中小企業の会計に関する指針

中小企業の会計に関する指針について

  平成17年6月に新会社法が成立し、この会社法では会社の会計は一般に公正妥当と認められる会計の慣行や会計の基準に任せようという考え方を採りました。
  平成17年8月1日に日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会は「中小企業の会計に関する指針」(以下、指針という。)を作成し公表しました。
  今後は中小企業における会計・決算においてこの指針が重要な拠り所となると思っております。

1 経緯
(1)昭和24年に企業会計原則が設定されて後、日本の会計は、この企業会計原則、各種会計基準、商法、そして税法の規定(以下、税務基準)を拠り所として行われてきたと言えます。
  日本の中小企業の会計はこれまで税務基準に大きく依存して行われてきたというのがほぼ実態であります。いうならば決算の利益と税務の所得が同じになるよう会計・決算が行われてきたというのが現状といってよいと思います。
  会計と税務はそれぞれ目的は違いますが、これまでは税法で算定される所得は、会計の考え方で把握される利益と、税法に別段の定めがあるものを除きほぼ同じであったといえます。
(2)ところが、平成10年頃から会計の変革が行われるようになりました。これは、国際会計基準に適応しようと日本の会計基準を次々に整備するものでした。グローバル経済を反映して上場企業等は国際会計基準に適応する会計基準に従って会計を行う必要があるからであります。こういった会計基準は中小企業には必ずしも適合したものではありません。
(3)一方、同じ平成10年から税法も引当金を廃止するなどの改正が行われました。
  こうして会計基準と税務が乖離するようになり、中小企業にとっての会計の拠り所が不明確となってまいりました。
(4)そこで、中小企業の会計の基準・拠り所を検討しようという気運が生まれました。平成14年6月に中小企業庁が「中小企業の会計に関する研究会報告書」を発表し、また、これに呼応して平成14年12月に日本税理士会連合会が「中小会社会計基準」を、平成15年6月に日本公認会計士協会が「中小会社の会計のあり方に関する報告書」をそれぞれまとめました。
(5)本指針は、これら3つの報告を統合するものとして、平成17年8月に関係四団体により作成され公表されたものであり、さらに、会社法、会社法施行規則及び会社計算規則の制定に伴い平成18年4月に本指針の見直しが行われました。

2 本指針への対応
(1)会社法では、会社の会計は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うもの」としており、計算書類の作成方法等を定めた会社計算規則の解釈及び規定の適用に関しても会計の基準その他会計の慣行を斟酌しなければならないとしておりますが、そのような企業会計の慣行として本指針なども意識していると解されております。
(2)本指針は、会計の専門家団体である日本公認会計士協会・日本税理士会連合会のほか、中小企業の会計のユーザーを代表する日本商工会議所、日本の企業会計基準の設定主体である企業会計基準委員会を含めた関係四団体で検討されたことは、公正妥当性を伺わせることでもあります。
(3)今後本指針が慣行として広まれば、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行となることは間違いないと言われております。
(4)最終的には司法で判断されることですが、現時点では、本指針に従わなかったからといって必ず会社法上違法になるわけではありませんが、本指針に従っておけば違法となることはまずないのではないかといわれております。
(5)本指針は上場企業の会計基準と考え方が変わりないからもっと中小企業に適合したものを設定すべきであるとの意見もありますが、このように関係四団体で作成・公表され、中小企業庁も本指針を拠り所として会計・決算を行うことを推奨しているところであります。
(6)当事務所も、決算書の正確性、適正性を高めるためにも今後基本的に本指針を拠り所として会計・決算を行って参りたいと考えております。

3 中小企業における会計の拠り所の変化・・イメージ

これまで

   事実上
 「公正なる会計慣行」の主な構成要素
      商法・施行規則
      企業会計原則
      会計基準
      税務基準

 これから

 「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」の主な構成要素
    会社法・計算規則
    企業会計原則
    会計基準
    会計指針

4 会計指針の内容
  本指針の内容については紙面の関係上当事務所にお問い合わせいただくなどお願いいたしますが、概略を申し上げますと、指針は企業の利益の実態を反映するべく作成されたものであります。引当金の設定や資産の評価損等において、税務基準よりも損の先出しが行われるケースがあると考えられます。それ以外は細かい点を除き現行実務とほぼ同様と思われます。
                                  以上
平成18年5月