いそべ便り(バックナンバー)

【令和6年度税制改正大綱に盛り込まれた自販機特例等における帳簿の記載事項見直しの詳細を国税庁が公表】(令和62)

 国税庁は1222日、政府が「令和6年度税制改正の大綱」を閣議決定したことを受けて、同大綱に盛り込まれている仕入税額控除に係る帳簿の記載事項の見直しの詳細などを「令和6年度税制改正の大綱について(インボイス関連)」として公表しました。同大綱では、いわゆる自販機特例が適用される取引や回収特例が適用される取引(3万円未満の取引に限る)における帳簿の記載事項について、3万円未満の公共交通機関利用時などの取扱いと同様に「住所又は所在地」の記載を不要とする取扱いを整備していくこととされました。この見直し等について、図やQ&Aを用いて説明が行われています。

 自販機特例などで住所等の記載を不要とする取扱いは、国税庁告示を改正して令和641日から適用される見込みです。同大綱では、この改正前でもインボイス制度が始まった令和5101日以後これら課税仕入れに係る帳簿への住所等の記載については運用上、記載がなくても改めて求めないこととしており、国税庁が公表した情報に記載されているQ&Aでも、令和5101日以後の取引について、帳簿に住所等の記載をする必要はないとしています。

 また、具体的に、例えば自動販売機で飲料を購入した場合の帳簿の記載例として、これまでは「〇〇市 自販機 飲料※」(※は軽減税率対象品目であることを表す)と記載されていたものが、住所等が不要となることで、「自販機 飲料※」といった記載でよくなることが示されています。

【定額減税で減税しきれない者には差額を給付、住宅ローン減税の適用者なども対象の見込み】(令和62)

 内閣府の特命担当相は1215日の会見で、低所得者支援および定額減税を補足する給付の内容を明らかにしました。政府が11月に取りまとめた経済対策では、令和5年度における住民税非課税世帯への1世帯当たり7万円の追加給付、所得税・個人住民税の定額減税(納税者および配偶者を含む扶養親族1人につき所得税3万円、住民税1万円)を決めるとともに、両者の間にいる者への丁寧な対応を行うとしていました。内閣府の発表によると、この一環で定額減税可能額が令和6年分推定所得税額または令和6年度分個人住民税所得割額を上回る者に対し、上回る額の合計額を基礎として1万円単位で切り上げて算定した額を支給するなどとしています。例えば、住宅ローン減税を適用して所得税額が定額減税以下、またはゼロになっているような人も基本的に給付の対象になるようです。

 今回の発表は、定額減税と低所得者向けの7万円の追加給付(多くの自治体で今夏以降、3万円を目安にすでに支援が行われており、追加給付との合計で10万円となる)の恩恵が十分に受けられない所得税・個人住民税が減税額に満たない者や令和5年度に住民税均等割のみ課税(住民税非課税に該当しない)の世帯、令和6年度から新たに住民税非課税等となる世帯への対応などを示したものです。与党が1214日に令和6年度税制改正大綱を決定したことを踏まえて発表されました。

①所得税や住民税の税額が定額減税の額に満たず、定額減税をしきれない者には前記のように差額の給付を行うほか、②令和6年度から新たに住民税非課税または令和6年度から新たに住民税均等割のみ課税となる世帯に対しては、現在のこれら世帯への給付と同水準の1世帯当たり10万円を給付します。

①は合計で2300万人程度が見込まれている。①、②への給付は令和6年に入手可能な情報をもとに給付を行っていくこととし、速やかな支給開始に向けて自治体での柔軟な対応を可能とします。

 また、③令和5年度に住民税均等割のみ課税の世帯にも1世帯当たり10万円を給付します。③は令和623月の支給開始を目指します。

 このほか、令和5年度の住民税非課税世帯および②、③の世帯には、世帯内で扶養されている18歳以下の子に1人当たり5万円、給付を加算することも明らかにしました。

 なお、定額減税をしきれないと見込まれる者への給付は、減税額確定(令和73月確定申告)を待たず、令和6年に入手可能な課税情報をもとに前倒しで給付することとしていますが、実績が判明して「減税+給付」が不足する場合には、追加で給付を行うとしています。
add_circle
add_circle
add_circle

【来年は相続・贈与税関係で激変の年に、相続時精算課税は見直しで使いやすく、暦年課税は相続前贈与の加算期間が延長】(令和512月)

 令和5年度税制改正で、資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築等を目的に、相続時精算課税制度や相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算対象期間等の見直しが行われました。これら内容は令和61月から適用され、施行まで1カ月あまりとなりました。相続時精算課税は見直しで使い勝手が向上し、利用の増加が見込まれる一方、暦年課税では相続前贈与の加算期間が延びることで、結果としてより早いタイミングで若い世代に資産移転が行われることが期待されています。令和6年からは居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)の評価方法が見直されることも決まっており、相続・贈与税関係で激変の年となります。

 令和5年度の相続税法の改正では、広く利用されているとはいい難い状況にあった相続時精算課税について、暦年課税に係る贈与税の基礎控除(110万円)とは別に、毎年110万円の基礎控除が創設されました。これにより、相続時精算課税に係る基礎控除(特定贈与者からの贈与に適用)と暦年課税に係る基礎控除(特定贈与者以外からの贈与に適用)とをそれぞれ適用することで、年間で最大220万円までの贈与に贈与税が課税されないことになります。また、相続時精算課税で贈与を受けた土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合に相続時に課税価格を再計算する特例も設けられました。

 相続時精算課税のデメリットを減らし、メリットを増やすことで利用促進につなげるねらいです。

 他方、暦年課税は、相続税の課税価格に加算される生前贈与の対象期間が、死亡前3年以内から同7年以内に延長されます。ただ、来年からすぐに7年以内となるわけではなく、実際には令和9年の相続から徐々に延び、令和13年に完成形の7年以内となります。新たに延長される4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算しない。

 なお、相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除により控除された額は、特定贈与者の相続財産に加算する必要はありません。

 全国家計構造調査(令和元年)によると、2000兆円を超す家計の金融資産のうち、60代以上の保有比率が6割を超えます。経済の活性化や子育て世代の支援には、高齢者から資金ニーズの高い若年層への資産移転が重要となりますが、その際に課される贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から相続税よりも高い税率構造となっています。このことが若年層への資産移転が進みにくい要因の一つとなっていました。一方、相続財産の多いごく一部の人にとっては、財産を分割して贈与すると、相続税よりも低い税率が適用され、これらの改善が求められていました。

 国税庁では、インボイス制度に関するオンライン説明会を開催しており、その応用編では個別論点について説明しています。その中から、インボイスの端数処理ルールにより帳簿の消費税額等の記載金額にズレが生じた場合の対応について紹介します。

 インボイスの記載事項である「消費税額等」は、1円未満の端数が生じる可能性があります。そうした端数については、「1インボイス当たり税率ごとにそれぞれ1回」というルールに従って処理する必要があります。

 一方で、税抜経理を行った場合の仮受消費税額等の計上については、消費税法上、そのタイミングも、端数処理法にもなんらルールはないため、ズレが生じる可能性があるとしています。

 このズレが生じた場合の対応として、売上税額の積上げ計算を行っている場合には、ズレが生じたとしても強いて調整する必要はないものの、割戻し計算をする場合には、調整を行う必要があるとしています。

経済対策に賃上げ税制の強化など盛り込む、退職所得課税の見直しは言及なし(令和512月)

 政府は112日、1人当たり4万円の所得税・個人住民税の定額減税の実施方針を含む総合経済対策を閣議決定しました。経済対策には、その目玉となる定額減税以外にも与党の令和6年度税制改正の議論の中で検討し、結論を得ることとされた税制措置が複数盛り込まれました。これらは927日開催の新しい資本主義実現会議で示されていた「新しい資本主義の推進についての重点事項」の中で明らかにされていた減税措置の内容におおむね沿ったものとなっています。

 経済対策に盛り込まれた定額減税以外の税制措置としては、①賃上げ促進税制の減税措置の強化の検討、②戦略分野の国内投資促進や特許等の所得に関する減税制度の創設など成長力の強化に資する減税措置について検討、③後継者不在の中小企業等に対する事業承継税制における特例承継計画の提出期限の延長等、④ストックオプション税制の年間の権利行使価額の上限額の引上げなど、利便性を向上させるための措置等の充実があります。

 このうち、①については、物価高に負けない賃上げを実現できるよう強化し、その際に中小企業等は赤字法人でも賃上げを促進するための繰越控除制度を創設するとともに、仕事と子育ての両立や女性活躍支援を促進する仕組み、適用期間の長期化を検討します。あわせて、マルチステークホルダーとの適切な関係の構築に向けた方策も講じることとしました。

 他方、前記の重点事項の中で、成長分野への労働移動の円滑化を目的に退職所得課税の見直しを行うとしていた点については、経済対策で特に言及はありませんでした。

【インボイス制度後の税務調査、記載事項の不足等の軽微なミスを把握しても必要な事項を他の書類等で確認等で対応】(令和5年11月)

 101日から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が始まりました。今後は消費税の仕入税額控除の要件として原則、インボイス発行事業者から交付を受けたインボイス等の保存が必要となります(各種特例や経過措置などあり)。インボイス制度で特に関心の高い事項に制度開始後の税務調査でどのような対応がとられるのかといった点があります。これらについては国会での質疑等を通じてすでに明らかにされていた部分もありましたが、8月に開催された「第3回適格請求書等保存方式の円滑な導入等に係る関係府省庁会議」で国税庁から改めて税務調査の運用が示されました。

 同会議の資料の中で、国税庁は「インボイス制度後の税務調査の運用について」と題する文書を示しています。

 この中では、①従来から大口・悪質な不正計算が想定されるなど、調査必要度の高い納税者を対象に重点的に調査を実施しており、これまでも保存書類の軽微な記載不備を目的とした調査は実施していない。②仮に調査等の過程でインボイスの記載事項の不足等の軽微なミスを把握しても、インボイスに必要な記載事項を他の書類等(相互に関連が明確な複数の書類を合わせて一のインボイスとすることが可能)で確認するほか、修正インボイスを交付することにより事業者間でその不足等を改める、といった対応を行う。③まずは制度の定着を図ることが重要であり、柔軟に対応していくといった説明がなされています。 

 これからの内容は、今年の通常国会における鈴木俊一財務相や国税庁幹部の答弁等でも明らかにされていました。

 補捉説明すると、②に関連して、インボイスは必要な記載事項が一の書類だけにすべてが記載されている必要はなく、例えば、納品書と請求書等の二以上の書類であってもこれらの書類について相互の関連が明確で、その交付を受ける事業者が必要な記載事項を適正に認識できる場合には、これら複数の書類全体でインボイスの記載事項を満たすものとなります。また、インボイス発行事業者が、インボイスを交付した場合に書類の記載事項に誤りがあったときには、書類を交付した相手方に対して、修正したインボイスを交付しなければならないとされています。

 仮に調査においてインボイスの記載事項の不足等の軽微なミスが把握されたとしても、事後的に相手方に修正インボイスを交付してもらうことなどでその不足等を改めることが認められるのであれば、記載不足等を過度に不安視する必要はなくなります。

【国税庁がETC料金のインボイス対応示す、「クレカ利用明細書」と「高速道路会社等ごとに1回の利用証明書」の保存で仕入税額控除を認める】(令和511月)

 国税庁は915日、適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関して問合せの多い質問をまとめたQ&Aを更新しました。今回は、「任意組合等に係る事業の適格請求書交付に当たっての各種届出書の提出方法」と「高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法」の2問が追加されました。その中で、高速道路のETC料金に係るインボイス対応について、「クレジットカード利用明細書」と、利用した高速道路会社等ごとに任意の一取引に係る「利用証明書」を併せて保存することで仕入税額控除を行って差し支えないとしました。そして、この利用証明書については、クレジットカード利用明細書の受領ごとに(毎月)取得・保存する必要はなく、インボイス制度開始後に1回のみ取得・保存することで差し支えないとしています。

 問いの主な内容は、ETCシステムを利用して高速道路を頻繁に利用している場合、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書の保存により仕入税額控除を行うことはできるかというもので、その回答の主な内容は以下のとおりです。

 クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書は、一般的にインボイスには該当しないため、高速道路の利用について、ETCシステムにより料金を支払い、ETCクレジットカード(ETCコーポレートカード及びETCパーソナルカードを除く)で精算を行った場合に、支払った料金に係る仕入税額控除の適用を受けるには、原則、高速道路会社が運営するホームページ(ETC利用照会サービス)から通行料金確定後、適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録(利用証明書)をダウンロードし、それを保存する必要があります。

 他方、高速道路の利用が多頻度にわたるなどの事情により、全ての高速道路の利用に係る利用証明書の保存が困難なときは、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書と、利用した高速道路会社及び地方道路公社など(高速道路会社等)の任意の一取引に係る利用証明書をダウンロードし、併せて保存することで、仕入税額控除を行って差し支えないとしました。

 利用証明書については、クレジットカード利用明細書の受領ごとに(毎月)取得・保存する必要はなく、高速道路会社等がインボイス発行事業者の登録を取りやめないことを前提に、利用した高速道路会社等ごとに任意の一取引に係る利用証明書を令和510月1日以後、1回のみ取得・保存することで差し支えないとしました。

【国税庁がインボイス制度で事業者が注意すべき事例集を公表】(令和59月)

 国税庁は731日、インボイス制度において事業者が注意すべき事例集を公表しました。同事例集では、①インボイス制度開始前にインボイス発行事業者の登録を取り下げるケース、②インボイス制度開始後にインボイス発行事業者の登録を取り消すケース、③課税事業者選択届出書の提出により、令和5101日前から課税事業者となる同日を含む課税期間に、インボイス発行事業者の登録を受け、2割特例の適用を受けるケース、④2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間について、2割特例の適用を受けることができず、簡易課税制度の適用を受けるケースなどにおける注意すべき内容などが示されています。

 インボイス制度において注意すべき事例は表のとおりです。また、各事例について、図表などを用いた説明も掲載されています。

インボイス、101日前後の取引の適用関係に注意!(令和59月)

 101日から開始されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)の下では、適格請求書発行事業者である売手は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合、取引の相手方(課税事業者に限る)の求めに応じ、適格請求書を交付する義務が課されています。また、課税事業者である買手は、仕入税額控除の要件として、原則として、課税仕入れ等に係る帳簿及び適格請求書等の保存を要することとなります。 

 これらについては、101日以後に売手が行う課税資産の譲渡等及び買手が行う課税仕入れについて適用されることとなります。この点、同じ取引であっても、売手における売上の計上時期と買手における仕入れの計上時期が必ずしも一致しない場合があります。例えば、機械装置の販売において、売手が出荷基準により令和59月に課税売上を計上し、買手が検収基準により同年10月に課税仕入れを計上するといったことも生じます。

 この場合、売手においては、インボイス制度の開始前に行った取引(課税資産の譲渡等)であることから、買手からその取引について適格請求書の交付を求められたとしても、その取引に係る適格請求書の交付義務はありません。このため、買手においては、原則として、売手における課税売上の計上時期(課税資産の譲渡等の時期)が101日以後のものとなる取引から、仕入税額控除の適用を受けるために適格請求書等を保存する必要があります。

 上記の例のように、売手における課税売上の計上時期(課税資産の譲渡等の時期)が令和59月となる取引については、買手は区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることができます。なお、電気料金等のように検針日基準で売上及び仕入れを計上している場合であって、検針した期間に101日を含んでいたとしても、検針日により売上及び仕入れを計上している限り、101日前後の取引を厳密に区分する必要はありません。

 また、未成工事支出金及び建設仮勘定に係る課税仕入れの計上時期については、建設工事等の目的物の引渡し又は完成の日の属する課税期間の課税仕入れとすることができます。この場合、その引渡し等の日(課税仕入れを計上する日)が令和5101日以後であったとしても、その未成工事支出金等の基礎となる課税仕入れに含まれる101日前の取引については、区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることができます。                

 そのほか、短期前払費用に係る課税仕入れの計上時期については、その支出した日の属する課税期間の課税仕入れとすることができます。この場合、短期前払費用に係る取引に係る売手における課税売上の計上時期(課税資産の譲渡等の時期)が令和5101日以後になるものであっても、買手において同日前までに課税仕入れを計上しているものについては、区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることができます。

【ポイント交換は無償取引であると判断、大阪高裁逆転判決】(令和5年8月)

 企業間のポイント交換に応じて支払われた金員が消費税法上の役務の提供の対価に該当するか否かの判断が争われた事件で大阪高裁は、共同で行う顧客に対する企業ポイントの交換サービスを実施して、他の法人から受領した金員は資産の譲渡等の対価に当たらず不課税取引に該当すると判断して一審の判決内容を否定、カード運営事業者側の請求を認容する逆転判決を言い渡しました。

 この事件は、会員に対して鉄道等の旅客運賃等及び商品購入代金等を決済するサービスや、商品購入代金等の決済手段としてカードを利用した際に企業ポイントを付与するサービスを提供する他、その企業ポイントと提携法人が付与する企業ポイントとを交換するなどのサービスを提供する交通系ICカードを発行する運営事業者が控訴していたものです。

 控訴人は当初、提携ポイントを企業ポイントに交換した後に提携ポイントを付与した提携法人から支払われた金員を消費税の課税標準で課税資産の譲渡等の対価の額に算入した上で申告をした後、その金員は消費税の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額に算入されないなどとして更生の請求をしたところ、原処分庁から更生をすべき理由がない旨の通知処分を受けたため、その一部取消しを求めて提訴したという事案です。

 しかし、一審の大阪地裁が、控訴人に支払われた金員は、提携法人に対してポイント交換がされた提携ポイントを保有していた双方の会員に、提携ポイント数を基に所定の割合によって算出した数の企業ポイントを付与し、その数の企業ポイントについて控訴人が実施するポイントサービスの対象に組み込むという役務の提供に対する反対給付であるというべきであるから、対価に該当すると判示して訴えを斥けたことから、判決内容を不服とした運営事業者側が更にその取消しを求めて控訴していました。

