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▶ 変更手続きをしていない就業規則の効力について
▶ 業務外の傷病に対しての休職発令日について
▶ 産後休暇終了後の残業について
▶ 残業できない申出をした妊産婦の残業について
▶ 3日以上の出勤停止処分は減給制裁の制限に触れるか
▶ 週休2日制の土曜出勤について
▶ 職場でのセクハラについて
▶ 有給休暇の消化について
▶ 通勤災害休業中の年休出勤率について
▶ 年休者に対する呼び出しについて
▶ 有給休暇について休日出勤日の取扱い
▶ 有給休暇について
▶ 時効消滅年休の買上げについて
▶ パート(不規則勤務)の年休の付与について
▶ パートタイマーの労災休業中、契約期間満了で契約解除できるか
▶ 解雇予告除外認定について
▶ 即時解雇者の貸付金相殺について
▶ 退職時の社会保険料や雇用保険料について
▶ 遅刻・早退の賃金カットについて
▶ 賃金支払日の変更について
▶ 最低賃金の適用除外について
▶ 災害が発生した日の賃金について
Q 就業規則を変更したにもかかわらず、所轄労基署へ届け出なかった場合、その変更した就業規則の効力はどうなるの
でしょうか。
A 就業規則の作成・変更は、過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は過半数を代表する者)の意見を聴き(意見書添付)、所轄労基署長に届け出なければなりません。そして、常時見やすい場所へ掲示するか、備え付けるか、書面を交付するなどによって、労働者に周知させなければなりません。
なお、意見聴取は、就業規則が使用者の一方的な作成にゆだねられているところから、その作成・変更に労働者の団体意見を反映させる途を開いたもので、意見聴取の有無は就業規則自体の効力には関係がないと解されています。
また、行政官庁への届出も、就業規則に対する行政的監督を目的とするもので、届出は効力要件ではないと解されています(届出をしない場合、労基法第89条違反となるが、就業規則としての効力は有する)。
さらに、就業規則の労働者への周知手続が就業規則の効力の発生要件か否かについては、学説、判例は分かれていますが、何らかの方法による周知を効力要件と解しているものが多いといえます。
したがって、就業規則の法的性質については、労働者に周知されてはじめて効力が発生すると解するのが適当と思われます。このように解すると、就業規則の効力発生要件としては、就業規則が何らかの方法によって労働者に周知された時期以後に効力が発生することになります。
Q 就業規則で「業務外の傷病で欠勤3ヶ月以上に及んだ場合は休職を命ずる。休職期間は2年。休職期間が満了したと
きは社員の地位を喪失する」と規定しています。従業員は4月22日から私病で欠勤していますが、休職の発生する
日(休職算定の起算日)はいつとすべきでしょうか。
A 休職制度については、労働基準法等の定めはありませんが、一般的にいえば、従業員を労務に従事させることが困難あるいは不適当な場合、労働契約を維持した状態で、一定期間労務に従事しないこととする制度です。就業規則に定められた所定事由の発生した労働者につき所定の手続きを経て個別に決定されます。
貴社の規定では、「業務外の傷病による欠勤が3ヶ月以上に及んだ場合」とあり、欠勤が3ヶ月以上となった場合に、休職発令の要件がととのいます。
ご質問の「休職の発生する日(休職算定の起算日)」ですが、期間を定める場合に週、月、年をもってしたときは、暦にしたがって計算し、初日は算入しません(民法第143条-ただし、午前0時から始まるときは初日を算入)。
したがって、4月22日から私傷病欠勤していれば、暦にしたがって3ヶ月の期間を計算し、7月22日以降に休職を発令することができます。そして7月22日以降に休職を命じた日の翌日が休職期間の起算日となります(休職を命じた日は算入されず、その翌日から計算される)。なお、「休職を命ずる」のですから、休職となる日を明確にして本人に口頭または文章で通知しなければなりません。
また、「休職期間が満了したときは社員の地位を喪失する」と規定され、休職期間満了までにその原因が解消されないときは、労働契約が終了する旨が当初より定められていますから、休職期間の満了により自動的に労働契約が終了し、解雇にはあたりません。したがって、1ヶ月前に解雇予告をする必要はありません。
Q 妊娠6ヶ月で流産し、満1歳未満の子を養育していない女性でも残業をさせることはできないのでしょうか。
