初めてでも迷わない「確定申告」重要4項目と失敗を防ぐ実践ポイント

目次

はじめに
1. 【医療費控除】家計を支える税還付の仕組みと活用のポイント
1-1 適用条件の確認:10万円の基準と「所得5%」のルール
1-2 家族の医療費をまとめる際のポイント
1-3 医療費控除 vs セルフメディケーション税制
1-4 通院費の判定:対象になるもの・ならないもの
2. 【ワンストップ特例の無効化】ふるさと納税で陥りやすい「申告の落とし穴」
2-1 確定申告をするとワンストップ特例は自動的に無効になります
2-2 よくある失敗パターン
ケース1:医療費控除のみ申告してしまう
ケース2:一部の自治体だけ入力してしまう

2-3 ワンストップ特例と確定申告の使い分け
3. 【満期保険金】受取時に慌てないための所得区分と計算方法
3-1 契約形態による税金の種類
3-2 一時所得の計算方法:どこまで税金がかからないのか
3-3 保険金の受け取り方で税金はどう変わる?
4. 【公営ギャンブルの払戻金】「外れ券」は経費になるか?
4-1 課税の基本原則:当たりごとに税金が計算される
4-2 実際の申告での注意点
5. 【総括】
5-1 確定申告をする・しないの判断基準
5-2 申告期限と修正の方法
5-3 最終チェックリスト:送信前に必ず確認

はじめに

確定申告は、税金を計算して納めるためだけの手続きではありません。

1年間の収入や支出を整理し、税制を正しく活用することで、手元に残るお金を見直すための大切な機会です。

本ガイドでは、確定申告が初めての方が特につまずきやすい4つのテーマ(医療費控除、ふるさと納税のワンストップ特例、保険の満期金、公営ギャンブルの払戻金)を取り上げます。制度の仕組みや注意点を、実際の申告で困らないよう、できるだけ分かりやすく解説していきます。

1.【医療費控除】家計を支える税還付の仕組みと活用のポイント

医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。医療費という支出を、税金の還付という形で一部回収できる仕組みと考えるとわかりやすいでしょう。

また、所得税だけでなく、翌年度の住民税額も軽減されます。さらに、国民健康保険料など所得に連動する負担にも影響する場合があるため、家計全体で見ると大きなメリットがあります。

1-1 適用条件の確認:10万円の基準と「所得5%」のルール

医療費控除は「年間10万円を超えた医療費が対象」と思われがちですが、実は所得によって基準額が変わります。

基準額の決まり方

  • 年間所得が200万円以上の場合 → 10万円を超えた部分が控除対象
  • 年間所得が200万円未満の場合 → 所得の5%を超えた部分が控除対象

具体例:所得が150万円の場合、150万円×5%=7.5万円が基準額になります。

    つまり、医療費が7.5万円を超えた時点で控除を受けられます。

1-2 家族の医療費をまとめる際のポイント

生計を一にする家族全員の医療費は、まとめて申告することができます。この際、誰の名義で申告するかによって、還付される金額が変わります。

基本的な考え方

所得が高く、適用される税率が高い人が申告すると、同じ医療費でも還付金が多くなります。ただし、所得が200万円未満の家族がいる場合は、その方が申告した方が有利になるケースもあります。

1-3 医療費控除 vs セルフメディケーション税制

医療費が10万円に満たない年でも、薬局で購入した対象医薬品(スイッチOTC医薬品)の合計が1.2万円を超えていれば、「セルフメディケーション税制」を利用できます。

重要な注意点

  • 従来の医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか選べません
  • 高額な医療費がない年は、薬局での購入額を確認し、どちらが有利か比較しましょう

セルフメディケーション税制の適用条件

  • 健康診断や予防接種などを受けていること
  • 対象となるOTC医薬品を1.2万円超購入していること
  • 控除額の上限は8.8万円

1-4 通院費の判定:対象になるもの・ならないもの

通院に関する交通費は、何が対象になるか判断を誤りやすい項目です。

以下の基準を参考にしてください

項目控除対象の可否判定の理由
公共交通機関(電車・バス)○ 対象通院のために通常必要な交通費として認められます
タクシー代△ 原則対象外電車やバスが使えない場合(深夜の急な通院、足の骨折など)のみ対象になります
自家用車のガソリン代× 対象外公共交通機関の利用ではないため認められません
駐車料金・高速道路代× 対象外車両の維持・利用に関する費用のため認められません

