医業セミナー講演内容

医業経営セミナー・医業経営研究会にて当事務所所長が講師として行った講義内容を一部掲載します。

クリニックの安定経営 【院長とドクターの違い】


院長とドクターの役割について考えてみよう
(特に経営に焦点を当てて)


シンプルにいうとドクターは患者に対するものである。腕も良く、説明能力も優れ、この先生に看てもらえれば、それだけで安心でき、病気も治ってしまうと思われるドクターであれば、患者がひっきりなしに来院し、待合室はいつも患者であふれている。まさに繁盛店の典型のようなクリニックと一時映るかもしれない。一種のベンチャー企業のように急成長である。ところがある時突然診療所、病院の経営が苦しくなり、資金に詰まり、民事再生法やら倒産、縮小に追いやられる病医院が専門情報誌をにぎわす。

ドクターと院長の違いは、院長はドクターであり、上司であり、責任者であり、監督者であり、経営者である、ということで患者だけのためにあるのでない。そのためには


(イ)社員という人事に気を遣い

(ロ)設備の維持更新に気を遣い

(ハ)資金の運用、入金、出金に気を遣い

(ニ)思想、哲学(事業計画)に気を遣い

(ホ)患者に気を遣う


院長は患者にだけでなく、要するにご存じの通り「人」「物」「金」「情報」に気を遣わなければならない立場であり、名医即ち名経営者とはならないのです。社員、患者、家族、地域に尊敬される「院長」の役割がある。

院長の大事な仕事は病医院の「方向付け」を「文書」にすることである。目先の利益も大事だが、将来の利益の方がもっと大事なのである。5年先、10年先の当医院のあるべき姿を描き、社員に伝え、一緒になって自己実現する方向付けが院長の重要大事な仕事です。

それには、実現実施計画を練り、執行管理をしていく院長を支える責任者の人材育成がどうしても必要になる。これは経営の原則なのです。
自院の人材、ネットワーク、資金力、設備能力、診療商圏などを活用して、どうやって効率的に、無駄なく、具体的に手を打っていくか。
組織をまとめ、管理し、測定し、評価して、いかに院長を補佐し院長の方向に実現していくか、の執行管理者が必要です。これも院長の仕事です

方向付けという長期計画は、院長という仕事を天職とする人にとって、実は、自分自身の人生設計に他ならないのです。

医業経営コンサルタント 税理士 荻原英美

バランスシート経営

バランスシート(貸借対照表)から見えてくるもの

バランスシート日本語では貸借対照表という。此に対比されるものが損益計算書という。

損益計算書が我々が食べる食料で肉、野菜、海草、キノコ等に喩えられる。

その食したものが、肉となり、血液となり、体重となり、体型となったのが貸借対照表です。

即ち過去に食べた結果が自分の現在の姿になっているわけで、肥満体質だったり、虚弱体質だったり、健康優良児だったりするわけです。

バランスシート経営は今自分の会社がどのような健康状態にあるかを敢然と知らしめる有効な手段となる。


1 未来は過去の延長上にある

 自分の病院の未来を見つめるとき、此までやってきた病医院体質を抜きには考えれない。

もし病院長が自分の体質改善の意志が明確でなければ、その将来は変えることが出来ない。

此まで低迷してきた病医院が明日から高収益な会社に変身したいと言っても無理である。

現在から脱皮し、実績の上がる会社にしたいと思ったら、過去の数字を検証し、改善すべき事項を発見し、それを修正しなければならない。

過去の自分の数字を分析することが、会社を知るためには必要なのである。


2 損益計算書(P/L)と貸借対照表

(B/Sバランスシート)

 損益計算書は単に一年の経営活動の結果を表示したものにすぎない。

いわゆるワンイヤールールの儲かった損したと言う目先的損益の結果表示で、政策的に今年は利益が出ているから資産減価したものを売却して損を出しておこうとか、今期は成績が悪いので有価証券を売却して利益をでしておこうとか出来る。

わずか一年の損益で一喜一憂することは無い。

対してバランスシートは病医院 開業以来の累積の結果数字を示したもので、開業以何10年の考え方,習慣、行動パターンの結果としての、力量、体力、思想のすべてを表しているのがバランスシートです。事業の歴史と社長の時々の決断が、すべて凝縮されているのがバランスシートです。

長年にわたってつくりあげられた体質は一朝一夕では変われない。


3 バランス経営のポイント

 ではどうしたら、バランスの良いバランス経営が出来るのかを考えてみよう。

1つは、我が病院は儲かる体質なのか、そうでないのか「当病医院の収益をあげる実力」を正確に知ることであり、もう1つは万一の時の不況抵抗力があるのか、無いのか「当謬医院の安全性」について検証してあるのかといことである。

