こちらでは相続、贈与以外に関する税務関係のお役立ちコラムを掲載していきます。
■退職所得課税の適正化
退職所得課税については、2021年3月4日掲載分「退職金と確定申告」に掲載しましたが、令和3年度税制改正により「退職所得課税の適正化」が令和4年分以後の所得税に適用されることとなったので追加で説明させていただきます。
■令和3年度税制改正
令和3年度税制改正「退職所得課税の適正化」により令和4年分以後の所得税から、勤続年数5年以下の「従業員」に対する退職手当等について、1/2課税が適用できなくなります。
1/2課税とは、退職金の総支給額から退職所得控除額を差し引き、差し引いた額に1/2を掛け、課税退職所得金額を出すことをいいます。
もともと勤続年数5年以下の「役員」については、1/2課税が適用できなくなっていましたが、令和3年度税制改正により勤続年数5年以下の「従業員」に対しても、1/2課税の適用を制限することとなりました。
■改正内容
勤続年数が5年以下の「従業員」への勤続年数に応じた退職手当(短期退職手当等)に係る退職所得の金額の計算で、短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分については、1/2課税を適用しないこととなりました。
従業員 |
役員等 |
||
勤続年数 |
退職所得控除額を控除した残額 | - |
|
300万円以下の金額 | 300万円を超える金額 | ||
5年超 | 1/2課税適用あり | 1/2課税適用なし | |
5年以下 |
1/2課税適用あり | 1/2課税適用なし | 1/2課税適用あり |
例)
勤続年数※5年
退職金額1,000万円
※勤続年数とは、原則として退職手当等の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間の年数(勤続年数に1年に満たない端数があるときは1年に切り上げます)
【現行(2021年5月現在)】
退職所得=(1,000万円 - 200万円)× 1/2 =400万円
所得税額=(400万円 × 20% - 42.75万円)× 1.021 = 380,322円
【改正後】
退職所得控除額控除後 =(1,000万円 - 200万円)= 800万円
300万円超 = 800万円 - 300万円 = 500万円
300万円以内 =(300万円 × 1/2)= 150万円
退職所得 = 150万円 + 500万円 = 650万円
所得税額=(650万円 × 20% - 42.75万円)× 1.021 = 890,822円
■まとめ
上記の例をとっても所得税だけで510,500円の差があります。退職所得には所得税以外にも住民税でも差が出てきます。令和4年分以後の所得税から課せられますが、現行通りと改正後では金額が大きく変わってしまう場合がありますので、勤続年数をしっかりと確認し、正しい税額を計算しましょう。
税務のことでわからないことは、お気軽に戸田和民税理士事務所までご相談ください。
■住宅ローン控除
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、その年の末日の住宅ローン残高又は住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%が、その年の確定申告をすることにより、次年度から年末調整時をすることで13年間※1に渡り所得税の額から控除される制度のことです。また、所得税からは控除しきれない場合には、住民税からも一部控除することができるという、住宅ローンを組んでいる方にはうれしい制度です。
※1 11~13年は年末借入金残高×1%もしくは、住宅の税抜の購入価額×2%÷3のいずれか少ない金額が控除されます。
■適用要件
令和4年1月1日以後に所得税の確定申告を提出する場合については、下記の内容が共通要件となります。
共通要件 | チェック項目 |
① 10年以上に渡って分割して返済する借入又は債務がある | □ |
② 消費税は10%が適用されている | □ |
③ 新築又は取得の日から6か月以内に居住し、控除の適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいる | □ |
④ 住宅ローン控除を受ける年分の合計所得金額が3,000万円以下である | □ |
⑤ 住宅の床面積が50㎡以上であること(合計所得金額1000万円以下の場合は面積基準が40㎡以上と緩和されます) | □ |
⑥ 住宅の床面積(登記面積)の1/2以上を自身の居住用として住んでいる | □ |
