雇用保険では令和7年4月以降、大きく4つの改正が実施されます。経営者にとっても重要な変更点が含まれています。経営者目線でのポイントや今後の対策等について解説いたします。
自己都合退職者が失業給付(基本手当)を受ける際の給付制限は、現在「7日間の待機期間+2か月の給付制限」がありますが、令和7年4月以降は原則1か月に短縮されます。
これにより、求職活動が早期にスタートでき、再就職までの期間短縮が期待されます。ただし、5年以内に3回以上の自己都合退職をしている場合は、現行通り給付制限期間が3か月となります。
また、離職日前の1年以内に教育訓練給付の対象となる教育訓練を受けていた場合、待機期間(7日間)終了後すぐに基本手当の受給が可能となります。
2024年10月には教育訓練給付の給付率が引き上げられましたが、さらに2025年10月には「教育訓練休暇給付金」が新設されます。
これは、在職中に無給の教育訓練休暇を取得した従業員に対して、基本手当相当額を支給する制度です。雇用保険法改正の目的のひとつが「リスキリングの促進」であり、従業員のスキルアップ支援を通じて企業の競争力向上も期待されます。
高年齢雇用継続給付金の支給率が引き下げられます。
60歳以降も働き続け、賃金が60歳時点の75%未満に減少した場合、これまではその差額の最大15%が支給されていましたが、改正後は10%に引き下げられます。
この改正は2025年4月以降に60歳になる方が対象で、すでに受給中の方は現行のままです。
ア、「出生後休業支援給付金」
男性が子の出生後8週間以内に14日以上の育児休業を取得した場合、育児休業給付金に13%を上乗せし、給付率は80%(手取りで10割相当)となります。
イ、「育児時短就業給付金」
2歳未満の子どもを育てながら短時間勤務をする労働者に対し、支払われた賃金の最大10%が支給されます。
給付制限が緩和され、経済的な不安が軽減されることで、退職のハードルが下がります。2025年4月以降は「辞めやすい環境」が整うため、特に若手社員の流出リスクが高まります。
2028年10月施行予定の雇用保険加入要件の緩和(週10時間以上)により、対象従業員が拡大。新たにパートやアルバイトも加入対象となり、企業の保険料負担が増加します。
育児時短就業給付金の創設により、育児と仕事の両立を希望する従業員が増加する見込みです。柔軟な働き方への対応が必要となります。
教育訓練休暇給付金の新設により、在職中にリスキリングのための休暇を取得する動きが進むと見られます。業務調整の必要性が生じます。
今回の雇用保険法改正は、働く人の多様なニーズに応える一方で、企業にとっても対応が求められる内容となっています。
特に「給付制限の緩和」は、従業員の退職リスクを高める要因となる可能性がある一方で、「リスキリングの促進」や「時短勤務支援」など、前向きな活用次第で優秀な人材確保にもつながります。
今後の動向を見据えつつ、自社の人材戦略や就業規則の見直しも検討していきましょう。