2月に入り確定申告の時期が近づいてきました。
2023年の確定申告期間は、2023年2月16日(木)〜3月15日(水)です。
先日、弊所のスタッフブログにも投稿しましたが、昨年は趣味である株式投資による譲渡益が生じたため、私も確定申告に向けて必要資料の準備等に追われる毎日です。
投稿をお読みになっている方はご存知かもしれませんが、私は一昨年(2021年分)・一昨々年(2020年分)の株式投資の譲渡損失を確定申告において繰り越さなかったために後悔の年末を過ごしました。
今年の私のように損失の繰り越しを行わなかったことによる税負担軽減の機会を逃してしまう悲劇を避けるために、
「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
についてご紹介いたします。
上場株式等の譲渡による利益(以下、譲渡所得)が出た場合は、その利益が「所得税(譲渡所得)」・「住民税」の課税対象になり、株式等の取引口座の種類によっては前年の1月1日~12月31日(いずれも受渡日※)の譲渡所得について確定申告を行う必要があります。
なお、上場株式の範囲については国税庁ホームページに掲載がありますが、本稿で取り上げる上場株式は「金融商品取引所に上場されている株式等」を前提として以降をお読みください。
(国税庁ホームページ該当ページ)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
また、本稿では「2,000万円以下の給与所得であって、それ以外の所得が上場株式等の譲渡によるもののみ」という前提で記述を進めていきます。
※売買の決済をする日。売買が成立した日(約定日)から2営業日後が受渡日となります
株式投資を行うために口座を開設する際、「一般口座」と「特定口座」のいずれかを選択します。さらに、「特定口座」を選択した場合は「源泉徴収あり」・「源泉徴収なし」のいずれかを選択します。
「特定口座(源泉徴収あり)」では譲渡所得が発生した場合に証券会社が所得税・住民税の計算及び納税を代行してくれるため、確定申告は不要となります。
一方で、「一般口座」・「特定口座(源泉徴収なし)」のいずれかを選択している場合で20万円を超える譲渡所得が発生した場合に確定申告が必要です。
また、譲渡所得が20万円以下であっても「ふるさと納税」や「医療費控除」等に係る還付を確定申告によって受ける場合は上場株式等の譲渡による譲渡所得を申告する必要があります。
なお、上記の口座の他に「NISA口座」がありますが、「NISA口座」での取引による利益は非課税であり、後述する「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」の特例の対象外ですので詳述は控えます。
上場株式等の譲渡に係る譲渡所得は以下の算式で求めます。
譲渡所得等の金額=総収入金額(譲渡価額)- 必要経費(取得費+手数料等)
そして、譲渡所得に対して以下の通り税金を計算します。
譲渡所得等の金額×20.315%(所得税と復興特別所得税15.315%+住民税5%)
上記の計算によって算定された上場株式等の譲渡に係る税金を「特定口座(源泉徴収あり)」では証券会社の代行により、「一般口座」・「特定口座(源泉徴収なし)」の口座の場合は確定申告で申告・納付を行います。なお、複数の口座で取引をしている場合、「NISA口座」を除く各口座の損益を通算して生じた譲渡所得が課税対象となります。
例として、A・B2つの口座で取引をしている場合で、口座Aでは100万円の利益、口座Bでは50万円の損失という場合は通算して50万円が譲渡所得となります。
これまで譲渡所得、いわゆる譲渡益が生じた場合について記述してきました。私自身、投資を始めてから数年間は投資の世界の洗礼を浴びまくり譲渡損失が続いていたので確定申告については頭にも無かったのですが、確定申告にて譲渡損失を申告することで、翌年以降3年間に繰り越して各年の譲渡所得から控除(相殺)することができます。
なお、上場株式を保有していると銘柄によっては中間・期末のタイミングで配当所得(配当金)が生じることがあります。配当所得(申告分離課税を選択したものに限る)を譲渡損失と損益通算し、残った損失が繰り越しの対象になります(※)。
※株式以外に公社債に係る利息等の利子所得も損益通算の計算に含まれます。
この特例の適用を受けるためには、次の手続・要件を満たす必要があります。
以下は国税庁ホームページより引用です。
⑴上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得等との損益通算
イ この損益通算の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、この規定の適用を受けようとする旨を記載すること。
ロ 「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通 算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付がある確定申告書を提出すること。
なお、控除しきれない譲渡損失の金額があり、翌年以後にその譲渡損失の金額を繰り越す場合には、次の手続が必要になります。