⑦ 平成30年分から令和5年分のいずれかの年分で「居住用財産の譲渡所得の課税の特例」などの特例を受けていない、もしくは受ける予定がない | □ |
※中古住宅や認定住宅、敷地も取得した場合には、上記に加え他にも要件があります。詳しくはご利用の住宅会社や不動産会社へお問い合わせください。
■控除額
控除期間 | 控除額(控除限度額)※2 |
①1~10年目 | 年末借入金残高(4,000万円を限度)×1%(40万円※3) |
②11~13年目 | 住宅の税抜の購入価額(4,000万円を限度)×2%÷3 と上記①のいずれか少ない金額(40万円※3) |
※2 認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除の特例の場合住宅借入金等の年末残高限度額が5,000万円、控除限度額が50万円に変わります。
※3 住宅の取得等が特定取得以外の場合は20万円
■申請
住宅ローン減税は、入居したその年の収入についての確定申告を行う際に、税務署に必要書類を提出しなくてはいけません。給与所得者の場合、2年目からは勤め先にローンの残高証明書を提出し、年末調整で控除を受けることができます。
申請に必要な書類は新築や中古等によって異なるので、今回は共通で必要になるだろう書類のみを紹介します。詳しい必要書類はご利用の不動産、住宅会社等にお問い合わせください。
書類名 | チェック項目 |
① 登記事項証明書 | □ |
② 請負(売買)契約書(写) | □ |
③ 借入金の年末残高等証明書 | □ |
④ 住民票(写) | □ |
【】内が該当する場合必要 | |
⑤ 【給与所得者の場合】その年分の給与所得の源泉徴収票 | □ |
⑥ 【住民票に異動がない場合】入居年月日を明らかにする書類 | □ |
⑦ 【補助金等を受ける場合】補助金等の名称や金額を明らかにする書類 | □ |
⑧ 【住宅取得資金に係る贈与を受けた場合】贈与の特例を受けた額を明らかにする書類 | □ |
■申請までの流れ
申請までの大まかな流れは、住宅取得→入居(6カ月以内)→添付書類の用意→入居翌年の確定申告で申請となります。
時期によっては集められる書類を先に集めておく必要もあるかもしれません。
あらかじめ住宅の購入などを担当してくれている担当者へ話を通しておきましょう。
■まとめ
住宅ローン控除を活用すれば、ローンの支払いの負担は大きく軽減されます。
他にも贈与税の非課税など、いろいろな特例措置があります。
ただ確定申告など普段会社で年末調整を行っている人には難しいことも多いと思います。
税務のことでわからないことはお気軽に当事務所までお問い合わせください。
■価格表示
令和3年3月31に総額表示義務の特例期間が終わり、4月1日から原則として「総額表示」が義務となりました。
4月に入りましたが、まだ対応できていないという事業者の方もいるかもしれません。どういった表示が求められているのか紹介したいと思います。
■総額表示
「総額表示」とは、商品の販売やサービスの提供を行うお店側が値札やチラシ、カタログ等の取引価格を消費税を含めた価格で表示することをいいます。
消費者が商品を購入する際の誤認防止のための措置です。
■正しい表記方法
総額表示の義務により、令和3年4月1日以降の商品の値札やチラシ等には支払総額を記載する必要があります。
総額表示の正しい表記方法を確認しておきましょう。
例)本体価格1,000円+消費税100円の場合
図1
令和3年3月31日までの特例措置 | 令和3年4月1日からの総額表示 |
✖ 1,000円(本体価格) | ◎ 1,100円 |
✖ 1,000円(税別価格) | ◎ 1,100円(税込) |
✖ 1,000円+消費税 | ◎ 1,100円(本体価格1,000円) |
✖ 1,000円(表示価格は税別) | ◎ 1,100円(うち消費税等100円) |
令和3年4月1日からの総額表示は支払金額である「消費税を含む価格」を一目でわかるようにしなくてはいけません。
図2
消費税転嫁対策特別措置法により、図2の左側のような表示が3月31日までは認められていましたが、4月1日からは図2の右側のような表示が必要になります。
図2右側の一番下の例のように税抜価格を表示してあっても税込価格が明瞭に表示されていれば問題はありません。ただし、明瞭に表示してあることが前提です。
図3
明瞭に表示されているかは、以下の3点の要素が総合的に勘案されるそうです。
(1) 税込価格表示の文字の大きさ
(2) 文字間余白、行間余白
(3) 背景の色との対照性
図3のように文字の大きさや行間余白、背景の色など消費者に誤解されることの内容に表示する必要があります。
■まとめ
