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投機を目的として保有する人が増えている暗号資産ですが、その課税ルールについて株式などの金融資産と同じようにとらえている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
暗号資産は原則として自身で確定申告をする必要があります。ただし、税金の発生が大きくわせて6パターンもあり、わかりにくい仕組みになっています。そのため、2020年から21年ごろにかけ関東信越国税局が実施した一斉調査では、数十人の申告漏れが見つかり、過少申告加算税などを含めた追徴税額は合計で6億7千万円にものぼりました(日本経済新聞「仮想通貨で一斉税務調査 14億円申告漏れ、グレー節税も」2021年10月3日)。
そこで今回は、暗号資産について申告を忘れないよう、どのような場合に課税所得が発生するのかについて解説いたします。
仮想通貨とも呼ばれており、「資金決済に関する法律」において、次の性質を持つものと定義されています。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
条文ですとわかりづらいと思いますが、まとめると以下のようになります。
➀不特定の者に対して、代金の支払い等に使用できるかつ、法定通貨(日本円や米国ドル等と相互に交換できる)と相互に交換できる
➁電子的に記録され、移転できる
③法定通貨または法定通貨建ての資産ではない
④上記➀から③を満たす財産的価値であって、不特定の者と相互に交換できる
代表的なものですと、ビットコインがありますね。電子マネーとともに発達し現在では1万近い種類の暗号資産が存在しています。
特徴としては銀行などの第三者を介することなく取引ができること、日本円やドルとは異なり資産としての実態があるわけではなく、あくまで電子的に記録されたデータに過ぎないため需給関係などによって大きく価格が変動することなどがあげられます。
暗号資産取引により生じた所得については、原則として雑所得に区分されます。
ただし、その年の暗号資産に係る所得の総額が300万円を超える場合で、帳簿書類の保存がある場合は「事業所得」に区分されます。
所得金額については、収入金額から必要経費を控除して計算をします。経費として計上できるものは、暗号資産の譲渡原価その他売却等に直接要した手数料などです。
暗号資産は、保有しているだけでしたら特に課税所得は発生しません(法人の場合は期末に時価評価を行い、評価額と帳簿価格との差額を損益として認識する必要があります)が、次のような場合には課税所得が発生します。
暗号資産を売却した時点で所得が発生します。所得額の計算方法は以下の通りです。
譲渡価額-暗号資産の1単位当たりの取得価額×譲渡した数量=所得金額
暗号資産を用いて別の暗号資産を購入した場合にも、所得が発生します。これは、暗号資産を一度売却し、日本円などに換金してから別の暗号資産を購入したとして扱われるためです。そのため、譲渡した暗号資産の時価が購入時よりも上がっている場合は、その差額が所得金額となります。
暗号資産の取引に必要なコンピューター演算作業に協力した人が報酬として暗号資産を受け取ることを「マイニング」と言います。この場合、受け取った暗号資産の取得時の時価から、マイニングに要した費用を差し引いた金額が所得となります。
特定の暗号資産を保有した期間や数量に応じて対価を受け取ることを「ステーキング」と言います。この場合、受け取った報酬が所得となります。
暗号資産を取引所に一定期間貸し出すことで賃借料を受け取ることを「レンディング」と言います。この方法を用いることで、取引をしなくても暗号資産を増やすことができます。この場合、増えた暗号資産の時価とマイニングにかかった費用との差額が所得となります。
ここまで投機目的の暗号資産について解説してきましたが、現在では投機以外の目的で暗号資産を利用する人が増えてきています。その1つが、暗号資産をゲーム内で稼げる「ゲームファイ」です。
最近では、スマートフォンのGPS機能を利用して移動した距離に応じて暗号資産を受け取ることのできるサービスや、育成したキャラクターを暗号資産で売買できるゲームなどもあります。
これらについては、暗号資産を受け取った時点で課税対象となります。
暗号資産についてどのような場合に課税所得が発生するかについて解説致しました。
国税庁では、「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公開しております。詳細については、そちらをご覧ください。
暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和5年12月)|国税庁 (nta.go.jp)
また、「暗号資産の計算書」も公開されていますので、所得額の計算にご活用ください。
計算書は国税庁の以下のサイトからダウンロードできます。
申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)|国税庁 (nta.go.jp)
暗号資産の計算書 移動平均法用(Excelファイル)
暗号資産の計算書 総平均法用(Excelファイル)