 控訴審は、提携ポイントを付与した提携法人から支払われた金員は、ポイント交換に係る提携ポイントを発行した者としてその利用に係る経済的負担を負うべき立場にある提携法人がポイント還元を行う控訴人のためにその原資を提供する行為に他ならないことから、ポイント交換は無償取引であると判断、運営事業者側の請求を認容する逆転判決を言い渡しました。国側が上告を断念したため、納税者勝訴で確定しました。

【骨太の方針に理由なき退職所得課税制度の増税を明記】(令和5年8月分)

 政府は、退職所得課税制度の見直しを行います。616日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」に、成長分野への労働移動の円滑化のための施策の一環として盛り込まれました。

「退職所得課税については、勤続20年を境に、勤続1年当たりの控除額が40万円から70万円に増額されるところ、これが自らの選択による労働移動の円滑化を阻害しているとの指摘があります。制度変更に伴う影響に留意しつつ、本税制の見直しを行う」という記述ですが、具体的な見直し内容、時期は記されていません。

 退職所得の課税方式は、他の所得と区別する分離課税で、収入金額から退職所得控除額を控除後の金額を2分の1にした退職所得金額に、対応する税率を掛けて税額を算出します。 例えば、退職一時金が2000万円で勤続年数30年の場合の退職所得控除額は、40万円×20年と70万円×10年の合計の1500万円となります。これを2000万円から控除し2分の1にした250万円が退職所得金額になります。

 ただし、2分の1課税は、勤続年数5年以下の法人役員等には適用されず、また、勤続年数が5年以下であれば法人役員等以外であっても、退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分については、2分の1課税は適用されません。

 現行の退職所得課税の仕組みは、勤続年数が長いほど厚く支給される企業の退職金支給形態を反映したものとなっているわけですが、政府税制調査会では、従来から、転職の増加など働き方の多様化を踏まえると、今後も長期勤続の場合を特に優遇していくことが適当かどうか検討すべきと指摘していました。その一方、退職金が、退職後の生活の原資に充てられ、重要な人生設計上の期待にも関わる問題であることから、見直す場合は経過措置も含めた適切な工夫が必要との考えも示していました。

 労働移動の円滑化と退職所得の課税強化とは関係しているとは思えません。

【適格返還請求書の交付義務が免除されるケースとは】(令和5年7月)

 適格請求書発行事業者には、課税事業者に返品や値引き等の売上に係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書の交付義務が課されています。ただし、適格請求書の交付義務が免除される場合と同様、一定の場合には、適格返還請求書の交付義務が免除されます。それは、(13万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送、(2)出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売、(3)生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)、(4)3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等、(5)郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)、などの場合に、適格返還請求書の交付義務が免除されます。

 上記のほか、売上に係る対価の返還等に係る税込価格が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます。この1万円かどうかの判定は、値引き等の金額に標準税率が適用されたものと軽減税率が適用されたものが含まれている場合であったとしても、適用税率ごとの値引き等の金額により判定するものではなく、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債券の単位ごとの減額金額により判定することとなります。

 また、売上に係る対価の返還等とは、事業者の行った課税資産の譲渡等に関し、返品を受け又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、売上金額の全部若しくは一部の返還又はその売上に係る売掛金等の債権の額の全部若しくは一部の減額を行うことをいいます。したがって、このような売上金額の返還や債券の減額の金額が1万円未満であれば、適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります。

 具体的には、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債券の単位ごとに減額した金額により判定することとなります。例えば、500,000円の請求に対し、買手は振込手数料相当額440円減額した499,560円を支払った(売手は、440円を対価の返還等として処理)ケースでは、1万円未満の対価返還等であり、適格返還請求書の交付義務は免除されます。

【公取委 インボイス制度の実施で一方的な文書通告を行った発注事業者に注意】(令和5年7月)

 公正取引委員会はこのほど、「インボイス制度の実施に関連した注意事例について」を公表しました。

 インボイス制度において免税事業者とその取引先との間で独占禁止法・下請法上問題となり得る行為については、令和41月、公正取引委員会が関係省庁と共同で作成した「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」において考え方が示されています。

 その中で、発注事業者(課税事業者)が、免税事業者に対し、「課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上または下請法上、問題となるおそれがある」としています。

 しかし、今般、インボイス制度の実施に関連して、独占禁止法違反につながるおそれのある複数の事例が確認されたため、違反行為の未然防止の観点から、どういった業態の発注事業者と免税事業者との間でそうした事例が発生したかということに加え、事例を踏まえた独占禁止法・下請法上の考え方が明らかにされました。

 その注意事例とは、一部の発注事業者が、経過措置(免税事業者からの課税仕入れについては、インボイス制度の実施後3年間は仕入税額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができる措置)により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合には、消費税相当額を取引価格から引き下げると文書で伝えるなど一方的に通告を行った事例が見られました。

 そのため、公正取引委員会では、以下の発注事業者に対し、独占禁止法違反行為の未然防止の観点から注意を行いました。

 公正取引委員会では、独占禁止法上または下請法上の考え方として、「取引上優越した地位にある事業者が、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合に、消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通告することは、独占禁止法上問題となる恐れがある」と指摘しました。

 また、「下請法上の親事業者が、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者である下請事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合に、消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通告することは、下請法上問題となるおそれがある」として注意を呼びかけています。

【ブロックチェーン税制続々と改正に着手】(令和56月分)

 暗号資産(仮想通貨)などブロックチェーン技術に関連した税制改正が徐々に進んでいます。4月には、自社で保有する一部の暗号資産が法人税の期末時価評価の対象から除外されました。政府は、ブロックチェーンに関する事業環境整備を進める方針を示していますが、課題は山積しています。

 4月に法人税の期末時価評価の対象から除外されたのは、ブロックチェーン事業者が自社で発行した「FT(代替性トークン)」や暗号資産や投票権の機能を持つ「ガバナンストークン」などの種類がありますが、これは、デジタルアートなどに使用される「NFT(非代替性トークン)」と異なり、FTは通貨と同じように誰が持っていても価値が変わらないからです。

FTは、新規株式公開(IPO)と同じく資金調達の手段としても使われますが、事業者は発行したトークンの全てを暗号資産取引所に公開するわけではなく、事業のガバナンスを効かせる目的で自社保有しておくことが多いです。

 期末時価評価では、FTの市場価値がそのまま自社保有分の価値として課税されてしまうため、調達資金と同額がそのまま徴税されてしまうケースがありました。これを問題視した自民党デジタル社会推進本部のweb3プロジェクトチームが昨年11月に提言し、今年度の税制改正大綱に盛り込まれていました。

 ただ、改正項目に第三者が発行したFTを「短期売買」以外の目的で保有した場合に対象から除外する内容は盛り込まれませんでした。海外では簿価評価が当たり前で、ドバイの一部の地区やシンガポールではそもそもFTを運用して得た含み益にも課税されません。

 反対に、日本はFTの個人取引で得た所得は「雑所得」として扱われ、最高税率の55%が課税されてしまいます。こうした点なども問題視している同プロジェクトチームは、個人取引の損益は税率20%の申告分離課税の対象とすることなどを求めています。

*ブロックチェーンとは、一般に、「取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術」とされています。

【金融庁 新しいNISAの主なポイント等の紹介】(令和56月分)

2024年以降、NISAの抜本的拡充・恒久化が図られ、新しいNISAが導入されますが、これを受けて金融庁では、新しいNISAのポイントやよくある質問をNISA特別ウェブサイトで紹介しています。

新しいNISAの主なポイントは次のとおりです。

非課税保有期間の無期限化

・口座開設期間の恒久化

・つみたて投資枠と、成長投資枠の併用が可能

・年間投資枠の拡大(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360円まで投資が可能)

・非課税保有限度額は、全体で1,800万円。(成長投資枠は、1,200万円。また、枠の再利用が可能)

よくある質問では、例えば「生涯非課税限度額については、買付額ベースで管理されるのか?」という問いに対し「生涯非課税限度額については、買付け残高(簿価残高)で管理されます。このため、NISA口座内の商品を売却した場合には、当該商品の簿価分の非課税枠を再利用できることとなります」と回答しています。

また「新しいNISA制度では生涯非課税限度額を管理するとのことですが、金融機関を変更できるのか?」との問いには、「金融機関の変更は、可能です。利用者それぞれの生涯非課税限度額については、国税庁において一括管理を行うこととされています」としています。

そのほか「つみたて投資枠だけで生涯非課税限度額(1,800万円)を使いきることはできるのか。また、つみたて投資枠を使わず、成長投資枠だけを利用することはできるのか?」という問いには「つみたて投資枠だけで生涯非課税限度額(1,800万円)を使いきることは可能です。また、つみたて投資枠を使わず成長投資枠だけを利用することも可能です。ただし、成長投資枠の生涯非課税限度額は1,200万円とされています」と回答しています。

【令和5年度税制改正法が成立しました】(令和55月分)

 令和5年度税制改正法である国税の所得税法等一部改正法と地方税法等一部改正法は、ともに328日に開かれた参議院本会議で可決、成立しました。

 主な改正では、

(1)NISA制度を抜本的に見直し、非課税保有期間の無期限化と口座開設可能期間の恒久化されます。

一定の投資信託を対象とするつみたてNISAは「つみたて投資枠」とし、年間投資上限額を120万円に拡充されます。上場株式への投資が可能な現行の一般NISAは「成長投資枠」とし、年間投資上限額を240万円に拡充するとともに、「つみたて投資枠」との併用を可能となります。また、1800万円の非課税保有限度額を新たに設定されます。

(2)保有株式の譲渡益を元手に、創業者が創業した場合やエンジェル投資家がプレシード・シード期のスタートアップへの再投資を行った場合に、再投資分につき20億円を上限として株式譲渡益に課税しない制度を創設されます。

(3)相続時精算課税制度に、現行の暦年課税の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除を創設されます。

一方、暦年課税では贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間を相続開始前3年間から7年間に延長し、延長した4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算しない見直しされます。

(4)免税事業者がインボイス発行事業者を選択した場合、納税額を売上税額の2割に軽減する激変緩和措置を3年間講じられます。基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者に対しては、インボイス制度施行から6年間、1万円未満の課税仕入れにはインボイスの保存がなくても帳簿のみで仕入税額控除を可能となります。

(5)高額無申告に対しては、納税額(増差税額)300万円を超える部分のペナルティとして無申告加算税の割合を30に引き上げられます。

(6)地方税関係では、固定資産税について、中小事業者等の生産性向上や賃上げの促進に資する機械・装置等の償却資産の導入に係る特例措置の創設や、長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る税額の減額措置を創設します。自動車税・軽自動車税の環境性能割は、現行の税率区分を令和512月末まで据え置き、以降は税率区分(燃費基準達成度)3年間で段階的に引き上げられます。

【従業員に給付した職場つみたてNISAの奨励金は賃上げ促進税制の対象となる「給与等」に該当します】

(令和55月分)

 国税庁は331日、金融庁から事前照会のあった「従業員に対して職場つみたてNISAの奨励金を給付した場合の賃上げ促進税制の取扱いについて」の文書回答を公表しました。国税庁は、照会に係る事実関係が前提なら、意見のとおりで差し支えない旨回答しています。令和5年度税制改正大綱に、「法人が使用人に対して支給するつみたてNISA奨励金で所得税法の給与等に該当するものは給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度の対象となる給与等に該当することを明確化する」などの文言が盛り込まれたことから、金融庁が事前照会していました。

 職場つみたてNISAとは、NISAを利用した資産形成ができるように事業主等が利用者を支援する、福利厚生の増進を図ることを目的とした制度です。利用者は、事業主等が契約したNISA取扱業者が選定する金融商品の中から投資対象とするものを選択・投資します。

 そして、事業主等は、これを利用する従業員に対し福利厚生の一環として奨励金(本件奨励金)を給付する場合があり、その場合、事業主等は、従業員に対して支給する給与の額からNISAの積立金相当額を天引きするとともに、積立金相当額に本件奨励金を加えた金額を従業員のNISA口座に振り込む方法(給与天引き方式)により本件奨励金を給付します。このような給与天引き方式以外の方法として、事業主等は、従業員の給与と本件奨励金とを合算して従業員に支払い、従業員各自の預貯金口座等からNISAの積立金相当額に本件奨励金を加えた金額が従業員のNISA口座へ振り替えられる方法もあります。

 事業主等は、本件奨励金を給付した場合、会計上、福利厚生費など給与等以外の科目で費用計上している場合があり、このように給与等以外の費用として経理されている場合であっても事業主等が従業員に給付する本件奨励金は、給与等の支給額が増加した場合の所得税額または法人税額の特別控除の対象となる「給与等」に該当すると考えてよいかという疑問が生じます。そこで金融庁は、本件奨励金は、給与天引き方式または口座振替方式のいずれの方式によるものでも所得税法の給与等に該当するところ、賃上げ促進税制においては、「給与等」について、会計上どのような科目で費用計上するかは特に限定されていないので、事業主等が本件奨励金を給与等以外の費用である「福利厚生費」として費用計上していたとしても、本件奨励金は、賃上げ促進税制の対象となる「給与等」に該当すると考え照会していました。

《事務負担増を理由とした免税事業者との取引停止は独禁法で「問題とすることは困難」》(令和55月分)

 令和5年度税制改正法の審議などを行っていた衆院財務金融委員会と参院財政金融委員会では、今年101日から始まるインボイス制度に関する質疑も多くなされています。両委員会でなされたインボイス関係の質疑のうち、インボイスの導入による税務調査への影響や増収見込みなどに関する議論の一部を紹介します。

《事務負担増を理由とした免税事業者との取引停止と独禁法》

 314日の参院財政金融委員会で、議員がインボイス制度の導入に関連して免税事業者との取引を、事務負担増を理由にやめることが独占禁止法上、問題となるか質問しました。

 これに対し、公正取引委員会の品川武取引部長は「取引先事業者がインボイス制度施行後に真に免税事業者との取引に係る事務が煩雑になることのみが原因で取引を停止するという場合、それ自体を独占禁止法上の問題とすることは困難であると思う」旨を回答しました。しかし、「その停止の経緯や停止の真の理由は何かということを個別に判断して対応していく」と付け加えました。

《インボイスが税務調査に与える影響》

 315日の衆院財務金融委員会で、議員がインボイス制度の導入が税務調査に与える影響について質問しました。

 これに対し、国税庁の星屋和彦次長は「インボイス制度の開始後は、仕入税額控除の適用を受けるためには原則として、課税仕入れに係る帳簿およびインボイス発行事業者から交付されたインボイスの保存が必要となります。具体的には、買手の行った課税仕入れについて、適正なインボイスの保存がない場合、その不足する内容を他の書類等から確認できない限り、原則として仕入税額控除の適用を受けることはできないこととなります。したがって、税務調査でもこのような確認が必要となる」と答えました。

《インボイス導入による増収額》

 310日の財務金融委員会で、議員がインボイス制度を導入した場合の増収額について質問しました。

 これに対し、財務省の住澤整主税局長は、BtoB取引を行っているすべての免税事業者が課税転換をするという一定の仮定をおいた機械的試算と断った上で、令和2年の国税調査に基づく計数を当てはめて試算すると、2450億円になるとしました。ただ、この額はあくまで仮定に基づく数字であり、免税事業者からの仕入れに係る経過措置などの影響や個々の事業者の取引関係によっても課税転換の必要性は変わるので「確たることを申し上げることは困難」とも答えました。

【インボイス制度、「2割特例」に注意が必要!】(令和54月分)

 本年101日のインボイス制度スタートにともない措置される「2割特例」をめぐり一部で混乱が生じています。「2割特例」とは、インボイス制度の負担軽減措置として令和5年度税制改正で導入予定の時限措置です。課税売上1千万円以下の小規模事業者が、インボイス制度開始に伴い免税事業者から課税事業者(インボイス発行事業者)になった場合、消費税の納税額を売上税額の2割とすることができます。なお、この「2割特例」の適用対象期間は3年間のみの特例であることに特に注意が必要です。

 通常、消費税の申告には、経費の集計やインボイスの保存などが必要となりますが、この特例を適用することで、所得税・法人税の申告で必要となる売上・収入を税率ごと(8%10%)に把握するだけで簡単に申告書が作成できるというわけです。事前の届出も不要で、申告時に適用するかどうかの選択が可能なため、インボイス制度導入に伴い初めて課税事業者となる小規模事業者やフリーランスにとっては最低限の緩和制度といえます。

 この2割特例をめぐり一部で混乱が生じているのが、インボイス制度に対応するため早めに登録申請をして課税事業者となったケースです。2割特例の適用対象となるのは(1)免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受け、登録日から課税事業者となる者、(2)免税事業者が課税事業者選択届出書を提出した上で登録を受けてインボイス発行事業者となる者です。

 このため、例えば、免税事業者である個人事業者が昨年12月にインボイス登録申請と消費税課税事業者選択届出書を提出し、今年1月から課税事業者となったケースは、インボイス制度の施行前から課税事業者となっていたことから、その期間を含む令和5年分の申告については丸ごと2割特例の適用対象外となってしまいます。そこで、「せっかく早めに対応したのに・・・・・・」と一部で不安の声が挙がっています。

 しかし、この場合でも、その課税期間中(上記例では法案施行予定日の同年41日~1231日)に課税事業者選択不適用届出書を提出することで、同年1月~9月分の納税義務が改めて免除され、インボイス発行事業者として登録を受けた令和5101日~1231日までの期間について納税義務が生じることとなり、その3ヵ月分について2割特例の適用が可能になります。

 2割特例は、消費税の申告を行うたびに適用を受けるかどうかの選択が可能です。ただし、申告する課税期間の課税売上が1千万円を超えていないなど2割特例の適用対象となるか否かの確認が必要となるので注意が必要です。2割特例の適用期間は、令和5101日から令和8930日までの日の属する各課税期間です。例えば免税事業者である個人事業者が令和5101日から登録を受ける場合には、令和5年分(1012月分のみ)の申告から令和8年分の申告までの計4回の申告が適用対象となります。

