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東北税理士会所属

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税の相談事例

【サンデータイムス 2020年8月号寄稿】                                Q 贈与税の課税について暦年課税制度と相続時精算課税制度があるそうですが、税額計算上どちらの方式が有利でしょうか。また、贈与の対象とすべき財産は何を選択した方がいいのでしょうか。

A  相続時精算課税制度は、相続と贈与を一体のものとして考えるという発想から制度化されたものです。このため相続が発生したときの税額をどう予想するかが重要です。

 暦年課税においては、贈与者に制限はありませんが、精算課税においては、贈与者は60歳以上の父母や祖父母、受贈者は20歳以上の子や孫とする制限があります。暦年課税は一年間に贈与を受けた財産の合計額から110万円の基礎控除額を控除し超えた額には最高55%の税率が適用されます。


 精算課税においては贈与を受けた財産の合計額から2500万円の特別控除額を控除した額に20%の税率が適用されます。そして、贈与者が亡くなったときにその贈与財産と相続財産を合計し相続税額を計算し、その相続税から既に納付した贈与税額を差し引いて精算するという制度です。また、精算課税は一度選択すると暦年課税には戻れませんので選択に当たっては慎重に判断することが必要です。

 精算課税を選択したときに贈与に向いている財産は ①将来株価の上昇が見込まれる自社株等 ②賃貸不動産等 です。なお、自宅敷地の贈与は、贈与者の相続開始時に小規模宅地の特例の利用を予定している場合は贈与対象から除外した方がいいでしょう。

【サンデータイムス 2020年7月号寄稿】

Q 私の父の死後、相続財産の分割協議を行いました。相続人は姉、妹そして私(長男)の三人です。遺産は土地のみです。この土地の時価は1億5000万円、相続税評価額は1億500万円です。

 姉と妹は金銭で分けて欲しいとの要望があり私が土地を相続する代わりにその代償金として姉、妹それぞれに5000万円ずつ支払うことになりました。相続税の課税価格を算定する場合、代償金を支払った私の課税価格は1億500万円から1億円を差し引いた残額の500万円、姉、妹の課税価格はそれぞれ5000万円で算定されるのでしょうか。

A  遺産分割の方法には相続人間で配分する現物分割が一般的ですが、換価分割や代償分割の方法もあり選択は相続人の自由に任せられています。この事例はあなたが土地を取得する代わりに姉、妹に代償債務を負う代償分割に該当します。分割協議に際して土地の時価を法定相続分で分けて5000万円の代償金を姉、妹にそれぞれに支払うことで合意をしたものと思われます。あなたが考えた課税価格を採用すれば長男の課税価格は500万となり税負担の公平を欠くことから、課税価格は次の算式で計算することとされています。


 代償債務の額×遺産の相続税評価額÷遺産の時価=課税価格


 代償債務は1億×0.7=7000万円、あなたの課税価格は1億500万円―7000万円=3500万円、姉、妹の課税価格は5000万円×0.7=3500万円となります

【サンデータイムス 2020年6月号寄稿】                                 Q 私は、4年前父所有の宅地の贈与を受けました。この宅地は贈与時の相続税評価額で2300万円でした。私は、贈与のあった翌年の贈与税申告に際して、「相続時精算課税」の適用を受けたため贈与税の納税はありませんでした。その父が最近病気のため亡くなりました。

 父が亡くなった後遺産を調べたところ負債が資産を大幅に上回る債務超過の状態となっていることが判明しました。このため母親、私、弟と話し合いの上、全員が相続放棄をすることにしました。私のように相続時精算課税を受けている者が相続放棄をした場合、相続税の申告手続きはどうすればいいのでしょうか

A 相続放棄をした人は、財産債務に関係なく一切の遺産を相続しません。この相続の相続人は、最初から相続人でなかったものとみなされます。

 お尋ねのような「相続時精算課税制度」の適用を受けた贈与財産は相続税の課税価格に含めることが必要です。これは相続放棄の有無とは関係がありません。民法上は相続放棄をした人は最初から相続人ではなかったことになり、相続によって取得する財産はありませんが、あなたが受けた贈与財産は遺贈により取得したものとみなされその価額は相続税の課税価格に算入します。あなたの場合、負債が資産を上回っているとのことなので相続税の申告義務もないのではないかと思われます。


