メディア掲載 戦略経営者2024年12月号

株式会社IP-STYLE様

株式会社TKC発行の企業向け情報誌「戦略経営者」2024年12月号に当事務所のお客様である、株式会社IP-STYLE様がご紹介されました。

戦略経営者2024年12月号

IP-STYLE 井之上旭社長

特殊清掃、遺品整理など人生の終焉に関する事業をワンストップで展開
「信用力」と「覚悟」で存在感を放つ

 「当社が掲げる目標に、事業拠点を1カ所に集約する『エンディングモール』構想があります。『人生のエンディングに関するサービスを、ワンストップで提供できる』という当社の強みを、より総合的に発揮していきたい。そのためにも事業所、セレモニーホール、中古品の買い取り店、不動産に関する相談窓口などを1拠点に集中させ、『ここに来れば人生のエンディングに関する諸問題をすべて解決できる』という場所を作りたい――。これがエンディングモール構想の根幹にある考え方です」

 こう将来を見据えるのは、鹿児島を拠点に人生の終焉に関するさまざまな事業を手がける、IP-STYLEの井之上旭社長だ。

エンディング事業のプロを標榜

 孤独死現場の特殊清掃や遺品整理、生前整理、セレモニーホールの運営などのサービスを提供しているIP-STYLEのほか、「Unimo不動産」の屋号で不動産の管理・売買と、不用品の回収・買い取り事業を展開する株式会社P5(ピーファイブ)、葬儀時の祭壇・生花の設置を生業(なりわい)とするクライス株式会社の3社を通じて、身内の不幸に接し、悲しみや混乱の渦中にある顧客に寄り添ったサービスを展開している。

 主要顧客は鹿児島県内在住の個人で、直近の年商は2億1000万円。その内訳は特殊清掃・遺品整理事業がおよそ30%、葬儀場の運営といったエンディング事業が30%、ハウスクリーニング事業が40%と、いずれも堅調なペースで成長を遂げている。P5とクライスを含めたグループ全体では約5億円にのぼるという。

 「当社は『エンディング事業のプロ集団』を標榜(ひょうぼう)しており、人生のエンディングに関するサービスを幅広く展開することで、成長してきました。こうしたサービスをワンストップで提供しているのは、鹿児島県内では当社だけです」(井之上社長)

IP-STYLE

株式会社IP-STYLE
業 種:特殊清掃・遺品整理・生前整理・セレモニーホール運営など
創 業:2015年6 月
所在地:鹿児島県鹿児島市谷山中央1-4321(グループ本部)
売上高:2億1000万円
社員数:8名
利用システム:FX2 クラウド

キーワードは「ワンストップ」

 井之上社長が再三口にする「ワンストップ」。これが他社との差別化を実現している一番の要因だ。同社では、創業3期目にあたる2017年に特殊清掃・遺品整理の業界に参入して以降、人生の終焉にかかわる事業に次々と挑戦していった。

 19年には、中古品の買い取り専門店「金のクマ」の1号店を鹿児島市内にオープン。20年には不動産事業を、21年にはエンディング事業をスタートさせ、22年には家族葬専用のセレモニーホール「EnPlus(エンプラス)」を同市内にオープンした。

 「特殊清掃の現場を訪ねるなかで多く寄せられたのは、『お葬式の手配や遺品等の買い取り、不動産の処分についても対応できないか』という声でした。この言葉をヒントに、人生のエンディングに関する事業を矢継ぎ早に展開していったのです」

 そう井之上社長が説明するように、孤独死が発覚した場合、遺族は葬儀の手配、物件の清掃や処分、遺品整理など、ありとあらゆる手続きに追われる。身内を亡くしたことによる喪失感を抱えるなかで、葬儀場、特殊清掃業者、不動産会社、中古品の買い取り業者など、さまざまな事業者とやり取りしなければならないのだ。

 「『IP─STYLEさんに相談したことで、葬儀の前後に必要な手続きをスムーズに対応することができ、とても助かった』といった声を多くいただいており、これが私たちの仕事に対するモチベーションの向上につながっています」(井之上社長)

今年完成したグループ本部社屋

今年完成したグループ本部社屋

今年10月に僧侶として新たな一歩を踏み出した。法名は「井之上清浄」

今年10月に僧侶として新たな一歩を踏み出した。法名は「井之上清浄」

2022年にオープンした家族葬ホール「EnPlus」

2022年にオープンした家族葬ホール「EnPlus」

特殊清掃に一縷の望み

 総合商社に20年間勤めたのち、脱サラして起業した井之上社長。当初はコインパーキングの代理店として、土地の所有者に土地活用の提案や収支シミュレーションなどを行っていた。しかし思うように業績を伸ばすことができず、事業は暗礁に乗り上げていたという。