令和5年度改正大綱の内容が追加されたインボイス制度のQ&Aが更新されました(令和54月分)

 国税庁は228日、消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関して問合せの多い質問をまとめたQ&Aを更新しました。令和5年度税制改正大綱に盛り込まれた納税額を売上税額の2割に軽減する「2割特例」や、4月以降に登録申請を行う場合の登録申請手続の柔軟化に関する問答などが掲載されています。また、昨年11月に改訂されたインボイス制度に関するQ&A(インボイスQ&A)の公表後、問合せの多い事項として、整理・集約した問答として「税抜経理を採用し、積上げ計算を行っている場合におけるインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る経過措置を適用する場合の税額計算」が追加されています。

 税抜経理を採用して積上げ計算を行っている場合における‶経過措置″を適用する場合の税額計算に関する問答は以下のとおりとなっています。

問答事例

 当社は、インボイス制度の下では、売上税額の計算は積上げ計算方式によることとし、税抜経理を採用していることから、仕入税額の計算については帳簿積上げ計算方式を採用する予定です。

 また、令和8930日までの間に行った経過措置の適用を受けるインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る消費税額については、仕入税額の計算方法が積上げ計算方式であることから、左図の①の合計額となりますが、②の計算方法で計算した金額としてもよいかというものです。

 回答では、質問の計算方法については、課税仕入れの都度、経過措置対象分(消費税額等相当額の100分の80)の仮払消費税額等を算出し、端数処理がされています。

 したがって、当該計算方法により算出した金額を当該経過措置の適用を受けた課税仕入れに係る消費税としても差し支えないとしています。

【インボイス制度の2割特例と簡易課税の相違点を確認、2割特例は業種区分が不要】(令和53月分)

 令和5年度税制改正大綱の内容を反映した税制改正法案のうち国税部分(所得税法等の一部を改正する法律案)が23日、地方税部分(地方税法等の一部を改正する法律案)が27日にそれぞれ国会に提出されました。このうち、国税部分の改正法案では令和510日にスタートするインボイス制度で、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった場合の負担軽減を目的に小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)が設けられます。売上税額の2割を納税額とすることができる仕組みですが、財務省がホームページに掲載している資料によると、その計算方法は、みなし仕入率が80%である場合の「簡易課税制度」と同じ計算方法になります。ただ、異なる点もあり、そうした相違点を中心に2割特例と簡易課税制度の内容を確認していきます。

 まず、簡易課税制度の内容を簡単に確認しておくと、同制度は、事業形態により、第1種から6種までの6つの事業に区分され、それぞれの事業の課税売上高に対し、1種事業が90%、2種事業が80%、3種事業が70%、4種事業が60%、5種事業が50%、6種事業が40%のみなし仕入率を適用して仕入控除税額を計算します。事業区分は、例えば1種事業は卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)、2種事業は小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業で1種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)となっています。

 ここで2割特例を適用できる事業者が仮に1種事業に該当すれば、みなし仕入率が90%なので簡易課税制度の方が税負担は小さくなります。ただ、事業者が行う事業が1種事業から6種事業までのいずれに該当するかの判定は、原則として、その事業者が行う課税資産の「譲渡等ごと」に行うとされている点には留意が必要です。

 他方、2割特例は仕入れに係る帳簿やインボイスの保存・管理が不要といった簡易課税制度と同様のメリットに加え、簡易課税制度のような業種区分が必要でない、簡易課税制度で求められる事前の届出も不要といった独自のメリットがあります。簡易課税制度選択届出書を提出していれば、申告時に2割特例と簡易課税制度と有利な方を選択適用することもできます。2割特例を選ぶ場合は確定申告書にその旨を附記するだけです。

 財務省のHP掲載の「インボイス制度の改正案に関する資料」ではこの際の確定申告書のイメージが示されており、2割特例の適用について「有・無」のどちらかにチェックを入れる形が想定されているようです。

【インボイス負担軽減の2割特例は制度開始から登録を受けると4回の申告が適用対象に】(令和53月分)

 財務省が令和5120日に公表した「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」(FAQ)では、小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)を適用できる期間の詳細が示されました。本特例は一般に3年間の負担軽減措置などと説明されることが多いのですが、本特例の適用対象者の令和5101日から8930日までの日の属する各課税期間が適用可能な期間となり、免税事業者である個人が令和5101日から登録を受ける場合には、令和5年分(1012月分のみ)の申告から令和8年分の申告までの計4回の申告が適用対象となります。(図参照)。

また、例えば免税事業者である3月決算法人が令和5101日から登録を受ける場合には、

令和63月決算分(10月~翌3月分のみ)から令和93月決算分までの計4回の申告が適用対象となります。(同)。

 ただ、2割特例を1度選択したからといって、その後の適用対象期間が、すべて継続適用となるわけではありません。申告する課税期間が2割特例の適用対象となるか否かについてはそれぞれの確認が必要となります。

 FAQでは、例えば、免税事業者である個人が令和5101日から登録を受けた場合で令和6年における課税売上高が1000万円を超えたとすると、令和5年分(1012月)、令和6年分、令和7年分の申告では2割特例の適用が受けられたとしても、令和8年分の申告は令和6年(基準期間)の課税売上高が1000万円を超えるので、2割特例は適用できないことになるなどとしています。

【相続開始前贈与の加算期間を7年に、相続時精算課税は毎年110万まで課税せず】(令和52月分)

 令和5年度税制改正大綱には資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築を目的に、贈与税の暦年課税における相続開始前贈与の加算期間の延長と相続時精算課税制度の見直しが盛り込まれました。相続開始前贈与の加算期間を令和9年から順次延長し、現行の3年を7年にまで伸ばします。また、相続時精算課税で受けた贈与について、暦年課税の基礎控除とは別途、毎年、110万円まで課税しないこととします。暦年課税と相続時精算課税の選択制は引き続き維持します。

 相続前贈与の加算期間は、現行、相続時に死亡前3年以内の贈与額を相続財産に加算して相続税を課税(納付済みの贈与税は税額控除)するものです。令和5年度改正ではこの加算期間を7年以内にまで延長する。延長は令和611日以降に受けた贈与について適用し、この結果、加算期間は3年後の令和911日から順次延長されます。加算期間の見直しに当たっては経過措置を設けます。

 なお、延長される4年間に受けた贈与については総額100万円までは相続財産に加算しないことにします。

 一方、相続時精算課税で受けた贈与は暦年課税の基礎控除とは別に、毎年110万円まで課税しないこととします。令和611日以後の贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税について適用します。特定贈与者(相続時精算課税選択届出書に係る贈与者)の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は同額の控除をした後の残額とします。複数の特定贈与者から贈与を受けた場合は、それぞれの贈与額に応じて按分します。

 あわせて、相続時精算課税で受贈した土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合は相続時に再計算する取扱いを設けます。

 このほかに、資産税関係では、教育資金の一括贈与に係る非課税措置と結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置をそれぞれ所要の見直しを行ったうえで教育資金一括贈与は3年、結婚・子育て資金一括贈与は2年、適用期限を延長することとなりました。

NISAを抜本的に拡充・恒久化、生涯非課税限度額は1800万円に】(令和52月分)

 政府が掲げる資産所得倍増プランの実現に向け、令和5年度税制改正でNISAの抜本的拡充と恒久化を図ります。令和61月から併用可能な「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を設け、年間投資上限額はつみたて投資額が120万円(現行のつみたてNISA3倍)、成長投資枠が240万円(現行の一般NISA2倍)とします。両枠をあわせた生涯非課税限度額は総枠1800万円(うち成長投資枠が1200万円、枠の再利用可)まで拡充します。それぞれ無期限で保有でき、口座開設期間も恒久化します。

 対象者は18歳以上で、つみたて投資枠は積立・分散投資に適した一定の投資信託、成長投資枠は授受株式・投資信託等(安定的な資産形成につながる投資商品に絞り込む観点から、高レバレッジ投資信託などは対象外)を対象商品とします。

 令和5年末までに現行の一般NISA及びつみたてNISA制度で投資した商品は、新しい制度の外枠で現行制度による非課税措置を適用します。

 これとは別に、令和5年末までにジュニアNISAで投資した商品は5年間の非課税保有期間が終了しても所定の手続きを経れば、18歳になるまで非課税措置が受けられることになっていますが、その手続きを省略することとし、利便性向上を図っています。

【適格請求書発行事業者の登録に係る経過措置に注意!】(令和51月分)

 免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、原則、消費税課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者となる必要がありますが、令和5101日から令和11930日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、同選択届出書を提出しなくても、登録申請書を提出すれば登録が受けられ、免税事業者がその課税期間中に登録を受けることとなった場合には、登録日から課税事業者となる経過措置が設けられています。

 適格請求書発行事業者の登録を受けている事業者が、翌課税期間の基準期間の課税売上高が1000万円以下となった場合の納税義務には注意が必要ですし。その課税期間の基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者は、原則、消費税の納税義務が免除され、免税事業者となります。しかし、適格請求書発行事業者は、その基準期間における課税売上高が1000万円以下となった場合でも、登録の効力が失われない限り、免税事業者とはなりません。

 つまり、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録に係る経過措置の適用を受けた場合、登録を受けた日が令和5101日の属する課税期間である場合を除き、登録を受けた日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、免税事業者となることはできないため、登録取消届出書を提出し、登録の効力が失われても、基準期間の課税売上高にかかわらず、課税事業者として消費税の申告が必要となるわけです。

 また、簡易課税制度は、その課税期間の基準期間の課税売上高が5000万円以下であり、原則、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している場合に適用することができます。(簡易課税制度の選択は任意)。ただし、免税事業者が令和5101日から令和11930日までの日の属する課税期間に適格請求書発行事業者の登録を受け、登録を受けた日から課税事業者となる場合には特例があります。

 それは、上記の課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受けた日から課税事業者となる場合、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した消費税簡易課税制度選択届出書をその課税期間中に提出すれば、その課税期間から簡易課税制度を適用することができます。なお、課税期間の末日が土・日曜日・祝日等に当たる場合でも、消費税簡易課税制度選択届出書の提出期間は延長されないので注意が必要です。

【政府税調で取り上げられた税への公平感を大きく損なう事例、6事例のうち2つを5年度改正で対応へ】(令和51月分)

自民党税制調査会小委員会で示された令和5年度税制改正に係る納税環境整備案には、高額な無申告に対する無申告加算の割合の引上げと一定期間繰り返し行われる無申告行為に対する無申告加算税等の加重措置の整備が盛り込まれました。これらは1028日に開催された政府税制調査会の納税環境整備に関する専門家会合で国税庁が「税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例」として示した六つの事例のうちの二つに対応するものですが、残りの四つに対しては対策が示されず、中期的に対応を検討することになったもようです。専門家から時期を分けて対応を検討する必要があるとの指摘があり、指摘に基づき改正が行われる見込みとなりました。専門家会合で国税庁から税に対する公平感を大きく損なうような事例として示されていたものは、①調査をするための接触を一切拒否された事例、②調査をするための接触を拒否し、その後所在不明となった事例、③調査時に資料の提示・提出を拒否・遅延された事例、④申告後に仮装隠蔽行為が行われた事例、⑤高額な所得を得ていながら無申告のままとしていた事例、⑥長年にわたって無申告となっていた事例の六つです。これらのうち、118日に開催された政府税調総会に提出された資料で、⑤、⑥については早期の対応が必要との指摘があったと整理され、党税調の納税環境整備案に対策が盛り込まれました。

 ①~④は政府税調で中期的に対応を検討する必要があるとの指摘がありました。このうち、④は法人税の確定申告書を提出後、架空の請求書を作成し、架空請求書に基づいて更生の請求を行い、還付金を受領するといった内容ですが、その後、架空請求書の作成が判明し、更生の請求に係る「仮装隠蔽」行為が認められても、重加算税の賦課要件は「その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」とされており、重加算税の対象とならない点が問題点として挙げられていた。

 悪質性の高い事例に見受けられますが、専門家から「対象となる申告後の行為の範囲等については検討が必要であり、見直しに時間を要する」「従来の重加算税等で対応できないため、何らかの新しいカテゴリーの加算税を設ける必要」などの意見が出ており、5年度改正での見直しは見送られたようです。ただ、①~④も専門家会合で、おおむね見直しが必要との方向で議論が行われていたため、6年度以降の税制改正で改めて検討されることになるとみられます。

【インボイス制度の準備支援に「IT導入補助金」等】(令和412月分)

 インボイス制度は令和510月からスタートしますが、制度にかかわる事業者は、売り手・買い手ともにシステム改修等を含めた事前準備が必要になっています。そこで国税庁や経済産業省では、インボイス制度への対応も見据えた事業者のデジタル化や販路開拓等の取組みにおいて活用できる補助金を紹介しています。主なものに「IT導入補助金」と「小規模事業者持続化補助金」の2つがあります。

 IT導入補助金は、令和3年度補正予算において新設された「デジタル化基盤導入類型」において、中小・小規模事業者向けに、インボイス制度も見据えたデジタル化を一挙に推進するため、補助率の引上げ(1/2→最大3/4)を行うとともに、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの導入費用に加え、PC・タブレット等、レジ・券売機の導入費用を支援しています。

 IT導入補助金の通常枠はITツールの導入で補助上限額30450万円の1/2を補助しますが、PC等のハード購入補助等を行う枠「デジタル化基盤導入枠」では、交付の額が5万円~350万円の場合の補助率は、その交付の額のうち550万円以下の金額については3/450万円超~350万円の金額については2/3となります。PC・タブレット等は10万円を補助上限、レジ・券売機は20万円を補助上限に、ともに、1/2補助します。

 また、小規模事業者持続化補助金は、令和3年度補正予算にて新設された「インボイス枠」において、免税事業者からインボイス発行事業者に転換する場合の環境変化への対応を支援するため、小規模事業者等が自ら経営計画を策定し、商工会・商工会議所の支援を受けながら実施する販路開拓等の取組みや、販路開拓等の取組みとあわせて行う業務効率化の取組みを対象に、補助上限額の引上げ(50万円→100万円)を実施しています。

 小規模事業者持続化補助金の通常枠の補助上限額は50万円ですが、インボイス発行事業者に転換する事業者を支援する特別枠を設けたわけです。インボイス枠の申請要件は、令和3930日から令和5930日の属する課税期間で一度でも免税事業者だった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、インボイス発行事業者に登録し、販路開拓の取組みを行う小規模事業者とされています。補助上限は100万円、補助率は2/3となります。

【贈与税の生前加算期間 政府税調で延長を議論】(令和412月分)

 相続税・贈与税のあり方を見直すために、政府の税制調査会が設置した専門家会議での議論が始まっています。1021日にあった会合では、選択制となっている贈与税の課税方式について、資産移転の時期の中立性などの観点から有識者が意見交換しました。

 現行の税制では、贈与税の税率が相続税よりも高いことや、被相続人の高齢化によって、若年層への資産移転が進みにくいといった課題があります。2022年度の税制改正大綱にも、「資産の再配分機能の確保を図りつつ、早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくことが重要」との考え方が盛り込まれました。また、贈与税の課税方式で、暦年課税を選択した場合は死亡前3年以内の贈与のみ相続税として加算され、それ以前の贈与には、より税率の高い贈与税の税率が課されるために税負担が大きく異なり、資産移転の時期に中立的でないといった指摘もされています。

 こうした問題提起を受けて、会合では「暦年課税で相続として加算される死亡前3年の期間を延ばすべき」といった意見が多く出ました。延長期間については、「10年ほど」など具体的な数字も出ましたが、一   方で「期間を延ばす場合は移行期間を設けるべき」との指摘もありました。現行の贈与税では、「相続時の税負担がどうなるか不確実性があり、生前贈与をためらう要因になるのでは」といった懸念や相続時精算  課税の使い勝手の向上を求める声も上がりました。

  与党の税制調査会では、23年度の税制改正大綱取りまとめに向けた作業が始まっており、政府税調は大綱への反映を目指します。

【業務に係る雑所得の判定巡る所基通改正案でパブコメ結果、帳簿保存があれば原則、事業所得に原案を修正】(令和411月分)

国税庁は107日、81日に公表した事業所得と業務に係る雑所得の所得区分の判定等に関する所得税基本通達の改正案に対する意見募集(パブリックコメント)の公募結果を発表しました。7000通を超える意見が寄せられ、その判定基準として新たに主たる所得か否かを基準とすることに否定的な意見があったことから、従来案にあった「その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない」などの文言を削除し、「その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する」などと修正しました。本修正により、収入金額が300万円以下であっても、帳簿書類の保存があれば、原則として事業所得に区分されることになるとしている。改正通達は令和4年分の確定申告から適用します。

【修正後】(業務に係る雑所得の例示)

35-2 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。(1)~(8)省略

 (注)事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判断する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。

【修正前】(業務に係る雑所得の例示)

35-2 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。(1)~(8)省略

 (注)事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。

【消費税、飲食を提供する取引における簡易課税制度の事業区分】(令和4年11月分)

1.簡易課税制度に係る事業区分

簡易課税制度においては、事業者が行ったすべての課税売上取引を6つの事業に区分しなくてはなりません。具体的には、第一種事業(90%)・・・卸売業、第二種事業(80%)・・・小売業、第三種事業(70%)・・・製造業、第五種事業(50%)・・・サービス業、第六種事業(40%)・・・不動産業、第四種事業(60%)・・・上記以外の事業となっています。

2.飲料を提供する取引

居酒屋は、一義的には飲食店業として第四種事業に該当します。しかし、すべての課税売上げを第四種事業として簡易課税制度を適用するのではなく、一取引単位ごとに第一種事業から第六種事業のどの事業に該当するか判断しなければなりません。では、広く飲食の提供を前提として考えられる取引について説明します。

(1)  店内飲食のための飲料・料理の提供・・・飲食店業(第四種事業)

