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2020年からのコロナ流行で株価が乱高下していますが、「副業も兼ねて株式投資をやってみようかな~」や、「株価が下がったから株主優待とかがある銘柄を買ってみようかな~」など、他にも様々なきっかけで株式投資デビューをされた方も多いのではないでしょうか?
株を持っていると配当をもらえることがあります。
(もちろん企業の業績によって減配や配当は全く無し、ということもあります。)
この配当、特定口座で運用していれば、基本的には確定申告はしなくても大丈夫なのですが、確定申告をした方がお得な場合があります。
では、どんな場合に確定申告をした方がお得になるのでしょうか?
答えはずばり、
「普通のサラリーマンで、お小遣い稼ぎ程度に株式投資をしている人はほぼ全員、確定申告をした方がお得」
です!
配当所得について詳しく書いている記事は他にも沢山ありますが、詳しすぎて逆に分かりにくかったりすることもありますので、この記事では簡単に見ていきたいと思います。
前提は、
Ⅰ.普通のサラリーマンで
Ⅱ.お小遣い程度の上場株式の配当所得が特定口座であって
Ⅲ.損切はしていない(譲渡損失はない)
ということにします。
令和3年分から申告が少し簡単になった部分がありますので、その点についてもこの記事で触れていきます。
上場株式の配当は証券取引所に上場している株式の配当です。
東証一部やマザーズ等、まさに株式投資デビューした方々が証券会社で買った株式についてもらえる配当のことです。
非上場株式の配当は、証券取引所に上場していない株式の配当です。
中小企業の株式など、一般には流通していない株式の配当のことです。
一般には流通していないので、証券会社で買うことはできません。
基本的に上場株式の配当は、受け取るときに15.315%の所得税と5%の住民税が源泉徴収されています。
配当金が1,000円の場合、振り込まれるのは15.315%の所得税と5%の住民税を控除した797円です。
配当金 1,000円
所得税 1,000円×0.15315=153円
住民税 1,000円×0.05=50円
1,000-153-50=797円
配当金が1,000円と聞くと、
「1,000円のランチに行ける!」
と思ってしまいそうですが、実際には797円のランチにしか行けません。
797円のランチに行ってあとは何も申告しない、という方法が申告不要(源泉分離課税)です。
上記の計算によって控除された所得税153円と住民税50円は、場合によっては戻って来ることがあります。
そのための申告方法が総合課税です。
所得税法では、所得を10種類に分けて所得税額を計算しています。
総合課税は、10種類の所得のうち、給与所得などを合算してその金額に累進税率を掛けて所得税額を計算する方法になります。
そう、所得税は累進課税なのです。
申告分離課税は、譲渡所得との損益通算や、譲渡損失の繰越控除を受ける場合に利用する申告方法です。
「Ⅲ.損切はしていない(譲渡損失はない)」前提で話を進めていますので、ここでは割愛します。
上記申告方法で書いた通り、総合課税の所得税は累進課税ということでした。
累進課税とは、所得が低いほど低い税率、所得が高いほど高い税率で課税される方法です。
どのくらい差があるかというと、一番低い税率は5%、一番高い税率は45%になっています。
5%の税率は課税所得金額が195万円以下の場合に適用されます。
45%の税率は課税所得金額が4,000万円超の場合に適用されます。
先ほど書いた通り、上場株式の配当金額からは、所得税15.315%と住民税5%が源泉徴収されています。
つまり、所得税率が15.315%以下のランクであれば、総合課税で申告した方がお得になるということです。
ここで、「所得税率15.315%以下のランク」はどのくらいの課税所得金額かというと・・・
課税総所得金額330万円以下で税率10%になります。
「330万円よりはお給料もらっているなぁ」という人も「Ⅱ.お小遣い程度の上場株式の配当所得が特定口座であって」という前提の人の中にはまあまあ多いのではないかと思います。
でもまだ大丈夫です。
総合課税で申告をすると、「配当控除」という税額控除を受けることもできます。
所得税の「配当控除」とは、簡単に説明すると、配当所得に10%を掛けた金額分、所得税が減額されるという制度です。
この配当控除も考慮すれば、配当の源泉所得税率15.315%に10%を足した25%くらいの所得税率でもトントンになるかな~という計算になります。
では、「所得税率25%くらいのランク」はどのくらいの課税所得金額なのでしょうか?
答えは、課税総所得金額900万円以下で23%の所得税率になります。
税総所得金額900万円以下は、ほぼすべてのサラリーマンが該当します!
「課税総所得金額」は「年収」ではございません。
年収1,000万円の場合、給与所得控除額は195万円なので給与所得は約800万円になります。更にそこから社会保険料控除などを引いたら課税総所得金額は更に低くなります。
この記事ではその辺のことは詳しくは書きませんが、年収1,000万円でも配当所得を申告した方がお得ということです。
ちなみに日本において年収1,000万円超えのサラリーマンは全体のほんの5%くらいと言われています。
年収の中央値は400万円代ほどだそうです。
ということは、課税総所得金額900万円以下はほとんどのサラリーマンが該当します。
つまり、Ⅰ.普通のサラリーマンで、Ⅱ.お小遣い程度の上場株式の配当所得が特定口座であって、Ⅲ.損切はしていない(譲渡損失はない)のなら、総合課税で所得税申告をした方がお得ということになります。
一方、住民税は所得税の累進課税とは違い、一律10%の課税となっています。
所得の低い高いに関係なく10%の税率なのです。
住民税にも所得税のように配当控除がありますが、住民税の配当控除は、配当所得に2.8%を掛けた金額分、住民税が減額されるという制度になっています。
総合課税で住民税の申告をすると、実質税率は7.2%(10%-2.8%)になるということです。
上場株式の配当金額からは住民税5%が源泉徴収されていますので、申告してしまうと7.2%の税率になってしまい、損することになってしまいます。
住民税に限って言えば、配当金から源泉徴収された方が5%で済むため、所得金額にかかわらず配当をもらう人全てにとって源泉徴収のままの方がお得になるのです。
つまり、住民税は申告しない方がお得ということです。
(2024年2月5日削除)
今までの説明より「”日本中のお小遣い程度に配当所得があるサラリーマン”は、ほぼ全員確定申告した方が良い」ということがお分かりいただけたかと思います。
ここからは、確定申告時の注意点をご説明します。
それは、「住民税は申告しない」ということを忘れずに申告するということです。
「配当をもらう人は全員、住民税は申告しない方がお得になる」という結論でした。しかし、所得税を申告すると住民税も自動的に申告されてしまいます。それでは困りますので、「住民税については申告しないで源泉分離課税のままで終わりにします」ということを市区町村に申告する必要があります。
これまでは、市区町村ごとのフォームに則って所定の申告書を作成してそれを各市区町村に提出する必要がありました。ですが、令和3年分の申告から、所得税申告書の2枚目下部に「〇」をつけるだけでよくなり、市区町村用の申告書を作成して提出しなくても済むようになりました。
具体的には・・・
所得税申告書第二表の下の方に、「住民税に関する事項」という欄があります。
その中の、「特定配当等の全部の申告不要」欄に「〇」をつけるだけです。
(2024年2月5日削除)
令和4年度税制改正大綱により、令和6年に申告する令和5年分からは住民税申告不要という選択ができなくなりました。