⑵上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
イ 上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税等につき、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付がある確定申告書を提出すること。
ロ その後の年において連続して「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」の添付のある確定申告書を提出すること。
(注)上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。
ハ この繰越控除を受けようとする年分の所得税等につき、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および一般株式等に係る譲渡所得等の金額または上場株式等に係る譲渡所得等の金額がある場合には「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付のある確定申告書を提出すること。
(国税庁タックスアンサー「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」より引用)
以上の通り、確定申告にて関連する書類の提出が必要になります。引用元の注意点をさらに強調しますが、譲渡損失を翌々年以降に繰り越す場合は譲渡所得が無くても申告が必要になります。
また、譲渡所得が生じた場合でも確定申告による申告・納税が不要な「特定口座(源泉徴収あり)」においても、譲渡損失の繰り越しの特例を適用する場合は確定申告が必要です。
あまりに生々しい数字を載せると私自身の話であると誤解が生じる可能性もありますが、「一般的なサラリーマンA」の投資成績を例に繰り越しの具体例を挙げます。
コロナ禍によりボーナスが激減したAは投資によってその穴埋めを画策します。市場取引のセオリーや相場の読み方等の知識が皆無であったため、何となくの判断や値ごろ感で資金を投入しては損切りを繰り返し、投資1年目は50万円の譲渡損失をたたき出しました。収入減分を取り戻すどころか、投資失敗によるダブルパンチをくらってしまいます。しかし、臥薪嘗胆の精神で翌年以降の飛躍の誓いを込めて損失を繰り越すべく確定申告を行いました。
1年目:繰越損失 50万円 譲渡所得 0円 ⇒納税無し |
前年の反省から、銘柄や入りのタイミングを慎重に見極めるようになったA。投機的な資金の投入が減るとともに、中・長期的な投資スタイルへの変更が功を奏し、投資2年目は30万円の利益を手にしました。
2年目の投資成績について確定申告を行いましたが、前年に損失の繰越を行っていたため、30万円の譲渡所得は相殺されて譲渡所得は0円になり、税負担は発生しません。
2年目:繰越損失 20万円(50万-30万) 譲渡所得 0円 ⇒納税無し! |
繰り越しを行っていなかった場合、30万円の利益がすべて譲渡所得になるため、
30万円×20.315%=60,945円(イ)の納税負担が生じます。
前年に引き続き手堅い投資を実践するA。局所的な資金集中の判断がそこそこに当たり、この年の利益は70万円でした。前年までの損失の繰越20万円を差し引き、譲渡所得は50万円です。
3年目:譲渡所得 50万円(70万-20万(前年までの繰越残)) ⇒50万円×20.315%=101,575円の税負担。 |
仮に初年度に損失の繰り越しを行っていなかった場合は、
70万円×20.315%=142,205円(ロ)の納税負担が発生します。
損失繰り越しの有無による2年目以降の税負担を比較すると、
繰越あり | 繰越なし |
---|---|
101,575円 | 203,150円 (イ)+(ロ) |
となり、差額の101,575円もの税負担を軽減できました。
軍資金にもよりますが、一サラリーマンの身としてはこれだけの金額を利益として捻出することはなかなか容易ではないため、特例さまさまな状況です。
金額こそ微妙に違えど、私自身も「一般的なサラリーマンA」のような投資生活の軌跡を歩んできました。Aとの違いは、損失が発生した年に繰越のための確定申告を行わなかったことであり、その結果、軽減できた税負担を受けることになってしまいました。軽減できた税金の支払い分を新たな投資の原資とすることでさらなる利益を生み出すことにつながる可能性もあるため、見えない損失を抱えたことと等しいかもしれません。
予測の難しい株式投資の世界であるからこそ、Aのように翌年以降の利益を考慮して損失の繰り越しを行うべきだった…というのが私自身の反省です。
損失を出さないことがもちろん理想ではありますが、もし損失が出てしまった場合は翌年以降の爆益を最大限享受すべく確定申告を行うことをおすすめします!
今回は「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」についてご説明致しました。これ以外の上場株式等に係る譲渡所得についてのことはもちろん、確定申告全般に関するお問い合わせ・申告作業のご用命がございましたら、ぜひとも弊所にご連絡ください!