単なる飲料・料理の販売ではなく、店内におけるサービスを含んだ飲料・料理の提供が本質と考えるからです。ですから提供する飲料・料理は自分自身が調理したものである必要はなく、外部から仕入れた飲料・料理をそのまま提供した場合もその提供は第四種事業となります。

(2)  出前・・・飲食店業(第四種事業)

出前には店内サービスがないように思えますが、簡易課税制度においては、調理した飲料・料理を出前で運んで提供することは、調理した飲料・料理を店内でテーブルなどまで運んで提供することと同義であると考えます。

(3)  持帰り販売・・・製造業(第三種事業)

いわゆるテイクアウトのことです。テイクアウトは飲食店が調理した飲料・料理を店内で飲食せずに購入した者が自ら持帰るので、調理した飲料・料理の単なる販売となります。

 なお、缶入り飲料など仕入れた飲料・料理を販売する場合のその販売部分は、販売する相手が事業者ならば第一種事業、消費者の場合には第二種事業となります。

(4)  店外設置の自動販売機・・・小売業(第二種事業)

店外に設置した自動販売機に自らが購入した飲料を充填して販売している場合には、その飲料の販売は、消費者対する販売となります。

【国税庁の偽HPに誘導する不審なショートメッセージやメールにご注意を!】(令和410月分) 

 現在、国税庁をかたるショートメッセージやメールから国税庁ホームページになりすました偽のホームページへ誘導する事例が見つかっています。

 国税庁では「国税庁(国税局、税務署を含む)では、ショートメッセージによる案内を送信しておりません。また、国税の納付を求める旨や、差押さえの執行を予告する旨のショートメッセージやメールも送信しておりません。不審なショートメッセージやメールを受信した場合や、国税庁ホームページをかたるサイトを発見した場合には、アクセスすると被害を受けるおそれがありますので、アクセスしないようご注意ください」と呼びかけています。

なお、メールによる案内は、次の場合に限って送信しています。

・国税庁ホームページ新着情報の配信サービスの登録をしている場合

・国税庁メールマガジン配信サービスの登録をしている場合

e-taxの利用にあたり、メールアドレスを登録している場合

 特に、e-taxから送信される「税務署からのお知らせ」に類似したメール送信が確認されているので注意が必要です。「税務署からのお知らせ」は、メッセージボックスに情報が格納された場合などに送信されますが、国税庁では「心当たりのない方は、それらのメールに表示されたリンク先をクリックしないでください。また、心当たりのある方におかれましてもURLを確認してからクリックするなど、慎重に対応いただきますようお願いいたします」と注意を呼び掛けています。

【国交省 低未利用地の譲渡特例の拡充・延長を要望】(令和410月分) 

 国土交通省は825日、令和5年度税制改正要望を公表しました。

それによると、経済社会活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大を図るため、長期保有土地等に係る事業用資産の買換え等の場合の課税の特例措置を3年間延長するほか、土地の所有権移転登記等に係る特例措置についても2年間の延長を求めました。

 また、人口減少が進展し、利用ニーズが低下する土地が増加する中で、新たな利用意向を示す者への土地の譲渡を促進し、適切な利用・管理を確保し、さらなる所有者不明土地の発生を予防するため、個人が保有する低額な土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特例措置を3年間延長するとともに、譲渡価額の要件につき、上限を800万円(現行500万円)に引き上げるとしました。

 次に、豊かな暮らしの実現と地域の活性化を目指し、空き家の発生を抑制するための特例措置(3,000万円控除)の拡充・延長を求めました、具体的には、現行の措置を4年間延長するほか、売買契約等に基づき譲渡後一定期間内に耐震改修工事または除却工事が行われる場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象とするというものです。

 そのほか、長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置の創設を求めました。これは、管理計画認定マンションその他一定の要件を満たすマンションについて、必要な修繕積立金が確保され、長寿命化に資する一定の大規模修繕工事が実施された場合に、マンションの建物部分について大規模修繕工事が完了した翌年度分の固定資産税額を1/3減額する特例措置を2年間行うものです。

 また、危機的状況にあるローカル鉄道について、沿線自治体と協力して鉄道輸送の高度化を図り、鉄道を徹底的に活用して競争力を回復する取組みを支援するため、固定資産税等について所要の措置を講じることも要望しました。

【証拠書類のない簿外経費への対応は来年1月から適用】(令和49月分) 

令和4年度税制改正において、税務調査の現場で、証拠書類を提示せずに簿外経費を主張する納税者や、証拠書類を仮装して簿外経費を主張する納税者への対応として、必要経費・損金不算入措置が講じられます。この改正により、税務当局の調査負担が軽減されるとともに悪質な納税者の簿外経費は否認されることとなります。適用時期は来年令和511日以後に開始する事業年度からとなります。

 背景には、税務調査等の現場で、適正な記帳や帳簿保存をしていない納税者の真実の所得把握に係る税務当局の執行コスト多大化がありました。改正の結果、納税者(個人及び法人)が隠ぺい仮想行為に基づき確定申告書を提出または確定申告書を提出していなかった場合には、これらの確定申告書に係る年分・事業年度の売上原価の額及び費用の額は、一定の場合を除き、必要経費の額・損金の額に算入されないこととなります。

 一定の場合とは、保存する帳簿書類等により売上原価の額や費用の額の基因となる取引が行われたこと及びこれらの額が明らかである場合や、売上原価の額または費用の額の基因となる取引の相手方が明らかである場合、その他その取引が行われたことが明らかでありまたは推測される場合で調査等により税務署長がその取引が行われこれらの額が生じたと認める場合が該当します。

 また、売上原価の額又は費用の額の基因となる取引等が帳簿書類の保存場所等からも明らかである場合も必要経費に算入することができることとされています。省令では、帳簿書類の保存場所として、居住者の住所地若しくは居所地またはその営む事業に係る事務所若しくは事業所、雑所得を生ずべき業務を行う場所その他これらに準ずるものの所在地となることを明らかにしています。

 総収入金額を得るために直接要した金額から除かれる売上原価の額は、政令により、購入した資産、自己の製造等に係る資産、購入・製造等以外の方法によって取得した資産、贈与・相続等によって取得した資産を例示、各資産のいずれに該当するかに応じて定められた金額を必要経費に算入される資産の額として明らかにしています。なお、この必要経費・損金不算入措置は、前々年分の雑所得に係る収入金額が300万円を超える者も対象となります。

【所基通改正でパブコメ、副業収入300万円以下は特に反証ナシなら雑所得と取扱う案示す】(令和9月分)

 国税庁は8月1日、「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見募集(パブリックコメント)を開始しました。改正案では、副業に係る所得について所得区分の判定基準などが示されています。事業所得と業務に係る雑所得の判定は、所得を得るための活動が社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定しますが、副業の収入金額が300万円以下の場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱うとしました。令和4年分以後の所得税について適用される予定です。パブコメは8月31日まででした。

 改正案は、シェアリングエコノミー等の「新分野の経済活動に係る所得」や「副業に係る所得」の所得区分の判定が難しいといった課題に対応するため、雑所得の範囲を明確化するものです。

 給与所得者等が副業を行って申告をする場合、副業の所得区分の判断が必要となります。事業所得と雑所得の区分の判断に当たっては、社会通念上事業として認められるかどうかの判断要素を総合的に勘案して判断することになりますが、総合判断だけでは納税者の予測可能性の確保が困難だと考えられ、納税者における恣意性の混入などの問題が生ずるとしました。そこで、納税者利便も考慮し、通達によって収入金額による形式な基準を導入することも必要ではないかとしています。

 改正案では、35-1(雑所得の例示)を、改正後は(その他雑所得の例示)とする。その他雑所得(公的年金等に係る雑所得及び業務に係る雑所得以外の雑所得をいいます)の範囲に、譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得(営利を目的として継続的に行う当該資産の譲渡から生ずる所得及び山林の譲渡による所得を除きます)が含まれることを明確化する。

次に35-2(事業から生じたと認められない所得で雑所得に該当するもの)を、改正後は(業務に係る雑所得の例示)とする。業務に係る雑所得の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることを明確化する。としています。

【財産債務調書等の記載事項の簡略化範囲を拡充】(令和48月分)

 国税庁は75日、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書及び財産債務調書関係)の取り扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)を公表しました。財産債務調書の提出義務者の拡充や提出期限の後倒しといった令和4年度税制改正への対応のほか、記載事項を簡略化できる範囲の拡充などが行われています。7月4日には「所得税基本通達の制定について」と「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」の一部改正、相続税法基本通達等の一部改正(いずれも法令解釈通達)も公表されました。

 令和4年度税制改正法では、財産債務調書の提出義務者が広げられ、改正前の提出義務者のほか、その年の1231日に10億円以上の財産を有する者が加わりました。他方、財産債務調書と国外財産調書の提出期限がその年の翌年の315日から同630日へと後倒しされることなどでした。

 財産債務調書等に係る通達の改正ではこうした令和4年度改正法への対応とともに、令和4年度改正大綱で「財産債務調書及び国外財産調書の記載事項について運用上の見直しを行う」とされていたことを受けて、両調書の提出義務者の事務負担軽減を目的に、所得税の確定申告書に添付すべき収支内訳書または所得税の青色申告書に添付すべき青色決算書の「減価償却費の計算」欄に減価償却資産として記載されているものは、その価額の総額を記載することができることとされました。

 あわせて、財産債務調書で所在別に区分することなく、件数と総額で記載することのできる範囲や記載を省略することができる範囲を拡充しました。預貯金のうち、1口の預入高が50万円未満のものは預入高に代えて所在欄または備考欄に口座番号等を記載することも可能としました。それぞれ令和5年分以後から適用されます。

 各改正に関連し、「財産債務調書制度等の見直しについて」と題したパンフレットも公表されています。

 また、令和4年度改正では、所得税の税務調査で証拠書類を提示せずに簿外経費を主張する納税者などへの対応策として、必要経費不算入の措置が講じられました。事実の仮装・隠蔽があるまたは無申告の年分に確定申告における所得金額の計算の基礎とされなかった間接経費の額は一定の場合を除き、必要経費に算入しないというもので、令和5年分以後の所得税から適用されます。

 改正所基通では、本措置の対象の範囲外となる「計算の基礎とされていた金額」について、確定申告書や青色申告決算書、収支内訳書に記載された売上原価の額等にこれらの金額の記載がない場合でも、居住者が保存する帳簿書類その他の物件により売上原価の額等を明らかにした場合には「計算の基礎とされていた金額」と取り扱って差し支えないことなどが示されています。

【令和3年度の審査請求 2282件を処理して納税者の認容割合13.0%】(令和48月分)

国税不服審判所はこのほど、令和3年度における審査請求の概要を公表しました。

国税不服審判所に対する審査請求は、国税不服申立制度の改正により、再調査の請求(改正前:異議申立て)を経ずに直接行うことが可能となりました。(再調査の請求を行った場合でも、再調査の請求についての決定(再調査決定)後の処分になお不服がある場合に行うことができます)。

令和3年度における審査請求の件数は2458件で、前年度より9.9%増加しました。このうち、異議申立てまたは再調査の請求を経ないで直接審査請求のあった件数は前年度より188件増加の1789件、異議申立てまたは再調査の請求を経た審査請求は前年度より33件増加の669件。令和3年度の審査請求の発生件数に占める直接審査請求の割合は72.8%でした。

審査請求の処理件数は、前年度から46件減少の2282件で、このうち取下げは321件、却下は98件、棄却は1556件。納税者の主張が一部でも認められた件数は297件で、一部認容は137件、全部認容は160件。その割合は13.0%(一部認容6.0%、全部認容7.0%)で、前年度と比べ3.0ポイントの増加となりました。

 なお、国税不服審判所では、審査請求を原則1年以内に裁決するようにしており、審査請求の1年以内の処理件数割合は92.6%でした。

あわせて、国税庁はこのほど、令和3年度における訴訟の概要を公表しました。

訴訟の概要によると、令和3年度における訴訟の発生件数は187件で、前年度より22件増加しました。国側が一部敗訴したもの及び全部敗訴したものは13件(一部敗訴6件、全部敗訴7件)。その割合は6.5%(一部敗訴3.0%、全部敗訴3.5%)と、前年度比1.3ポイント減少しています。

【国税庁、住宅資金贈与の新非課税制度のあらまし公開】(令和47月分)

 国税庁はこのほど、「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらましを公表しました。これは令和4年度税制改正による同特例の見直しを受けたものです。住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度とは、父母や祖父母等の直系尊属から住宅の購入・新築・増改築等をするための資金の贈与を受けた場合、一定の要件のもと贈与税が非課税になる制度です。

 令和4年度税制改正では、受贈者の年齢要件の下限が従前の20歳以上から18歳以上に引き下げられた上、対象となる既存住宅用家屋の要件を耐震基準に一本化(経過年数基準は廃止)されました。非課税限度額については、省エネ等住宅(省エネ、耐震、バリアフリー等)は1,000万円、それ以外の住宅は500万円と見直しされた上で、特例の適用期限を2年間延長となりました。適用要件が緩和、期限が延長された一方で、非課税限度額は縮小(従前は最大1,500万円)されました。

 今回公表された「あらまし」では、同制度の改正点を詳解した上で、特に注意が必要な点として、省エネ住宅について、住宅ローン控除の適用、相続時精算課税の適用などを掲げ注意を促しています。

 省エネ等住宅については、断熱等性能等級4以上若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること、耐震等級2以上若しくは免震建築物であること、または高齢者等配慮対策等級3以上であること等の「省エネ基準」に適合する必要がありますが、それぞれの基準について住宅性能証明書や建設住宅性能評価書の写し、住宅省エネルギー性能証明書等の証明を申告書に添付する必要があります。

 住宅ローン控除を適用する場合には、住宅借入金等の年末残高の合計額が、住宅用の家屋の新築等の対価の額又は費用の額から新非課税制度等の適用を受けた部分の金額を差し引いた額を超えるときには、その超える部分については住宅ローン控除の適用はないとしています。

 また、平成1511日から令和51231日までに住宅取得資金贈与を受けた場合については、贈与者がその贈与の年の11日において60歳未満であっても相続時精算課税を選択できるとしています。

 なお、住宅資金贈与の新税制については令和411日以後の住宅資金贈与について適用となりますが、受贈年齢の引下げについては成人年齢が引き下げられた令和441日からの適用となるので注意が必要です。

【所得税、株主優待等に係る経済的利益の申告、20万円以下などで申告不要】(令和47月分)

 所得税法では、株式会社等の法人が株主である地位に基づいて供与した経済的利益でも、その法人が利益処分として取り扱わないような、いわゆる株主優待等の経済的利益については、配当等には含まれず、雑所得に該当することとされています。

 また、売却したものだけではなく、自己で利用するものも含め、株主優待に係る経済的利益になる時価相当額について所得税の申告をする必要がありますが、給与等の収入金額が2,000万円以下で次のいずれかに該当する場合には、所得税の申告書を提出する必要はありません。

(1)1カ所からの給与等の支払いを受け、その給与の全部について源泉徴収または年末調整により所得税が徴収される場合において給与および退職所得以外の所得の合計額が20万円以下であるとき。

(2)2カ所以上から給与等の支払者から給与等の支払いを受け、そのすべてについて所得税が徴収される場合で次のいずれかに該当するとき。

 ①従たる給与の支払者から受けるその年分の給与等の金額とその年分の給与および退職所得以外の所得との合計額が20万円以下であるとき

 ②その年分の給与等の金額が150万円と社会保険料控除等の一定の所得控除額との合計額以下で、給与および退職所得以外の所得との合計額が20万円以下であるとき。

 なお、上記の所得税法の規定は、申告を要しないこととしているもので、配当等について総合課税を選択して配当控除を受けるため、ふるさと納税による寄附金控除や医療費控除の適用を受けるため等、税金の還付を受けようとする場合で、所得税の申告書を提出する際には、株主優待にかかる経済的利益が20万円以下でも、その経済的利益の時価相当額を含めて申告をしなければならないのでご注意ください。

【法人税・消費税、税込経理方式を適用した場合の消費税等の損金計上時期】(令和46月分)

 消費税の経理方法については税抜方式と税込方式があります。法人税法は、法人の経理を尊重することとし、いずれの方法によるべきかを強制はしていません。

 税抜方式は、消費税等の額と当該消費税等に係る取引の対価の額とを区分して経理する方式です。消費税等は仮受消費税等または仮払消費税等の通過勘定として経理します。

 税込方式は、消費税等を取引の対価に含めて経理する方式です。具体的には、売上高・仕入高等は消費税等を含めた金額で計上し、納付税額は租税公課として費用に、還付税額は雑収入として収益に計上することとなります。

 税込経理方式を適用している場合の消費税等の損金計上時期は、以下のとおりです。

(1)  申告に係るもの・・・その申告書が提出された日の属する事業年度

(2)  更正・決定に係るもの・・・その更正または決定のあった日の属す事業年度

以上が原則です。ただし、法人が申告期限未到来の納税申告書に記載すべき消費税等の額を損金経理により未払金に計上したときはこれが認められます。

【所得税等、法人成りで事業用資産を引継いだ場合の譲渡価額と税務上の取扱い】(令和46月分)

1.   法人成りした際の事業用資産の引継ぎ

 個人事業主が、個人事業を廃止して法人を設立することを「法人成り」といいます。

 法人成りに伴い、個人事業のために所有し、事業の用に供していた資産を設立した法人へ引き継ぐ方法としては、一般的には「譲渡」により行われることが多いという現状にあります。この際に注意しなければならないのが、引継資産の譲渡価額です。

