令和7年5月号
役員給与を見直すときの留意点
従業員に対する給与・賞与等は、税務上、損金算入が認められています。一方、会社役員に対する給与・賞与等(役員給与)は、利益調整等の「経営の恣意性」の排除といった観点から、原則として損金不算入とされています。
ただし、中小企業では、「定期同額給与」「事前確定届出給与」のどちらかに該当すれば、不相当に高額な部分を除き損金算入が認められています。
「定期同額給与」「事前確定届出給与」の支給には一定のルールがあり、そのルールに従った運用が求められます。安易な中途改定は、税務上のリスクが伴います。期中の支給額変更を避けるためには、経営計画から導いた業績予測を基に支給できる役員給与の総額を算出した上で、月額給与を決めていくことが大切です。詳細は、当事務所までご相談ください。
令和7年度税制改正のポイント 子育てを支援する税制
子育て世帯の経済的負担を軽減し、安心して子育てができる環境を整えることを目的として、令和7年度税制改正において、子育て世帯等を対象として、①住宅ローン控除の拡充の延長②住宅リフォーム税制の拡充の延長③生命保険料控除の拡充──が行われます。
①住宅ローン控除の拡充の延長
令和6年限りとされていた子育て世帯等(19歳未満の子を有する人、またはいずれかが40歳未満の夫婦)に対する住宅ローン控除の借入限度額の上乗せ措置および床面積要件の緩和措置が、令和7年に限り引き続き適用できるようになりました。
②住宅リフォーム税制の拡充の延長
子育て世帯等が現在所有・居住しているマイホームに一定の子育て対応改修工事(リフォーム)を行った場合に、標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%に相当する金額等を所得税から控除できる制度です。令和7年に限り引き続き適用できるようになりました。
③生命保険料控除の拡充
令和8年分の措置として、子育て世帯(年齢23歳未満の扶養親族がいる世帯)を対象に、所得税の生命保険料控除において、新生命保険料に係る一般生命保険料の控除額の計算方法が見直され、その上で、適用限度額が最高6万円(現行:4万円)に引き上げられます。
令和7年5月「改正戸籍法」施行
戸籍の氏名にフリガナが追加されます
これまで氏名の「フリガナ」は戸籍の記載事項とされていませんでしたが、令和5年6月に戸籍法が改正され、戸籍の記載事項に、新たに氏名のフリガナが追加されることになります。この制度は、令和7年5月26日からスタートします。
制度開始日以後に、出生等により初めて戸籍に記載される人は出生届等の届出時にあわせてそのフリガナを届け出ることとなりますが、それ以外の人は、次のような流れで戸籍へフリガナが記載されます。
(1)令和7年5月26日以降、本籍地の市区町村から戸籍に記載される予定の氏名のフリガナの通知が届く
(2)通知されたフリガナが正しいかどうか確認する(正しい場合、特段の手続きなし)
(3)フリガナが誤っている場合、令和8年5月25日までに正しいフリガナの届出が必要(マイナポータルから届出可能)
令和7年4月号
面倒な入力作業にさよなら
「デジタルインボイス」で手間いらず!
インボイス制度の開始で売り手・買い手双方に留意すべき点が増えた請求業務。社内外の関係者とのやりとりも多く、人為的ミスが起きやすい業務の1つです。そうした中、「デジタルインボイス」を中心としてデータ連携させれば、売り手・買い手の双方で「手間いらず」な請求業務が実現します。
デジタルインボイスとは、請求書の発行から受領まで、一切人の手を介さずに、売り手と買い手のシステム間で直接データを連携させて自動処理する仕組みです。PDF等の電子データとは異なり、データの項目が統一されている(標準化)、コンピュータが読み取りやすい形式になっている(構造化)――ことから、売り手・買い手の双方で、請求データ発行/受領後の作業が自動処理されるのです。
業務をより効率化し、時間外労働の抑制や人手不足に対応していく上でも、デジタルインボイスへの対応は必要不可欠といえます。
令和7年度税制改正のポイント
資産形成の一助に! 知っておこう「iDeCo」の改正
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、国民年金や厚生年金等の公的年金に上乗せする年金制度の1つです。加入は任意で、加入者は、自身で設定した掛金を拠出し、その掛金を元手に自ら選んだ金融商品で運用。運用益を含めて積み立てた年金資産は、原則60歳から受け取ることができます。
働き方やライフコースが多様化する中、老後に向けた資産形成をより一層促進する観点から、令和7年度税制改正において、iDeCoの毎月の拠出限度額が引き上げられます(確定拠出年金法等の改正が前提であり、引き上げの具体的時期は未定/令和7年2月1日現在)。第2号被保険者(会社員等)の場合、企業年金と共通の拠出限度額に一本化。企業年金の有無にかかわらず、「iDeCo+企業年金」の合計拠出限度額は月額6万2,000円となります。第1号被保険者(自営業者やフリーランスの人)の場合、「iDeCo+国民年金基金等」との合計拠出限度額は月額7万5,000円となります。
法務局が保管!