現行は総額表示義務を怠ったとしても罰則があるわけではありません。ですが、原則総額表示になっている中、消費者に誤解されるような表示を続けていれば、必ずクレームや批判につながります。
まだ総額表示に変更できていない方はなるべく早く変更することを検討してみてはいかがでしょう。
税務でわからないことは、お気軽に戸田和民税理士事務所までご相談ください。
■退職金と確定申告
退職金を受け取った年の確定申告についてどうしたらいいかわからないという方もいるでしょう。
退職金を受け取った際、原則確定申告は不要といわれています。
何故不要なのか?、確定申告が必要な場合はどんな時なのか?を説明したいと思います。
■退職金にかかる税金
原則※1として、退職金の支払を受けるとき、所得税及び復興特別所得税、住民税は源泉徴収又は特別徴収されます。
長年の勤労に対する報償的給与の退職金には、退職所得控除や、他の所得と分離して課税など税負担が軽くなるよう配慮されています。
※1 死亡により支払われる退職手当等に対しては相続税法の規定により、相続税の課税対象となりますので、所得税・復興特別所得税・市民税・県民税は課税されません。
■退職金を受け取った時
退職金を受け取った時、原則確定申告がいらないというのは「退職所得の受給に関する申告書」というものがあるからです。
退職金等の受取りの際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、退職金を支払ってくれる会社側が所得税額及び復興特別所得税額を計算し、その退職手当等の支払の際、退職所得の金額に応じた所得税及び復興特別所得税の額を源泉徴収してくれるため、原則として受取る側の確定申告の必要がなくなります。
一方「退職所得の受給に関する申告書」の提出がなかった人については、退職金等の支払金額の20.42%の所得税額及び復興特別所得税額が源泉徴収されますが、退職金を受け取る本人が確定申告を行うことにより所得税額及び復興特別所得税額の精算をします。
■所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法
所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法は下記のようになります。
①(退職所得金額 ― 退職所得控除)× 1/2 = 課税退職所得金額
源泉徴収されていない退職金から退職所得控除を差し引きます。差し引いた額に1/2を掛け、課税退職所得金額を出します。
退職所得控除は表1を参考にしてください。
※役員としての勤続年数が5年以下である者が支払いを受ける退職手当等を特定役員退職金手当等いいます。この場合は、「退職所得の金額 ー 退職所得控除」が課税退職所得金額となり、退職所得控除後の残額を1/2する措置は適用されません。(令和2年3月現在)
※令和3年度の税制改正で退職所得の改正があります。改正内容は以下の通りです。
令和4年以降の退職所得の計算からその年中の退職所得等のうち、退職手当金等の支払者の下での勤続年数が5年以下である者が当該退職手当金等の支払者から当該勤続年数に対応するものとして支払いを受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないもの(以下「短期退職手当等」という)に係る退職所の計算につき、短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分については、退職所得の金額の計算上1/2とする措置を適用しないこととする。(令和4年以降の話になりますので、令和3年分の退職所得の計算には関係はありません。)
表1
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数ー20年) |
※退職金手当等の支払いを受ける人が在職中に障害者に該当することをきっかけに退職した場合、上記退職所得控除額に100万円を加算した金額が控除されます。
例)勤続年数が29年2ヶ月で、在職中のケガにより障害者に該当後退職した場合
{800万円+70万円×(30-20)}+ 100万円 = 1,600万円
※29年2ヶ月の端数の2ヶ月は1年に切り上げします
②課税退職所得金額(A) × 所得税の税率(B) - 控除額(C) = 所得税額(基準所得税額)
所得税の税率や控除額は表2を参考にしてください。
表2
課税退職所得金額(A) | 税率(B) | 控除額(C) |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
例)課税退職所得金額が2,000,000円の場合
