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【2027年から大幅強化】不動産売却に影響する「ミニマム課税」とは 2026.8.5更新

高額な土地や建物の売却を予定している個人にとって、売却時期の判断がこれまで以上に重要になっています。

2025年分の所得税から、いわゆる「ミニマム課税」が始まったためです。

さらに、2026年度税制改正により、この制度は2027年分から大幅に強化されました。

同じ不動産を同じ金額で売却しても、2026年中に譲渡所得を計上するか、2027年に計上するかによって大きく異なります。例えば、長期譲渡所得が約3.37億円~10.33億円の範囲にある場合、2026年中の売却の方が税額を数千万円~1億円近く抑えられる可能性があるのです。

本稿では、特に影響が大きい一般の長期譲渡所得を中心に、売却年による税額差を具体的に確認します。
さらに、実際の制度では他の対象所得との合算により判定されるため、その点についても後半で説明いたします。

※本稿の税額は、本文記載の単純化した前提による概算です。実際の税額は、他の所得、所得控除、税額控除、特別控除、取得費、譲渡費用、端数処理その他の事情により異なります。
※本稿は執筆時(2026年7月15日)の情報を基に作成をしております。そのため、最新の情報とは異なる場合があることをご了承ください。

1.ミニマム課税は「所得が3億3,000万円を超えたら一律増税」ではない

「ミニマム課税」の正式名称は「特定の基準所得金額の課税の特例」であり、制度上は「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」と呼ばれています。租税特別措置法第41条の19に規定される制度です。

※「特定の基準所得金額の課税の特例」は、以下「ミニマム課税」と表記します。

制度の基本的な仕組みは2025年分と2026年分で共通しており、2027年分から控除額と基準税率が見直されます。

2025年分及び2026年分の制度は、次の算式によって判定します。

 追加される所得税額 =(基準所得金額-3億3,000万円)×22.5%-基準所得税額

ここでいう「基準所得金額」は、給与所得、事業所得、不動産所得に加え、土地建物や株式の譲渡所得等を合計した金額です。
上場株式等について確定申告不要制度を選択できる場合でも、その所得は原則として基準所得金額に含まれます。

一方、「基準所得税額」は、通常の方法で計算した所得税及び復興特別所得税等の合計額です。算式の結果がプラスになる場合に、そのプラス部分が追加の所得税として課されます。
したがって、基準所得金額が3億3,000万円を超えただけで直ちに追加課税が生じるわけではありません。通常の税額がすでに十分高ければ、ミニマム課税は発生しません。

この点は、不動産売却を検討する際に非常に重要です。
短期譲渡所得は所得税率が30%であるため、通常の所得税負担が比較的高く、ミニマム課税が発生しにくい傾向があります。

これに対し、一般の長期譲渡所得は所得税率が15%であるため、通常税率とミニマム課税の基準税率との差が大きく、追加課税が生じやすくなります。
土地建物の長期譲渡所得には、所得税15%、住民税5%が課され、所得税には復興特別所得税が付加されます。

2.2025年分・2026年分と2027年分の違い

制度の主要部分は、次のように変わります。

所得の年分

控除額

基準税率

所得税に対する付加税

2025年・2026年

3億3,000万円

22.5%

復興特別所得税2.1%

2027年以後

1億6,500万円

30%

復興特別所得税1.1%

+防衛特別所得税1%

2027年からは、基準所得金額から控除できる金額が3億3,000万円から1億6,500万円へ半減し、基準税率は22.5%から30%へ引き上げられます。

復興特別所得税は2.1%から1.1%へ下がりますが、新たに1%の防衛特別所得税が課されます。
そのため、通常の所得税に対する付加税率の合計は2.1%のままです。防衛特別所得税及び復興特別所得税の改正は、いずれも2027年分から適用されます。

したがって、一般の長期譲渡所得に対する通常の国税負担は、2026年までと2027年以後で大きく変わりません。
所得税15%に付加税2.1%を加えた実質税率は15.315%です。

2027年に税額が増える主因は、防衛特別所得税の創設そのものではなく、ミニマム課税の控除額半減と基準税率30%への引上げです。

3.不動産売却でミニマム課税が追加課税されるのは「いくらから」?