2.   譲渡価額と税務上の取扱い

(1)  棚卸資産

棚卸資産の引継価額は、原則として通常の販売価額とします。

なお、通常の販売価額のおおむね70%に相当する金額に満たない金額で譲度した場合は、通常売買される価額の70%相当額により譲渡があったものと取り扱われます。

法人に引き継ぐ棚卸資産の価額は、事業所得の総収入金額となります。

(2)  土地や建物

土地や建物については、法人成り後に個人から法人へ賃貸するという選択もありますが、譲度した場合の引継価額は、時価とします。

個人事業主から法人へ資産が移転する際、譲渡価額と取得費(譲渡費用を含む)とに差額があり、譲渡益が発生する場合には、個人事業主はその譲渡益に対して譲渡所得(分離課税)が発生します。

 また、譲渡を受けた法人においては、時価に比べて高額譲り受け、または低額譲り受けとなった場合には、課税が発生します。

(3)  建物以外の減価償却資産

 建物以外の減価償却資産の引継価額は、原則的には時価としますが、実務上は減価償却という税法上の根拠に基づき算定された未償却残高を時価として用いることもあります。

 この減価償却資産について法人への譲度に際し、(2)と同様に譲渡益が発生する場合には、個人事業主はその譲渡益に対して譲渡所得(総合課税)が発生します。

 なお、譲渡を受けた法人は、(2)と同様に課税が発生します。

3.    消費税の納税義務

 個人事業主が消費税の納税義務者であるとき、棚卸資産や建物などを法人に譲度した場合は、消費税が課税されることになります。

【日商が最低賃金引き上げで調査結果公表、賃金引上げ企業は40%と公表】(令和45月分)

日本商工会議所と東京商工会議所は5日、「最低賃金引上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査」の結果を公表しました。

 同調査は、最低賃金について、2016年以降、一昨年を除いて中小企業の経営実態を超える3%台の大幅な引き上げが行われてきたことを踏まえ、中小企業の経営への影響や負担感等を把握し、今後の要望活動に活かしていくために実施します。同時に、2022年度の中小企業の賃上げの対応についても調査しました。全国47都道府県の中小企業6007社を対象に調査を行い、回答企業数は3222社(回答率53.6%)でした。

 調査結果を見てみると、昨年10月の最低賃金引上げ(全国加重平均28円)を受け、最低賃金を下回ったため賃金を引き上げた企業の割合は40.3%となっています。

 現在の最低賃金額の負担感については、「負担になっている」と回答した企業の割合は65.4%でした。業種別では、コロナ禍で大きな影響を受けている「宿泊・飲食業」で90.9%と最も高いです。

 今年の最低賃金額の改定について、「引下げるべき」もしくは「引上げはせずに、現状の金額を維持すべき」と回答した企業の割合の合計は39.9%と、前年調査から16.7ポイント減少しました。一方、「引上げるべき」と回答した企業の割合は、前年調査から13.6ポイント上昇の41.7%で、「引下げるべき」などの合計を上回る結果となりました。

 2022年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は45.8%で、「賃上げを実施予定」と回答した企業のうち、約7割(69.4%)が「業績の改善がみられないが賃上げを実施予定」と回答しています。

 「賃上げを実施予定」と回答した企業の業種別トップ3は、「情報通信・情報サービス業」(54.4%)、「製造業」(52.5%)、「建設業」(51.4%)。一方、「運輸業」(27.0%)、「宿泊・飲食業」(24.2%)では2割台にとどまっています。

【登録免許税の免税措置が令和73月まで3年延長】(令和45月)

 令和4年度の税制改正により、(1)相続により土地を取得した個人が登記を受ける前に死亡した場合の登録免許税の免税措置、(2)少額の土地を相続により取得した場合の登録免許税の免税措置について、その適用期限が令和7331日まで3年延長されました。また、(2)の免税措置については、その適用対象となる土地の区域の要件が廃止されるとともに、その適用対象となる土地の価額の上限が100万円(改正前:10万円)に引き上げられました。

 (1)の特例は、相続(相続人に対する遺贈を含む)により土地の所有権を取得した個人が、その相続によるその土地の所有権の移転登記を受ける前に死亡した場合には、令和7331日までの間に、その死亡した個人をその土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さないこととされています。ちなみに、この「相続による土地の所有権の移転登記」の本則税率は0.4%です。

 (2)の特例は、個人が令和7331日までに、土地について所有権の保存登記又は相続による所有権の移転登記を受ける場合に、これらの登記に係る登録免許税の課税標準となる不動産の価額が100万円以下のときは、その土地の所有権の保存登記又はその土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税を課さないこととされています。

 上記の「不動産の価額」は、市町村役場で管理している固定資産課税台帳に登録された価格がある場合はその価額で、固定資産課税台帳の価格がない場合は、登記官が認定した価額になるので、その不動産を管轄する登記所に問い合わせる必要があります。また、上記の「土地の所有権の保存登記」及び「相続による土地の所有権の移転登記」の本則税率はともに0.4%でしたが、適用期限が延長され、令和7331日までは免税となるわけです。

【令和4年度税制改正で「ドローン節税」を封じ込め】(令和44月)

 令和4年度税制改正により、いわゆる「ドローン節税」や「足場レンタル」といわれる節税スキームが封じ込められる見通しのようです。

 現在、10万円未満の少額減価償却資産の取得価額は、その全額を損金に算入する一時に償却が認められています。そこで、自らの事業で使用しない10万円未満のドローンや工事現場の足場などを大量に購入し、当期の損金に算入します。購入した資産は別会社などに貸し付けることで、賃貸料などを当期以降の複数年度の益金に計上していきます。節税というよりも生命保険スキームのように課税の繰り延べができるわけです。

 しかし、今回の税制改正の中で、「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度について、対象資産から、取得価額が10万円未満の減価償却資産のうち貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除外する」という改正が盛り込まれました。

 農薬の散布や空撮による測量、物流、警護など、ドローンは幅広い分野で様々な活用をされていますが、一方で、操作方法を学んだり操作資格を得るためのスクールなどではドローン不足が起こっており、そこに目をつけて「ドローン節税」がブームとなったわけですが、今回の改正で貸付けが除外されたことで、このスキームは完全に封じ込められることになります。

【経産省が約束手形の利用廃止への道筋を公表】(令和44月)

経済産業省では、約束手形の2026年までの利用廃止への道筋として、(1)各産業界・団体が作成した自主行動計画の改定の要請、(2)手形交換所での約束手形の取扱い廃止の検討を、210日に公表し「取引適正化に向けた5つの取組」の中で明らかにしました。

 それによると、各産業界・団体に対して、約束手形の利用廃止に向けた具体的なロードマップ(段取り、スケジュール等)を検討し、今夏を目処に各産業界・団体の自主行動計画へ反映するよう要請するため、2月中に所管省庁に依頼します。また、業種をまたぐ取引上の課題(自らの業種だけではなく、他業種でも取り組んでもらわなければ解決できない問題)を洗い出し、春頃までに中小企業庁にフィードバックします。出てきた事項を中小企業庁でまとめ、各産業界・団体の自主行動計画へ盛り込むよう要請します。

 一方、産業界における約束手形利用廃止の取組状況を踏まえつつ、2026年に手形交換所での約束手形の取扱いを廃止することの可否について検討を開始するよう、2月中に金融業界に依頼します。

 支払手形の残高は、1990年度の107兆円をピークに減少に転じ、2019年度現在では25兆円。業種別では、卸小売、製造、建設業で手形が多く利用されています。中小企業庁の令和2年度アンケート調査によると、支払サイトの平均が、現金(振込)の50日に対し約束手形は約2倍の100日と長く、また、受取人が利息・割引料を負担する取引慣行となっており、これらが約束手形利用廃止の背景になっています。

 約束手形の利用の廃止については、政府の成長戦略実行計画(令和3618日閣議決定)で、「本年夏を目途に、産業界及び金融界による自主行動計画の策定を求めることで、5年後の約束手形の利用の廃止に向けた取組みを促進します。まずは、下請代金の支払に係る約束手形の支払サイトについて60日以内への短縮化を推進します。さらに、小切手の全面的な電子化を図る」と記載されていました。

【「簡易な方法」による申告等期限の延長、法人税や相続税のほか届出や申請も対象】(令和43月)

 国税庁は新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が急拡大していることを受けて415日までの間、「簡易な方法」による申告・納付期限の個別延長を申請することができるようにしたと発表しました。令和3年分確定申告の対象となる申告所得税、贈与税(申告期限はともに315日)、個人事業者の消費税(申告期限は331日)のほか、法人税や相続税その他の税目、更正の請求等の申告以外の届出や申請も個別延長の対象となります。感染状況等やその影響が今後どのように変化するかは見通しにくいですが、個別延長の対象を確認したうえで自身や自社の置かれた状況に応じ、「簡易な方法」の有効活用も検討の必要があります。

 法人税や相続税での「簡易な方法」による個別延長については、国税庁から「法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続の具体的な方法」と「相続税の申告・納付期限に係る個別指定による期限延長手続の具体的な方法」が公表されており、申告書の右上の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納期期限延長申請と記載する方法などが示されています。41月以降に申告等の法定期限を迎えるものが対象となります。

 また、申告以外の届出や申請に関しては、「国税における新型コロナウイルス感染拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り扱いに関するFAQ」で申告所得税について個別延長の対象となる主な申告・納付等の手続きが示されています。それによると、「所得税及び復興特別所得税の更正の請求」「所得税の青色申告承認申請」「青色事業専従者給与に関する届出(変更届出)「所得税の青色申告の取りやめ届出」「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求」「所得税の減価償却資産の償却方法の届出」「所得税の減価償却資産の償却方法の変更承認申請」「所得税の有価証券・暗号資産の評価方法の届出」「所得税の有価証券・暗号資産の評価方法の変更承認申請」「個人事業の開廃業等届出」「国外財産調書の提出」「財産債務調書の提出」が挙げられています。

【還付申告であっても315日までに申告しなければ青色申告特別控除の適用されない場合も】(令和43月)

令和3年度税制改正により、令和3年分の所得税の確定申告から、一部の者に課されていた税額が還付となる場合の確定申告義務がなくなっています。この確定所得申告の還付申告における確定申告義務がなくなったことにより、申告書の提出期間が翌年11日から315日ではなく、還付等を受けるための申告と同様に、翌年11日から5年間となっています。提出期間が変わったことにより、例えば、316日以降に申告書を提出するケースも考えられますが、この場合、期限内申告が要件となっている55万円や65万円の青色申告特別控除などの適用を受けられなくなるので注意が必要です。

その年の所得税の額を計算した結果、その合計額が配当控除の額を超える場合には、最終的に源泉徴収税額や予定納税額が還付となる者であっても、その年の翌年11日から315日までの間に確定申告書を提出しなければならないこととされ、税額が還付となる場合であっても、一部の者については確定申告義務が課されていました。

令和3年税制改正では、その計算した所得税の額の合計額が配当控除の額を超える場合であっても、①控除しきれなかった外国税額控除の額があるとき、②控除しきれなかった源泉徴収税額があるとき、③控除しきれなかった予納税額があるとき、つまり、最終的に還付申告となる場合には、確定申告義務はないこととされました。

これにより、「改正前において確定申告義務があった者」が還付を受けるために提出する申告書は、所得税法第122条《還付等を受けるための申告》の規定により提出された申告書(還付申告書)となり、その提出期間は翌年11日から5年間となります。

適用関係については、令和411日以後に提出期限が到来する所得税の確定申告書について適用となっている。

なお、還付請求の消滅時効の起算日については、還付申告書は提出期限が定められていないため、暦年終了後(翌年11日以後)いつでも提出することができることから、国税通則法第74条第1項《還付金等の消滅時効》の規定の適用に当たっては、還付請求の起算日は翌年11日となります。

また、還付申告の更正の請求ができる期間は、原則として還付申告書を提出した日から5年以内となります。

【税務調査が厳格化「後出し経費」が不可に帳簿不備にもペナルティー】(令和42月)

 令和31224日に閣議決定した令和4年度税制改正大綱では、税務調査での「後出し経費」の規制が見直されました。また帳簿の不備に対して追徴課税を上乗せするペナルティーも盛り込まれ、納税者にとってはさらに税務調査が厳しくなります。

 税務調査の場面では、仮装・隠蔽や無申告を指摘された納税者が、それまで申告していなかった簿外経費を持ち出して所得を減らそうとする“後出し”をすることが少なくなかったようです。

 こうした簿外経費を大綱では、「適正な記帳や申告が行われていない納税者については、真実の所得把握に係る税務当局の執行コストが多大で、行政制裁を適用する際の立証に困難を伴う」として、簿外経費の“後出し”で「悪質な納税者を利するような事例も生じている」ことから、厳格化に踏み切ったそうです。令和5年からは、仮装・隠蔽・無申告のいずれかがあった年の確定申告書に記載されなかった経費については、帳簿書類などにより費用が生じたこと、支出先の相手先が明らかであり反面調査によって支出が確かめられることなどの条件を満たす場合を除いては、原則として損金にできないこととされました。

 また、過少申告加算税および無申告加算税については、税務調査時に調査官から求められた帳簿を提出できなかったり、売上金額や収入金額の記帳が不十分だったりしたときには、通常の過少申告加算税や無申告加算税の額に、ペナルティーが加算される見直しが盛り込まれたようです。

 具体的には、帳簿を提出できないか、提出したとしても売上金額または収入金額の2分の1以上が記載されていなかったときには本則の加算税に10%が上乗せされます。たとえ提出したとしても、売上金額または収入金額の3分の1以上が記載されていなかったときは5%が上乗せされるというものです。令和61月以降に法定申告期限が到来する国税に適用されます。

【令和41月から適用される主な税制改正を確認します】(令和42月)

 令和41月から適用される主な税制改正を確認します。

 

概要

・確定申告書等に記載する各種所得に係る収入金額の支払者の記載において、法人の場合は本店等の所在地に代えて法人番号の記載可

・e-Taxによる確定申告で医療費通知の記載事項を入力して送信するときは、その種類の確定申告書への添付に代えることが可能

・ふるさと納税に係る寄付金控除で特定事業者が発行する「証明書」の添付可

 

 

・セルフメディケーション税制における「一定の取組」を明らかにする書類の添付等が不要

・短期退職手当等に係る退職所得の金額の計算方法の見直し

・上場株式等の配当等に係る課税方式の選択で確定申告書に個人住民税に係る附記事項を追加

・電子帳簿等保存制度の見直し

・特定納税管理人制度の創設

・無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の整備

・滞納処分免脱罪の適用対象の整備

・国外からの納付方法の拡充

・クラウド等を利用した支払調書等の提出

・住宅ローン控除の所得要件の引下げなど

・住宅所得等資金の贈与税非課税措置における限度額の見直しなど

・電子取引の取引情報のデータ保存に2年間の宥恕措置

 

 (1)令和3年分の確定申告では、ふるさと納税の申告手続きが簡素化されます。寄附金控除の適用には、確定申告書に特定寄附金の受領者が発行する寄附金ごとの「寄附金の受領書」の添付が必要となりますが、寄附ごとの「寄附金の受領書」に代えて、国税庁長官が指定した特定事業者、例えば「ふるなび」や「さとふる」などのポータルサイトが発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」を添付することができます。令和3年分以後の確定申告書を令和411日以後に提出する場合について適用されます。

 (2)令和4年分以後の所得税から短期退職手当等に係る退職所得の金額の計算方法が見直されます。これに伴い、退職手当等に係る源泉徴収税額の計算方法および退職所得の受給に関する申告書の記載事項等が整備されており、令和411日以後に支払うべき退職手当等について適用されます。

 (3)令和4年度税制改正大綱には、住宅所得等資金の贈与税非課税措置において限度額の見直しが盛り込まれました。耐震、省エネまたはバリアフリーの住宅用家屋は1,000万円となり、それ以外の住宅用家屋は500万円となります。令和411日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。

【自民税調・宮沢会長 金融所得課税23年度以降に検討〕】(令和41月)

自民党税制調査会は1118日、非公式幹部会合を開き、2022年度の税制改正議論をスタートしました。住宅ローン減税土地にかかる固定資産税の見直し賃上げ税制の強化策などが主なテーマとなります。

 岸田新政権の発足や衆院選挙のあった今年は、自民税調で「インナー」と呼ばれる非公式幹部会のメンバーの多くが入れ替わりました。例年より1カ月ほど開始が遅れ、税制改正大綱の1210日にとりまとめました。新体制では会長に宮沢洋一元経産相、顧問に甘利明前幹事長と額賀福志郎元財務相、小委員長に加藤勝信前官房長官、小委員長代理に石田真敏元総務相、副会長に森山裕前国対委員長と塩谷立元文部科学相、幹事に小倉将信青年局長が就任しました。

 主要テーマの一つとなる住宅ローン減税の現行制度は、年末のローン残高(上限4,000万円)の1%を所得税や住民税の税額から差し引けるのが基本となっています。一方、低金利が長期化する中でローン金利が1%を下回り、控除額がローン利息額を上回る「逆ざや」が生じている問題が会計検査院から指摘されています。宮沢会長は逆ざやについて「是正していかなければならない」と述べて控除率縮小の方針を示しました。住宅業界や国交省は控除率を一律に0.7%に引き下げたうえで控除期間を現在の原則10年から15年に延長して減税規模を変えないことを要望しており、控除率の幅や機関などが焦点となります。

 土地にかかる固定資産税についても見直しされました。土地は3年に1度の評価額見直しで税額が決まります。2021年は再評価の年に重なり、新型コロナウイルス禍前の地価が反映されることによる増税の懸念があったことから、税額が上昇する商業地や住宅地などすべての土地の税額を前年度と同額に据え置く特例措置を実施しましたが、宮沢会長はこの特例措置について延長を行うべきではないとの考えを示しています。

 首相が一時意欲を示しながら先送りした金融所得課税の強化については2022年度の改正項目としては議論しないものの、「増大する社会保障などの歳出に対応するために考えていかなければならない状況」として、2023年度以降の改正に向けて今後の方向性を検討するとしています。

【事業者の60%が「インボイス導入の準備していない」】(令和41月)

 日本商工会議所はこのほど、会員企業に向けて実施した「消費税インボイス制度」に関する実態調査の結果を取りまとめて公表しました(有効回答:3812件)