③基準所得税額 × 2.1% ― 所得税額 = 所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額
例)所得税額(基準所得税額)が50万円の場合、(50万円×2.1%)+50万円=510,500
■計算方法の具体例
勤続年数40年の社員が3,600万円受け取った場合
①(3,600万円 - 2,200万円)× 1/2 = 700万円※2
※退職所得控除800万円+70万円×(40-20)= 2,200万円
②700万円 × 23% - 63万6,000円 = 97万4,000円
③(97万4,000円 × 2.1%)+ 97万4,000円 = 99万4,454円※3
所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額は、99万4,454円※4となる。
※2 1,000円未満の端数切捨て
※3 1円未満の端数切捨て
※4 この他に住民税もかかります。
■まとめ
先に記述しましたが、「退職所得の受給に関する申告書」を提出されている方は原則確定申告は必要はありません。
しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出されていない方は確定申告が必要になります。
確定申告書を提出しない場合の一律20.42%での課税は、申告書を提出した場合と比べるととても高いです。先ほどの3,600万円の例でいうと735万1,200円になります。あまりにも額が違うので注意しましよう。
さきほど「退職所得の受給に関する申告書」を提出されている方は原則確定申告に必要はありませんといいましたが、会社を年度途中で退職した場合や副業で赤字がある場合などは確定申告を検討したほうが有利の場合もあります。
確定申告のことでわからないことは、お気軽に戸田和民税理士事務所までご相談ください。
■確定申告とは
今回は確定申告による損失の繰越しについてまとめてみました。
既に掲載済みのコラムにも書かせていただきましたが、確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の『申告納税』または『還付申請』をする手続きの事です。
■損失申告
本来赤字ならば確定申告をする必要はないのですが、青色申告、白色申告※1をしている場合、「損失申告」をすることで、翌年以降最長3年間にわたって赤字を繰り越すことができます。
もちろん誰でもできるというものではありませんが、赤字を繰り越せれば、翌年度以降3年以内で黒字となった年度について、過去の赤字分を限度に控除することができます。控除した分で税金を減らすことが可能になります。
※1 白色申告の場合、繰り越しできる損失に制限があります。
■条件
以下の条件の方は、申告書B(第一表、第二表)と申告書第四表(損失申告用)を提出し、かつその後連続して確定申告を提出すれば、損失の繰越しをすることができます。
□前年分の所得金額が赤字
事業所得や不動産所得、譲渡所得、山林所得の赤字※2がある方で、その赤字を他の黒字※3の所得から控除しきれない方
※2 分離課税の土地建物等に係る譲渡所得の赤字、分離課税の上場株式等の譲渡所得の赤字や分離課税の先物取引の雑所得等の赤字などの一定の赤字を除きます
※3 分離課税の土地建物等に係る譲渡所得の黒字、分離課税の上場株式等の譲渡所得の黒字や分離課税の先物取引の雑所得等の黒字は他の黒字の所得に含まれません。
□繰越損失額を前年分の所得から控除しきれない
前々年までに控除しきれなった繰越損失額(以下(1)~(5))がある方で、その繰越損失額を前年分の所得金額から控除しきれない方
(1) 雑損失の金額
(2) 青色申告をしていた年の純損失の金額
(3) 白色申告をしていた年の純損失の金額のうち、変動所得と被災事業用資産※4の損失の金額
(4) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の金額、または特定居住用財産の譲渡損失の金額
(5) 上場株式等に係る譲渡損失の金額、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の金額又は、先物取引の差金等決済に係る損失の金額
※ (2)~(4)までの金額は、分離課税の土地建物等に係る譲渡所得などの黒字からは控除できないのでご注意ください。詳しくは税理士までお問い合わせください。
※4 被災事業用資産の損失とは、店舗や商品の棚卸資産等の山林の災害による損失(災害に関するやむを得ない支出を含む)のことをいいます。
■まとめ
損失を繰り越して控除できるというのは、人によってはとても助かると思います。
しかし、青白申告や白色申告等の条件もあります。
