厚生労働省は、令和4年度に長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果を取りまとめ、監督指導事例とともに公表しましました。この監督指導は、各種情報から、時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象として実施されたものです。
報道では、違法な時間外労働があった事業場が大幅に増加していることが話題になっています(監督指導を実施した事業場のうち違法な時間外労働があったものの割合は、令和3年度の34.3%から8.3%増加し、令和4年度は42.6%)。
令和4年度の監督指導結果のポイントは、次のとおりです。
監督指導の実施事業場:33,218事業場
主な違反内容[1.のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
①違法な時間外労働があったもの:14,147事業場(42.6%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるもの:5,247事業場(37.1%)
うち、月100時間を超えるもの:3,320事業場(23.5%)
うち、月150時間を超えるもの:752事業場(5.3%)
うち、月200時間を超えるもの:168事業場(1.2%)
②賃金不払残業があったもの:3,006事業場(9.0%)
③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:8,852事業場(26.6%)
1 法律違反の状況(是正勧告書を交付したもの)
令和4年4月から令和5年3月までに、33,218事業場に対し監督指導を実施し、26,968事業場(81.2%)で労働基準関係法令違反が認められた。主な法違反は、違法な時間外労働があったものが14,147事業場、賃金不払残業があったものが3,006事業場、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが8,852事業場であった。
表1 監督指導実施事業場数
(注1) | 主な業種を計上しているため、合計数とは一致しない。 |
(注2) | かっこ内は、監督指導実施事業場数に対する割合である。 |
(注3) | 労働基準法第32・40条違反〔36協定なく時間外労働を行わせていること、36協定が無効なこと又は36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせていることにより違法な時間外労働があったもの。〕、労働基準法第36条第6項違反(時間外労働の上限規制)の件数を計上している。 |
(注4) | 労働基準法第37条違反〔割増賃金〕のうち、賃金不払残業の件数を計上している〔計算誤り等は含まない。〕。 |
(注5) | 労働安全衛生法第18条違反〔衛生委員会を設置していないもの等。〕、労働安全衛生法第66条違反〔健康診断を行っていないもの。〕、労働安全衛生法第66条の8違反〔1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないもの。〕、労働安全衛生法第66条の8の3違反〔客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握していないもの。〕等の件数を計上している。 |
(注6) | 「その他の事業」とは、派遣業、警備業、情報処理サービス業等をいう。 |
表2 事業場規模別の監督指導実施事業場数
表3 企業規模別の監督指導実施事業場数
主な健康障害防止に関する指導の状況[1.のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
①過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:13,296事業場(40.0%)
②労働時間の把握が不適正なため指導したもの:6,069事業場(18.3%)
2 主な健康障害防止に関する指導状況(指導票を交付したもの)
(1)過重労働による健康障害防止のための指導状況
監督指導を実施した事業場のうち、13,296事業場に対して、長時間労働を行った労働者に対する医師による面接指導等の過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導した。
表4 過重労働による健康障害防止のための指導事項別事業場数
(注1) | 指導事項は、複数の場合、それぞれに計上している。なお、「月45時間以内への削減」と「月80時間以内への削減」は重複していない。 |
(注2) | 1か月80時間を超える時間外・休日労働を行っている労働者について、面接指導等の必要な措置を実施するよう努めることなどを指導した事業場数を計上している。 |
(注3) | 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関することについて、①常時50人以上の労働者を使用する事業場の場合には衛生委員会で調査審議を行うこと、②常時50人未満の労働者を使用する事業場の場合には、労働安全衛生規則第23条の2に基づく関係労働者の意見を聴くための機会等を利用して、関係労働者の意見を聴取することを指導した事業場数を計上している。 |
(注4) | 時間外・休日労働時間を1か月当たり45時間以内とするよう削減に努め、そのための具体的方策を検討し、その結果、講ずることとした方策の着実な実施に努めることを指導した事業場数を計上している。 |
(注5) | 医師による面接指導等を実施するに当たり、労働者による申出が適切になされるようにするための仕組み等を予め定めることなどを指導した事業場数を計上している。 |
(2)労働時間の適正な把握に関する指導状況
監督指導を実施した事業場のうち、6,069事業場に対して、労働時間の把握が不適正であるため、厚生労働省で定める「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導した。
表5 労働時間の適正な把握に関する指導事項別事業場数
(注1) | 指導事項は、複数の場合、それぞれに計上している。 |
(注2) | 各項目のかっこ内は、それぞれの指導項目が、労働時間適正把握ガイドラインのどの項目に基づくものであるかを示している。 |
同省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うこととしています。
詳しくは、こちらをご覧ください。
参照ホームページ[厚生労働省]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34504.html