 インボイス制度導入への準備状況について尋ねたところ、59.9%と約6割の事業者が「特段の準備を行っていない」と回答しました。特に、売上1千万円以下の事業者では73.0%となっており、小規模な事業者ほど依然として準備が進んでいない傾向が見られます。

 インボイス制度導入に向けた課題として最も多かったのは、「そもそも制度が複雑でよく分からない」(42.4%)。次いで、「発行する請求書等の様式変更」(27.3%)、「受け取った請求書等のインボイス要件確認」(21.4%)、「仕入先が免税事業者かどうかの確認」(21.1%)となっています。中には、「コロナで先行き不透明の中、制度を理解する余裕もない」といった声も寄せられました。

 インボイス制度導入後の対応予定としては、課税事業者の2割超が「免税事業者との取引は(一切又は一部)行わない」「経過措置の間は取引を行う」と回答し、免税事業者との取引を見直す意向を示しました。なお、取引先が免税事業者かどうか「すでに把握できている」課税事業者は20.1でした。

 インボイス制度導入後、免税事業者の約2割(20.3%)は「課税事業者になる予定」「経過措置後に課税事業者になる予定」と回答しましたが、約5割(51.5%)の事業者が「まだ分からない」と回答しました。取引先から課税事業者になるよう「要請を受けた」ことがある免税事業者は1.6%でした。

 免税事業者が課税転換する際の課題(複数回答)としては「制度が複雑で事務負担に対応できない」が49.2%と最も多く、次いで「景気の先行きが不透明で売上が確保できるか分からない」(45.5%)、「資金繰りが難しい」(34.2%)と続いています。

【令和3年度税制改正における2021年の年末調整の変更点について】(令和312月)

変更点❶ 税務関係書類の押印義務の見直し

 2021年の年末調整の変更点のひとつめが「税務関係書類の押印義務の見直し」です。これはデジタル化推進の流れにそった変更となっており、今まで押印が必要だった多くの税務関係書類について、押印の必要がなくなりました。

 年末調整に関係する書類の多くも、押印の必要がなくなる予定です。例えば、「令和3年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の用紙では、「あなたの氏名」欄に前年まであった「印」の文字が消えています。

変更点❷ 年末調整を電子化するための事前申請の廃止

 年末調整の電子化をするためには、事前に「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出する必要がありましたが、令和341日以降に年末調整の書類をデータで受け取るケースからは、この承認申請書の提出を不要となりました。

変更点❸ 住宅ローン控除の特例の見直し

 「住宅ローン控除の特例の見直し」とは、特別特例取得に該当する住宅を取得した場合の住宅ローン控除の特例(控除期間13年)について、床面積の要件や所得要件等を見直したうえで、2年間延長するというものです。これは新型コロナウイルスの影響で、新築や増築の契約をしても工事に遅れが生じるなどで、契約年内に住むことができない人を救済するための処置です。簡単にいうと、令和311日~令和41231日までに、所定の期間で取得した住宅に住んでいる場合は、控除期間13年の住宅ローン控除が受けられるというものです。

変更点❹ 退職所得課税の見直し

 従業員が退職金を受けた場合は、退職所得に対して所得税がかかります。今までは、次の計算式で所得金額を計算していました。

退職所得金額=(退職金の金額‐退職所得控除額)×1/2

 しかし、今回の改正で、勤続年数が5年以下の従業員については(退職金の金額‐退職所得控除額)で計算した金額が300万円を超える場合、超えた部分については「×1/2」がなくなります。

 現在、勤続年数20年未満の場合、退職所得控除額は40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には80万円)となっています。この改正は、高額な退職金に対して、税負担の平準化を図るために設けられた措置です。

 勤続年数が5年以下の従業員については(退職金の金額‐退職所得控除額)で計算した金額が300万円を超えるケースは、あまりないかもしれません。例えば、勤続年数5年で退職金が500万円超の場合に、この改正のルールが当てはまります。

【インボイス制度で必要になる請求書の要件や注意事項】(令和312月)

 インボイス制度においては、消費税の経費の計算において、登録を受けた課税事業者である事業者からの請求書(適格請求書)が必要になりますが、この請求書は以下の要件が書かれたものとされています。

■インボイス制度で必要になる請求書

  発行する事業者の氏名又は名称及び登録番号

  1. 取引年月日

  2. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

  3. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率

  4. ※税率ごとに区分した消費税額等

  5. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 上記⓵の登録番号ですが、これは国税に登録を行った際に、国税から付与される番号です。この番号及び登録した事業者の氏名などは、国税庁のホームページで公開されますので、取引の際これらを参照することで、間違いなく消費税の控除ができる事業者か否か、その確認もできます。その他、これらの要件が書いてある請求書であれば、原則として適格請求書として認められます。特別な様式などはありませんので、これらをもれなく書いた請求書を使えば問題ないと考えられます。

■適格簡易請求書

 一方で、これらの請求書を発行しがたいケースもあります。一例として、不特定多数の取引先と取引する、小売業・卸売業・タクシー業などです。これらの業種は、上記⓺の相手方を逐一把握することが困難ですので、記載事項を簡単にした適格請求書を発行することで足りるとされています。

 適格簡易請求書は、以下を記載した請求書です。交付先を記載せず、かつ税率か消費税額のいずれかを記載することで足ります。

  発行する事業者の氏名又は名称及び登録番号

  1. 取引年月日

  2. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨

  3. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)

  4. ※税率ごとに区分した消費税額等「又は」適用税率

■適格請求書等の交付を受ける必要がない場合

 その他、適格請求書などの交付を受けなくても消費税の控除が認められる場合もあります。一例として、自動販売機の販売などです。飲料や切符を購入する場合、領収書や請求書が交付されることは多くありません。このため、3万円未満の自動販売機や3万円未満の公共交通機関の取引などについては、交付を受ける必要はないとされています。

 その他、いくつか交付を受けなくても問題ないとされる場合があります。

【インボイス 適格請求書発行事業者の登録申請書提出の注意事項】(令和312月)

 101日より適格請求書発行事業者の登録申請がスタートし、その後111日からは適格請求書発行事業者公表サイトでの検索等がスタートしています。

 申請開始から1か月が経過し、その間に提出された申請書について不備が見受けられたようです。国税庁から注意を促す情報が出ています。確認してみましょう。

 適格請求書発行事業者の登録申請書の提出にあたり、記載漏れ、記載誤り、二重送信に注意が必要です。これらの記載誤り等がある場合は、審査に通常よりも多くの時間を要することとなりますので、提出前に誤りなどがないかどうか確認しましょう。

~申請書の記載に当たり、特に注意したい事項~

〔氏名又は名称〕欄(法人事業者)・登記上の法人名を正しく記載してください。大文字・小文字、アルファベット表記・カナ表記も正確に記載願います。

 (個人事業者)・屋号を公表したい事業者の方は、別途(公表申出書)の提出が必要です。「氏名又は名称」欄へ屋号は記載しないよう注意してください。・氏名は、住民票等に記載された漢字(字体)を正しく記載してください。なお、常用漢字等を使用して公表しますので、申請書に記載された文字と公表される文字とが異なる場合があります。

〔代表者氏名〕欄(個人事業者)・「代表者氏名」欄への記載は、法人事業者の方のみ必要です。個人事業者の方は、記入しないようご注意願います。

〔事業者区分〕欄(法人事業者及び個人事業者の方へ)・「課税事業者」/「免税事業者」のいずれかにチェックが入っているかご確認ください。

〔次葉〕(法人事業者及び個人事業者)・次葉の「登録要件の確認」欄は全ての事業者の方に記載していただく必要があります。記載漏れがないかどうかご確認ください。

~e-Taxの送信に当たり、特にご注意いただきたい事項~

一度送信した後、後日同じ内容で再送信されるケースが見受けられます。「受信通知」を確認いただき、二重送信とならないようご注意願います。なお、二重送信となっている場合、原則として最後に送信された登録申請書を有効なものとして取り扱われますので、ご注意ください。

【適格請求書発行事業者の公表サイト、登録番号の検索などの利用は11月から】(令和311月)

 適格請求書発行事業者の登録制度における登録申請の受付が101日からスタートしました。令和5101日から導入される適格請求書等保存方式(インボイス制度)では、登録を受けた課税事業者である適格請求書発行事業者が交付する適格請求書等の保存が、仕入税額控除の要件となります。適格請求書発行事業者の登録、取消、失効状況を確認できる「適格請求書発行事業者公表サイト」も1日に公開されました。ただし、登録番号の検索などの利用は111日からとなります。

 国税庁ホームページのインボイス制度特設サイトでは、適格請求書発行事業者の申請手続きなどについて、さまざまな情報が掲載されています。

 e-Taxによる登録申請では、パソコンを利用して申請する「e-Taxソフト(WEB版」とスマートフォンやタブレットを利用して申請する「e-Taxソフト(SP版)」が公開され、登録申請手続のe-Tax対応に関するよくある質問も新たに公表されました。

  登録申請書を郵送で提出する場合は、税務署ではなく、管轄地域のインボイス登録センターに送付することになります

 登録申請等の様式では、国内事業者用の適格発行事業者の登録申請書(個人事業者用・法人用)、適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書で記載例が示されました。

 公表サイトでは、同サイトの利用ガイド、データダウンロード機能とWeb-API機能の詳細、よくある質問などが公開されています。

 登録情報を確認するための「登録番号による検索機能」「データダウンロード機能」「Web-API機能」は令和3111日から利用開始となります。今月中に登録申請書を提出し、登録簿へ搭載された適格請求書発行事業者は、令和3111日に一括して公表サイトに掲載されることになります。

 公表サイトでは、取引先から受領した請求書等に記載されている番号が登録番号であるか、また、その記載された登録番号が取引時点において有効なものか(適格請求書発行事業者が登録の取消などを受けていないものであるか)を確認することができます。

【相続登録の申請の義務化などで法務省が資料、遺産分割成立時の履行方法など示す】(令和311月)

 法務省は921日、所有者不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の一部改正と相続土地国庫帰属法のポイントをまとめた資料を公表しました。相続登記の申請の義務化では、遺産分割が成立した場合に追加的に義務付けられる登記申請において、申請義務の内容とその履行方法の詳細が示されています。登記申請義務に違反した場合の10万円以下の過料では、過料の対象とならない「正当な理由」があると考えられる例が挙げられています。なお、申請義務違反の事実の把握方法などについては、今後の課題としています。

 不動産登記法等の一部改正法等は、令和3428日に交付され、相続登記の申請の義務化関係の改正は公布後3年以内の施行となります。資料では具体的な時期は示されていませんが、令和6年から開始予定となっています。

 相続登記の申請の義務化は、不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けるものです。正当な理由なくその申請を怠ったときは、10万円以下の過料となります。

 なお、相続人が申請義務を簡易に履行できるようにするため、相続人申告登記が新設されます。①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなされます。

 また、遺産分割が成立した場合には、その内容を踏まえた登記申請をすることも追加的に義務付けられています。資料では、①3年以内に遺産分割が成立しなかったケース、②3年以内に遺産分割が成立したケース、③遺言があったケースに分けて、申請義務の内容とその履行方法が示されています。

 過料については、個別の事情によっては申請義務の履行期間内に登記申請が難しい場合も想定されるとして、登記申請を怠ったことについて「正当な理由」がない場合に限って過料に処するとしています。そして、個別事情を丁寧に酌む運用を行うため、「正当な理由」の具体的な類型については、通達などであらかじめ明確化する予定としました。その上で、「正当な理由」があると考えられる例として、①相次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース、②遺言の有効性や遺産の範囲などが争われているケース、③申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケースなどが示されています。

 過料を科する際の手続きでは、事前に義務の履行を催促するなど、公平性を確保する観点から、省令等に明確に規定するとしました。申請義務の履行期間経過後でも催促に応じて登記申請がされれば、裁判所に過料通知はしないとしています。

 なお、相続登記の申請義務は、施行日前に相続が発生していたケースでも課されます。ただし、申請義務の履行期間が施行前から始まることはありません。施行日とそれぞれの要件を充足した日のいずれか遅い日から始まるとされており、相続による所有権の取得を知った日が施行日前であっても、申請義務の履行期間は施行日から始まることになります。

【ふるさと納税の45%が、“経費”、住民税控除額との合計額は寄付額を上回る】(令和310月)

 総務省が7月末に公表しました「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、令和2年度の全国のふるさと納税(寄付金)の受入額は約6,725億円となり、過去最高を更新しました。同調査結果では、全自治体のふるさと納税の募集に要した費用やふるさと納税に係る住民税の控除額も明らかにされていますが、同費用と控除額の合計額は同受入額を大きく上回ります。

この数字をみると、ふるさと納税が多くの自治体で活性化ではなく、むしろ疲弊につながっているのではないかとの懸念が生じてきます。

 令和2年度のふるさと納税で全国の自治体がその募集に要した費用の内訳と合計額は表のとおりです。

返礼品の調達に係る費用 1,7833,500万円 26.5%(受入額に占める割合)

返礼品の送付に係る費用  5202,400万円   7.7

広報に係る費用       387,200万円   0.6

決済等に係る費用    1538,800万円   2.3

事務に係る費用等     538億円           8.0

合計          3,0341,900万円 45.1

 返礼品の調達に占める費用が最も多くを占めますが、事務に関する費用も500億円超にも及び、総額は約3,034億円と受入額の45.1%を占めます。個別の自治体でみると、当然この比率は変わってきますが、制度全体で考えると、集めた寄附金の約55%しか財源として活用できないということになります。

 他方、ふるさと納税が行われた場合、寄附金のうち2,000円を超える部分について主として翌年度の住民税から原則として全額が控除される(一定の上限あり)。同調査結果によると、2年度のふるさと納税に基づく、全国の自治体における3年度課税の住民税からの控除額は約4,311億円です。この金額はふるさと納税を行った住民が住んでいる自治体からの財源流出額となります。

 募集費用約3,034億円と住民税からの控除額4,311億円をあわせると約7,345億円。この金額はふるさと納税の受入額の約6,725億円を620億円も上回ります。

 ふるさと納税に伴う令和3年度課税での住民税控除の控除適用者数は約552万人に上ります。これほど多くの人がふるさと納税を利用するようになったのは、税控除と返礼品を合わせれば寄付額以上のメリットが得られるからですが、そのツケは結局のところ一部のふるさと納税の勝ち組の自治体を除く、多くの自治体が支払っているものにほかならないです。

 ふるさと納税は制度によって財源が流出する主に都市部の自治体から見直しを求める声があります。しかし、コロナ禍で財政状況が悪化する自治体が増えていることから、今後はこれまで見直しを求めていなかった自治体からも同様の声が上がり始める可能性もあります。  

【個人事業税のコインパーキング用地の賃貸方式は課税対象外】(令和310月)

 都内在住の個人納税者が他県に所有する土地をコインパーキング式の時間貸駐車場の運営会社に貸し付け、賃料収入を不動産所得として確定申告したところ、都税事務所から個人事業税の課税対象となる駐車場業を行う者に該当するとして個人事業税賦課決定処分を受けたことに対する取消訴訟で東京高裁は826日、同処分を取り消した東京地裁判決と同様に納税者が駐車場業を行う者に当たるとは認められないと判断し、処分を取り消しました。

 本件納税者は相続で取得した土地について、コインパーキング運営会社と契約書を取り交わし、同土地を駐車場の経営を目的に平成274月から平成303月までの3年間(自動更新条項あり)、賃料1か月378,000円で貸し付けました。同土地は同社が費用を負担して、ライン引きや車止めの設置などを行った上で使用されており、駐車台数は10台以上あります。納税者は所轄の税務署に賃料収入を計上した所得税などの確定申告書および所得税青色申告決算書(不動産所得用)を提出しましたが、都税事務所から駐車場業を行う者に該当するとして、個人事業税の賦課決定処分を受けました。

 争点は、納税者が駐車場業を行う者に当たるか否か。

 地裁は、地方税法は「駐車場業」の内容のほか、「事業」自体の意義について一般的な定義規定を置いておらず、これは社会通念に従って判断するほかはないと指摘しました。その上で、納税者は単に同社に土地を定額で貸し付けているにすぎないから、駐車場業を行う者であるとは認められず、これを前提とした処分を違法としました。

 高裁も地裁の判断を支持し、「(都)道府県が個人事業税を賦課する根拠は、地方税法72条の23項以外にないのであり、納税者が「駐車場業」を行う者であると認められなければ、「駐車場業」を行う者として個人事業税を賦課することは許されないのは自明」と指摘しました。そして、「個人事業税の課税される駐車場業とは、当該個人において、事業といえる程度の形態で有料の駐車場が営まれていることが必要である」とし、単に企画運営会社に駐車場業の用に供するための土地を貸し付けて同事業の運営には直接関与せず、定額の賃料を受け取るにすぎないような典型的な土地賃貸方式の場合には、少なくとも対価の取得を目的として自動車の駐車のための場所を提供する行為には当たらず、納税者は駐車場業を行う者であると認めることはできないなどとして処分を取り消しました。

【令和39月から電子的な受取証書の請求も可能に】(令和39月)

 現行民法で受取証書(いわゆる領収書)の交付請求として規定しているのは書面のみですが、512日に成立したデジタル整備法の一部である民法改正により、本年91日から、紙の受取証書の請求に代えて、その内容を記録した電子データ(電子的な受取証書)の提供を請求することができるようになりました。

 社会全体として在宅勤務が推奨されている中、主に勤務先での税務処理等から必要とされる受取証書の受領・保管等の事務を行うためだけに出社を余儀なくされたという声などがあったことが背景にあるようです。一方、受取証書の提供者側には、紙代や印刷代等の経費削減、レジの混雑緩和、書類として管理する手間や管理スペースの削減などのメリットが考えられています。

 今回の改正により、支払者側は紙の受取証書又は電子的な受取証書のいずれかの請求を選択することになりますが、小売店のシステムが未整備の場合や不相当な負担となる場合などのように、事業者が電子的な受取証書への対応が困難なときには紙での対応も可能です。