A 労基法第66条第2項は「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない」、同条第3項は「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない」と規定しています。
Q 妊娠中の女性から、残業はできないという申出があり、残業はさせていません。しかし、忙しい時などは残業させて
もよいのでしょうか。
A 妊産婦が請求した場合には、災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合(労基法第33条)、時間外・休日労働に関する協定届による場合(同第36条)であっても、時間外労働、休日労働をさせることはできませんし、また深夜労働をさせることはできません(同第66条)。
妊産婦とは、妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性をいいます。残業はできない旨の申出があったわけですから、残業させることはできません。
ただし、残業をお願いし、本人の承諾を得た場合は残業も差し支えありません。
Q 就業規則の制裁条項に「出勤停止は、始末書をとり7日以内の出勤停止とし、この間の賃金は支給しない」と規定し
ています。この場合、3日以上の出勤停止処分をすると、賃金総額の10分の1を超える減額になりますが、減給制裁の制
限に触れるのでしょうか。
A 3日以上の出勤停止処分をした場合、賃金が控除されるから、これは1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超える減額になり、労基法第91条に抵触しないかとの質問ですが、出勤停止は、この期間中、賃金が受けられないのは制裁として当然の結果で、労基法第91条とは関係ありません。
[行政解釈]
就業規則に出勤停止及びその期間の賃金を支払わない定めがある場合において、労働者がその出勤停止の制裁を受けるに至った場合、出勤停止期間中の賃金を受けられないことは、制裁としての出勤停止の当然の結果であって、通常の額以下の賃金を支給することを定める減給制裁に関する法第91条の規定には関係ない。
減給は就労を継続させながら、本来ならば受けるべき賃金から一定額を差し引くのに対し、出勤停止は制裁として一定期間就労を禁止し、その期間の賃金を支払わないものです。就労させないでその賃金を支払わないのですから、就労させておいて賃金を減額する減給とは根本的に相違します。したがって、3日以上の出勤停止処分をし、その額が賃金総額の10分の1を超えても、労基法第91条に抵触することはありません。
ただし、出勤停止期間については「公序良俗の見地より当該事犯の情状の程度等により制限のあるべきことは当然である(行政解釈)」というように、制裁事由と制裁との間の均衡を充分に考慮する必要はあります。
Q 当社は1日の労働時間は7時間、休日は土・日で、週の労働時間は35時間です。そして、8時間まで残業をさせた場
合、この1時間には通常の賃金100%、8時間を超える残業には割増賃金125%を支払っています。この場合、土曜休日
に出勤させたとき、割増賃金はどうなるのでしょうか(5時間までは通常の賃金、5時間を超えた6時間目から125%支
払えばよいのでしょうか)。
A 時間外労働として割増賃金を支払わなければならないのは、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働させた場合です。したがって、本件の場合、1日の所定労働時間は7時間ですから、7時間を超え8時間までの1時間については、割増賃金(125%)を支払う必要はありません(通常の賃金でよい)。つまり、7時間を超え8時間までの1時間(法内残業)には通常の賃金100%、8時間を超える時間外労働には割増賃金125%を支払う定めは適法です。
また、1週間については、1日8時間を超え時間外労働となる時間を除き、週40時間を超える時間が時間外労働となります。つまり、1日の所定労働時間は7時間でも、毎日1時間の残業があれば、1日の労働時間は8時間となり、月曜~金曜で40時間に達し、土曜の出勤はすべて時間外労働になります。
すなわち、土曜休日の出勤で、5時間まで通常の賃金100%、6時間目から125%の割増賃金の支払いでよいのは、一切残業をさせないで、月曜~金曜の労働時間が35時間の場合に限られます。月曜~金曜までの法内残業の有無、その時間数によって、125%の割増賃金がつく時間が違ってきますので注意が必要です。