条件に当てはまり、損失額が多く、次の年からの繰越額が多いようなら専門家に頼んでみるのもありだと思います。
今回の紹介は軽く内容を紹介しているだけなので、わからないことも多いと思います。
わからないことは、お気軽に戸田和民税理士事務所までご相談ください。
■青色申告特別控除額・基礎控除額が変わる
2018年の税制改正により以下の2点が変わりました。
(1) 個人の方の所得税について
青色申告特別控除額 改正前:65 万円 ⇒ 改正後:55 万円
基礎控除額 改正前:38 万円 ⇒ 改正後:48 万円
(2) 「(改正後)55 万円の青色申告特別控除」の適用要件に加えて下記のイ)、ロ)いずれかに該当すると引き続き 65 万円の青色申告特別控除が受けられます。
イ) e-Tax による申告(電子申告)
ロ) 電子帳簿保存
【改正前】
控除額 | 適用要件 |
10万円 | 簡易簿記 |
65万円 | ①正規の簿記の原則で記帳(複式簿記) ②申告書に貸借対照表と損益計算書などを添付 ③期限内申告 |
【改正後】
控除額 | 適用要件 |
10万円 | 簡易簿記 |
55万円 | 従来の要件①~③ |
65万円 | 従来の要件①~③に加えて下記のいずれかに該当していること イ) e-Tax による申告(電子申告) ロ) 電子帳簿保存 |
従来の適用要件のままの申告は、基礎控除額が10万円増加し、青色申告特別控除額が10万円減額されたので、2つの控除額の合計は103万円のまま変わりありません。
しかし、改正(2)の適用要件を加えることで従来の控除額より10万円アップします。
■e-Tax による申告(電子申告)とは
e-Taxの正式名称は「国税電子申告・納税システム」といいます。
ネット環境が必要ですが、e-Tax による申告とは、本来なら税務署に行って行わなければならない申告や納税などを自宅やオフィスで済ませることが出来るシステムです。
e-Taxを利用するには事前準備が必要になります。
電子申告の手順は、e-Taxホームページに詳しく掲載してありますので、今回は個人の方の場合の手順を軽く紹介させていただきます。
個人の方の電子申告の手順は、下記の1)~5)となります。
その中で1)~3)は事前に準備が必要になりますので余裕を持って準備しましょう。
1) 利用者識別番号を取得する
2) 電子証明書の取得
3) 手続きを行うデバイス(パソコンやスマートフォン等)やソフト(確定申告書等作成コーナーやe-Taxソフト等)を選ぶ
4) 申告・申請データを作成・送信する
5) 送信結果を確認する
1)の利用者識別番号を取得するにはネット環境やデバイスなどを準備しておかなくてはいけないのでしっかり確認しておきましょう。
利用者識別番号は、1回取得すればその後もずっと使えます。無くしたりしないよう管理してください。
他にも電子証明書の取得のためにマイナンバーカードを必要とされる方は、マイナンバーカードの準備が必要になったり、パソコン等のデバイスが必要になる方もいると思います。
マイナンバーカードは交付申請から市区町村が交付通知書※1を発送するまで、概ね1か月間※2必要になります。パソコン等もすぐに準備できないという方が多いと思います。
申告期限に間に合うよう準備をしてください。
※1 交付通知書は市区町村がマイナンバーカードの交付の準備ができた旨をお知らせする通知書です。
※2 交付申請書等に不備がある場合を除きます。
■電子帳簿保存とは
改正後の 65 万円の青色申告特別控除を受けるために必要な要件の一つで、一定の要件の下で帳簿を電子データのままで保存できる制度です。
改正後の 65 万円の青色申告特別控除を受けるには、従来の要件に加えe-Taxによる電子申告もしくは電子帳簿保存が必要になります。
この制度の適用を受けるには、帳簿は備付けを開始する日の3か月前の日、書類は保存を開始する日の3か月前の日までに申請書を税務署に提出する必要がありますので、申請期限には気をつけましょう。
※ 原則として課税期間の途中から適用することはできません。
※令和2年分に限っては、令和2年 9 月 30 日までに承認申請書を提出し、同年中に承認を受けて、同年 12 月 31 日までの間に、仕訳帳及び総勘定元帳の電磁的記録による備付け及び保存を行うことで、65 万円の青色申告特別控除を受けることができます。
■まとめ
控除額が10万円増えることはメリットが大きいと思います。
今までも青色申告(複合仕訳)で申告されていた方は、電子申告又は電子帳簿保存にすることで大きなメリットを受けることができますし、今までやってこなかった方もやってみる価値はあると思います。
一度、国税庁のホームページで申告の仕方や、要件・概要等を確認してみるのもいいと思います。