 内閣府と法務省では、実務の参考とするため、この電子的な受取証書についてのQ&Aを公表しており、税務関連の設問として、「民法上の受取証書」と、「消費税の仕入税額控除の適用を受けるために保存が必要となる請求書等」(「区分記載請求書等」)、及び令和510月から導入されるインボイス制度の「適格請求書」との関係性を取り上げています。

 それによると、民法上の受取証書と区分記載請求書等では、必要とされる記載事項が異なりますが、民法上の受取証書に区分記載請求書等として必要事項が記載されていれば、これを保存することにより、消費税の仕入税額控除の適用を受けることができます。また、適格請求書は、区分記載請求書等に一定の記載事項を追加したものであるため、民法上の受取証書に適格請求書として必要事項が記載されていれば、これを適格請求書とすることも可能としています。

 このため、電子的な受取証書についても、消費税の仕入税額控除の適用のために保存が求められるものとして活用する際には、区分記載請求書等として必要な記載事項を満たす必要があるとしました。

【インボイス制度の登録申請101日受付開始】(令和39月)

 令和5101日から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が導入されます。現在多くの事業者がそれに向けた準備に追われていますが、こうした中、国税庁は730日、「適格請求書発行事業者」になるための登録申請手続きに係る詳細な情報等をホームページに掲載しました。

 インボイス制度とは「適格請求書等保存方式」のことをいいます。これは、複数税率に対応した仕入税額控除の方式として導入されるもので、仕入税額控除の要件として、原則、適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書(インボイス)の保存が必要になります。

 適格請求書とは、(1)適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号、(2)課税資産の譲渡等を行った年月日、(3)課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減税率対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減税率対象資産の譲渡等である旨)、(4)課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率、(5)税率ごとに区分した消費税額等(消費税額及び地方消費税額に相当する金額の合計額をいう)、(6)書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称、の事項が記載された請求書や納品書、領収書、レシート等のこと。

 この適格請求書を発行できるのは「適格請求書発行事業者」に限られ、適格請求書発行事業者になるためには、所轄税務署に登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。登録申請書の提出できるのは令和3101日以降。登録申請手続きはe-Taxで行うことができ、個人事業者はスマートフォンからも申請可能です。

7月から申請書に必要事項を記載することで登記事項証明書の添付省略が可能に】(令和38月)

 国税庁は630日、「国税関係手続における添付書類の省略に向けた取組について」を更新しました。それによると、令和371日から、国税関係手続のうち、法令により登記事項証明書(不動産および商業・法人)を添付することが規定されている手続について、申請者が申請書への記載等により必要事項を税務署等に提供する場合、登記事項証明書の添付を省略することが可能となります。

 申請書に記載等する必要事項は、不動産登記事項証明書の添付を省略する場合、土地では、①土地の所在する市区町村、字および当該土地の地番(不動産登記法第2条第17号に規定する地番。以下同じ)、②不動産番号(不動産登記規則第1条第8号に規定する不動産番号(13桁)。以下同じ)のいずれか、建物では、①建物の所在する市区町村、字、土地の地番および当該建物の家屋番号(不動産登記法第2条第21号に規定する家屋番号)、②不動産番号のいずれかとなっています。

 商業・法人登記事項証明書の添付を省略する場合は、①法人の商号または名称(漢字商号/名称)および本店又は主たる事務所の所在地、②会社法人等番号(商業登記法に基づき、登記簿に記録される12桁の番号)③法人番号(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づき、国税庁長官が指定する13桁の番号)のいずれかとなっています。

【令和3年分路線価は、▲0.5%と6年ぶりに下落】(令和38月)

全国の国税局・税務署において7月1日、相続税や贈与税の土地等の課税評価額の基準となる令和3年分の路線価及び評価倍率が公表されましたが、新型コロナウイルスの影響により、今年1月1日時点の全国32万地点(継続地点)における標準宅地の前年比の変動率の平均は▲0.5%(昨年+1.6%)と、6年ぶりの下落となりました。

路線価日本一は36年連続で東京・銀座「鳩居堂前」となりましたが、▲7.0%と9年ぶりに下落しています。

 都道府県別の路線価をみると、標準宅地の評価基準額の対前年変動率の平均値の上昇値が「5%未満」の都道府県は、昨年分の19府県から7道県に減少しました。上昇率が「5%以上」の都道府県は、昨年の2都県からゼロとなりました。下落した都道府県は昨年の26県から39府県に増加しました。ちなみに、上昇率トップは福岡県の+1.8%、最大の下落率は静岡県の▲1.6%でした。

 一方、都道府県庁所在都市の最高路線価が上昇した都市は8都市(昨年38都市)と大幅に減少し、8都市とも上昇率が5%未満でした。横ばいは17都市(同8都市)で、下落は22都市(同1都市)、内訳は、下落率5%未満が17都市(同1都市)、5%以上10%未満が4都市(同0都市)。」、10%以上が奈良市(▲12.5%)の1都市でした。

 都道府県庁所在都市の最高路線価では、1位は東京・中央区銀座5丁目の「銀座中央通り」で、1平方メートル当たりの路線価は前年から▲7.0%下落の4,592万円。以下、大阪・北区角田町「御堂筋」1,976万円(増減率▲8.5%)、横浜市西区南幸1丁目の「横浜駅西口バスターミナル前通り」1,608万円(同+3.1%)、名古屋市中村区名駅1丁目「名駅通り」1,232万円(同▲1.3%)と続きます。

 以上のように、令和3年分の路線価は6年ぶりの下落となりましたが、その要因は、新型コロナウイルス感染拡大により、インバウンド需要が消失したことや、飲食店等への営業自粛・営業時間短縮要請の影響で、観光地や商業地の地価が下落したことにあります。

【グリーン住宅ポイントの商品交換申請受付を開始】(令和37月)

 令和361日から、グリーン住宅ポイントの商品交換申請の受付が始まっています。新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだ経済の回復を図ることを目的に、一定の省エネ性能を有する住宅の新築やリフォーム、既存住宅の購入に対して、商品や追加工事と交換できるポイントが付与されるのが「グリ-ン住宅ポイント制度」です。令和21215日から令和31031日までの間に工事請負契約や売買契約を締結した住宅が対象で、住宅ローン減税との併用も可能です。

 付与されるポイント(1ポイン当たり1円換算)は、新築で最大40万ポイント(東京圏からの移住や三世代同居仕様住宅など特例の場合は最大100万ポイント)、既存住宅の購入では対象住宅により15万・30万・45万のいずれかのポイント、リフォームでは対象工事の内容別に細かく規定されたポイントが発行されます。

 交換商品は、家電製品、家具、雑貨・日用品、食料品・飲料等と幅は広いです。工事請負契約や売買契約を締結後、グリーン住宅ポイント事務局にポイント発行申請をし、発行されたポイントの商品交換申し込みをすることで商品が受け取れます。

 ポイント発行申請は、原則、工事完了後に行いますが、注文住宅の新築や新築分譲住宅の購入、税込1千万円以上のリフォームなどの場合は、必要書類が揃えば工事完了前でも申請ができます。ただし、工事完了後に完了報告の提出が必要となります。

 完了前ポイント発行申請は329日から、完了後ポイント発行申請は56日から受付を行っています。61日からは、商品交換申請(郵送又はオンライン)の受付とともに、オンラインによるポイント発行申請の受付(オンラインによる受付は71日開始予定)も始まりました。

【改正産業競争力強化法が成立】(令和37月)

 グリーン社会への転換やデジタル化への対応、コロナ禍で赤字を被った企業の事業再構築等を促進するための措置を規定した産業競争力強化法の改正をはじめ、中小企業等経営強化法など6つの改正法を束ねた産業競争力強化法等改正法が、69日の参院本会議で可決、成立しました。

 令和3年度税制改正では、産業競争力強化法の改正を前提に、税制優遇措置として、

(1)カーボンニュートラル実現に向けた計画を主務大臣が認定した場合、脱炭素化効果の高い製品の生産設備等の導入に対し最大10%の税額控除又は50%の特別償却を認める設備投資促進税制

(2)デジタル技術を活用した企業変革(DX)実現のため、部門・拠点ごとではない会社レベルのDXの計画を主務大臣が認定した場合、計画により取得するデジタル関連投資に対し最大5%の税額控除又は30%の特別償却を認めるDX投資促進税制

(3)コロナ禍での事業再構築の計画を主務大臣が認定した場合、赤字であってもカーボンニュートラルやDXなどに取り組む中堅・大企業に対し、繰越欠損金の控除上限を100%(改正前50%)へ引き上げる特例、が設けられています。

 適用は、改正産業競争力強化法の施行の日から、カーボンニュートラル投資促進税制は令和6331日まで、DX投資促進税制は令和5331日までです。繰越欠損金の控除上限の特例は、施行の日から1年以内に計画の認定を受けた場合に、原則、令和2年度・令和3年度の欠損金を対象に黒字転換後最長5年間です。  

  仕入税額控除の課税売上割合に準ずる割合が申請課税期間から適用可能に】(令和36月)

令和3年度税制改正では、消費税の仕入控除税額の計算において、課税売上割合に準ずる割合の適用を受ける場合の適用開始時期が見直されました。改正前は税務署長の承認を受けた日の属する課税期間から適用となっていますが、改正後は適用を受けようとする課税期間の末日までに承認申請書を提出し、翌課税期間の開始から1か月以内に承認を受けられれば、承認申請書を提出した課税期間から適用できることとなりました。令和341日以後に終了する課税期間から適用されます。

仕入控除税額を個別対応方式で計算する場合、課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入等に係る消費税は、原則、課税売上割合により計算しますが、課税売上割合により計算した仕入控除税額がその事業者の事業の実態を反映していないなど、課税売上割合に準ずる割合によって計算する方が合理的である場合は、課税売上割合に準ずる割合で仕入控除税額を計算することもできます。

この課税売上割合に準ずる割合を適用するためには、納税地を所轄する税務署に承認申請書を提出して、適用を受けようとする課税機関の末日までに税務署長の承認を受けておく必要があります。

そのため、課税機関の末日間際に、例えば、たまたま土地の譲渡対価の額があったことにより課税売上割合が減少するなど、課税売上割合に準ずる割合を用いる必要が生じた場合に、承認申請書を提出したとしても、適用を受けようとする課税機関の末日までに税務署長の承認を受けられないケースがあります。

そこで、3年度改正では、課税売上割合に準ずる割合の適用を受けようとする課税機関の末日までに承認申請書を提出し、同日の翌日から同日以後1月を経過する日までの間に税務署長の承認を受けた場合、当該承認申請書を提出した日の属する課税期間から適用するとしました。         

 【保険契約等に関する権利の評価でパブリックコメント】(令和36月)

 国税庁は428日、「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)に対するパブリックコメントの募集を開始しました。取り扱いの見直しの対象となったのは、かねてよりその行方が注目されていた保険契約などに関する権利の評価についてです。

 所得税法上、使用者が役員又は使用人に対して生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する保険契約に関する権利を支給した場合には、支給時において保険契約などを解約した場合に支払われることとなる解約返戻金の額で評価することとされています。

 他方、「低解約返戻金型保険」や復旧できる払済保険」など解約返戻金の額が著しく低いと認められる保険契約などについては、第三者との通常の取引において低い解約返戻金の額で名義変更などを行うことは想定されないことから、支給時解約返戻金の額で評価することは適当でないと考えられています。

 今回見直しの対象となったのは、こうした「解約返戻金の額が著しく低いと認められる保険契約など」の評価方法です。

 法人税基本通達では、保険契約などに関する権利については、支払保険料の一部を前払保険料として資産計上する取扱いが定められていますが、このような取扱いを踏まえ、使用者が役員又は使用人に対して解約返戻金の額が著しく低いと認められる次の保険契約などに関する権利を支給した場合には、次の金額で評価することとなります。

(1)支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の70%に相当する金額未満である保険契約などに関する権利を支給した場合には、支給時資産計上額により評価します。

(2)復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約などに関する権利を支給した場合には、支給時資産計上額に法人税基本通達9-3-7の2の取扱いにより使用者が損金に算入した金額を加算した金額により評価します。

 ここでいう「支給時資産計上額」とは、使用者が支払った保険料の額のうちその保険契約などに関する権利の支給時の直前において前払保険料として法人税基本通達の取扱いにより資産に計上すべき金額をいい、預け金などで処理した前納保険料の金額、未収の剰余金の分配額などがある場合には、これらの金額を加算した金額をいいます。

 なお、今回の見直しの対象は法人税基本通達9-3-5の2の適用を受ける保険契約などに関する権利としていますが、法人税基本通達の他の取扱いにより保険料の一部を前払保険料に計上する「解約返戻率の低い定期保険等」及び「養老保険」などについては、保険商品の設計などを調査した上で見直しの要否が検討されることとなります。

 今回の見直しは、令和3年7月1日以後に行う保険契約などに関する権利の支給から適用されます。法人税基本通達9-3-5の2の取り扱いは令和元年7月8日以後に締結する保険契約などについて適用するとされていることから、同日前に締結した保険契約などは、原則として見直しの対象にはなりません。  

2021年度税制改正法が成立】(令和35月) 

  DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業への税優遇を盛り込んだ2021年度税制改正大綱の関連法が、326日に可決、成立しました。コロナ禍での取りまとめとなった今回の税制改正では、新型コロナウイルスによって収入を減らした人への経済支援のため、様々な税優遇の延長拡充が盛り込まれています。また経済資源の集約化というテーマのもと、中小企業の再編統合を促す制度が新設されました。

 コロナ禍で顕在化したデジタル化の遅れを解消するために、DXに対する税優遇を設けます。具体的には、データを社外に蓄積して利用する「クラウド」サービス導入などを行った企業への税優遇を設けます。

DX推進に税優遇

 個人向けでは、住宅ローの残債の一部を税金から差し引ける「住宅ローン控除減税」について、201910月の消費増税対策として導入された特例を、新型コロナ対策として引き継いで延長しました。新築住宅は20219月末、マンションや中古住宅は同11月末までに契約することを条件に、2020年末までとしていた入居期限を2022年末まで延長したほか、対象となる床面積が「50㎡以上」となっていたところを「40㎡以上」に拡大しました。ただし、床面積の緩和には所得制限も併せて盛り込まれました。

◆中小の統合再編を後押し

 中小企業の再編統合に向けては、現金ではなく自社株を対価とする「自社株M&A」について、買い手への優遇を新設します。買収対価の80%以上が自社株であるときは、その譲渡益に対する課税を繰り延べる税制を設けました。さらに新たに「経営資源集約化税制」を導入し、M&A時に買い手側が買収費用の一部を準備金として積み立てた時に、これを税務上の損金に算入できるようにします。

 自動車関連では、燃費の良い車を対象に自動車重量税を減免します「エコカー減税」について、20214月となっていた期限を2年延長します。一方で対象車を絞り込み、税優遇を適用する燃費基準を4割程度厳しくします。その結果、新しい基準の6割を下回るガソリン車やハイブリッド車は、減税の対象から外れることとなります。さらに次世代自動車として一律免税になっていたクリーンディーゼル車は電気自動車に比べて環境性能に劣るとして、経過措置が設けられるものの、原則としてガソリン車として同じ取り扱いになりました。また2020年から導入された「環境性能割」では、消費増税に伴う時限措置として導入された軽減税率が新型コロナウイルス対策に引き継がれ、202112月末まで9か月延長されます。

◆社債活用の節税策を規制

オーナー企業に関係のある改正としては、同族会社が発行する社債の利子係に係る所得税について、別法人を挟んで税負担を抑える節税策にフタがされました。

 同族会社の自社株5割超を保有する経営者が、その社債を引き受けて利子を受け取った場合、所得は雑所得や給与所得と合算され、最高税率45%の総合課税が適用されます。しかし両者の間に別の同族会社を挟むことで自社株保有割合5割の要件をパスすれば、同じ額の利子を受け取っても一律20%の分離課税で済むという「抜け道」がありました。

 今回の税制改正ではこの節税策について、別法人を間に挟んでいたとしても、最高45%の総合課税が適用されることとなりました。利子だけでなく、社債の償還金についても総合課税の対象となります。

贈与の非課税特例は延長

 子・孫への教育資金の一括贈与を非課税にする特例の期限が、20233月末まで2年延長されました。ただし、同時に適用要件の厳格化が行われています。

これまでは、贈与した側が死亡時点で使い残しがあったときには、①受贈側が23歳未満、②学校等に在学している、③教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受講している、のいずれにも該当する場合に、贈与から3年以内の死亡であれば残額が持ち戻されて相続税の対象となっていました。この3年の縛りを撤廃し、上記のいずれかの条件を満たさないと、どれだけ前の一括贈与であっても相続財産に持ち戻されることとなりました。

併せて、これまでは持ち戻しの結果として孫やひ孫に相続税が課されても2割加算ルールの対象外であったところが、今後は原則通り法定相続人以外への財産引継ぎとして2割加算の対象となります。

 同様に結婚・出産・育児資金の一括贈与の特例についても2年延長されたうえで、孫やひ孫に相続税が課されるときは2割加算されることが決まりました。なお民法改正による成年年齢の引き下げに伴い、受贈側の年齢要件が20歳以上から18歳以上に引き下げられることも盛り込まれています。

宅取得資金の一括贈与の特例については、新型コロナ対策として、非課税枠を据え置き、耐震などに優れた住宅は1,500万円、一般住宅は1,000万円が非課税上限となります。

【パート・アルバイトの社会保険適用を段階的に拡大】(令和3年4月) 

 厚生労働省は、法律改正によるパート・アルバイトへの社会保険の適用拡大について、従業員数500人以下の事業主を対象に周知を図っています。現在は、従業員数501人以上の企業で働くパート・アルバイトが社会保険の適用となっていますが、令和410月からは従業員数101人以上の企業で働くパート・アルバイトも適用となります。

