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【税務】未来の爆益に備える!上場株式等の損失繰越

【税務】未来の爆益に備える!「上場株式等の損失繰越

2月に入り確定申告の時期が近づいてきました。

2023年の確定申告期間は、2023年2月16日(木)〜3月15日(水)です。

先日、弊所のスタッフブログにも投稿しましたが、昨年は趣味である株式投資による譲渡益が生じたため、私も確定申告に向けて必要資料の準備等に追われる毎日です。


投稿をお読みになっている方はご存知かもしれませんが、私は一昨年(2021年分)・一昨々年(2020年分)の株式投資の譲渡損失を確定申告において繰り越さなかったために後悔の年末を過ごしました。

今年の私のように損失の繰り越しを行わなかったことによる税負担軽減の機会を逃してしまう悲劇を避けるために、

「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」

についてご紹介致します。

1.上場株式等の譲渡に係る税金

上場株式等の譲渡による利益(以下、譲渡所得)が出た場合は、その利益が「所得税(譲渡所得)」「住民税」の課税対象になり、株式等の取引口座の種類によっては前年の1月1日~12月31日(いずれも受渡日※)の譲渡所得について確定申告を行う必要があります。

なお、上場株式の範囲については国税庁ホームページに掲載がありますが、本稿で取り上げる上場株式は「金融商品取引所に上場されている株式等」を前提として以降をお読みください。

(国税庁ホームページ該当ページ)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm

また、本稿では「2,000万円以下の給与所得であって、それ以外の所得が上場株式等の譲渡によるもののみ」という前提で記述を進めていきます。

※売買の決済をする日。売買が成立した日(約定日)から2営業日後が受渡日となります

(1)取引口座の違いによる確定申告の要否

株式投資を行うために口座を開設する際、「一般口座」と「特定口座」のいずれかを選択します。さらに、「特定口座」を選択した場合は「源泉徴収あり」・「源泉徴収なし」のいずれかを選択します。

  

「特定口座(源泉徴収あり)」では譲渡所得が発生した場合に証券会社が所得税・住民税の計算及び納税を代行してくれるため、確定申告は不要となります。

一方で、「一般口座」・「特定口座(源泉徴収なし)」のいずれかを選択している場合で20万円を超える譲渡所得が発生した場合に確定申告が必要です。

また、譲渡所得が20万円以下であっても「ふるさと納税」や「医療費控除」等に係る還付を確定申告によって受ける場合は上場株式等の譲渡による譲渡所得を申告する必要があります。


なお、上記の口座の他に「NISA口座」がありますが、「NISA口座」での取引による利益は非課税であり、後述する「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」の特例の対象外ですので詳述は控えます。


(2)税金の計算

上場株式等の譲渡に係る譲渡所得は以下の算式で求めます。


  譲渡所得等の金額=総収入金額(譲渡価額)- 必要経費(取得費+手数料等)


そして、譲渡所得に対して以下の通り税金を計算します。


  譲渡所得等の金額×20.315%(所得税と復興特別所得税15.315%+住民税5%)


上記の計算によって算定された上場株式等の譲渡に係る税金を「特定口座(源泉徴収あり)」では証券会社の代行により、「一般口座」・「特定口座(源泉徴収なし)」の口座の場合は確定申告で申告・納付を行います。なお、複数の口座で取引をしている場合、「NISA口座」を除く各口座の損益を通算して生じた譲渡所得が課税対象となります。

 例として、A・B2つの口座で取引をしている場合で、口座Aでは100万円の利益、口座Bでは50万円の損失という場合は通算して50万円が譲渡所得となります。


2. 「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」について

これまで譲渡所得、いわゆる譲渡益が生じた場合について記述してきました。私自身、投資を始めてから数年間は投資の世界の洗礼を浴びまくり譲渡損失が続いていたので確定申告については頭にも無かったのですが、確定申告にて譲渡損失を申告することで、翌年以降3年間に繰り越して各年の譲渡所得から控除(相殺)することができます。

 なお、上場株式を保有していると銘柄によっては中間・期末のタイミングで配当所得(配当金)が生じることがあります。配当所得(申告分離課税を選択したものに限る)を譲渡損失と損益通算し、残った損失が繰り越しの対象になります(※)。
※株式以外に公社債に係る利息等の利子所得も損益通算の計算に含まれます。

(1)特例を受けるための手続き等

この特例の適用を受けるためには、次の手続・要件を満たす必要があります。
以下は国税庁ホームページより引用です。

⑴上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得等との損益通算 

イ この損益通算の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、この規定の適用を受けようとする旨を記載すること。