15年前に取得した土地を、この度売却することになりました。ところが、譲渡所得を計算するに当たり、取得費を算出する契約書や領収書を紛失し算出できずに困っています。このような場合何か特例はあるのでしょうか。

譲渡所得の金額の計算上、収入金額から差し引く譲渡した資産の取得費とは、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の合計額をいいます。本事例の土地の取得費には、購入代金のほか、取得後の埋め立て、土地盛り、地ならし、切土、防壁工事など、土地の造成または改良のために要した費用があります。
本事例の場合、取得費を算出する書類がない場合は「概算取得費」の特例を使って計算することになります。この制度では、取得費は、収入金額の5%相当額とされます。
本事例によれば、15年前に取得した土地であり実際取得価格で取得費を算定する方が有利であると思われます。

孫と養子縁組をした場合、孫に贈与した財産について「相続時精算課税」の制度を選択適用できるとのことですが、適用を受けるにあたり、どのようなことに留意すべきでしょうか。

平成15年度の税制改正において贈与により財産を取得した者は、従来の暦年単位の課税方式(「暦年課税」)に代えて「相続時精算課税」の適用を受けることができるとされました。
この制度の適用対象者は次の要件に該当する者となります。
受贈者は贈与者の推定相続人である直系卑属のうち、贈与を受けた年の1月1日のおいて20歳以上である者です。贈与者の推定相続人とは、贈与した日において最先順位の相続権(代襲相続権を含む)を有する者をいい、判定はその贈与の日において行うこととされています。このことにより、年の中途において推定相続人となったときには、推定相続人となった時以後における贈与財産についてのみ、相続精算課税の適用を受けることができます。

6月19日に成立した住宅取得などのための時限的な贈与税の軽減措置制度の概要とはどのようなものですか。また、相続時精算課税制度との関連はどうなっていますか。

この制度は住宅資金の生前贈与を促進することによって、高齢者の資産を活用した住宅の需要を創出することにあります。
(1)適用期限 平成21年1月1日から同22年12月31日まで2年間
(2)非課税枠 500万円
(3)贈与者 親・祖父母等(年齢制限なし)
(4)受贈者 子・孫
(5)受贈者の年齢制限 贈与の年の1月1日で満20歳以上
(6)住宅等条件 ①自己の居住用家屋の新築・取得②一定の増改築・工事費用100万円以上③居住要件 贈与資金取得の翌年3月15日まで取得居住すること。
(7)利用回数 2年間で500万円まで。

前質問に続きます。

この制度では、110万円の贈与税の基礎控除に500万円を加えた金額610万円までは課税されません。また、贈与者について3年以内に相続が発生した場合であっても500万円は加算する必要がありません。したがって相続税の計算上も有利な取り扱いとなっています。
相続時精算課税の適用を受ける場合、通常型の2500万円に500万円を上積みして3000万円を控除することができます。
また、住宅取得資金贈与の特例型の場合は、4000万円まで控除することができます。相続時は、500万円は加算はありません。

大学の医学部に入学した孫の入学金や授業料を祖父である私が支払っています。負担額が相当な金額のため、孫や子に対する贈与として贈与税が課せられることはありませんか。

扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるために支出した贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものは、非課税とされています。
本事例は、祖父が孫に対する教育費の贈与です。その祖父と孫との親族関係は直系血族であり、この場合にはその祖父と孫とが生計を一にしているか否かにかかわらず、その教育費の贈与が相続税法の取扱通達で規定している教育費に充てるためになされたものであることが明らかである限り、その贈与財産に贈与税が課せられることはありません。また、孫の親(祖父の子)の収入の有無によって取扱いが変わることもありません。

父の死亡により、相続人である妻が生命保険金3千万円を受け取りました。他の相続人として子が2人いますが、妻の受取生命保険金は遺産分割の対象とならないのですしょうか。