記録の残し方

電車・バスは領収書が出ないことが多いため、通院日、区間、金額をメモや家計簿に記録しておきましょう。

2.【ワンストップ特例の無効化】ふるさと納税で陥りやすい「申告の落とし穴」

ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」は、確定申告をしない方のための簡便な手続き方法です。しかし、医療費控除などで確定申告をする場合は、この制度が使えなくなる点に注意が必要です。

2-1 確定申告をするとワンストップ特例は自動的に無効になります

見落としやすい重要なルール

医療費控除や住宅ローン控除(初年度)などで確定申告をすると、その年のふるさと納税についてワンストップ特例で申請した内容はすべて無効になります。

つまり、確定申告をする場合は、ふるさと納税の寄附金控除も改めて申告書に記載する必要があります。

2-2 よくある失敗パターン

ケース1:医療費控除のみ申告してしまう

「ふるさと納税はワンストップ特例を出したから大丈夫」と考え、医療費控除だけを申告書に記入して提出してしまうケースです。

この場合、ワンストップ特例が無効になっているにもかかわらず、確定申告でも寄附金控除を申告していないため、結果として

  • ふるさと納税の控除が全く受けられない
  • 実質的に寄附金が全額自己負担になる
  • 住民税の軽減も一切ない

という状態になってしまいます。

ケース2:一部の自治体だけ入力してしまう

複数の自治体に寄附した場合、一部だけを申告書に記入し、残りを「ワンストップで済ませたから」と入力しないケースです。

この場合も、入力しなかった自治体分の控除が受けられません。

2-3 ワンストップ特例と確定申告の使い分け

ワンストップ特例が使える条件

  • 確定申告をする必要がない方
  • 寄附先が5自治体以内
  • 寄附のたびに申請書を提出している

確定申告が必要になる主なケース

  • 医療費控除を受ける
  • 住宅ローン控除(初年度)を受ける
  • 寄附先が6自治体以上ある
  • 副業の収入がある(年20万円超)
  • 給与を2か所以上から受けている

上記に該当する場合は、最初からワンストップ特例を使わず、確定申告で寄附金控除を申告する方が確実です

3.【満期保険金】受取時に慌てないための所得区分と計算方法

生命保険の満期保険金や解約返戻金を受け取った場合、税金がかかることがあります。保険の契約内容によって、どのような税金がかかるのかが変わるため、受け取る前に確認しておくことが大切です。

3-1 契約形態による税金の種類

保険料を支払った人と、保険金を受け取る人の関係によって、課税の方法が異なります。

  • 【パターン1:保険料を支払った人と受け取る人が同じ場合】

 例:夫が保険料を支払い、夫が満期保険金を受け取る

 この場合、自分で積み立てたお金の運用益を受け取る形になるため、所得税(一時所得)として扱われます。

  • 【パターン2:保険料を支払った人と受け取る人が異なる場合】

 例:夫が保険料を支払い、妻が満期保険金を受け取る

 この場合、他人からお金をもらったとみなされ、贈与税の対象となります。

贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、それを超えると税率が高くなるため注意が必要です。

3-2 一時所得の計算方法:どこまで税金がかからないのか

自分で保険料を払い、一括で満期金を受け取る場合、以下の計算式で課税額が決まります。

計算式:課税対象額={(受取保険金額-払込保険料総額)-特別控除50万円}×1/2

計算の流れ

  1. 受け取った保険金から、これまでに支払った保険料の総額を差し引く(これが利益部分)
  2. 利益部分から50万円を控除する
  3. 残った金額の半分だけが、課税対象になる

具体例

  • 受取保険金:300万円
  • 払込保険料総額:220万円

計算

  1. 利益=300万円-220万円=80万円
  2. 80万円-50万円(特別控除)=30万円
  3. 30万円×1/2=15万円が課税対象

税金がかからないケース

利益が50万円以内であれば、特別控除の範囲内のため、実際に税金がかかることはありません。

例)・受取保険金:250万円

  ・払込保険料総額:210万円

  ・利益=40万円→50万円以下なので税金はかかりません

3-3 保険金の受け取り方で税金はどう変わる?