Q 職場でのセクハラに使用者責任は問われるのでしょうか。
A 男女雇用機会均等法(以下、均等法という)では、セクハラとは「相手方の意に反する不快な性的言動」とされており、相手方とは女性に限定されています。なお、具体的セクハラ行為とは、強制わいせつ行為等犯罪の対象となる性的言動、雇用上の上下関係を利用した性関係の強要、必要なく身体にさわる、わいせつな図画を配布するなど社会通念に反し、かつ違法不当な性的言動などを言います。
さて、ご質問の件ですが、結論から申し上げますと、使用者責任は問われます。
Q 病気療養中の社員から、「時効にかかってしまう年次有給休暇があるので、この期間にすべてその日数を消化した
い」との申出がありました。このように客観的に労務の提供が不可能な状態であっても、年休を行使することができる
のでしょうか。
A 年次有給休暇については、最高裁が「年次有給休暇の行使は労働者が時季の指定をすれば足り、利用目的も使用者の干渉を許さない」(昭48.3.2第2小判)と判示し、年次有給休暇の法的性格を時季指定権説に確定させました。
したがって、適法な年休の取得にあたっては、「請求」とか「承認」という概念は入らず、使用者は時期変更権を行使しない限り指定日に付与せざるを得ず、もとより利用目的は問えないということになります。解釈例規でも「負傷または疾病により長期療養期間中の者が休業期間中年次有給休暇を請求したときはこれを与えなければならない」(昭24.12.28基発第1456号)との見解を示しています。また、ここでいう「負傷または疾病」は私傷病であると業務上災害であるとを問わないと解釈されます。
ご質問では、「客観的に労務の提供が不可能な状態」であることに疑問を持たれていらっしゃるようですが、労務の提供が不可能といっても労務の提供義務が免除されているわけではありませんので、その意味では年次有給休暇の行使は可能といわざるを得ません。つまり、長期療養者が病気休暇に入っているような場合ですと、休職期間中は休職事由が消滅しない限り労働義務が免除されているものと理解できますので、この期間中に年次有給休暇を行使する余地はないことは明らかです(昭24・12・28 基発第1458号)。要するに、所定休日の日に年休を取得するのと、何ら変わるところがないからです。
しかし、ご質問のケースの場合(休職発令前)、労働義務が免除されているわけではなく、また貴社において時期変更権の行使も不可能とみざるを得ない以上、これを与えないとすることは許されないと解すべきでしょう。
Q 通勤災害で約2ヶ月休業しました。年休の出勤率の計算において、通勤災害によって休業した期間は、出勤扱いにな
るのでしょうか。
A 年休権利の発生要件としての8割以上の出勤率の算定に当たっては、「業務上の傷病にかかり療養のため休業した期間」は、出勤したものとみなさなければなりません。しかし、通勤災害による休業期間は出勤とみなす必要はありません。通勤災害に対して労災保険による給付がなされても、通勤災害は業務災害でないからです。
ただし、当事者の合意によって出勤したものとみなすことは、もとより差し支えないことは言うまでもありません。
Q 年休中の者を呼び出すことはできるのでしょうか。たとえば、所定労働時間が午前8時から午後5時までとする場
合、年休行使中の者を午後6時から1時間ほど呼び出すことは可能なのでしょうか。
A まず、本人の同意がなければ呼び出せません。年休は有給で労働義務を免除するものですが、労働基準法第39条が「継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」としていることから、その労働日における労働義務を免除していると考えるべきです。つまり、労働基準法上の労働日や休日は暦日を単位としていますから、労働義務の免除も当然に暦日を対象として行わなければならないことになるわけです。
ご質問のケースでは、たとえ1時間であっても暦日24時間(午前零時から午後12時)までについて労働義務の免除をしなかったわけですから、その日については年休は与えられなかったものとして取り扱わざるを得ません。また、一度与えた年休は使用者が一方的にこれを取り消すことはできませんから、使用者から出勤の命令があっても、労働者がこれに応ずる必要はないわけです。しかし、労働者がこれに応じた場合は、労使の合意によって年休が取り消されたものと解すべきでしょう。したがって、呼び出されて労働者がこれに応じた場合は、改めて年休を与える必要がありますし、取り消された日の労働に従事しなかった部分の賃金については、労働基準法第26条の休業手当を下まわらない額で処理する配慮が必要でしょう。