収益力チェックは次の算式でわかる。

総資本利益率=利益/総資本=(利益/売上高)×(売上高/総資本)

即ち話簡単に言うと、一億投資して100万儲かる会社か、一千万投資して100万儲かる会社かと言うことで、当然後者の一千万で100万のほうが良いに決まっている。


4 次の主力事業や商品を追加する

 これまでと同じ診療やサービス、そしてマーケットのままで、将来も同じ商売を続けるというのであれば競争激化の中で利益を増やすと言うことは、至難の業で、不可能に近い。


此までより、長期にわたって利益を減らさず、利益率を減らさず、高く維持しようとすれば道は一つ、此までより利幅のとれる診療項目を見つけるか、あるいは少しでも患者が増加するマーケットを開拓するしかない。

時の流れを読んで、良くなるものを増加し、商品、サービス、マーケットの絶え間無い強化と次のゴールドプランの主力となる事業や、サービスを追加し、新たな成長マーケットに進出することは、事業の原点である。

新たな方向ずけが成功し、利益率の改善が実際に経験出来なければ、利益は年々減少するものと覚悟せねばならない。


5 借金して儲ける時代の終焉

 過去5年間数値を比べてほしい。もしこの5年間銀行金利にも満たない総資本利益率が続いている病医院であれば、まず今出ている税引き前利益を、今の銀行金利で割ってみればよい。

算出された数字が我が病医院のあるべき総資本である。

ほとんどの病医院がバブルの後遺症から抜け切れてないのでは無いのか。


たとえば総資本10億円税引き前利益2千万円、この場合総資本利益率は2%である。仮に銀行金利4%とすれば2千万円を0,04で割って得られた数字は5億。即ち5億の資本でよいものを倍の10億の資本を使用しているという資本無駄が判明する。

これらの大部分が借入金で賄われているとしたら、毎日銀行の金利と借金返済の銀行ために働いていることになる。

かつての高度成長時代は借金も実力のうちと言われ、毎年地価が上がるバブル時であればそれで良かったが、逆に地価の下がるデフレ、一時の5分の1、10十分の1に物下がってしまう今は、バランスシートの左側の無駄な資産を減らすときである。

余った資金は返済することに限る時代が来ている。

総資本を小さくすれば総資本利益率が上がり小回り経営が可能となる。


医業経営コンサルタント 税理士 荻原英美

成長の原理

成長の条件には大きな3つの柱がある。


1 企業を成長させようと言う信念

2 成長への明確な目標

3 時代の流れを読みとる

不思議なもので成長はこれで良いと自分で自己満足したときに、どんな企業であれ事業であれ100パーセント止まる。

地球は公転し自転している。後退して廻ると言うことはない。人類はいまだ進化して成長するよう生まれてきている。人間は成長したいと言う欲求を持った組織体なのである。

成長したいと言う欲求を持った人は脳細胞が活動的なのです。

成長しなくてもよいと思った脳細胞は細胞の働が落ち事業は下降線を辿り、ひいては衰退廃業に至る。

国、企業、人間の成長は人間の根元的なものであります。労働することが罪悪であると言う世間風潮が高まったある時期、日本経済は破綻しバブル崩壊となった。国や、企業の構成員の活性度が落ちると国も、企業も衰退する。

企業とは何か。元佐賀大学教授、上原春男氏の説明によると、「企業とは、リスクを背負い、自主的に意志決定が出来、製品やサービス・情報を生産するとともにそれらを販売し、適正な利益を得る人間の組織体である」と定義しています。

今お医者様にとって医療のことは当然として、医業も考慮しなければならない時代に考えさせられ言葉で、整理すると

1 医業とはリスクを背負い

2 自分で自主的に意志決定が出来

3 サービス、情報を生産すると共に

4 それらを販売し

5 適正な利益を得る

6 人間の組織体である

スタッフの欠員、資金繰り、患者離れ、クレーム、損害賠償、診療報酬減額改定等リスクを背負っているのが事業の当然のことである。

だからこそ、未然に対処し、予防し、改善して明日に備えようと言う脳細胞の活性化が行われ、失敗を少なくして、成長を早めようと努力するのです。

マズローの欲求ではないが、ワンステップずつ上げていこうとするの人間の所以です。

リスクが大きいほどパワーを上げます。

ピンチがチャンスに変わることになります。

企業の利益は創造性の総和です。創造性とは相手が「心地よさの度合い」を言います。

病医院での受付の感じ、電気の明るさ、冷暖房の適温、各人の説明の適切さ、言葉使い、処置の巧拙、会計の迅速、整理整頓清潔、要するに患者が「心地よい」と感じたときに増患します。