満期金を「一括」で受け取るか、「年金形式」で受け取るかによって、税金の計算方法が変わります。

一括で受け取る場合(一時所得)

  • 利益のうち50万円までは税金がかからない
  • 50万円を超えた部分も、その半分だけが課税対象になる
  • 税負担が比較的軽い

年金形式で受け取る場合(雑所得)

  • 毎年受け取る金額から、その年に対応する保険料を差し引いた額が課税対象
  • 一時所得のような50万円の控除や、半分だけ課税という優遇措置はない
  • 他の所得と合算されて税率が決まる

4.【公営ギャンブルの払戻金】「外れ券」は経費になるか?

競馬、競輪、競艇などの公営ギャンブルで払戻金を得た場合、原則として所得税の対象になります。ここで多くの方が誤解するのが、「年間のトータル収支がマイナスなら税金はかからない」という思い込みです。

4-1 課税の基本原則:当たりごとに税金が計算される

公営ギャンブルの払戻金は「一時所得」として扱われます。一時所得の計算では、経費として認められるのはその当たり馬券(車券・舟券)の購入費のみです。

よくある誤解

「1年間で100万円負けて、1回だけ100万円当たったから、プラスマイナスゼロで税金はかからない」

実際の計算

  • 当たった払戻金:100万円
  • その当たり馬券の購入費:1万円(例)
  • 利益=100万円-1万円=99万円

この99万円が一時所得の計算の基礎になります(他に一時所得がなければ、50万円の特別控除後、残りの半分が課税対象)。

外れ馬券は?

年間で100万円分の外れ馬券があったとしても、それは経費として認められません。

4-2 実際の申告での注意点

記録の重要性

  • いつ、どのレースで、いくら的中したか
  • その馬券をいくらで購入したか

これらを記録しておかないと、正確な申告ができません。

高額払戻金の場合

払戻金が一定額以上になると、主催者から税務署に支払調書が提出される場合があります。申告漏れがあると、後から税務署から指摘される可能性があるため、必ず申告しましょう。

少額でも申告が必要?

他の一時所得と合算して、利益が50万円以下であれば、結果的に税金はかかりません。ただし、給与所得者で副業などがない場合でも、一時所得の金額によっては確定申告が必要になる場合があります

5.【総括】

確定申告での間違いは、手続き上の問題にとどまらず、税金を払い過ぎてしまうなど、場合によっては追加の税金やペナルティが発生する原因になります。

5-1 確定申告をする・しないの判断基準

確定申告が必要な主なケース

☑ 給与収入が2,000万円を超える
☑ 給与を2か所以上から受けていて、年末調整されなかった給与と副業等の所得の合計が20万円を超える
☑ 副業等の所得が20万円を超える
☑ 公的年金が400万円を超える、または公的年金以外の所得が20万円を超える

確定申告をした方が良いケース(還付が受けられる)

☑ 医療費が一定額を超えている
☑ ふるさと納税をした(ワンストップ特例を使わない場合)
☑ 住宅ローン控除を受ける(初年度)
☑ 年の途中で退職し、年末調整を受けていない

5-2 申告期限と修正の方法

申告期限

原則として、翌年の2月16日から3月15日までです(土日の場合は翌平日)。

期限を過ぎてしまった場合

  • 還付申告(税金が戻ってくる申告)は、5年間遡って申告できます
  • 納税が必要な申告を期限後に行うと、無申告加算税や延滞税がかかる場合があります

申告内容を間違えた場合

  • 申告期限内:e-Taxで修正して再送信できます
  • 申告期限後:「更正の請求」(税金を払いすぎた場合)または「修正申告」(税金が不足していた場合)の手続きが必要です

5-3 最終チェックリスト:送信前に必ず確認

申告書を送信する前に、以下の項目を確認しましょう。

□ 医療費控除

  • 家族全員分の医療費を含めているか
  • ガソリン代など対象外の費用を入れていないか
  • 10万円(または所得の5%)を超えているか確認したか

□ ふるさと納税

  • 確定申告をする場合、ワンストップ特例が無効になることを理解しているか
  • 寄附したすべての自治体分を入力しているか
  • 寄附金受領証明書の金額と一致しているか

□ 一時所得(保険金・ギャンブル等)

  • 満期保険金や高額な払戻金を申告から漏らしていないか
  • 保険金の場合、支払った保険料を正しく控除しているか
  • 一時所得の特別控除(50万円)が適用されているか

□ 添付書類・保管書類

  • e-Taxで省略できる書類でも、5年間の保管が必要なことを理解しているか
  • 必要な証明書類は手元にあるか