2026年

2026/1/23 令和8年度税制改正大綱を読む

2026/1/23 令和8年度税制改正大綱を読む

令和7年12月19日、新たな連立政権の枠組みのもとで「令和8年度税制改正大綱」が公表されました。
今回の改正は「強い経済」を掲げ、大胆な設備投資や研究開発を促す一方で、インフレ対応や課税の公平性の確保にも踏み込んだ内容となっています。
個人的には、近年稀にみる読み応えのある税制改正大綱だったと感じていますし、実務への影響が大きい項目が多いように思います。
物価高への対応と成長投資の拡大が二大テーマですが、特に弊所の関与先の皆様に関係の深い項目を厳選してお伝えします。

1. 所得税(個人事業主)への影響について:減税とデジタル化の波、金融投資の促進

今回の目玉は、いわゆる「年収の壁」の引き上げと、物価変動に連動する控除制度の創設です。
• 「178万円の壁」への引き上げ
基礎控除と給与所得控除を合わせ、所得税の負担が生じる水準(課税最低限)が現行の160万円から178万円(基礎控除104万円+給与所得控除74万円)へと大幅に引き上げられます。これにより、中低所得層の負担が軽減され、手取り額が増える仕組みです。

• 物価連動型の控除見直し
今後、基礎控除などの額を消費者物価指数(CPI)に連動させて調整する仕組みが導入されます。インフレによる実質的な増税を防ぐ、画期的な転換点と言えます。
この改正の考え方は個人的には非常に良いと感じています(連動させる指標がCPIで良いのか?という議論はあると思いますが)
会計や税務(税法)も社会科学の一環ですから、政策立案に際しても科学的な根拠をもった立案がより一層求められるのだと思います。

• 青色申告特別控除の控除拡大(格差拡大)
デジタル化を強く推進するため、e-Taxによる申告を前提に、優良な電子帳簿保存を行えば控除額が75万円へと引き上げられます。
一方で、紙による申告は10万円控除へと大幅に縮小されるため、e-Taxへの移行はもはや必須です。
とにかく国税庁は可能な限りのインセンティブを提供して、申告・納税の電子化を進めたい、ということなのでしょう。
ただ一方で、「デジタル化の波についていけない(誠実な)納税者」もたくさん存在していることを私たちは忘れてはいけないですし、そのような方々への支援ということを税理士業界・政府自治体も考えていかなければならないと思います。

• NISAと暗号資産についての改正
NISA(つみたて投資枠)の対象年齢が0歳からに拡大されます。
また、待望の(?)暗号資産の分離課税化についても、一定の条件(金融商品取引法上の登録業者等)のもとで導入される方針が示されました。
暗号資産については、以前のような異常なボラティリティは少なくなり、ある程度マーケットとして確立されつつあるという評価・意味合いもあるのではないかと思います。

2. 法人への影響:大胆な投資促進と制度のメリハリ

企業には「投資しないことへのリスク」と「攻めの投資へのリターン」が明確に提示されました。
• 少額減価償却資産の基準引き上げ(30万→40万円) 中小企業が取得時に全額損金算入できる資産の基準額が、現行の30万円未満から40万円未満に引き上げられます。PCや事務機器の買い替え時に非常に使い勝手の良い改正です。
非常に久しぶりにこの制度の改訂が行われました。各方面から要望があがっていましたので、「ついに!」という感じですが、でも本音は「300万円」の方も引き上げて欲しかったなぁ(300万円、満額まで使っている企業が1割程度というのがその理由だそうですが、色々ツッコミたいところです・・・)。

• 特定生産性向上設備等投資促進税制の創設 全業種を対象に、大規模(中小企業は5億円以上)で高収益(ROI 15%以上)な投資に対し、即時償却または最大7%の税額控除を認める強力なインセンティブが新設されます。

• 研究開発税制の強化 AI、量子、半導体などの戦略技術領域において、従来の枠を超えた高い税額控除率(40〜50%)が設定されます。

• 一方、「ムチ」の強化に注意が必要で、賃上げや投資に消極的な企業に対しては、特定の税額控除を適用させない不適用措置(ムチの規定)が強化されます。単に利益を残すだけでなく、攻めの姿勢が税制面でも求められます。

3. 資産課税・事業承継税制・消費税

• 不動産小口化商品・貸付不動産の評価見直し これまで路線価等で評価されていた「不動産小口化商品」や「取得から5年以内の貸付用不動産」は、令和9年1月以降の相続・贈与か「通常の取引価額(時価)」で評価されることになります。
特に、小口化商品は取得時期を問わず一律適用となるため、大きなインパクトがあります。
この手法は確かによくできているスキームでした。ただ、これができるのは基本的に富裕層のみであったことから、税負担の公平という観点で今回禁止されたということなのだと思います。