Q 年次有給休暇の出勤率算定において、休日出勤をした日はどのように取り扱うのでしょうか。
A 労基法上、年次有給休暇の発生要件は、「6ヶ月間(1年間)継続勤務し」、「全労働日の8割以上出勤した」労働者に対してです。
この「全労働日」とは、労働契約上労働義務の課されている日をいい、具体的には労働協約、就業規則で労働日として定められた日のことです。普通には、6ヶ月(1年)の総暦日数から所定の休日を除いた日になります。ですから、就業規則で休日と定められている日に休日出勤したとしても、その休日は労働日になりません。
行政解釈は「年次有給休暇算定の基礎になる全労働日の日数は就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい、各労働者の職種が異なること等により異なることもあり得る。したがって、所定の休日に労働させた場合には、その日は、全労働日に含まれないものである」としています。
つまり分母、分子にカウントしません。
Q 年次有給休暇については、従来これを一日未満の単位で利用させることはできないとされていたはずですが、最近で
は半日単位の利用も可能となったのでしょうか。また、時間単位の利用はどうでしょうか。
A ご指摘のとおり、現在では労基法上の年次有給休暇についても半日単位での利用が可能と考えられています。これは、法律の改正ということではなく、行政解釈の変更によるものです。すなわち、現在の行政解釈では、「法第39条に規定する年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない」とされているのです(昭24.7.7基収1428、昭63.3.14基発150)。これは、1日以下(未満)に分割して与えることはできないとしていた行政解釈を改めたものです。一見すると、半日単位での利用を認めたというようには読めないかもしれませんが、従来の通達との違いをみると、労使間に半日単位の休暇利用について合意があればこれによってもよいということを間接的に認めたものと考えられます。ただし、注意しなければならないのは、この取扱いは労使の合意に基づき行われる場合に限り可能ということです。従業員は、一方的に半日での休暇の利用を申し出てこれによって休めるのではなく、半日休暇を認める制度、使用者の同意があって初めて半日休暇が可能となります。また、使用者は、1日の休暇の指定に対し半日単位で時季変更するといったことはできません。半日単位での利用の申出を認めても違法にはならないと解されるにすぎません。したがって、明確なルールの下に半日休暇利用を行うこととすることが必要でしょう。
なお、上の通達にもあるように、休暇は1労働日を単位とする原則は維持されており、現在、1日未満の単位での休暇利用が可能となっているのは半日単位に限られます。時間単位での年次休暇の利用は、労基法上の休暇の利用とは認められませんので注意してください。
Q 年次有給休暇の権利は2年間で時効消滅しますが、この時効消滅した分の年次有給休暇を買上げる規定を就業規則に
盛り込んでもよいのでしょうか。
A 法定の年次有給休暇(法定日数)について、金銭を支給することで年休を与えたこととする、いわゆる「年休の買上げ」は許されません。たとえば、10労働日の年休をもっている労働者に、そのうちの3労働日の年休を買上げ、3日分の賃金を支給し、以後この労働者については、あと7日の年休しか残っていないものとして処理することは許されないのです。
年休の権利は、2年間で時効消滅します。2年間で時効消滅した年休日数に対して何らかの金銭を支給しても、年休の買上げと異なり、必ずしも違法といえません。しかし、時効消滅した年休といえども、あらかじめ買上げることを規定しておくことは、年休を取ることを事実上抑制する機能をもち、問題があります。
したがって、消滅した年休を買上げる規定を就業規則に盛り込むことは避けるべきです。
Q 月に11~15日の勤務契約のパートを雇用しています。具体的には前の週に次の週の勤務日を決めています。勤務日
数はまちまちで、勤務日ゼロの週もあります。このような不規則なパートの年休付与はどうなるのでしょうか。
A 年次有給休暇の比例付与とは、パートなど通常の労働者に比べて所定労働日数が少ない労働者に対して、通常の労働者の所定労働日数との比率に応じて付与するというものです。
比例付与の対象者は、以下のとおりです。