(更新日:2022年4月20日)
2021年12月10日に令和4年度の税制改正大綱が公表され、賃上げ税制や住宅ローン控除の見直しなどが盛り込まれました。
その改正の中に『少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等の見直し』という項目が含まれており、減価償却資産の取扱いに影響がありました。
この記事では、令和4年度税制改正の内容を踏まえた上で、基本に立ち返って減価償却資産の償却方法について確認していきます。
まずは、今回の税制改正『少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等の見直し』により、どのような影響が生じたのでしょうか?
今回の改正は、『ドローン節税』と呼ばれる、決算期末に利益対策として(性質としては利益の繰り延べ)利用されていた方法に蓋をする意図をもって改正されました。2019年2月14日法人税基本通達の改定(バレンタインショック)によって蓋をされた生命保険節税の代替として広まっていた方法です。
『ドローン節税』を初めて聞いたという方向けにドローン節税の概要を記載いたします。
少額のドローンを複数台購入し損金計上を行い、購入したドローンを操縦資格の取得をするためのスクールなどの事業者に貸し出し、レンタル料収入を得ます。このドローン節税、短期間で事業の見通しが立てやすいことから今までは利用されている方が多くいらっしゃいました。
上記の方法で取引されていたドローンは税込10万円未満のものを主としています。税法における「少額の減価償却資産」の取扱いにおいて、通常1単位として取引される単位が10万円未満であるものは、要件を満たせば損金化できるということがその理由でした。
話を戻しまして、改正の影響を具体的に見ていきたいと思います。
令和4年度税制改正により、上記方法で購入した10万円未満のドローンは全額を即時損金化できなくなりました。つまり、従来のようなドローン節税はもう出来ません。
(※節税目的ではなく、リース事業やレンタル事業を主要な事業として行っている場合(リース会社など)は従来通り、取得価額を損金算入可能です。)
以下税制改正部分の抜粋になります。
◆10万円未満の減価償却資産について |
---|
「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度について、対象資産から、取得価額が10万円未満の減価償却資産のうち貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものを除外する(所得税についても同様とする)。 |
付随して、減価償却資産には20万円(一括償却資産)、30万円(少額減価償却資産の特例)もございますが、こちらも令和4年度税制改正により制限を受けております。
◆20万円未満の減価償却資産について(これのみ3年均等償却) |
---|
一括償却資産の損金算入制度について、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産を除外する(所得税についても同様とする)。 |
◆30万円未満の減価償却資産について |
---|
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産を除外した上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする)。 |
以上のように、過度な節税方法は改正という形で蓋をされてしまうことが往々にしてございます。そもそもこういった方法は、減価償却資産の償却方法を理解し、最適な方法を選択し、それでも何か方法がないか?という時の苦肉の策として利用される最終手段ではないかと考えております。
ですが、減価償却資産の償却方法を理解といっても、その方法は少々難解かつ複雑ですので、ここで改めてその一端に触れていきたいと思います。
減価償却資産の内容を一からご説明することは、今回の記事ではとても足りませんので、概略化させていただきます。
減価償却の方法には以下の2通りがございます。
①資産として計上し、法定耐用年数により期間按分し償却していく方法(一般の固定資産)
②即時償却をする方法(30万円未満)
今回は令和4年度改正内容に関係のある、「②即時償却をする方法(30万未満)」についてを確認していきたいと思います。
「②即時償却をする方法(30万未満)」は、取得した資産の金額によって【少額の減価償却資産】と【一括償却資産】のどちらかに該当します。
使用期間が1年未満と短期間のもの、または取得価額が10万円未満の少額のものがそれにあたります。取得価額はセットで考えますので、例えば、カーテンの場合は、1枚で機能するものではなく、一つの部屋で数枚が組み合わされて機能するものですから、部屋ごとにその合計額が10万円未満になるかどうかを判定します。