一般の長期譲渡所得だけがあり、他の所得、所得控除、税額控除等を考慮しない単純なモデルで考えます。
課税長期譲渡所得金額をAとすると、通常の所得税及び復興特別所得税等は、おおむね次の金額です。

 A×15%×1.021=A×15.315%

2025年分・2026年分では、次の金額が通常税額を上回ると、ミニマム課税が発生します。

 (A-3億3,000万円)×22.5%

両者が一致する水準を計算すると、Aは約10億3,340万円です。

つまり、長期譲渡所得だけの単純なケースでは、課税長期譲渡所得が3億3,000万円を超えただけでは追加課税されず、おおむね10億円を超えたあたりからミニマム課税が発生します。


上記に対し、2027年分では次の算式になります。

 (A-1億6,500万円)×30%

通常税額15.315%と一致する水準は、約3億3,708万円です。

2026年までは課税長期譲渡所得が約10億3,340万円を超えなければ追加課税されなかった単純モデルが、2027年からは約3億3,708万円を超えると追加課税の対象になり得ます。
対象となる所得水準が一気に引き下がることが分かります。

国税庁は現行制度について、「おおむね平均的な水準として30億円を超える高い所得」を対象とする旨を説明しています。ただし、これは所得の種類や通常税率を平均的に見た説明です。
所得税率15%の長期譲渡所得が中心であれば、実際の発動水準は30億円よりかなり低くなります。

4.具体例――課税長期譲渡所得が10億円の場合

取得費及び譲渡費用を控除した後の課税長期譲渡所得が10億円であるとします。居住用財産の3,000万円特別控除等は適用せず、他の所得もないものとします。

2026年分では、通常の所得税は1億5,000万円です。復興特別所得税315万円を加えた国税額は1億5,315万円となります。

一方、ミニマム課税の判定額は次のとおりです。

 (10億円-3億3,000万円)×22.5% = 1億5,075万円

この金額は、通常の所得税及び復興特別所得税1億5,315万円を下回ります。そのため、2026年分ではミニマム課税は発生せず、国税額は約1億5,315万円です。


同じ譲渡所得を2027年分として計上した場合、通常税額は同じく約1億5,315万円です。しかし、改正後の判定額は次のとおりです。

 (10億円-1億6,500万円)×30% = 2億5,050万円

通常税額との差額9,735万円が、追加所得税の計算基礎となります。
さらに、その追加後の所得税に復興特別所得税1.1%及び防衛特別所得税1%が課されるものとして概算すると、最終的な国税額は約2億5,254万円です。

本具体例の場合、2026年と2027年に売却した差は、約9,939万円です。

売却価格ではなく、取得費や譲渡費用等を控除した後の課税長期譲渡所得が10億円という前提ではありますが、売却年が1年違うだけで国税がほぼ1億円増える計算です。

5.譲渡所得別の税額比較

先同じ前提で概算すると、国税額は次のようになります。住民税5%は含めていません。

課税長期譲渡所得

2025年・2026年

2027年

2027年の増加額

3億5,000万円

約5,360万円

約5,554万円

約194万円

5億円

約7,658万円

約1億100万円

約2,443万円

10億円

約1億5,315万円

約2億5,254万円

約9,939万円

20億円

約3億7,721万円

約5億5,563万円

約1億7,842万円

単純モデル上、課税長期譲渡所得が約3億3,708万円から約10億3,340万円までの範囲では、2026年分ではミニマム課税が発生しない一方、2027年分では発生します。
この範囲は、2026年中の売却を特に検討すべきゾーンです

課税長期譲渡所得が約10億3,340万円を超える場合は、2026年分でもミニマム課税が発生します。
しかし、2027年分では控除額が半減し、基準税率も30%へ上がるため、通常は2026年分の方が税額を抑えられます。

6.2026年中に不動産を売却した方が良い人はどんな人?

①取得費が小さい又は不明なケース

先祖代々の土地、取得時期が古い土地、取得資料を紛失した土地等、取得費が小さい又は不明なケースです。

取得費が不明な場合、譲渡価額の5%を概算取得費とすることができます。
しかし、売却額の大部分が譲渡所得となりやすいため、ミニマム課税の影響が大きくなります。

②相続した不動産を売却するケース

相続した土地建物の取得費と取得時期は、原則として被相続人のものを引き継ぎます。
被相続人が数十年前に低額で取得した土地は、現在の時価との差が大きく、相続人が売却すると高額の長期譲渡所得が生じることがあります。

相続税の取得費加算の特例を利用できる場合は、その適用後の譲渡所得で比較する必要があります。

③課税長期譲渡所得が3億円台後半以上になるケース

大規模な一棟収益物件、事業用地、駐車場、農地、借地権等を売却し、課税長期譲渡所得が3億円台後半以上になるケースです。

ここで注意すべきなのは、「売却代金が3億円台」という意味ではないことです。
ミニマム課税の判定対象は、原則として売却代金から取得費、譲渡費用及び適用可能な特別控除を差し引いた後の所得金額です。建物については、取得価額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて取得費を計算します。

④別の大きな所得があるケース

その年に株式売却益、配当所得、事業所得等、別の大きな所得があるケースです。

基準所得金額は、不動産の譲渡所得だけで判定するのではなく、対象となる各種所得を合計します。
不動産単体の譲渡所得が3億円に届かなくても、株式売却益等を合算すると2027年の基準を超える場合があります。