安心して遺言書を残せる「自筆証書遺言書保管制度」
「自分の財産を誰にどれだけ残すのか」という意思表示を書面にしたものが遺言書です。一般的に用いられる遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」があります。「公正証書遺言」は、公証人が遺言書の作成を手掛けるため無効になる可能性が低く、原本は公証役場で保管されるので改ざんや盗難・紛失等のおそれがありません。その反面、証人が2人以上必要で、費用や手間がかかります。「自筆証書遺言」は、遺言の全文は自筆でなければなりませんが、費用や手間がかからない一方で、「一定の要件を満たしていないと、遺言が無効になる」「破棄、隠匿、改ざんされるおそれがある」といった課題があります。
こうした課題を解消し、自筆証書遺言を安心して残しやすくするための制度が「自筆証書遺言書保管制度」です。この制度は、遺言書の作成者本人が遺言書を法務局に持参し、本人確認を受けた後、法務局において自筆証書遺言(原本)とその画像データが保管されるものです。①法務局で保管されるため、紛失や隠匿、改ざん等のおそれがない②民法で定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて法務局が確認するため、外形的なチェックを受けられる――等の利点があります。なお、遺言書の作成にあたっては、税務への影響もあるため、税理士にお声掛けください。
令和7年3月号
そもそも「103万円の壁」って何?
令和7年度税制改正おいて、話題となっている「年収103万円の壁」の見直し。「103万円」とは、基礎控除額48万円と、給与所得控除の最低保障額55万円を合わせた合計の金額で、所得税が非課税となる範囲をいいます。このことから、「103万円」という金額が1つの区切り(壁)のように強調され、その結果、この金額を目安として就業調整をする人も少なくありませんでした。
「令和7年度税制改正の大綱」(令和6年12月27日閣議決定)によれば、基礎控除額が58万円に、給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げられます。これにより、一部の人を除き所得税が減税となります。特に、これまで「103万円以内」を意識して就業調整をしていた人は、所得税の非課税の範囲が123万円まで拡大することで、働き方が変化することになります。
「103万円の壁」の見直しによって、所得税の課税対象外となる人が増えれば、源泉徴収の対象者が減少します。また、扶養控除の合計所得金額要件も見直されることになります。給与計算システムの活用等、柔軟な対応ができるように今から準備しておきましょう。
「ギャップ」は成長のヒント!
経営計画を活用しましょう(実践編)
社長の「今期やりたいこと」を数字に落とし込んだものが、経営計画です。経営計画は毎月の実績と照らし合わせてこそ、その真価を発揮します。経営計画と実績の「ギャップ」から、「今どうなっているのか」「これからどうしていけばいいのか」など、会社が成長・発展するヒントが見つかります。実績の数字を見て「あれ?」と感じたところから、その背景や要因を探り、打ち手を考えて実行することが大切です。
経営計画の達成のためにも、毎月しっかり最新業績を確認する習慣をつけましょう。
2026年に紙の約束手形の利用が廃止されます
進めましょう! 決済手段のデジタル化
決済手段の1つである、紙の約束手形。約束手形を振り出して支払う側の企業(支払企業)にとっては、①現金での支払日を延ばせるため資金繰りに余裕ができる②金利が発生しないためコストが削減できる──といったメリットがあります。一方で、約束手形を受け取る側の企業(受取企業)にとっては、その裏返し。また、多くの場合、支払企業は仕事を発注する側であり、受取企業は仕事を受注する側=下請の立場にあります。こうした取引上の立場の違いもあり、紙の約束手形による支払いは、受取企業が資金繰りに苦しむ要因の1つとなっていました。そこで政府は、「2026年をめどに、紙の約束手形の利用を廃止する」との方針を打ち出し、これを受けて産業界・金融界では、その実現に向けた取り組みが進められています。
現在、支払手段の1つとして紙の約束手形を利用している企業は、2026年までに、①現金による支払い(原則/インターネットバンキングによる銀行振込を含む)②電子記録債権(でんさい)による支払い――のいずれかの支払手段に切り替えることが必要です。
また、2024年11月以降、下請法(下請代金支払遅延等防止法)の運用ルールが変更され、交付から満期日までの期間が60日を超える約束手形等による支払いは、業種を問わず行政指導の対象となりました。決済手段のデジタル化とともに、支払サイトの短縮が必要な場合は、新たに生じる運転資金の調達方法も考慮しましょう。
令和7年2月号
あらためてチェックしてみよう!
