効果を数字で確認できることだ。
「アクセス数や年齢など属性別の内訳のデータを後から正確に分析できるのがネット広告のよいところです。担当者とデータを共有しながら、夜間スタッフや調理スタッフ向けに特化した応募など、欲しい人材に応じてその都度募集内容を変えています」(松林社長)
広告には必ず、「定年制なし」「月1回から可能」など高齢者でも気軽に応募できるメッセージを強調。
当初はネットを通じた採用に高齢者が対応できるか心配したが、パソコンは使えない高齢者でもスマホは使いこなしていることが分かったという。

セラピー犬のムーア

セラピー犬のムーア

演奏を楽しむ入所者たち

演奏を楽しむ入所者たち

70代以上の職員も元気に活躍

70代以上の職員も元気に活躍

それいゆ東谷山

それいゆ東谷山

都市型施設をさらに2棟開設

商社勤務だった社長があしあとを設立したのは2013年のこと。
数十年後までの人口比率分布をみたときに、高齢者の介護事業に成長性を感じたことが設立の理由だ。
とりわけ交通の便のよい都市部の個室型の施設の需要が伸びると見込んだ。
「ここ谷山エリアは鹿児島市の中心部からは少し離れていますが、大手ショッピングモールもあり、介護施設を必要とする人も増えるだろうと予想しました」(松林社長)
鹿児島市内の中心部に来年5月に2棟目の老人ホームがオープンする予定。既存のビルを購入しリノベーションを行う。
「2階から6階を使う新施設の最大の特徴は、1階にクリニックが入ること。医療機関との連携をより緊密にし、各階に往診していただけることが決まっており、入居者が自分で病院に行く手間がゼロになります。それいゆ東谷山よりさらに便利な場所にあるため、徒歩で勤務できる人も増えるでしょう。郊外の不動産を売却し都市部の介護施設に入りたいと希望される高齢者の方やご家族は年々増えており、今後も都市型マンションの有料老人ホームの需要は伸びると予想しています」(松林社長)
こうした見込みに基づき、さらに鹿児島市内の別の地域で3棟目の建設計画も進んでいるという。
23年には健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定を受けるなど、高齢者でも働きやすい職場環境はお墨付き。近隣在住の高齢者スタッフのホスピタリティーが生かされる場が今後も増えそうだ。