取得価格が10万円以上20万円未満の固定資産について個別に減価償却をしないで使用した年から3年間にわたり、資産の取得価格の3分の1を必要経費に計上していくものです。
中小企業の場合は《中小企業者等の少額減価償却資産の特例》により、取得価額30万円未満の固定資産までは【少額減価償却資産】という方法を選択することもできます。
《中小企業者等の少額減価償却資産の特例》についての詳細は、下記サイトをご参照ください。
No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁 (nta.go.jp)
(引用国税庁タックスアンサーより)
上記で説明した判定を図示いたしますと以下のフローチャートのようになります。
上記フローチャートの「10万円以上20万円未満」のところに注目です。中小企業で取得価額が10万円以上20万円以下の場合、【一括償却資産】にするか【少額減価償却資産】にするかを選択することが可能です。
この場合、中小企業の特例である【少額減価償却資産】を利用すればいいのでは?と考えられると思いますが、【一括償却資産】を選択した方が地方税の部分でメリットが生じます。
それは、【一括償却資産】を選択した場合は償却資産税の対象にならない。という点です。
実は、会社が使用する資産は、10万円を超えたものに対しては税金がかかります。
(その総額が150万円を超えた場合)
そのため、【一括償却資産】を選択すると償却資産税の負担が軽減されるというメリットがあります。
10万円を超えた資産の総額が150万円を超えそうだ!となった場合は一考する価値があるかもしれません。
ちなみに税率は1.4%です。
1,500,000円×1.4%=21,000円
税額 21,000円
皆さんは住宅ローン控除をご存じでしょうか。
正式には住宅借入金等特別控除という名称の制度です。
ここでは、2021年度の税制改正による住宅ローン控除の変更点と、2022年以降の展望について解説させていただきます。
※本記事の情報は2021年度税制改正に基づいて執筆しております。
金融機関から住宅ローンを組んで住宅を取得する際に取得者の金利負担を軽減するため、一定額を所得税の額から控除されます。
控除額は、毎年度末の住宅ローンの残高か住宅取得対価の内、少ない方の金額の1%の額です。また年間の所得税額から控除しきれない場合は住民税からも控除されます。
但し上限もあり、令和3年現在の借入については控除される上限は50万円までとなっています。
2021年度税制改正により、住宅の取得等が特別特例取得又は特例特別特例取得に該当する場合は11年目以降も適用が受けられます。
※特別特例取得(注1)その住宅の取得等が特別特定取得(消費税10%に上がってからの取得のことです)に該当する場合で、当該住宅の取得等に係る契約が次の期間内に締結されているものをいいます。
・新築(注文住宅)の場合・・・令和2年10月1日から令和3年9月30日までの期間 ・分譲住宅、中古住宅の取得、増改築等の場合・・・令和2年12月1日から令和3年11月30日までの期間 |
※特例特別特例取得(注2)…特別特例取得に該当する場合で、床面積が40平方メートル以上50平方未満の住宅の取得等をいいます。
(注1)新型コロナ税特法6条の21、新型コロナ税特令4条の21
(注2)新型コロナ税特法6条の24、新型コロナ税特令4条の22
いずれの場合も控除期間のうち最初の10年間については年間の控除上限額は40万円(長期優良住宅などの場合は50万円)ですが、11~13年目については、控除限度額は次の①と②のうち少ない方となります。
①年末残高(上限5000万円)×1%
②住宅取得価格―消費税(上限5000万円)×2%÷3
期間だけでなく、適用要件の緩和も行われました。
これまでは住宅ローン控除の対象となる住宅は床面積が50平方メートル以上の住宅だけでした。
しかし2021年度税制改正より、消費税率10%の住宅を取得する人については、40平方メートル以上の住宅も控除の対象とされることになりました。
※当床面積要件緩和適用は、その年の合計所得金額が1000万円以下の方に限られます。
これまでは住宅ローン控除の適用対象外だった50平方メートル未満の、例えばコンパクトマンションなども対象となったことで住宅ローン控除の適用範囲が拡大したといえますね。
細かい条件は省略してご説明していますが、それでも以上のように条件分けが複雑です。
以下財務省の「住宅ローン減税制度の概要」です。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/063a.pdf
前述のように借入金残高の1%も税金が減るのですから大きいですよね。
でもよく考えると…最近は金融機関の金利引き下げ競争も激化しており、1%以下で貸して貰える住宅ローンも数多く耳にされませんか?