健全経営を支える経理の「きほん」
中小企業の経理担当者は、総務・人事・労務など複数の業務を兼務するケースが多いことでしょう。さまざまな業務をこなし、毎日の限られた時間の中では、記載事項等に不備のある証憑書類(領収書・請求書等)が回ってきても、「時間もないし……まあ、いいか」と目をつぶってしまいかねません。
けれども、実はそうした「まあ、いいか」は御法度です。日々の経理処理は、事業の実態をタイムリーに、かつ正確に把握するベースとなるもの。不確かな経理処理の積み重ねによってできあがる試算表や決算書は、当然、あいまいで不正確なものになり、その結果、社長は最適な経営判断を下すことが難しくなってしまいます。
また、「経理処理の不確かさ=お金の管理の甘さ」は、会社全体のモラルを低下させ、「公私混同」や不正を招く要因にもなります。経理処理こそ「基本に忠実」が重要です。あらためて自社の経理体制を見直してみましょう。また、適時・正確な経理処理のためには、①全従業員の協力②人為的ミスを減らす/防ぐ仕組みの導入(ダブルチェック体制の導入・業務の自動化)――も大切です。
きちんと実施していますか? 「棚卸」
「棚卸」(実地棚卸)は、会社が保有する棚卸資産(商品、製品、仕掛品、原材料等)を数えて正確な数量や品質を確認する作業です。実地棚卸は、①正確な決算書の作成②適切な在庫管理③適正な税務申告――といった観点から、正しくかつ定期的な実施が求められています。
①正確な決算書の作成
当期に仕入れた商品・製品等でも来期以降の売上に対応するのであれば、当期の売上原価にはならず、期末在庫(棚卸資産)となります。当期の売上高に対応する売上原価を計上することで正しい損益や資産が正確に決算書に表示されます。
②適切な在庫管理
実地棚卸は、過剰在庫や不足在庫、商品等の破損・紛失等を発見することができる絶好の機会でもあります。発注量の調整や不良在庫の処分等、適切な在庫管理のために必要な情報を得ることができます。
③適正な税務申告
「棚卸の計上漏れ=所得の過少申告」となるため、税務調査で確認される事項の1つに期末在庫の数量があります。社外の倉庫に預けてある商品や未着商品等のような「社外在庫」の確認はもれやすいため注意が必要です。
日頃から入出庫管理の徹底や倉庫内の清掃・整理整頓をしておくとともに、決算時に加え定期的な実地棚卸(毎月、あるいは少なくとも3か月に1回の頻度が理想的)を心がけましょう。
人手不足解消に効果アリ!?
「リファラル採用」の特徴と注意点
「良い人を採用したいけれど、なかなか見つからない……」と、人材採用について悩まれている社長も多いのではないでしょうか。近年、特に若い世代の労働人口が減少しており、採用に関する競争率は格段に高くなっています。こうした中、中小企業でも比較的取り組みやすい採用手法として注目され始めているのが「リファラル採用」です。
リファラルとは「推薦」「紹介」という意味で、社員等に知人・友人を紹介してもらい、入社につなげるというもの。対象となる人材に直接アプローチできる点が、リファラル採用の最大の特徴です。知名度の高い大企業や地元の同業他社等との競合を避けられる――等のメリットがあることから、リファラル採用は、中小企業こそ試す価値があるといえます。
リファラル採用に取り組む場合には、会社の制度として規程を設け、社員に周知することが重要です。また、「社員が紹介したくなる良い職場」であることも大前提。採用の仕組みを整えることはもちろん、現社員に対する待遇面の改善等にもきちんと取り組みましょう。
令和7年1月号
2025年に変わるヒト・モノ・カネ今年は「年調減税事務」が必要です
令和6年分 年末調整手続きのポイント
年末調整は、給与所得者の所得税額を正確に計算し、源泉徴収税額との過不足額を精算する手続きです。令和6年分の年末調整では、6月から実施された定額減税(所得税分:1人あたり3万円)にかかる「年調減税事務」が必要になります。
年調減税事務においては、従業員から提出された「扶養控除等申告書」や「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」等をもとに、年末調整時点において定額減税の対象となる従業員、同一生計配偶者、扶養親族の人数等に変更がないかを確認し、減税額を確定します。
以下に該当する場合には、注意が必要です。
○令和6年6月2日以後に採用した従業員
○令和6年6月以後、結婚・出生などがあった従業員(同一生計配偶者・扶養親族分)
○給与所得以外の所得を含めた合計所得金額が1,805万円を超えた従業員
○同一生計配偶者・扶養親族ではなくなった人(就職、離婚、所得が48万円超等) など
年末調整において確定した減税額等は、「給与所得の源泉徴収票」の「摘要」欄に記載することが必要になります。例年よりも早めに手続きを進めましょう。
もっとラクに、カンタンに!