 経理担当として創業時から会社を支えてきた井之上はるな専務は、当時をこう振り返る。

 「事業を特殊清掃にシフトすることを社長から聞かされたのは、資金繰りに苦しむようになった当初のことでした。経営戦略を見直す必要性は感じていたものの、特殊清掃という未知の分野に対し、『軌道に乗るだろうか』と不安な気持ちを抱いたのが正直なところです。ただ、社長自身が事業転換に本気の姿勢を示していたので、一縷(いちる)の望みを賭けて社長の決断を信じることにしました」

 幼少期に父親を事故で亡くし、起業前に母親との死別を経験した井之上社長。親を亡くしたことの悲しみと向き合うなかで、次第に事故現場の清掃や遺品整理に関心を持ち始める。その後、井之上社長は、福岡県の特殊清掃会社で2~3年間ほど経験を積み、孤独死現場に入ることの心構えや特殊清掃に関する知識・ノウハウを学んだ。

 「修業期間中は仕事のノウハウを学ぶとともに、合間を見つけては営業活動にも力を入れました。その結果、多くのお問い合わせをいただけるようになりました。これに加えて、ホームページやSNSを活用し、情報発信を積極的に行ったことも、受注量の拡大に拍車をかけました」と、井之上社長は述懐する。

信用力の強化に努める

 こうして柱となる事業を特殊清掃にシフトした同社。続いて井之上社長が取り組んだのは、「信用力」の強化だ。

 特殊清掃や遺品整理においては、顧客の私物を取り扱うことから、会社としての信用力の確保、顧客との信頼関係の構築が欠かせない。そこで井之上社長は、20年4月に鹿児島県弁護士協同組合特約店の認定を取得。特約店となったことを機に、信用力が強化されたと井之上社長は言う。

 「特約店の認定を受けるには、組合の厳しい審査をクリアする必要がありますが、その分、事業者としての信用力を保証しています」(井之上社長)

現場に向き合う〝覚悟〟

 周知のとおり、近年、孤独死が社会問題となっており、全国的にも特殊清掃を専門とする事業者が増加傾向にある。鹿児島県も例外ではなく、特殊清掃や遺品整理を手がける企業が、この10年で大幅に増えたと井之上社長は語る。

 「事業を転換した当時、市内で特殊清掃や遺品整理を扱う事業者は当社を含め、わずか2~3社程度でした。最近は会社の規模を問わず、さまざまな事業者がこの業界に参入していますが、その分早々に撤退する事業者も少なくありません。おそらく、孤独死の現場を目の当たりにするなかで、仕事に対する意欲を失っていったのでしょう。この仕事は生半可な気持ちでは決して務まりません。凄惨(せいさん)な現場と故人に向き合う〝覚悟〟が欠かせないのです」

 この覚悟を体現するかのように、井之上社長は今年の10月、真言宗金剛山弘浄寺での修行の末、僧侶として新たな一歩を踏みだした。得度を受けた経緯について、井之上社長はこう説明する。

 「得度を受けたのは、孤独死の現場に入るなかで、身寄りのない故人を供養してあげたいという思いが芽生えたからです。私はあくまでもその場で供養することしかできませんが、これからも日々の仕事を通じて、現場や故人と真摯(しんし)に向き合い続けていきます」

コンサルタントの眼

税理士法人森スクラム会計
鹿児島県鹿児島市伊敷台4-13-6
公認会計士 倉内龍児

 IP-STYLEさまの税務顧問に就いたのは2017年のことで、当初から「社会問題と真正面から向き合っており、きわめて社会性の高い事業を展開している」という印象を持っています。

 当事務所ではTKC方式の自計化に力を注いでいることから、IP-STYLEさまにおいても、顧問に就いて早々にTKCの自計化システムを導入いただきました。最初はスタンドアロン版の『FX2』を利用していましたが、20年に『FX2クラウド』に移行。当時はコロナ禍真っただ中で、経理担当の井之上専務がテレワークを実施するようになったことから、経理業務のクラウド化へと舵(かじ)を切りました。

 IP-STYLEさまでは毎期首に全従業員、協力会社社員、取引金融機関などが一堂に会し、自社の戦略目標や業績目標を共有するミーティングを開催されています。私も毎年参加しており、今後のミーティングでは、従業員さん向けの勉強会で、講師を務めさせていただく予定です。IP-STYLEさまの成長の秘けつは、こうした情報共有や従業員と協力会社等との交流を大事にするところにあると感じています。

 また、井之上社長は金融機関との関係強化にも熱心に取り組んでおられます。TKCモニタリング情報サービス(MIS=P29)を活用して、二つの取引金融機関に対して決算書を送付。今年完成したグループ本部の社屋の建設資金を迅速に調達するなど、MISの活用は、IP-STYLEさまの経営戦略の遂行を大きく後押ししています。

左から倉内龍児氏、井之上社長、井之上はるな専務

左から倉内龍児氏、井之上社長、井之上はるな専務