 社会保険の適用範囲については、現在は従業員数501人以上の企業が対象ですが、令和410月からは従業員数101人以上~500人の企業、令和610月からは従業員数51人以上~100人の企業に段階的に拡充されます。従業員数は、「フルタイムの従業者数」に「週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業者数」の合計となります。これに伴い、一部のパート・アルバイトの社会保険の加入が義務化され、社会保険料の負担が変わります。

新たな加入対象者は、パート・アルバイトのうち、(1)週の所定労働時間が20時間以上、(2)月額賃金が8.8万円以上、(3)2か月以上の雇用の見込みがある、(4)学生ではない、の全てを満たす者である。(1)は、契約上の所定労働時間であり、臨時に生じた残業時間は含まれませんが、契約上20時間に満たない場合でも、実労働時間が2か月連続で20時間以上となり、なお引き続くと見込まれる場合には、3か月目から保険加入することになります。

 社会保険適用の拡大は、早くとも来年からですが、該当する企業は、上記を参考に社内の加入対象者となるパートやアルバイトに、法律改正の内容が確実に伝わるように、社内インフラやメールなどを活用して周知に努め、必要に応じて説明会や個人面談をすることを勧めています。個人面談では、新たな加入対象者であることや社会保険の加入メリット(年金が1階(基礎年金部分)に加えて2階(報酬比例部分)が上乗せされ、一生涯受け取れる、医療保険は、傷病手当金を病休期間中、給与の2/3相当を支給、出産手当金を、産休期間中、給与の2/3相当を支給など充実する)を伝えることが大切です。

【収入のない妻を保険の契約者とする場合の注意点】(令和3年4月)

 保険契約において、収入のない妻を契約者とすると、課税関係に注意する必要があります。税制上、「契約者」とは、名義上の「契約者」ではなく、実際に保険料を負担した人、つまり「保険料負担者」となります。例えば、個人年金保険の加入に際して、契約者=妻、被保険者=妻、年金受取人=妻として契約した場合でも、実際に保険料を負担しているのが夫であれば、契約者=夫、年金受取人=妻となります。

 したがって、受け取る年金については夫から妻への贈与とみなされ、年金開始時点での年金の権利評価額が贈与税の対象となり、また2年目以降毎年受け取る年金が所得税(雑所得)の対象となります。課税の実務では、名義上の「契約者」が実際に保険料を負担したのかどうか、つまり負担能力の有無が問題になってきます。契約者と保険金受取人の関係によっては、所得税が課税されるのか、相続税が課税されるのか、といった判定結果が大きく変わってきます。

 そのため、夫が契約者であるとみなされると、課税関係が大きく変わるリスクがあります。このリスク回避のためには、いったん夫の口座から妻の口座へ保険料相当額を振り込み、妻の口座から保険料を支払う方法が考えられます。この時、妻の口座を実質的に夫が管理いている口座、すなわち名義預金として取り扱われないよう、妻自身が通帳や印鑑を管理し、夫婦間で保険料相当額の資金について贈与契約を締結することも考慮する必要があります。

 夫婦間で保険料相当額の資金について贈与契約を締結し、毎年、その年払保険料に相当するお金を妻に贈与するという場合にも、安易な取り扱いは厳禁です。年金を受け取る段階になって、多額の贈与税が課税されることのないよう細心の注意を払い、贈与事実の心証を得られるように証拠書類をしっかり残しておくことが必要です。

 保険料贈与の注意点としては、(1)毎年贈与契約を2部作成し、できれば公証役場で確定日付をもらうこと、(2)できるだけ年間110万円を超える額を贈与し、毎年贈与税の申告書を提出し、保管しておくこと、(3)毎年、夫(贈与者)は妻(受贈者)の銀行預金口座に現金を振り込み、かつ、その銀行預金口座から保険料を支払うようにすること、(4)贈与した保険料については、夫(贈与者)の生命保険料控除の対象としないことなどがあります。

【教育資金の一括贈与に係る非課税措置 節税的な利用の防止へ】(令和33月)

 令和3年度税制改正大綱の資産課税では、教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置の延長及び見直しとして、従前の非課税措置は、贈与者が死亡しても死亡前3年以内の贈与に係る管理残高でなければ贈与者の相続財産に加算されませんでしたが、節税的な利用を防止する観点から、贈与者の死亡日までの年数にかかわらず、原則として死亡日における管理残高が相続財産に加算されることになります。

 また、受贈者が贈与者の孫などである場合において、贈与者の死亡時の管理残高に係る相続税額の2割加算の対象とされることになります(従前は2割加算の適用なし)。上記の見直しにより、適用期限が令和5331日まで2年延長されます。

 さらに、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置の延長および見直しが行われます。上記と同様に、節税的な利用を防止する観点から、受贈者が贈与者の孫などである場合には、贈与者の死亡時の管理残高に係る相続税額への2割加算の対象とされることになり(見直し前は2割加算の適用なし)、適用期限が令和5331日まで2年延長されます。

 まさに、だまし討ち課税ですね。

【役員以外でも勤続5年以下なら、退職所得の2分の1課税の適用除外】(令和3年2月) 

 現在、勤続5年以下の法人役員等を対象としている退職所得の2分の1課税の適用除外措置を、勤続5年以下なら役員等以外の一般社員も対象にすることが、令和3年度与党税制改正大綱に盛り込まれました。

 退職金から退職控除額を控除した残額の2分の1を退職所得とする「退職所得の2分の1課税」は、退職所得が長期にわたる勤務の結果生ずるものであり、勤務の対価の一部が蓄積して一挙に支払われるものであることに配慮した税負担の平準化措置とされています。

 この理由から、法人役員等以外であっても勤続年数5年以下の短期の退職金については2分の1課税の適用から除外するものです。

令和4年分以後の所得税について適用されます。

ただし、雇用の流動化などに配慮し、退職所得控除額の金額のうち300万円までの金額は引き続き2分の1課税が適用されます(法人役員等は除く)。

 この見直しに伴い、短期の退職金とそれ以外の退職金がある場合の退職所得の金額の計算方法、退職金の源泉徴収税額の計算方法、退職所得の源泉徴収票の記載事項などについての措置がとられます。

退職所得の2分の1課税の適用除外措置は、法人役員等に限定して平成24年度改正で導入されたものです。

【上場株式等の配当所得等に係る申告、「地方税は申告不要」は所得税の確定申告書の提出で手続き完了】(令和3年2月) 

 令和3年度税制改正では、個人住民税で特定配当等や特定株式等譲渡所得金額に係る所得の全部について源泉分離課税(申告不要)とする場合に、原則として所得税の確定申告書の提出のみで申告手続きが完結できるように、確定申告書に個人住民税に係る附記事項を追加することとなりました。

令和3年分以後の確定申告書を令和411日以後に提出する場合に適用します。

本改正は金融庁が数年前に要望していましたが、ようやく実現する見込みとなりました。

 税務署に提出される国税の確定申告の情報は、市町村にも提供されるため、一般には地方税の課税方式は国税と同じものとなります。

ただ、上場株式の配当所得・譲渡所得に関する課税方式は、配当所得が①申告不要、②申告分離課税、③総合課税を、譲渡所得が①申告不要、②申告分離課税をそれぞれ納税者が選択することができ、その際に国税(所得税)と地方税(住民税)で異なる方式を選択することが可能になっています。

 両方とも申告不要とした場合、所得税などの税率は15.315%、住民税の税率は5%でトータルの税率は20.315%となります。

しかし、例えば課税所得金額が低い人の場合は所得税で総合課税を適用し、住民税では申告不要を適用した方が、税負担が少なくなります。

 納税者が国税と地方税で異なる課税方式を選択するには、その旨を明示的に市町村に申告する必要があります。

特に「国税では申告、地方税では申告不要」を選択する場合に、市町村にその旨(申告しないこと)を申告することは納税者にとって過重な負担となっていました。

今回の改正では、この手続きが簡素化されます。

 今回の改正について、大和総研金融調査部の是枝俊吾主任研究員は昨年1224日に公表したレポート「2021年度税制改正大綱-個人の上場株式等の配当・譲渡益への課税が実質軽減に」の中で、「現状、個人投資家において所得税と住民税で異なる課税方式を選択することはあまり普及していなかった」が、「この改正が実現すれば、個人投資家においても上場株式等の配当・譲渡益で異なる課税方式を選択することが普及し、実質的な課税軽減をもたらすことになると考えられる」と指摘しています。

同レポートでは、社会保険料負担への影響にも言及されています。

 新型コロナ 1211日から固定資産税などの特例措置   (R3.01)

 新型コロナウィルス感染症等に係る中小事業者等の事業用家屋及び償却資産に対する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の受付が令和21211日からスタートします。

 同特例は、新型コロナウィルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により一定の収入の減少があった中小事業者などに対し、令和3年度課税の1年分に限り、事業用家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の負担を軽減するものdです。

 具体的には、令和22月~10月までの間における任意の連続する3か月の事業収入が、前年の同期間と比べて30%以上50%未満減少している場合は2分の1に軽減され、50%以上減少している場合はゼロとなります。

 国税庁の偽ホームページや不審なメールに注意     (R03.01) 

  現在、還付金の振込先などの入力を求めるメールや、同メールから国税庁ホームページになりすました為のホームページへ誘導する事例が見つかっており、国税庁では注意を呼び掛けています。

アクセスすると被害を受ける恐れがあり、国税庁のホームページを利用する際には、ブラウザのアドレス欄を確認する必要があります。

(国税庁ホームページアドレス https://www.nta.go.jp/)

なお、国税庁(国税局、税務署を含む)では、還付金の振込先などの入力を求めるメールを送信することはありません。不審なメールを受信した場合や、国税庁ホームページをかたるサイトを発見した場合は、「税務行政に対するご意見・ご要望」で情報を受け付けています。

 すでに不審なメールや偽のホームページに関する情報提供者に対し、国税庁では「貴重な情報のご提供ありがとうございます。個別の回答は行っておりませんが、ご提供いただいた情報をもとに関係機関と連携して対応を行っております」としています。

いそべ便り(バックナンバー)2020年分

 GOTOキャンペーンの給付金は一時所得、合計額が50万円を超えれば課税対象に(R02.12)

      国税庁が1023日に更新した国税における新型コロナウィルス関連のFAQでGOTOキャンペーン事業における給付金が課税対象となり、一時所得となるGOTOキャンペーンはトラベル、イート、イベントの3種類で、一時所得はその年の他の一時所得とされる金額との合計額が特別控除の50万円を超えない限り、所得税の課税対象とはならないので、すぐに課税されるケースは多くないと考えられますが、50万円を超えれば課税対象となります。

 GOTOトラベルで自動車運転免許講習等と宿泊券等がセットになった旅行商品が対象となったり(その後の取り扱い変更により111日以降の申込分は対象外に)、GOTOイートを利用し、夕食の予約のみをして、安価な商品を1品だけ注文して取得できるポイントと商品の値段の差額を取得する「トリキ(鳥貴族)の錬金術」などと呼ばれる手法が問題となりました。また、ホテルなどに長期滞在する場合でもGOTOトラベルが利用できるといった、制度設計時にそれほど想定していなかったのではと考えられるような利用が一部でなされています。

 こうした利用であっても、他の一時所得がない場合はキャンペーンによる給付金だけで50万円を超えることはそれほど多くはないと考えられます。ただ、高級ホテルに連泊する場合などでは、11泊当たり最大2万円の給付金(旅行代金割引14,000円、地域共通クーポン6,000円が付与されるので、25連泊で一時所得が50万円に到達する可能性があります。

 また、例えば一時所得に該当する生命保険の満期保険等の一時金のうち、保険料等を差し引いた金額が仮にちょうど50万円あれば、GOTOキャンペーンを一回利用するだけで、課税所得が生じることになります。

 なお、給付金による所得が誰に帰属するかについて、観光庁が公表しているGOTOトラベル事業Q&A集をみると、「この給付金は税務上、旅行者個人の一時所得として所得税の課税対象となります」。農林水産省が公表しているGOTOEatキャンペーン事業に関するQ&Aでは、「これら(25%分のプレミアムの給付がついた食事券やオンライン飲食予約サイトを通じた飲食予約などの後に給付されるポイント)の給付は税務上、消費者個人の一時所得として所得税の課税対象となります」などとされています。

 ※GOTOトラベル事務局は1030日に8泊以上の宿泊を伴う旅行は同事業の対象外とすると発表されました。      

住宅ローン控除 新型コロナ適用の弾力化 

     消費税率の引き上げにともない、所定の条件を満たすことで住宅ローン控除の利用期間が最長10年から13年間に延長されました。

対象は今年12月までの入居とされていますが、新型コロナウィルスの影響により、工事の遅延などで年内に入居できないことも考えられることから、適用要件の弾力化の措置が講じられています。

 具体的には、住宅ローン減税の控除期間13年間の特例措置について、新型コロナウィルス感染症及びまん延防止のための措置の影響により入居が今年1231日の期限に遅れた場合でも、次の両方の要件を満たしたうえで、令和31231日までに入居すれば、特例措置の対象となります。

  1. 一定の期日までに契約が行われていること

    注文住宅を新築する場合:令和29月末

    分譲住宅・既存住宅を取得する場合、増改築などをする場合:令和211月末

  2. 新型コロナウィルス感染症及びまん延防止のための措置の影響によって、注文住宅、分譲住宅、既存住宅又は増改築などを行った住宅への入居が遅れたこと

 なお、契約の時期を確認する書類として請負契約書の写しや売買契約書の写しなど、また、入居が遅れたことを証する書類として「入居時期に関する申告書兼証明書」を作成し。確定申告時に所轄の税務署へ提出する必要があります。       

新型コロナで事業収入が減少 令和3年度の固定資産税など減免措置(R2.11)

      新型コロナウィルス感染症の影響によって事業収入が減少している中小企業・小規模事業者は少なくありません。

こうした企業の税負担を軽減するため、事業者の令和3年度(2021年度)の固定資産税及び都市計画税の減免措置が行われています。

具体的には、一定の要件を満たす中小企業・小規模事業者(個人事業主も含む)で、令和22月~10月までの任意の連続する3か月間の事業収入の対前年比減少率が50%以上の場合は全額免除、30%以上50%未満の場合は2分の1に軽減されます。

 対象となる税金は、設備などの償却資産および事業用資産に対する令和3年度分の固定資産税、事業用家屋に対する令和3年度分の都市計画税。事業用であっても土地については軽減の対象外となっています。

 軽減措置を受けるためには、認定経営革新等支援機関や帳簿の記載事項を確認する能力がある税理士や公認会計士などから

①中小企業者であること

②事業収入の減少

③特例対象家屋の居住用・事業用割合について確認書を発行してもらい、各市町村に申請書類を提出する必要があります。

 なお、令和2年度分は軽減されないので注意が必要です。

年末調整のしかた(R2.10)

令和2年年末調整のしかたを公表、昨年から変更が多数あります

国税庁は9月10日、令和2年分年末調整のしかたを公表しました。

令和2年分では給与所得控除や基礎控除の改正、寡婦(寡夫)控除の適用要件の改正、ひとり親控除の創設、所得金額調整控除の創設など、改正項目が多数あります。

基礎控除や所得金額調整控除を適用するには、給与所得者から基礎控除申告書や所得金額調整控除申告書の提出を受ける必要があります。

ひとり親控除等では、必要な事項を記載した扶養控除等申告書の提出を受ける必要が生じる場合があります。

10月からは年末調整手続きの電子化も始まります。

 また、同日に令和2年分年末調整のための各種様式等、令和2年分給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引、令和3年分源泉徴収税額表も公表されています。   

企業発行ポイントの取得・使用の取扱い(R2.10)

 個人が企業発行ポイントを取得・使用した際の取り扱い

9月1日にマイナポイント事業がスタートしましたが、一般の小売店でも、買い物客が商品を購入する際に、同店が発行するポイントを付与し、次回以降の買い物の際に、例えば、1ポイント1円に換算して、決済代金の値引きや景品との交換などに使用できるところも多いです。

そこで、個人が、そのポイントを商品購入の際に使用した場合、その取得または使用したポイントについて、原則として、確定申告をする必要がありません。

国税庁によると、「一般に企業が発行するポイントのうち決済代金に応じて付与されるポイントについては、そのポイントを使用した消費者にとっては通常の商取引における値引きと同様の行為が行われたものと考えるので、こうしたポイントの取得または使用については、課税対象となる経済的利益には該当しないものとして取り扱う」としており、非課税となります。

 通常の商取引における値引きは、原則課税対象となる経済的利益には該当しないものとして取り扱っています。

ただし、ポイント付与の抽選キャンペーンに当選するなどして臨時的・偶発的に取得したポイントは、通常の商取引での値引きと同様の行為が行われたものとは考えられないので、そのポイントを使用した場合には、その使用したポイント相当額を使用した日の属する年分の一時所得の金額の計算上、総収入金額に算入する必要があります。

 なお、ポイントを使用して医薬品購入の決済代金の値引きを受けた場合など、所得控除の対象となる支出にポイントを使用したことが明らかな場合には、

(1)ポイント使用後の支払金額を基に所得控除額を計算する方法

(2)ポイント使用前の支払金額を基に所得控除額を計算するとともに、ポイント使用相当額を一時所得の総収入金額として算入する方法

のいずれかの方法により、所得金額及び所得控除額を計算しなければならないです。

 また、個人事業者が備品などを購入する際に企業発行ポイントを使用した場合の経理処理については、

(1)値引処理(ポイント使用後の支払金額を経費算入する処理)

(2)両建処理(ポイント使用前の支払金額を経費算入するとともに、ポイント使用額を雑収入に計上する処理)

のいずれかの方法が考えられます入力してください 。      

事務所概要

事務所名
税理士法人  い そ べ
所在地
山口県宇部市常藤町2番21号
電話番号
0836-21-3161
FAX番号
0836-31-1580
業務内容
・税務・経理・財務・会計・決算に関する業務
・独立、開業支援に関する業務
・経営相談・コンサルティング
メールアドレス
isobe-keiri@tkcnf.or.jp

中国税理士会所属