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令和5年10月1日ついに始まりましたインボイス制度。
開始直前の9月29日、インボイス制度に対して世間から不安・不満の声が上がっていることについて、岸田総理は「何年にもわたってその対応を考え、説明を続けてきた」と回答しました。
とは言いつつも、弊社顧問先の皆様からも、ご質問や気掛かりな点について多くのお問い合わせをいただいております。
そこで、すでに始まっているインボイスですが、よくあるお問い合わせ事項についてQ&Aを作成いたしました。
令和5年10月1日の取引からとなります。具体的には、以下の基準日が10月1日以降になる場合、交付義務が生じます。
モノの販売 : 出荷日、相手方の検収日など、引渡しの日として合理的な日
サービスの提供 : 物の引渡しを要する場合は、目的物の全部を引き渡した日
物の引渡しを要しない場合は、役務の全部を完了した日
・基準日が令和5年9月中の取引について、令和5年10月に請求を行う場合
⇒インボイス対応の必要はありません。
・令和5年9月中に請求書を出し、基準日が令和5年10月の納品を行う場合
⇒インボイス対応の必要があります。
つまり、基準日ベースで考えるため10月1日以降に交付する請求書等から必ず対応しなければならないわけではありません。
インボイスの番号が有効か、基準日にインボイス発行事業者として正式に登録されているかどうかは、受け取った事業者が確認する必要があります。
ただ、すべての取引の都度、確認が必要となるのではなく、取引先の規模や関係性、取引の継続性などを踏まえて、その頻度等を判断することになります。
・新規取引先との取引
⇒必ず確認をしましょう。
取引前にインボイス発行事業者の確認をすることを推奨します。
・継続的に取引がある企業との取引
⇒都度の確認は行わないという選択をしてもいいかもしれません。
しかし、インボイス発行事業者の登録を取り消している可能性も有るため、定期的に確認をする必要があります。
インボイス制度開始前に、インボイス発行事業者の登録を申請したのにもかかわらず、令和5年10月1日までに登録の通知が来ない場合があります。申請後、通知を受け取るためには1~2ヶ月を要する場合があるためです。
そのような場合でも、令和5年10月1日に遡って登録を受けたものとみなされます。このケースのときの取引先に対するご対応は以下の項目が考えられます。
・事前にインボイスの交付が遅れる旨を取引先に伝え、通知後にインボイスを交付する
・取引先に対して通知を受けるまでは暫定的な請求書を交付し、通知後に改めてインボイスを交付し直した請求書を交付する
・通知後にすでに交付した請求書等 との関連性を明らかにした上で、 インボイスに不足する登録番号を 書類やメール等でお知らせする
※小売店などの不特定かつ多数の者に対して事業を行う場合は、事後交付等の対応が困難なことも考えられます。そのような場合は、事前にインボイスの交付が遅れる旨を事業者(小売店等)のホームページや店頭で相手方に知らせます。その上で、登録通知が届いた後に事業者のHP等で
「弊社の登録番号は『T1234…』となります。令和5年10月1日から令和5年〇月〇日(通知を受けた日)までの間のレシートをお持ちの方で仕入税額控除を行う方におきましては、当ページを印刷するなどの方法により、レシートとあわせて保存してください」
といった内容を掲示する方法や、買手側からの電話等に応じ、登録番号を知らせ、相手方にその記録とあわせて保存してもらうといった対応が可能です。
※ これらの取扱いは、登録申請は令和5年9月までに行ったものの、令和5年10月1日までに登録番号の通知が届かなかった場合の経過的な取扱いとなります。したがって、登録番号を記載したインボイスを交付できるようになった日以降は、記載事項を満たしたインボイスを交付していただく必要がありますので、ご注意ください。
買手である課税事業者が、交付を受けた適格請求書または適格簡易請求書の記載事項に誤りがあったときに、仕入税額控除の適用に係る請求書等の保存要件を満たすためには、売手であるインボイス発行事業者に修正した適格請求書または適格簡易請求書の交付を求め、交付を受けて保存する必要があります(自ら追記や修正を行うことはできません)。これらは修正インボイスとも呼ばれます。
なお、買手において適格請求書の記載事項の誤りを修正した仕入明細書等を作成し、相手方であるインボイス事業者の確認を受けた上で、その仕入明細書等を保存することもできます。
一方で、売手であるインボイス発行事業者は、交付した適格請求書、適格簡易請求書に誤りがあったときは、買手である課税事業者に修正した適格請求書、適格簡易請求書を交付しなければなりません。
・誤りがあった事項を修正し、改めて記載事項のすべてを記載したものを交付する方法
・当初に交付したものとの関連性を明らかにし、修正した事項を明示したもの(修正箇所に当たる「正」の部分と当初に交付したものでの「誤」の部分を記載したもの)を交付する方法
などが考えられます。
(国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和5年10月改訂)P34より引用
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=23)
事業者がどのような条件で取引するかについては、基本的に当事者間の自主的な判断にとなります。ただ、免税事業者等の小規模事業者は売上先の事業者との間で取引条件について情報量や交渉力の面で格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすい場合も想定されます。
自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となるおそれがあります。
仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことそれ自体が直ちに問題となるものではありませんが、見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。
それでは、優越的地位の濫用とはどういうものなのか見ていきましょう。
取引上優越した地位にある買手が、免税事業者との取引で仕入税額控除できないことを理由に取引価格の引下げを要請し、再交渉で双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではありません。しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、買手の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。
取引上の地位が相手方に優越している買手が、仕入先から商品を購入する契約をした後に、仕入先がインボイス発行事業者でないことを理由に商品の受領を拒否することは、優越的地位の濫用として問題となります。
課税事業者が、インボイスに対応するために、取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請すること自体は、独占禁止法上問題となるものではありません。しかし、それにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上または下請法上、問題となるおそれがあります。また、要請に応じて課税事業者となるのに際し、例えば、消費税の適正な転嫁分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置く場合についても同様です。
※10月4日、公正取引委員会より、インボイス制度を巡った独占禁止法違反につながる恐れがあるとして、事業者を注意した事例が36件発生したと明らかにされました。制度開始間もない今日、被害者・加害者どちらにも成り得る可能性があるため、十分気を付けていきたいところです。
(公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」参考
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html)
いかがでしたでしょうか。インボイスの制度云々というよりも実務的な疑問に対するご回答といった形で各ご回答を記載させていただきました。
インボイス制度は開始前に複数回見直しが入り、弊社内でも都度会議や勉強会を重ねております。皆様の疑問にご回答できるように努めておりますので、ご質問ご不明な点がございましたらお気軽に北島会計へお問い合わせください。