そうしますと「繰上返済する余裕はできたけど…住宅ローン控除のことを考えると利息を払ってでも返済しない方がトクかな!?」ということになります。
実質的にマイナス金利で住宅ローンを借りられることになってしまいました。
これが住宅ローン控除のいわゆる「逆ザヤ」問題です。
会計検査院とは国の予算が適正に使われているかどうかを監視している機関です。
ここが、平成30年度の決算結果報告にて、
「(1)住宅税制租税特別措置の適用状況 ア 住宅ローン控除特例の適用者の住宅ローンの借入金利の状況 住宅ローン控除特例の適用期間において住宅ローンの借入金利が住宅ローン控除特例の控除率である1を下回る場合には、住宅ローン控除額よりも課される所得税額の方が少ない場合等を除き、毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回ることになる。 また、住宅ローンの借入金利が低くなるほどその差額は大きくなる。 このため、住宅ローンの借入金利が住宅ローン控除特例の控除率である1%を下回る場合には、住宅ローンを組む必要がないのに住宅ローンを組む動機付けになったり、住宅ローン控除特例の適用期間が終了するまで住宅ローンの繰上返済をしない動機付けになったりすることがある。」 (会計検査院 「平成30年度決算報告の概要」(令和元年11月8日)p.383より引用) |
として懸念を示しています。
そこで自民党・公明党は「令和3年度税制改正大綱(抄録)」で、
「こうした会計検査院の指摘をふまえ、住宅ローン年末残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を令和4年度税制改正において見直す」(自由民主党、公明党 「令和3年度税制改正大綱」(令和2年12月10日)p.7より引用)と明記しています。
2022年度の税制改正にて控除額や控除率が引き下げられる可能性は高いと言えるでしょう。
以上のように引き下げがある前提で申し上げるならば、以下の期間内に住宅の契約を締結すべきと言えるでしょう。
契約時期:新築注文住宅=2021年9月30日、分譲住宅・既存住宅・増改築=2021年11月30日まで |
もっとも、飽くまで2022年税制改正に盛り込まれる可能性が高いという現状であり、さらに正に衆院選の公示がありましたが、総選挙の結果次第とも言えます。
確実に現行制度の適用を受けたい場合以外は、慎重にご検討いただくことをお勧めします。
住宅ローン控除を利用するためには、購入・入居した翌年に確定申告を行う事が必須となります。(会社員などの給与所得者は、2年目以降については「住宅ローン控除等申告書」と「住宅ローン年末残高証明書」を提出することで、年末調整で手続きを行うことができます。)
北島会計では、確定申告のご依頼もお受けしておりますので、確定申告でお困りの方は是非一度弊所へお問い合わせください。
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(更新日:2021年10月13日)
昨年に所得税(雑所得)が税制改正され、いよいよ来年2022年1月から適用されます。
雑所得とは何?と思われる方もいらっしゃると思いますが、表題に記載している『副収入』と言い換えればイメージが湧きやすいかと思います。 では改正の内容はどのような影響があるのでしょうか?
その答えは、『一定金額以上の収入があった人は手間が増加する』ことになります。詳細は後述いたします。
副収入といっても、本業の勤務先とは別の会社でアルバイトをして給与を得た場合や、ネットで安く購入して転売で稼いだ場合、暗号資産(仮想通貨)取引などを行った場合など、収入の形態は様々です。副業という言葉は税法上にはなく、所得の種類によって取り扱いや所得税などの計算方法は異なります。
サラリーマンの方は年末調整を受けていれば、確定申告をする必要はありません。
ですが、副業をしていて確定申告が必要なケース(注1)に当てはまると、本業の給与所得と副業で得た所得を合算して、確定申告をして改めて所得税の計算をし直すことになります。
副業のうち、アルバイトをして給与を得る場合は、正社員として働く場合と同様に給与所得となります。
不動産投資をして得た所得は不動産所得であり、所有していた不動産を売却して得た利益は譲渡所得です。
区分にとても悩むのが、副収入が雑所得か事業所得になるかの区別です。明確な基準が無い為です。
事業所得は、事業として営んだ結果得られた所得です。「継続した期間で安定した収入が得られる」、「儲かる可能性がある」、「相当な時間を費やしている」、「職業として認知されている」といったことが判断材料となります。
一方、雑所得とは、給与所得や事業所得、不動産所得など9種類の所得に、当てはまらないものをいいます。
例えば、サラリーマンの方がウーバーイーツを週末に行って収入を得ている場合は雑所得です。
雑所得も事業所得も、収入から必要経費を引いて計算できる点では同じです。
事業所得は、給与所得との「損益通算」が可能なため、副業で赤字が出た場合は、所得税などの税負担を抑えられる点が異なります。税務署では、副収入が雑所得と事業所得のいずれに該当するか、実情に合わせて判断しています。
損益通算できる事業所得にしたいお気持ちはわかりますが、上記事業所得の観点から言えば、サラリーマンの週末だけのウーバーイーツ収入を事業所得とするのは、「相当な時間を費やしている」という点を満たさないと考えられる為、税務署から指摘を受ける可能性があり、雑所得に該当するのでは、と修正させられることもあるかもしれません。