ロ 「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通 算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付がある確定申告書を提出すること。

なお、控除しきれない譲渡損失の金額があり、翌年以後にその譲渡損失の金額を繰り越す場合には、次の手続が必要になります。

⑵上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除

イ 上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税等につき、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付がある確定申告書を提出すること。

ロ その後の年において連続して「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」の添付のある確定申告書を提出すること。

(注)上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。

ハ この繰越控除を受けようとする年分の所得税等につき、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および一般株式等に係る譲渡所得等の金額または上場株式等に係る譲渡所得等の金額がある場合には「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付のある確定申告書を提出すること。

—引用元 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm

以上の通り、確定申告にて関連する書類の提出が必要になります。引用元の注意点をさらに強調しますが、譲渡損失を翌々年以降に繰り越す場合は譲渡所得が無くても申告が必要になります。

また、譲渡所得が生じた場合でも確定申告による申告・納税が不要な「特定口座(源泉徴収あり)」においても、譲渡損失の繰り越しの特例を適用する場合は確定申告が必要です。

(2) 繰越例

あまりに生々しい数字を載せると私自身の話であると誤解が生じる可能性もありますが、「一般的なサラリーマンA」の投資成績を例に繰り越しの具体例を挙げます。

①投資1年目(令和2年)

コロナ禍によりボーナスが激減したAは投資によってその穴埋めを画策します。市場取引のセオリーや相場の読み方等の知識が皆無であったため、何となくの判断や値ごろ感で資金を投入しては損切りを繰り返し、投資1年目は50万円の譲渡損失をたたき出しました。収入減分を取り戻すどころか、投資失敗によるダブルパンチをくらってしまいます。しかし、臥薪嘗胆の精神で翌年以降の飛躍の誓いを込めて損失を繰り越すべく確定申告を行いました。

1年目:繰越損失 50万円 譲渡所得 0円
  ⇒納税無し


②投資2年目(令和3年)

 前年の反省から、銘柄や入りのタイミングを慎重に見極めるようになったA。投機的な資金の投入が減るとともに、中・長期的な投資スタイルへの変更が功を奏し、投資2年目は30万円の利益を手にしました。2年目の投資成績について確定申告を行いましたが、前年に損失の繰越を行っていたため、30万円の譲渡所得は相殺されて譲渡所得は0円になり、税負担は発生しません。

2年目:繰越損失 20万円(50万-30万) 譲渡所得 0円
  ⇒納税無し!

繰り越しを行っていなかった場合、30万円の利益がすべて譲渡所得になるため、
30万円×20.315%=60,945円(イ)の納税負担が生じます。

②投資3年目(令和4年)

前年に引き続き手堅い投資を実践するA。局所的な資金集中の判断がそこそこに当たり、この年の利益は70万円でした。前年までの損失の繰越20万円を差し引き、譲渡所得は50万円です。

3年目:譲渡所得 50万円(70万-20万(前年までの繰越残)
  ⇒50万円×20.315%=101,575円の税負担。

仮に初年度に損失の繰り越しを行っていなかった場合は、

70万円×20.315%=142,205円(ロ)の納税負担が発生します。


損失繰り越しの有無による2年目以降の税負担を比較すると、

繰越あり繰越なし
101,575円

203,150円

(イ)+(ロ)

となり、差額の101,575円もの税負担を軽減できました。

軍資金にもよりますが、一サラリーマンの身としてはこれだけの金額を利益として捻出することはなかなか容易ではないため、特例さまさまな状況です。

まとめ

金額こそ微妙に違えど、私自身も「一般的なサラリーマンA」のような投資生活の軌跡を歩んできました。Aとの違いは、損失が発生した年に繰越のための確定申告を行わなかったことであり、その結果、軽減できた税負担を受けることになってしまいました。軽減できた税金の支払い分を新たな投資の原資とすることでさらなる利益を生み出すことにつながる可能性もあるため、見えない損失を抱えたことと等しいかもしれません。

 予測の難しい株式投資の世界であるからこそ、Aのように翌年以降の利益を考慮して損失の繰り越しを行うべきだった…というのが私自身の反省です。


 損失を出さないことがもちろん理想ではありますが、もし損失が出てしまった場合は翌年以降の爆益を最大限享受すべく確定申告を行うことをおすすめします!

 

 今回は「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」についてご説明致しました。これ以外の上場株式等に係る譲渡所得についてのことはもちろん、確定申告全般に関するお問い合わせ・申告作業のご用命がございましたら、ぜひとも弊所にご連絡ください!



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