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【税務】その交際費は調査されても大丈夫?

国税庁は2023年6月14日、令和4年度の査察概要を発表しました。同年度に処理した件数は前年度より36件多い139件で、脱税総額は前年度より25.5億円増の128億円とコロナ禍から大幅増となっております。


査察ほど大掛かりでないとしても、まん延防止等重点措置が解除された令和4年 3月後半から通常の税務調査も少しずつ増えてきています。税務調査では全ての科目が調査されますが、特に交際費は公私の線引きが曖昧になりやすく、事業とは関係のない費用も計上されやすい面があるため、重点的にチェックされやすい傾向があるように感じております。


また、コロナの5類感染症移行に伴い飲食の機会も増えているものと推測しますが、弊所でも「交際費」に関するお問い合わせをいただく機会が増えてまいりましたので、今回は基本的な内容ですが、交際費課税について主要な諸外国とも簡単に比較しながら取り上げたいと思います。


Ⅰ.交際費課税の全般的な傾向

国税庁によれば、「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するもの」をいいます。

この交際費等につき法人の収益獲得を目的とした支出であれば、損金としてしかるべきという意見が多くあります。一方諸外国では、交際費等の支出の一部を損金不算入とする措置を講じている国も多くあるようです。それは損金算入を認めると、その金額を増やす傾向があることから、冗費節減という趣旨と考えられます。


Ⅱ.主要国の交際費課税

では、主要国の交際費課税の概要を簡単にご紹介したいと思います。

1.交際費に対して比較的厳しい国

1)米国

接待、娯楽、レクリエーションに係る費用は事業活動に直接関連していることや事業目的の会議の前後に行われたものであることなどを証明できない場合は、損金不算入となります。一方それが証明できたとしても、事業活動に通常かつ必要な交際費は50%までしか損金算入できません。

2)ドイツ

事業に関連のある交際費としても、30%までしか損金算入できません。

3)英国

得意先に対する交際費は原則として損金不算入となります。ただし、役員を含む従業員に対する福利厚生は損金算入が認められます。

4)カナダ

事業に関連のある交際費としても、50%までしか損金算入できません。

5)中国

領収書等が完備されていることを条件に、実際発生額の60%までしか損金算入できません。

※売上の0.5%が上限となります。


2.交際費に対して比較的優しい国

1)シンガポール

会議費・交際費は事業上の目的のために支出されたことが明らかであるもののみ控除できます。

2)フランス

事業に関連のあることが明確な交際費であれば、原則として損金算入が認められます。

3)香港

特別な規定はなく、その課税期間の所得を生み出すために必要と認められるものは損金算入できます。

3.日本の場合

原則の考え方は「損金算入不可」です。しかしながら、平成26年度改正により、長引く円高・デフレ脱却を目指した緊急経済対策の一環として、法人が各事業年度に支出する交際費等のうちの接待飲食費の額の50%までの損金算入が認められました。

特に資本金が1億円以下の中小法人の場合、接待飲食費の額の50%を損金算入できる特例と、これに代えて、支出した交際費等の額が800万円までは全額損金算入できる中小法人損金算入特例の選択制となり、諸外国と比較し、日本の中小法人については優遇されている面があるといえます。


Ⅲ.交際費の判別フロー

弊所のお客様から「もっと有効に交際費を使いたい」というご相談をいただくことがありますが、先述の通り中小法人は優遇されているとはいえ、交際費等の損金算入額には制限があり、税務調査でチェックを受けることも多いので、極力交際費でなく、税務上問題になりにくい他の勘定科目で処理できるかどうかを判断します。
交際費フローチャート


上記フローでの注意点として、例え1人当り5,000円以下の飲食であったとしても、以下の明細が具備されていない場合は、交際費等に該当します。

(1) 飲食等のあった年月日

(2) 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係

(3) 飲食等に参加した者の数

(4) その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)

(5) その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項


Ⅳ.本当に交際費かどうかのポイント

最後に、支出した交際費の額が、本当に交際費として認められるのかどうか、冒頭の交際費等の定義、つまり当該交際費として支出した額が、「自社の事業・業務と具体的に関連性があるかどうか」が問題となります。


この点につき、ちょうど良い事例があるのでご紹介したいと思います。


2023年5月12日、中小法人の代表者が支払った飲食等の代金が交際費等に該当するか否かが争われた事案の判決が東京地裁でなされました。


この判決で焦点となったのは、中小法人損金算入特例の対象となる交際費等に該当するかどうかでした。

同特例について法人税等の規定に照らすと、飲食等の日時が特定されていることを前提に、支出の相手が事業に関係ある者等であることなどを要するとし、こうした要件を満たさない支出の交際費等の該当性が否定されました。


当該代表者は、飲食相手の経営する飲食店でさまざまな者と飲食を通じて交流することにより人脈を広げることが業務と関連する旨を主張しましたが、「単に人脈を広げるという抽象的な必要性があるというだけでは、具体的に納税者の業務と関連性があるということはできない」とされました。


他方、同代表者と互いに業務を発注する関係にあり、現在も取引関係を継続している相手方を含む飲食等への支出は、その親睦を密にし、取引関係の円滑な進行を図るために必要なものであるといえ、「業務と具体的に関連性がある」と認めて交際費等に当たると認定されました。


この認定で注目すべき点は、その後の接待交際の相手方との個別具体的な取引・契約等との厳密な結びつきまでには求められないとの考え方が示されたことです。


更に、それが一見プライベートな内容も含まれるとしても、「明確に業務と関連性のないプライベートとして行ったものでない限りは、これにより親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図るために必要なものであったといえる」とされました


つまりポイントは取引関係を継続している相手を含むかどうか」ということです。

その要件があれば、中小法人損金算入特例の対象となる交際費等に該当する可能性が上がるということですね。


交際費として認められるかどうかは、伝統的なテーマであって、以前から議論がなされているものではありますが、いざ判別しようと考えてみるとさまざまなケースがあり、非常に奥深いものがあるといえます。


皆様でも「中々勘定科目の判別が難しい」「本当に交際費に該当するかどうか?」といったことがあれば、どうぞ私たちにお気軽にご相談くださいませ。


今後も、皆様の存続・繁栄を一番身近な伴走者として成長・発展の道ご一緒に歩むことができるよう、そして『100年企業』を目指してご支援できれば幸いです。


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