つまり、パートの中には週単位で所定労働日数が定められていない者もあり、その場合、1年間の所定労働日数を基準として、その対象者が定められているのです。
ご質問の場合、週の勤務日数がまちまちでゼロの週があったとしても、労働契約は継続しており継続勤務と考えられます。したがって、6カ月継続勤務した場合には年休を与えなければなりません。
比例付与される年休日数は、基準日に予定されている所定労働日数により決まります。年休の権利は基準日に発生しますから、6カ月経過した時点(基準日)で、後6カ月も同様の日数の勤務が続くものとみなして1年間の所定労働日数を割り出し(6カ月の勤務日数×2)、その日数の年休を付与すれはよいと考えられます。
〔パートの付与日数〕
Q 有期契約のパートタイマーが労災にあって休業する場合、その休業期間中に「契約期間の満了」を理由に契約解除す
ることができるでしょうか。解雇制限に接触しませんか。
A 労基法第19条は「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇してはならない」と規定しています。
同条の解雇とは、労働契約を将来に向かって解約する使用者の一方的な意見表示のことです。したがって、労働者側からの任意退職、労働契約に期間の定めがある場合の期間満了にする労働契約の終了などは解雇ではありませんから、解雇制限期間中であっても、労働関係を終了させることは差し支えありません(以下、行政解釈参照)
【行政の解釈】
「一定の期間又は一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を締結していた労働者の労働契約は、他に契約期間満了後引続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限りその期間満了とともに終了する。したがって、業務上負傷し又は疾病にかかり療養のため休業する期間中の者の労働契約もその期間満了とともに労働契約は終了するものであって、法第19条第1項の適用はない」
(昭23.1.16基発第56号、昭63.3.14基発第105号)
上記のとおりパートタイマーを有期契約で雇用し、期間満了でやめさせるのは「契約期間の満了に伴う労働契約の終了」ですから、解雇の問題は生じません。しかし、有期契約であってもその契約を反復更新し相当長期間にわたって労働関係が継続している場合には、たまたまある契約期間の満了によって労働契約を終了させる場合であっても、解雇であると考えられます。有期契約を反復更新してきた場合には、労基法第19条の問題が残ります。すなわち、初めての有期期間であったか、反復更新した有期契約であったかによって異なるということになります。
ただし、被災パートタイマーが契約解除され労働関係が消滅した場合でも、労災保険給付を受ける権利は変更されません。労災保険法第は「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない」と規定しています。
したがって、契約解除後も、療養を必要とすれば療養補償給付が行われますし、療養のため労働することができないという休業補償給付の支給事由が存する限り、休業補償給付が支給されます。
Q 解雇予告除外認定の申請について教えて下さい。
A 労基法上は、30日前に予告すれば(同日分の予告手当を支給すれば)解雇可能ですが、この予告手当も申請により、不支給とすることができます。すなわち、会社が懲戒規定に基づいて即時解雇する場合、この除外認定の手続きが必要ということです。
申請書は、原則的には、解雇前に労基署に提出します。書式には、事業の種類、名称、所在地、労働者の氏名、雇用年月日、業務の種類、解雇事由等を記載します。
なお、除外認定が受けられるのは、次のようなケースです。
Q 即時解雇者の貸付金相殺について
A 解雇予告手当は、即時解雇の効力発生要件としてその支払いを法律が要求した性質の手当です。賃金ではなく、また労基法第23条に定める労働者の退職の際、その要求に応じて7日以内に支払うべき労働者の権利に属する金品にも含まれません。
解雇予告手当の支払が解雇の効力発生要件と解されることから、解雇予告手当から控除することはできません。行政解釈も「予告手当の支払は、単にその限度で予告義務を免除するに止まるものである。したがって法理上相殺の問題は生じない」(昭24.1.8基収第54号)としています。
Q 今月退職する社員がいます。退職時の社会保険料や雇用保険料はどのように控除すればよいのですか?