ですが、ウーバーイーツのみで生計を立て、継続して仕事に従事している場合は、事業所得として申告しても問題ないと考えます。
(注1)確定申告が必要なケース
・給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
・給与所得は本業のみ、副業で雑所得や事業所得などがある場合
サラリーマンなどの給与所得者で給与を得ているのが本業の1箇所の場合、副収入としての雑所得や事業所得などが20万円を超えていたら、確定申告の義務があります。
ただし、収入そのものではなく、経費を除いた所得で判断します。たとえば、ウーバーイーツで21万円を得ていたとしても、利用している自転車を配送途中で壊してしまい、修理で3万円支払った場合、所得は18万円ですので確定申告は不要です。
・本業のほかに副業として給与所得がある場合
サラリーマンやパートで働く主婦は、本業の勤務先では「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を出すことで、年末調整を受けています。副業が給与所得の場合でも、副業の勤務先では年末調整が受けられないため、副業の給与が20万円を超えると確定申告が必要です 。
※給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。 参照元: No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁 (nta.go.jp) |
ウーバーイーツはアルバイトではないの?と思う方もいらっしゃると思いますが、ウーバーイーツ配達員は個人事業主です。
そもそもウーバーイーツの配達業務は雇用契約でないため、給与所得ではありません。
配達収入は配達件数に応じた完全出来高制であり、個人事業主となります。そのため、ウーバーイーツ配達員は毎年、確定申告(事業所得or雑所得)をしなければならないのです。
本題に入ります。2022年分の確定申告から、雑所得の「収入金額」に応じて、以下の改正が適用されます。
前々年分(2022年ならば2020年)の収入が300万円を超える人は、事務作業がちょっと面倒になってしまいます。
(前々年の収入金額) | [改正の内容](いずれも雑所得に関するもの) |
---|---|
300万円以下 | 現金主義で所得計算してOKに |
300万円超 | 領収書などの書類保存が義務化 |
1,000万円超 | 領収書などの書類保存が義務化 収入と必要経費を記載した書類の添付が義務化 |
例えば、2020年中に雑所得の業務で得た収入が500万円なら、翌々年に当たる2022年分の確定申告において、領収書などの保管義務が生じます。
現金主義とは
実際にお金をやり取りした時点で、収入や必要経費をカウントするルールのことを「現金主義」といいます。お小遣い帳をイメージして下さい。
2020年分の収入金額(雑所得の業務で得たもの)が300万円以下なら、2022年分の雑所得は「現金主義」で計算できます。
事業所得の場合と違い、税務署に事前申請などをする必要はなく、確定申告書に「現金主義を選択します」と書くだけでOKです。
2020年分の収入金額(雑所得の業務で得たもの)が300万円を超える場合、以下の改正が適用されます。
改正後は、その業務に関する証憑書類(領収書や請求書など、2022年分の取引に関するもの)を、5年間は自宅などで保管しなくてはなりません。
(雑所得の根拠となる書類の保管義務など) | 改正前(~2021年分) | 改正後(202年分~) |
帳簿の作成・保存 | 不要 | 不要 |
書類の保存 | 不要 | 必要(起算日*から5年間) |
*「起算日」は、作成または受領した日の属する年の翌年3月15日(=法定申告期限)の翌日
なお、雑所得の業務で「2020年中に」作成・受領した書類については、上記で示した300万円の要件にかかわらず、保管義務はありません。2020年分の確定申告書において、雑所得の収入金額を正確に記入し、その控えを保管しておけば十分です。
No.1500 雑所得|国税庁 (nta.go.jp)
(雑所得 タックスアンサー参照)
雑所得の業務で得た2020年分の収入金額が1,000万円を超える場合は、さらに事務処理が面倒になります。2022年分において、証憑書類の5年保管に加え、確定申告時に「総収入金額および必要経費の内容を記載した書類」の添付義務が生じます。
2022年分以降の確定申告では、このように2年前の収入金額(雑所得の業務で得たもの)を参照し、1,000万円を超えていたら、収入と必要経費を記載した書類(事業所得の白色申告でいう「収支内訳書」)を添付する必要があります。
令和4年分(2022年分)以降、雑所得に関する確定申告のルールが変わります。
新たに3つのルールが加わりますが、いずれも「雑所得の業務による前々年分の収入金額」を参照します。
つまり、2022年分の申告においては、2020年分の収入が影響するわけです。この機会に来年に備えて、昨年の確定申告書を確認されることをお勧めいたします。
雑所得が300万円を経常的に超えている、事業として扱いたい、ゆくゆくは法人化を検討したいなど、何かお困りごとがございましたら、ぜひ北島会計へお問い合わせください。