Q 厚生年金保険の適用事業所、任意適用事業所について教えて下さい。
A 厚生年金保険は、事業所単位で適用されます。厚生年金保険の適用を受ける事業所を適用事業所といい、加入が義務づけられている強制適用事業所と、加入が任意の任意適用事業所の2種類があります。
Q 両親と同居しており、両親を健康保険の被扶養者に入れたいと思っています。父親(62歳)は、会社を退職し、満額の年金を受給しています。父がダメなら母親のみを被扶養者とできるのでしょうか。
A 健康保険では、被保険者の父母が被扶養者となるためには、主としてその被保険者により生計を維持されていることが必要です。
認定対象者(被扶養者として届け出る者)が被保険者と同一の世帯に属している場合には、「認定対象者の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であり、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満である場合には、原則として被扶養者に該当する」とされています。
年間収入は、すべての収入を対象としており老齢厚生年金も対象となります。本問の場合、父親は年金額が180万円未満でないと被扶養者になれません。さらに、母親のみ被扶養者にできるかといいますと、母親の生計が主として夫、子のいずれによって維持されているかで判断されます。夫によって維持されている場合には、母親も被扶養者になれません。
Q 私傷病で欠勤し、健康保険の傷病手当金を請求する場合、最初の3日間は傷病手当金は支給されません。この間、賃金を支払うべきでしょうか。
A 健康保険の傷病手当金は、被保険者が私傷病の療養のため労務不能で報酬(賃金)が受けられないとき、3日間の待期期間をおき第4日目から支給されます。つまり、労務不能となった日から起算して3日間は傷病手当金は支給されません。
この待期期間3日間について、私傷病の場合、事業主は賃金を支給する法的義務はありません。事業主が休業補償する義務はないのです。したがって、3日間の待期期間中、賃金も傷病手当金も受けられなくて差し支えありません。
これに対し、業務上の傷病の場合は、労災保険から休業補償給付が支給されない3日間の待期期間については、事業主が休業補償を行わなければならないとなっています。この点異なるので、注意してください。
Q 夫婦それぞれが健康保険の被保険者のとき、夫が死亡した場合、夫の埋葬料は妻に支給されますか。
A 埋葬料は、被保険者が死亡したとき、被保険者によって生計を維持していた者であって、埋葬を行う者に対して支給されます。
これは、被扶養者の範囲より広いものです。被扶養者は、主として被保険者によって生計が維持されていることが要件となっているのに対して、埋葬料の受給権者は、被保険者に生計の一部でも依存していた事実があれば足ります。また、民法上の親族であるとか、被保険者といっしょに生活していることは必ずしも必要でありません。
夫婦それぞれが被保険者となっていて、妻が夫の被扶養者になっていなくても、少しでも夫によって生計を維持されていれば、夫の死亡による埋葬料は、妻に対して支給されます。
なお、支給される埋葬料の額は、故人の標準報酬月額の1ヵ月分(10万円未満のときは10万円)です。
Q 社会保険の加入について、2ヵ月の雇用期間で採用した者が、その2ヵ月の期間を経過した場合、いつから被保険者になりますか。
A 健康保険、厚生年金では、臨時に使用される者であって、2ヵ月以内の期間を定めて使用される者は、被保険者から除外されていますが、その所定の期間経過後も引き続き使用される場合には被保険者となります。また、被保険者資格を取得するのは、所定期間が終了した日の翌日であり、さかのぼる必要はありません。
ただし、所定期間を超えれば画一的に被保険者とするのではなく、あくまでもその使用関係の実態が常用労働者の性格を帯びたかどうか等、継続性を考える必要があります。
2ヵ月以内の期間を定めて使用されたが、たまたま業務の都合により何日かその期間を超えたという場合には、被保険者資格を取得させる必要はありません。
Q 育児休業中の保険料免除申請について、本人より「育児休業取得者申出書」を預かっていましたが、手続きをし忘れていました。この間の免除はどうなりますか。
A 健康保険・厚生年金では、育児休業を取得する被保険者の保険料について、事業主が保険者(いわゆる社会保険事務所)に申し出ることにより、育児休業期間中の被保険者および事業主負担分の保険料が免除されます。
