いそべ便り(毎月更新)

税金、年金、商法等の改正事項を解り易くご案内しております。

【令和7年分年末調整のしかたを公表、基礎控除等の見直しで12月以後の源泉徴収事務に変更点】(令和710月)

 国税庁は829日、令和7年分年末調整のしかたを公表しました。令和6年分と変わった点として、令和7年度税制改正で所得税の基礎控除等の見直しなどが行われ、これら改正が原則令和7121日に施行されて令和7年分以後の所得税に適用されるため、令和712月に行う年末調整など12月以後の源泉徴収事務に変更が生じることなどを挙げています。また、令和7年分の年末調整から「調書方式」に対応した住宅ローン控除の適用を受ける人が出始めます。調書方式の場合、給与支払者が提出を受ける「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」に「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の添付が不要となるので注意が必要です。

 令和7年度税制改正では所得税の給与所得控除の最低保障額と基礎控除の最高額を各10万円引き上げたうえで、基礎控除を上乗せ特例により一定の中所得者層まで収入等に応じて537万円上乗せすることとしました。特定親族特別控除の創設や扶養親族等の所得要件の改正も行われています。

 これらを令和712月に行う年末調整など12月以後の源泉徴収事務で反映させるに当たり、年末調整のしかたでは留意事項として、(1)給与の支払を受ける人に、改正で新たに扶養控除等の対象となった親族等がいないか確認し、新たに扶養控除等の対象となった親族等がいる場合は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受ける、(2)特定親族特別控除の適用を受けようとする給与の支払を受ける人から「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出を受ける、(3)改正後の基礎控除額や給与所得控除額等に基づく年末調整の計算する―ことをそれぞれ求めています。

 給与支払者は(1)や(2)の申告書の提出に際し、給与の支払を受ける人が申告を忘れないように適切な周知が必要となります。(3)では、基礎控除額等のほか、年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(年末調整のしかたに収録)が改正されているので、改正後の基礎控除額等や同金額の表に基づき、年末調整の計算を行います。

 なお、令和69月から同庁ホームページに掲載されている「令和7年分給与所得に対する源泉徴収簿」右側の「年末調整」欄は、特定親族特別控除の適用がある場合の計算に対応していません。このため、特定親族特別控除の適用がある場合で、同源泉徴収簿を使用するときは、余白部分に特定親族特別控除額の記載欄を設けるなどして年末調整の計算を行う必要があります。

【経産省の令和8年度税制改正要望、少額減価償却資産の特例や食事支給の非課税限度額の引上げを、新たな設備投資促進税制の創設も】(令和7年10月)

 経済産業省と国土交通省の令和8年度税制改正要望の概要が明らかになりました。経産省では新設項目として、高付加価値化のための大胆な設備投資を促進する税制を創設すること、中小企業による研究開発に係る設備投資拡大に向けた所要の措置を創設することを掲げています。その他、中小企業関係税制では、事業承継税制に係る特例承継計画の期限延長等、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の延長等、食事支給に係る所得税非課税制度の見直しなどを要望しています。また、国交省では、住宅ローン減税等について、カーボンニュートラルなど、2050年に目指す住生活の実現に向けて、所要の措置を講じるとしました。

 高付加価値型の経済・産業構造に転換するには、過去最高水準に上昇した企業の現預金も活用しながら、国内投資と賃上げを進めていくことが不可欠であるなどと指摘しました。

 国内投資の拡大を通じて、日本企業の「稼ぐ力」を向上させ、賃上げを含めた好循環を形成するため、5年間を集中投資期間と位置づけた上で、高付加価値化のための大胆な設備投資を促進する税制を創設することを求めています。

 さらに、赤字や利益が少ない企業も含めた中小企業における研究開発投資を一層後押しし、収益力の向上を図る観点から、中小企業による研究開発に係る設備投資拡大に向け、固定資産税において所要の措置を創設することを要望しています。

 また、中小企業の積極的な研究開発を促進する観点から、増減試験研究費割合に応じた控除率等の上乗せについて、時限措置の3年間の延長を行うとともに、企業の研究開発投資の増加を促すためのインセンティブの強化に向けた見直しを行うことを求めています。

 経営者の高齢化の進展等を踏まえ、中小企業の事業承継を後押しし、生産性向上・成長を支援する観点から、法人版(特例措置)および個人版事業承継税制(贈与税・相続税ともに100%を猶予)については、承継計画の提出期限延長を行うこと、事業承継による世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念も踏まえ、事業承継の在り方について検討することを求めました。

 現状、企業が従業員に提供する食事について、(1)従業員が食事価額の50%以上を負担し、(2)企業が負担した金額が月額3500円以下の場合に、食事に係る所得税を非課税とする制度が存在するが、昭和50年代以来、制度の見直しが行われていないため、足元の物価上昇等を踏まえた非課税限度額の引上げを行う必要があるとしています。

 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置については、適用期限を2年間延長することに加え、昨今の経済状況等やインボイス制度の対応状況など、中小企業者等を取り巻く環境に配慮するため、取得する減価償却資産の30万円の基準額の引上げなど、所要の見直しを行うことを求めています。

事務所概要

事務所名
税理士法人  い そ べ
所在地
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電話番号
0836-21-3161
FAX番号
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メールアドレス
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中国税理士会所属