今話題の「請求業務のデジタル化」
経営において、お金を回収する「請求業務」は非常に大事です。一方で、「納品書等から請求書に転記する際に記載ミス・計算間違いをしてしまった」「取引先から『請求書の内容がインボイスの記載要件を満たしていないので再発行してほしい』と言われた」「請求時に『売れ筋商品』『商品の売れ時』をチェックしたいが、管理が煩雑」といった経験はありませんか。「請求業務のデジタル化」で、これらのミスや手間、コストを削減しましょう。
「請求業務のデジタル化」には、FXクラウドシリーズ「販売管理機能」が便利です。売上伝票を作成すると同時に①納品書・請求書等が作成できる②仕訳も自動計上される──などの特長があるため、請求書発行時のミス・モレが起きづらくなります。その上、インボイス制度にも完全対応。また、商品ごと・取引先別の販売管理データから「売れ筋商品」「よく売れる月」「安定して入金してもらえている取引先」を「見える化」。「何が・いつ・どれだけ・誰に」売れているかがいち早く把握できるため、販売戦略のヒントがつかめます。
請求書をPDF化してメールで送信している企業では、よりデジタル化を追求した「ペポルインボイス」の利用も視野に入れてみましょう。請求業務のデジタル化がさらに加速します。
考えていますか? 「自社株式」の贈与
「株式の保有者」=「株主」の権利は「財産権」と「経営権」。自社株式の大半を経営者が保有している中小企業では、これらを普段の経営で意識することは少ないかもしれませんが、特に事業承継時には重要になります。「いつ」「どのタイミングで」「どのくらいの株式を渡すのか」について、財産権と経営権を考慮しつつ、長期的な展望で後継者に渡す(贈与する)ことが重要です。自社株式の贈与の前には、①自社株評価②名義株等の整理③株式譲渡制限の有無の確認――をしておきましょう。
多くの場合、事業承継における自社株式の贈与は「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」で行いますが、令和9年12月31日までは、「特例事業承継税制」を活用することも可能です。
複数年にわたる贈与は、毎年、自社株式の評価を行い、計画性をもって慎重に進めることが必要です。
つくってみましょう!「経営計画」
「経営計画」と聞くと、「なんだか難しそう」と苦手意識を持つ社長もいらっしゃるのではないでしょうか。経営計画は、社長が「来期やりたいこと」を数字に落とし込んだものです。まずは、社長の「来期やりたいこと」を思いつくままに挙げてみましょう。それが経営計画をつくる第一歩です。
その上で、「来期やりたいこと」を実現するためには、どれくらいの資金が必要になるかを会計事務所と一緒にシミュレーションしてみましょう。そのシミュレーションの元になるのが、①目標経常利益②売上高の伸び③限界利益率(粗利益率)④従業員給与・賞与の伸び⑤従業員数――の「5つの質問」です。「来期やりたいこと」を盛り込んだ、具体的な数字で考えてみると、取り組むべき課題が明確になってきます。
来期に向けて、経営計画、つくってみませんか。
「年収の壁」扶養の範囲を確認しましょう
パート・アルバイトで働く人の中には、自身の年収と配偶者の扶養の範囲を意識している人も少なくありません。税金や社会保険の扶養の範囲に影響のある年収のライン、いわゆる「年収の壁」について、従業員に説明しておきましょう。
【所得税・住民税】
○100万円の壁 ▶ 住民税が課税
○103万円の壁 ▶ 所得税が課税
○150万円の壁・201万円の壁 ▶ 配偶者特別控除の額が段階的に縮小→0に
年収103万円以下であっても、給与所得以外に副業等の収入があると、一定の場合、一時所得や雑所得、譲渡所得となって、所得税が課税される「103万円の壁」等を超えてしまうことがあるので注意が必要です。
【社会保険】
○106万円の壁 ▶ 社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用
○130万円の壁 ▶ 社会保険(国民年金・国民健康保険)の適用
政府は現在、「年収の壁」を意識せずに働ける環境整備に力を入れています。これからは、扶養の範囲内で働くよりも、世帯収入を増やす働き方を提案しても良いかもしれません。
考えてみましょう「デジタル資産」の取り扱い