免除される期間は、事業主が「育児休業取得者申出書」を提出した日の属する月から、育児休業が終了する日の属する月の前月までとなります。したがって、経過した月分の保険料は遡って免除はされなくなります。
Q 定年後、給与が3割減となります。この場合の社会保険の手続きはどのようにすればよいでしょうか。
A 給与が下がるという慣行を考慮し、社会保険では定年時は月額変更ではなく、同日の喪失・取得手続きを認めており、翌月より保険料が下がることになります(通常は、月額変更によって4ヶ月目から保険料引下げ)。これによって、労使とも保険料の負担が軽減されます。
さらに、この手続きは2年間遡って手続きが可能です(時効にならないため)。
また、当該手続きは、通常の資格喪失届および資格取得届(扶養の認定については、再度添付書類が必要)により行います。なお、申請には、定年の時期がわかる書類(就業規則、雇用契約書等)も必要となります。
Q 従業員の基本給が降給により下がりましたが、残業手当を含めると報酬額が増え、標準報酬の等級が2等級以上の差となります。この場合、月額変更届は必要でしょうか。
A 標準報酬は、被保険者になったときに決定し(資格取得時決定)、その後は、年に1度の「被保険者報酬月額算定基礎届」により決定されます(定時決定)。しかし、基本給等の昇給や降給により、報酬が著しく変動した場合は、定時決定を待たずに、「被保険者報酬月額変更届」により、標準報酬が改訂されます(随時改定)。
なお、随時改定は、次の3つの要件のすべてに該当する場合に行われます。
Q 健康保険の傷病手当金受給中の者が、病状がよくなったので治療を続けながら出勤し、1ヶ月後に再び労務不能となった場合、傷病手当を受けるには再び待期期間が必要でしょうか。
A 健康保険の傷病手当金は、療養のため労務不能となった日から起算し、3日間の待期期間をおき、第4日目より支給されます。
待期期間が適用されるのは、同一の疾病又は負傷及びこれによって発した疾病について、最初に療養のため労務に服することができなくなった場合においてのみであって、その後労務に服し、再びその傷病について療養のため労務不能となった場合には、待期期間の適用はありません。
ご質問の場合、傷病手当金の支給を受けた傷病については、すでに待期期間は完成していますから、1ヶ月後に再び労務不能となっても、待期期間は必要とされず、労務不能の日にただちに傷病手当金が支給されます。
Q 任意継続被保険者の女性から、「結婚後、すぐに夫の被扶養者にならず、任継のままのほうが、給付面で得ではないですか」と聞かれたのですが…。
A 任意継続被保険者は、一般被保険者と同じ給付を受ける権利があり、任継になってから妊娠・出産しても、出産手当金・出産育児一時金を受け取ることができます。給付面では確かに得ですが、保険料は自己負担する必要があります。
結婚して夫の被扶養者になれば、健康保険でも必ず被扶養者として届け出る義務があるかというと、そうではありません。どちらを選ぶかは本人の自由で、任継を保持することも可能です。さらに給付面を考えるならば、もう少し有利な方法もあります。健康保険には、喪失後の継続給付という制度があります。出産手当金・出産育児一時金については、強制被保険者としての被保険者期間が1年以上あれば、任意継続被保険者の資格喪失後、6ヶ月以内の分娩も給付の対象になります(任意継続被保険者の期間でなく、退職前の被保険者期間という点に注意)。ですから、出産が数ヶ月先に近づいた時点で、任意継続被保険者の資格を喪失し、夫の被扶養者となれば、保険料を納める必要もなく、また出産が喪失後6ヶ月以内なら、出産手当金等の給付も受けられることになります。
Q 報酬月額算定基礎届にあたり、「支払基礎日数20日以上の月で計算する」とされています。たまたま2~3時間しか勤務しなかった日は含まれるのでしょうか。
A 支払基礎日数とは、報酬の支払いの対象となった日数をいい、実際に出勤した日数という意味ではありません。
月給制の場合は、出勤した日数に関係なく1ヶ月分の報酬が支払われますので、その支払対象期間の暦の日数が支払基礎日数となります。たとえば、5月21日から6月20日の給与を6月25日に支払う場合は、6月の支払基礎日数は31日となります。また、欠勤した日数分だけ給与が差し引かれる場合は、その残りの日数が支払基礎日数となります。1日8時間の所定勤務で、2~3時間しか勤務せず、不就労時間分の報酬がカットされた日があっても、その日も支払基礎日数に含まれます。
日給制(時給制)の場合は、出勤日数によって支給される報酬が異なりますので、稼働(出勤)日数が支払基礎日数となります。たまたま2~3時間しか勤務しなかった日も、支払基礎日数に含まれます。