電子申告や電子帳簿保存、複合仕訳等でわからないこと、自分ではできそうにないという方がいらっしゃいましたら当事務所では電子申告・電子帳簿保存にも対応しておりますので、お気軽お声かけください。
■保険金の税金
生命保険金は、満期で受け取るのか、死亡により受け取るのか、誰が保険料を支払っていたのかで税金の種類が異なっていきます。
例えば、
①被保険者が夫、受取理由が満期・解約、 保険料の負担者が夫、保険金の受取人が夫の場合
②被保険者・受取理由・保険料の負担者は①と同じ条件、保険金の受取人が妻の場合
①の課税関係は、保険金を一度に受け取った場合、夫の一時所得になりますが、分割して受け取った場合は公的年金以外の雑所得となります。
②は受取人が妻にかわるだけで妻への贈与税の課税となります。
このように税金の種類は様々な条件で異なりますので注意が必要です。
今回は一時所得として満期返戻金を一度に受けた場合の税金についてまとめます。
■一時所得
一時所得とは、一時的な所得であり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、資産の売却や働いたことによって得た所得ではない所得をいいます。
この所得には、次のようなものがあります。
1) 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
2) 競馬や競輪の払戻金(馬券の購入を事業にしている場合や、馬主が競走馬を保有することによって得た所得は除きます。)
3) 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
4) 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。)
5) 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等 etc・・・
一時所得は、給与所得や事業所得などの他の所得と合算して確定申告を行なう必要があります。
■確定申告
上記でも記載した通り、基本一時所得がある場合は確定申告を行う必要があります。
保険金を受け取った場合、保険会社から支払調書が発行されます。
支払調書は、一時所得として確定申告が必要か不要か判断したり、確定申告をする際に必要になる書類です。発行された支払調書は、無くさないように管理しましょう。
一時所得の計算は、
③総収入金額 ― 収入を得るために支出した金額※1 ― 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額
※1 その収入を生じた行為をするため、又は、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限ります。
④一時所得の金額 × 1/2
③の計算時点で一時所得の金額が0円、又はマイナスになった方は、一時所得がないということになりますので、一時所得に関しては確定申告の必要はありません。
給与所得者で、給与所得又は退職所得の金額以外の所得金額が④の計算後、20万円を超える金額になった方は、確定申告の必要がありますが20万円以下の場合は一時所得に関しては確定申告の必要はありません。
■まとめ
満期保険金が入った際は支払調書を確認し、満期保険金の受取額が掛け金総額を下回った場合や、20万円以下の場合は確定申告の手続きは不要となります。ただし、公的年金の雑所得や他の所得がある方は取り扱いがことなりますので、注意してください。
ほとんど場合、満期保険金額は特別控除額を差し引いた時点で0円又はマイナスになるそうですが、支払調書が届いた際は注意して確認しましょう。
税務でわからないことは、お気軽に戸田和民税理士事務所までご相談ください。
■令和2年分 年末調整の改正点
今年も年末調整の時期になりました。昨年とは変更された点がいくつかあります。
変更点は下記の4点です。
①給与所得控除に関する改正
②基礎控除及び所得金額調整控除に関する改正
③各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正
④ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除に関する改正
①給与所得控除に関する改正
給与所得控除額は次の表のとおりに改正されました。
②基礎控除及び所得金額調整控除に関する改正
(a) 基礎控除の改正
基礎控除額が次の表のとおりに改正されました。
合計所得金額が2,500万円を超える所得者については、基礎控除の適用をうけることができません。
(b) 子ども・特別障害者等を有するもの等の所得金額調整控除の創設