経済・社会のデジタル化に伴い急速に増えているのが、「デジタル資産」です。写真・動画などのデジタルデータもデジタル資産に該当しますが、中でも注意して管理することが必要なのは、ネット銀行・ネット証券口座の残高、サブスクリプションサービスの利用料金、FX(外国為替証拠金取引)、暗号資産などの、金銭的価値のあるデジタル資産です。
デジタル資産は管理に必要な情報が運用者(本人)に集中しやすく、他人がその存在や内容を把握することは容易ではありません。また、FXや暗号資産取引など、金額の大きなデジタル資産は、税金の申告漏れ等の税務トラブルに発展することもあります。
デジタル資産の早期・適切な管理は、家族等の負担を減らすだけでなく、トラブルに巻き込まれるリスクを減らすことにもつながります。今のうちから、①デジタル資産の内容をリストアップする②信頼できる存在に共有しておく――といった対策をとると良いでしょう。
「インボイス」再点検! 免税事業者等との取引
インボイス制度導入から1年が経過しました。インボイス発行事業者間の取引については、実務上の混乱は少なくなってきましたが、注意が必要なのは免税事業者等との取引です。免税事業者等からの仕入れに係る原則や経過措置を受けるための要件等を再確認しましょう。
□原則:買手は仕入税額控除ができない
□経過措置:令和11年9月30日までは一定割合の仕入税額控除が可能
この経過措置の適用を受けるためには、次のことが必要です。
①請求書・領収書等に消費税込みの請求金額・領収金額
(「区分記載請求書等保存方式」の記載事項)が記載されていること
②帳簿に「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載
記載要件が満たされている請求書等であるかどうか、まずはきちんと確認することをあらためて徹底しましょう。
知っておきたい「生前贈与」のイロハ
生前贈与により財産をもらったときは、原則として贈与税の納税義務が生じます。その課税方法には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つがあります。
暦年課税制度は、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額(基礎控除後の課税価格)に、所定の税率(10%~55%)をかけて贈与税額を計算します。同制度の利用には特段の要件・制限等はありません。
相続時精算課税制度は、1年間に贈与された財産の合計額を基に、一定の税率(20%)で贈与税を計算して「仮払い」し、相続発生後、贈与された財産を相続財産に加算した上で、相続税額から「仮払い」した贈与税の分を差し引く(精算する)制度です。同制度の利用には一定の要件等があり、同制度を選択した贈与については、暦年課税制度に戻すことができません。
財産の状況や家族構成、贈与期間等により、どちらの制度が有利であるかの判断は非常に難しく、慎重な検討が必要です。生前贈与をお考えの方は、早めに当事務所までご相談ください。
どうする? 従業員の「副業」
政府は働き方改革の一環として副業・兼業(以下、副業)の普及を図るという方向性を示しています。企業にとっても、従業員が副業を行うことにより「社内では得られない知識・スキルを獲得できる」「社外から新たな知識・情報や人脈を得ることで事業機会の拡大につながる」等の効果が期待される一方で、①過剰労働や本業に専念できない②業務上の秘密やノウハウが漏洩する③競業により自社の利益が害される④労務管理等が煩雑になる――などのリスクが挙げられます。
副業自体への法的な規制はありませんが、裁判例では、企業の利益や信頼を損なうおそれがあるときは、副業の禁止や制限することを認めています。したがって、就業規則に「原則として、従業員は副業を行うことができる」とした上で、例外的に副業を禁止、制限する場合の規定を設けるといった対応をすると良いでしょう。就業規則に副業のルールを規定しておかないと、知らないうちに従業員が副業をしていても止めさせることができないおそれがあります。
就業規則がない中小企業も見受けられます。「副業をしたい」と従業員から申し出があったときに備えて、副業のルールを含めて、就業規則の整備を検討してはいかがでしょうか。
「取引先別管理」で経営の「解像度」を上げよう!
「雑収入」、正しく計上していますか?
金融機関は融資審査でココを見る!
給与計算担当者のための
「定額減税」取扱いの最終チェック