被相続人である父が自己を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の一人(本事例では妻)を保険金受取人として締結した生命保険契約に基づく死亡保険金請求権は、その保険金受取人が自らの固有の権利として取得するものです。この請求権は被相続人から継承取得するものではなく、相続財産には含まれません。したがって、当然に遺産分割の対象にはなりません。しかし、相続税法では、相続財産ではないが、それと同様な経済効果があるものとして「みなし相続財産」として相続税を課税することとしており、非課税部分を除いた額に相続税が課せられます。

父は生前、知人の銀行からの借入金2千万円の連帯保証人となっています。父はこの度死去し、相続開始となりました。父の保証債務は債務控除できるでしょうか。

保証債務は、保証人が死亡した場合、一般的には相続の対象とされています。
相続税において、「債務控除」の対象となる債務は①被相続人の債務で相殺開始の際、現に存するものであり、②確実と認められるものとされています。このことから保証債務は原則として債務控除の対象となりません。ただし、相続開始の際に、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者が、その債務を履行しなければならない状態で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者の弁済不能の部分の金額は、債務控除の対象となります。

父は、生前に土地を売却する契約を締結しましたが、引渡し前に死亡しました。この場合、父の相続財産はどのように評価されるのでしょうか。なお、契約内容は次のとおりです。①売買価格5000万円②相続税評価額3500万円③手付金500万円

土地等に係る売買契約中に相続があった場合、相続財産の認識にあたって、売主または買主が有する財産はなになのかが問題となります。
すなわち、売主が死亡した場合、その所有する財産が土地なのか、または売買代金の請求権であるかが疑問となります。
課税庁としては、売主に相続が開始した場合には、相続により取得した財産は、その売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権としています。本事例によれば、残代金請求権4500万円が、相続財産となります。

最近、政治家に対する巨額の資金提供について貸付なのか贈与になるのかについてマスコミでは大きな問題とされています。税務においてはこのような資金提供については貸付け、贈与はどのような基準で認定されるのでしょうか。

親と子、夫と妻、祖父母と孫といった特殊な関係がある人の間で、表向きには貸付とされても「出世払い」や「ある時払いの催促なし」など、形式的に借入とされても実質的に贈与と見られる場合があります。
税務においては、課税の公平の見地から、形式的には貸付であっても実質的に贈与と判断されるので注意する必要があります。
このような判断を避けるには、借金の理由、返済能力、返済計画、返済の確実な履行を証明する源泉徴収票や確定申告書の控、所得証明書などの客観的証拠が必要です。

10年度税制改正大綱によれば、住宅取得資金の贈与について非課税措置が拡充されるとのことですが、制度の概要はどのようになるのでしょうか。

厳しい経済情勢の下、住宅着工戸数が低水準で推移する状況を踏まえ、高齢者の保有する眠れる金融資産を活用し、若手世代等の住宅取得を支援するため、次の措置が講じられます。
直系尊属(両親や祖父母)からの住宅取得資金の非課税限度額(現行500万円)を次のように引き上げます。
①平成22年中に贈与を受けた者 1,500万円
②平成23年中に贈与を受けた者 1,000万円
したがって、暦年課税の場合、基礎控除110万円と合わせると、平成22年は1,610万円、平成23年は1,110万円まで非課税枠が拡大します。
ただし、受贈者の合計所得金額が2,000万円以下の場合に限られます。

前の質問に続き、相続時精算課税の特例を適用する場合の制度の概要を教えてください。

現行の相続時精算課税制度のうち、住宅資金の贈与の特例は以下のようになっています。
父母(年齢制限なし)からの住宅取得資金の贈与の非課税枠は4,000万円(2,500万円+1,000万円+500万円)であり、仮に5,000万円の贈与があったとすると、非課税枠を越えた部分の1,000万円について一律に20%の税率が適用され、贈与税額は200万円となります。
このたびの改正は、贈与者の年齢65歳未満の条件は2年間延長することとされます。また、住宅資金贈与の特例控除1,000万円の上乗せの特例を廃止し、22年中の贈与の非課税限度額が1,500万円、23年中の贈与については1,000万円となります。