成長には限界が来ます。その時「同時進行の原理」を考え、時代の「条件適応の原理」にそぐわなければなりません。

医業にもリスクが伴うということを覚えておいて下さい。

医業経営コンサルタント 税理士 荻原英美

クリニック開業の心得

Ⅰ.クリニック開業に当たっての留意事項
(開業姿勢に光を当てて)

開業に当たって諸処の留意事項がある。

   1  立地


  2  建物及び設計


  3  投資額


  4  長期資金と短期資金


  5  リースか借入れか


  6  顧客層はどの年齢層か及び人口構成は


  7  診療圏はどこの範囲で地域環境は適切か


  8  交通


  9  住宅地か工場地帯かオフィス街か


  10 自院の診療の特長は


  11 どのような診療方針か


  12 社員採用対処と人事


  13 増患と認知広告


  14 野立て看板


  15 地域住民との係わり


  16 アンケートと対処


  17 会計帳簿と税務


  18 医師会等への加入


  19 不慮の事故、損害への対処準備、保険加入


  20  その他

  ときりがないくらいに全知全能を使用して考察せねばならないことのなんと多いことか。開業に当たって、そして開業してからも、企て業としての企業とは何かということを自分で定義しておかねばならない。



Ⅱ.企業とは?

 「企業とは、リスクを背負い、自主的に意志決定が出来、製品やサービス・情報を生産すると共にそれらを販売し、適正な利益を得る人間の組織体である」 (成長の原理より、上原春男著) 纏めると次のようである。


1  リスクを背負っていること


  2  自主的に自分が意志決定した結果である


  3  生産し販売すること


  4  利益を上げること


  5  組織共同体であること


   以前の看板を掲げれば門前市をなした時代から、リスクを背負っている事を忘れてはならないデフレの時代に入った。  自分の判断が、意志決定が世間に受け入れられなければ赤字、資金繰り難となって結果となる。





Ⅲ.仕組み作り

 利益を上げて順調に経営するために大事なことはマネジメントを勉強せねばならないが、組織体として、利益を上げられる「仕組み作り」をすることである。

  別な言葉で言えば利益を上げ続ける「カラクリ」を構築しておくことである。 例えば風邪を引かないように気をつけようと社内で呼びかけても何にもならない。

これでは仕組み作り、カラクリが出来ていない。「外から帰ったらうがいをしよう」とやると明確な行動基準となり仕組みが出来たことになる。

山道などを車で走っていると「落石注意」などと書いてある。 あんなのは何の役にも立たない。

単に道路管理者の自分の責任を他人になすりつけるためのまやかしに他ならない。 車で走っている時にどうして落石を逃げることが出来るのか。 逃げたとたんに崖から落ちて命を落とすことになってしまうかもしれない。

落石させない防御工事を施すか、通行止めにするしかない。仕組みが違っていると、相手が不安と不快になり、顧客が来院しなくなり、売り上げ減、資金ショート、赤字となる。

  日々の仕組み作りの中で一番効果が上がり誰にも分かりやすいのが「基準創造行動」である。



Ⅳ.基準創造行動計画


 マネジメントに慣れないドクターが最初にやらなくてはならないことが基準創造行動である。4つの行動基準で構成されている。


  1  挨拶


  2  早起き


  3  約束と計画


  4  連絡と報告

先ほど組織体として企業は利益を上げるのだと定義した。 企業組織とは別な言葉で言うと、コミニュケーションシステムであり、意志疎通システムである。

この意志疎通をよくするには、相手を敬う金の鎖といわれ、かつ古来より礼に始まり礼に終わるといわれる「挨拶」以上のものは無い。

   朝、来院すれば先輩が、上司が、そして院長が先に自らが、歩きながらでなく足を止めて「おはようございます」と挨拶をすれば、それだけで風通しが良くなる。

これが一日の最初のコミニュケーションである。 これだけで院内は大改革となる。

社員が院長等の言うことが理解できない、言うことを聞かないとおっしゃるクリニックの大半が基準創造行動の基本の基本の「挨拶」が出来ていないからである。

この毎日の仕組みカラクリを繰り返していけば利益となる。

   次に「早起き」である。

朝の自分自身との最初の戦いは眠い心との戦いである。まずはそれに勝たねばならない。

西郷隆盛は朝日と共に布団を蹴って起きたと言うことである。


  早起きをしていない経営者で利益を出している企業は希である。

早起きできる経営者は結局エネルギーにあふれ、パワーがあると言うことである。

早起きは三文の得と言われたが「早起きは一億円の得」と現代に置き換えられる。

  約束と計画、連絡と報告も基準創造行動の一つであるがまずは「挨拶」と「早起き」の習慣化である。 この二つが出来れば後はスムーズに自然に励行される。

医業経営コンサルタント 税理士 荻原英美

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