• 事業承継税制について、「特例承継計画」の提出期限が延長され、制度終了の直前(3ヶ月前)まで提出可能になりました。
具体的には以下のとおり、計画提出期限の延長がされています。

  • 法人版:令和9年(2027年)9月30日まで(1年6ヶ月延長)
  • 個人版:令和10年(2028年)9月30日まで(2年6ヶ月延長)
ただし、重要な注意点があり、 実際に株式や資産を贈与・相続する「適用期限(制度終了日)」は延長されていません(法人は令和9年末、個人は令和10年末のままです)。
これも昨年までの税制改正大綱では「延長しない」と明記されていたものが変更になりました。「こうもあっさり変わるものか・・・」と驚きつつ、どうせなら特例措置をさっさと恒久化してしまえばいいのに・・・と思うのですが。

• インボイス経過措置の見直しが行われ、2割特例が終了する個人事業者向けに、納税額を売上税額の3割とする「3割特例」が2年間講じられます。
また、免税事業者からの仕入税額控除(8割控除等)は段階的に縮減され、令和13年9月で終了します。

4. その他(防衛増税)
• 防衛財源確保のため、所得税額に1%の上乗せ(防衛特別所得税)が令和9年から導入される一方、復興特別所得税は1%引き下げられ、期間が10年延長されます。実質的な負担感は、期間の延長という形で調整されています。

これだけ変化の激しい時代、税法もその変化に合わせて変わり続けていきます。
私たちもその変化に乗り遅れないよう、いや、その一歩先を行けるように日々研鑽を積んでいこうと思います!

※本記事は令和7年12月公表の税制改正大綱に基づいて作成しています。今後の法案成立の過程で内容が変更される可能性がある点をご留意ください。

2026/1/8 新年に寄せて:生成AIと“自分にしかできない仕事”

2026/1/8 新年に寄せて:生成AIと“自分にしかできない仕事”

新年あけましておめでとうございます!

一昨年、昨年とビジネスの大きなトレンドとして生成AIが大きくビジネスを変えようとしている(既に変えている?)、ということがあったと思います。

私たちの仕事でも、(月次)決算レポートの作成、音声データからの議事録作成や提案書作成、会計システムではQ&Aの検索などの場面において、生成AIが実際に使われはじめています。

一般的には、単純作業や基礎的な財務分析やレポートの原案作成などはAIに任せることで、個々の会計士や税理士は判断、戦略、アドバイザリー業務など、人間にしかできない、付加価値の高い業務に集中することができる、というようなことが言われます。

しかし、本当にそんな単純なことでしょうか?
例えば、経験の少ない会計士や税理士でも、AIによってもたらされた時間で、人間にしかできない判断を「正しく」行うことができるのでしょうか?

試験勉強やスポーツでもそうですが、高度な思考力や判断をするためには、気の遠くなるような基礎知識・基礎練習を反復(私たちの場合であれば、仕訳作成、仕訳入力など)して、時には間違いを経験して試行錯誤をしているからこそ、そのような問題に対応できるようになるのではないでしょうか。

また、生成AIは、「どの場面で、どのように使うか?」というアイデアが重要ですが、その使いどころ、というのは「あぁ、この仕事が自動化できたらなぁ」という苦労をして、はじめて気が付くという面もあります(「必要は発明の母」といったところでしょうか)。

確かに機械・AIの方が圧倒的に正確で速い、そういった業務があることは事実ですが、基本的な知識や作業を雑にせず、丁寧にひとつずつ積み重ねていくことも忘れないようにしたいと思っています。
他方で、人間にしか、いや、自分にしかできない仕事とはなんだろうか、ということを考えながらやっていきたいと思います。

生きていると良いことも悪いこともあります。時に自尊心が傷つくこともあります。
しかし、ガンジーのいうように「自分から投げ捨てさえしなければ、誰も私たちの自尊心を奪うことはできない」という励ましを支えに、周囲がどうあれ、 質の高い仕事をするぞ!という価値観をもって、仕事に励みます (*1)。

今年一年の皆様のご健康と、事業のご発展を祈念いたします!
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

※ちなみに今回のタイトルはCopilotに考えてもらいました。


【参考文献】
(*1)スティーブン・R・コヴィー著 完訳「7つの習慣 人格主義の回復」キングベアー出版書店 2013年