7.「2026年中に売却」の判定は契約日だけでは決まらない

不動産の譲渡所得をどの年分に計上するかは、原則として資産を買主に引き渡した日によります。

ただし、納税者の選択により、売買契約の効力発生日、一般には契約締結日を譲渡の日として申告することも認められています。

したがって、2026年12月に契約し、決済と引渡しが2027年になる場合でも、契約の効力が2026年中に発生していれば、契約日基準により2026年分の譲渡所得として申告できる可能性があります。

ただし、停止条件、解除条件、農地法上の許可、開発許可、買主の融資条件等が付されている場合は、契約の効力発生日を慎重に確認しなければなりません。

税負担だけを理由に形式的な契約日を作ったり、実態のない分割譲渡を行ったりすることは避けるべきです。
確実性を重視するのであれば、2026年12月31日までに、契約、代金決済、所有権移転に必要な書類の交付及び物件の引渡しまで完了させることが望ましいでしょう。

8.売却前に行うべき試算

ミニマム課税の影響を判断するには、売却価格だけを見てはいけません

取得費、建物の減価償却費相当額、仲介手数料、測量費、立退料、解体費、印紙代、各種特別控除、相続税の取得費加算、他の所得、株式等の申告不要所得、外国税額控除等を反映し、その年全体の基準所得金額と基準所得税額を計算する必要があります。

特に2026年中の売却を検討すべきなのは、課税長期譲渡所得と他の対象所得の合計が約3億3,708万円以上となる見込みで、2027年まで売却を延期する積極的な経済合理性が乏しいケースです。

課税長期譲渡所得が5億円、10億円と大きくなるほど、2026年と2027年の税額差は急速に拡大します。

もっとも、売却時期は税金だけで決めるものではありません。2027年まで待つことで売却価格が上昇する見込みがある場合、賃料収入を継続して得られる場合、買換えや相続対策との関係がある場合には、税額差と経済的利益を比較する必要があります。

そのため、高額不動産の売却を検討している場合は、「いつ売るか」を判断する前に、2026年中に売却した場合と2027年に売却した場合の税額を比較し、手取額への影響を把握しておくことが重要です。

2026年は、単なる「売り時」の問題ではなく、税制上の大きな分岐点となる可能性があります。
売却後に税額を知っても売却年を変更することはできないため、契約前の段階で十分なシミュレーションを行うことをお勧めします

9.おわりに

高額な不動産の売却は、売却価格だけでなく、取得費、譲渡費用、所有期間、各種特例、他の所得の状況、そして売却する年によって、最終的な手取額が大きく変わります。

特に、ミニマム課税は2025年分から導入され、2027年分から控除額の縮小と基準税率の引上げが予定されているため、多額の長期譲渡所得が見込まれる方にとって、2026年中に譲渡するか、2027年以後に譲渡するかは重要な検討事項となります

もっとも、「2026年中に売れば必ず有利になる」というものではありません。
不動産価格の見通し、賃料収入、買主との交渉状況、相続や買換えの予定、契約日と引渡日の関係なども含め、税負担と経済的利益を総合的に比較する必要があります。
また、取得費が不明な場合や、相続した不動産、居住用部分と賃貸部分が混在する物件などは、計算が特に複雑になります。

特に、ミニマム課税は不動産の譲渡所得だけでなく、その年の他の対象所得も含めて判定されるため、実際の税額は個々の状況によって大きく異なります。
ご自身で概算することが難しいケースも少なくありません。

売却後に税額を知っても、売却年や契約条件をさかのぼって変更することはできません
高額な不動産の売却を検討されている場合は、売買契約を締結する前に、2026年中に売却した場合と2027年以後に売却した場合の税額を具体的に試算し、手取額を比較することが重要です。

当事務所では、不動産売却に伴う譲渡所得の試算はもちろん、ミニマム課税の影響や各種特例、他の所得を含めた税負担のシミュレーションも承っております

不動産の売却をご検討中の方は、契約を締結される前に、お気軽にご相談ください。

参考資料・出典

・ 国税庁「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」

・ 財務省「令和8年度税制改正の概要」関連資料

・ 国税庁「特定の基準所得金額の課税の特例に係る税額計算書」

・ 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」

・ 財務省「令和8年度税制改正の大綱」防衛特別所得税・復興特別所得税関係

・ 国税庁 タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」

・ 国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得時期」

・ 国税庁 タックスアンサー No.3261「建物の取得費の計算」

・ 国税庁 タックスアンサー No.3102「譲渡所得の収入金額と収入すべき時期」

監修者情報:税理士法人北島綜合会計事務所


当事務所は昭和45年に開業以来、お客様の立場で会計・税務・労務・経営全般に関する企業の総合的アドバイザーを目指し、お客様の繁栄に寄与することを理念として精進してきました。

企業をとりまく経済環境は大きく変化し続けており、その変化に対応しお客様の多様なニーズに応えるように常に研鑚し、事務所職員一丸となってサービスを提供してまいります。

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