A 雇用保険料は、退職日に関係なく、退職月の給与から控除して結構です。
社会保険料については、退職の日付によって控除の仕方が異なりますので、注意が必要です。
保険料は月単位で計算されており(月末入社であっても1ヵ月分徴収)、また、一般に社会保険料を給与から控除する場合、前月分の保険料を当月の給与から控除しています。したがって、退職日が月の途中の場合、その月の分の保険料は徴収されず、前月分の保険料を控除するだけでよいのですが、退職日が月の末日の場合、資格喪失日は翌月の1日となり(退職日の翌日が資格喪失日となります)、退職月の保険料も徴収されることになり、退職月給与から前月分と退職月分の2ヵ月分の控除が必要となります。
ただし、同一月に、入社(資格取得)と退社(資格喪失)がある場合は、退職の日付に関係なく社会保険料が徴収されますので、給与からは1ヶ月分の控除をしてください。
Q 遅刻、早退、私用外出による1日の不就労時間を30分未満は賃金カットせず、30分以上は1時間に切り上げて賃金カ
ットしていますが、問題はないのでしょうか。
A 労働者が自己都合で遅刻、早退した場合、労働の提供がなかった時間分の賃金を差し引くことはできます。
しかし、1日ごとに不就労時間分について30分を境に四捨五入をする方法ですと、たとえば35分の遅刻が1時間の遅刻として取扱われ、実際に就労した25分間の賃金もカットされ、労働者にとって不利益な取扱いとなります。
行政解釈は、「5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットするような処理、つまり労働の提供のなかった時間を超えるカットは、賃金の全額払いに反し違法である。ただし、このような取扱いを減給の制裁として行う場合は、全額払いの原則に反しない」としています。
ご質問の場合、賃金計算の簡便化が目的で、30分を境に四捨五入しており、常に労働者に不利になるものではなく、制裁としての減給でないように思われますが、実際に労働の提供がなかった時間を超えて賃金カットが行われる場合は、やはり減給の制裁となります。この場合、就業規則中の制裁の章において、明記しておく必要があります。
なお、減給の制裁にしたくないならば、1日ごとではなく、その月の遅刻、早退、私用外出の不就労時間の合計につき、30分を境に四捨五入することは可能です。行政解釈も「1ヶ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」は、「常に労働者に不利になるものではなく、事務簡便を目的としたものであるから、法第24条及び第37条違反としては取り扱わない」としています。
Q 賃金支払日の変更はどのようにすればよいでしょうか?
当社の賃金計算は前月16日から当月15日までで、毎月25日支払いとなっています。本年4月から「当月1日から末日ま
で、翌月10日支払」に変更したいのですが、4月の給与支払はどうしたらよいでしょうか?
A 賃金は、「毎月1回以上、一定の期日を定めて」支払わなければなりません。毎月1回以上とは暦に従うものですから、毎月1日から月末までの間に少なくとも1回は賃金を支払わなければなりません。また、一定の期日とは、その期日が特定されるとともに、周期的に到来するものでなければなりません。
ご質問の4月1日から変更する場合、3月16日から31日までの賃金を4月25日に支払い、4月1日から30日までの賃金を5月10日に支払う措置をとります。3月16日から4月30日までの賃金を5月10日に支払うことにしますと、4月に賃金支払日が1回もなくなり、毎月1回以上という要件を欠き、違法になります。
Q 当社は、入社後1週間は講義形式で研修を行っています。この研修期間中に来なくなってしまう従業員もいるため、
この期間の賃金をなるべく低くしたいと考えています。最低賃金以下にしてもよろしいでしょうか。
A 賃金は、原則として最低賃金法で定められる最低賃金額以上でなければなりません。これ以下の賃金の契約を締結しても、民事上、最低賃金額で契約したものとみなされ、最低賃金額に満たない額を支払えば、賃金の全額払い(労働基準法第24条)違反となります。 最低賃金法で保障される賃金は、労働者の生活の安定という観点から臨時的な賃金等は除いた賃金が対象となります。具体的には次の賃金を除外したものが対象となります。
Q 労働災害が発生した場合、災害発生当日には賃金1日分全額を支払うべきでしょうか。それとも労働した時間分の賃
金を支払うのでしょうか。
A 休業最初の3日間(待期期間)については、労災保険の休業補償給付は支給されず、事業主が休業補償を行わなければなりません。
その災害発生当日の賃金を全額支払うかどうかは、就業規則、労働協約の定めによります。月給制の場合には、賃金が 全額支払われる場合が多く、時間給の場合は、実際に労働した時間分の賃金が支払われる場合が多いといえます。
全額支払われる場合は、その日の休業補償が行われたものとして取り扱われます。
労働した時間分しか支払わない場合には、「労働者が業務上負傷し又は疾病にかかったため、所定労働時間の一部分のみ労働した場合においては、使用者は平均賃金と当該労働者に対して支払われる賃金との差額の100分の60の額を休業補償として支払わなければならない」と規定されています(労基法施行規則第38条)。平均賃金と所定労働時間の一部労働に対する賃金との差額の60%が休業補償の額となります。