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税務調査で狙われる?外注費の給与認定

外部の企業や個人事業主に業務を委託する場合、支払った対価を「外注費」として計上することができます。給与と比べて企業の負担が少なく、人件費の削減のために業務の外注化を検討する方もいるようです。


ですが、外注費として計上していた経費が税務調査で給与であると認定される場合があります。もし給与と認定を受けると、消費税の仕入税額控除が否認され、源泉所得税の追徴が課されることになります。


コロナの影響もあり、ここ2年ほどは税務調査の件数も減っていましたが、今年に入ってからは少しずつ調査の連絡も増えております。実際に調査に入られた結果、給与認定されてしまったということがないよう、予め外注費の要件を満たしているか確かめておく必要があります。


そこで今回は、外注費と給与の違いと、外注費を計上する際に気をつけるべき点について解説させていただきます。


1.「外注費」とは

外注費とは、外部の法人または個人と請負契約委任・準委任契約を結び、業務の一部または全部を委託する際に支払われる対価のことを言います。

その名の通り、外部に業務を発注するのにかかる費用が外注費であり、例としては以下のようなものがあります。


・自社HPの作成を外部に依頼した。

・オフィスの清掃業務を外部に委託している。

・建設業でいわゆる一人親方に作業を一部委託した。


2.「外注費」と「給与」の違い

外注費と給与の違いとしては以下のものが挙げられます。


外注費給与
所得区分事業所得給与所得
消費税課税仕入課税対象外
源泉所得税一部を除き不要※1必要
契約業務委託請負契約雇用契約

表のとおり、給与が消費税の課税対象外なのに対して、外注費は消費税の課税仕入れとなるため、節税効果が期待できます。

また、原則として源泉徴収が不要であり、社会保険料を企業が負担する必要もないため、人件費の削減のため業務の外注化を検討される企業もあるようです。


※一個人に対して支払う報酬や料金で、以下の場合は源泉徴収が必要となります。
 ・5万円以下の原稿料・講演料など  
 ・弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金  
 ・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬  
 ・プロスポーツ選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金  
 ・映画、演劇その他芸能、テレビジョン放送等の出演等や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金  
 ・ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金  
 ・プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金  
 ・広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

3.外注費が給与認定されると

税務調査によって外注費が給与認定されると、追加で税金を納めなければなりません

具体的なケースとして外注費を年間240万円(月額20万円)支払っている場合を例に計算してみましょう。


(1)源泉所得税の追徴課税

給与認定された場合、1ヶ月の源泉所得税の徴収漏れは20,900円になります。契約が1年間だとすると、約25万円の納税が発生します。

(2)消費税の仕入税額控除の否認

給与認定されることで約22万円分の仕入税額控除が受けられなくなり、その分の消費税を納めなければなりません。

(3)過少申告加算税・延滞税などのペナルティ

(1)(2)に加えて、納付すべき時期に納付ができていなかったとして以下の税金が課されることがあります。

①過少申告加算税
   ②不納付加算税
   ③重加算税
   ④延滞税

以上より約47万円+加算税・延滞税が追徴課税されてしまいます。外注費を計上するときは給与認定されないようしっかりと対策しておかなければなりません。

4.給与認定されないための対策

では、外注費が給与と認定されないようにどのような対策を取ればよいのでしょうか。

想定できる対策の仕方としては以下の2点が挙げられます。


(1)契約書を取り交わす

まず大事なのが、業務委託契約書請負契約書を確実に取り交わし、雇用契約ではないことを明記することです。その際に、労働時間に対してではなく、完成したもの対して対価を支払うことを明記する、時間的な拘束があるような記載をしないといった点に注意すると良いでしょう。


(2)外注先としての実態を整える

外注費はあくまで会社の外部の企業や個人に業務を委託したときに計上できる勘定科目です。基本的には契約内容(雇用契約か請負契約か)によって判断されますが、税務上はこれに業務実態を加えて総合的に判断をします。

業務の実態については、国税庁の通達より以下の事項が判断材料として挙げられています。


(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5)材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているかどうか。

文章だけでは少しわかりにくいかもしれませんので、フローチャートを作成してみました。

フローチャート

上記を参考に、外注先としての実態が伴っているかを今一度確認しておきましょう。

5.判例

最後に、実際に外注費が給与認定されてしまった事例についてご紹介します。

東京地方裁判所(令和2年(行ウ)第68号)
令和3年2月26日棄却

こちらは従業員から外注先に変更になった作業員に支出した金員について、「給与等」に該当し、仕入税額控除の対象とならないのかが争われた事案です。
東京地裁は、本件各作業員について、本件支出金が支出されていた間も、従業員であった時期と同様に会社より空間的、時間的な拘束を受け、指揮命令に服し、継続的ないし断続的に労務又は役務を提供していたものというべきであり、本件支出金は、「給与等」に該当するから、消費税法2条1項12号にいう「課税仕入れ」に当たらず、仕入税額控除の対象とならない。

この判例においても、「業務の実態はどうか」について争点となっています。


会社は離職する旨を記載した「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出しており、作業員も作業工数に作業単価を乗じた金額を記載した請求書を発行しており、形式的には外注先であると言える状態でした。

しかし、

①作業員が作業を休む場合の代替作業員は会社が手配していた。

②作業時間は従業員であった時と変わらず会社の指示に応じて残業することもあった。

③依頼した作業が完成しなかったとしても、作業日数に応じた報酬が支払われていた。

④工具についてはその多くを会社が準備していた。

以上の点から、実態としては従業員であった時と変わらないため、外注費ではなく給与に該当するという判決に至りました。


このように、業務委託契約や請負契約でもその実態を総合的に勘案された結果、給与認定されるケースがありますので、注意が必要です。


6.まとめ

外注費なのか給与なのかについては、契約内容などの形式的な部分だけでなく、その業務実態も見られます。もし、税務署から外注費を給与として認定されてしまうと、法人税や消費税に大きな影響を及ぼします。


外注先に仕事を発注する場合には、

①業務委託契約書、請負契約書を取り交わしているか

②委託する業務の範囲を明確にし、それ以外の業務をさせているか

③外注先から請求書を受領しているか

⑤残業や休日出勤等について、従業員と同じ取扱いをしていないか

⑥会社責任者の指揮・監督下に置かれているか

⑦材料・用具等について外注先に準備してもらっているか

⑧就業時間や作業手順などについて拘束をしていないか

⑨外注先が個人の場合は事業所得として確定申告をしているか


といった点に気をつけ、外注先としての実態を日ごろから備えるようにしましょう。

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