給与等の収入金額が850万円超で、下記の要件のいずれかに該当する場合受けられる控除が創設されました。
i. 納税者本人が特別障害者
ii.同一生計配偶者が特別障害者
iii.扶養親族が特別障害者
iv.扶養親族が年齢23歳未満(平成10年1月2日以後生まれ)
控除額の計算は
(給与等の収入金額※1 - 850万円)× 10% = 控除額
※1 給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円
(C) 「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」の新設
上記の(a)、(b)の改正に伴い、控除の適用を受けようとする場合、新しい様式になった申告書を提出する必要があります。
給与所得控除額は次の表のとおりに改正されました。
(d) 源泉徴収簿の様式の変更
令和2年分の源泉徴収簿から新たに「所得金額調整控除額⑩」欄、「給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)⑪」欄及び「基礎控除額⑲」欄が追加されました。
更に「扶養控除額、基礎控除額及び障害者等の控除額の合計額⑯」欄が「扶養控除額及び障害者等の控除額の合計額⑱」欄に変わりました。
③各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正
次の表のとおりに改正されました。
④ひとり親控除及び寡婦(寡夫)に関する改正
(e) 未婚のひとり親に対する税制上の措置
下記の要件を満たすひとり親の場合、「ひとり親控除」(控除額35万円)が適用されます。
イ)生計を一にする子※2がいる
ロ)合計所得金額が500万円以下
ハ)事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと
※2 生計を一にする子とは、他の人の同一生計配偶者又は扶養親族とされている人以外で、その年の総所得金額等が48万円以下
の子をいいます。
(f) 寡婦(寡夫)控除の見直し
次の見直しを行った上で、ひとり親に該当しない寡婦(寡夫)には、引き続き「寡婦(寡夫)控除」が適用されます。
改正前に存在した「特別の寡婦(寡夫)」に該当する場合の寡婦(寡夫)控除の特例は廃止されました。
ニ)扶養親族を有する寡婦(寡夫)について上記(e)ロの要件が追加されました
ホ)上記(e)ハの要件が追加されました。
以下の表で該当する方は令和2年分の年末調整の際にその異動内容について申告する必要があります。ただし、令和元年中に配布された「令和2年分扶養控除等申告書」には、ひとり親の記載がないため、「特別の寡婦」欄を訂正するなど記載例①を参考にして申告してください。
会社の経理担当者は令和2年分の源泉徴収簿にも「ひとり親」の該当記載があるので忘れずに訂正してください。(記載例②参照)
★の部分が「ひとり親控除」 ◎の部分が「寡婦(寡夫)控除」
【記載例①】
【記載例②】
■まとめ
今回の改正で給与所得控除が引き下げられていますが、基礎控除の引き上げが同時に行われているので、年収850万円以下の方の税負担には影響はありません。
ただ、新たに新設された内容も含めて変わった点も多いので、経理担当者の方は早めの確認と早めの告知をしておくといいと思います。
所得者の方も自分に該当する控除がないかこの機会にしっかりと把握してみてはいかがでしょう。
税務署は、税額が少なく計算されている等の場合は指摘してきますが、もっと控除できる等の情報に関しては指摘してはくれません。
自分が払うことになる税金にもっと興味や関心をもって今年の年末調整をすすめてみてはいかがでしょう。
税務のことでわからないことは、お気軽に戸田和民税理士事務所までご相談ください。
■住宅用地に係る固定資産税の課税標準の特例
宅地には「住宅用地」と「非住宅用地」があります。「住宅用地」は戸建てやアパートなどの敷地をさします。一般的な家の敷地はこの住宅用地にあたります。
「非住宅用地」は、店舗や空き地など住宅とは違う用途に使う敷地をさします。
住宅用地特例とは、「住宅用地」について、固定資産税や都市計画税を軽減する措置のことです。
住宅用地の面積 | 固定資産税課税標準額 | 都市計画税課税標準額 |
空き地(更地で建物もない状態) | 特例なし | 特例なし |
1戸につき200㎡以下の住居用地部分 (小規模住宅用地) | 評価額 × 1/6 | 評価額 × 1/3 |
1戸につき200㎡を超える住居用地部分 (一般住宅用地) | 評価額× 1/3 | 評価額× 2/3 |
■特例を受ける条件
基本的には建物が建っている住宅用地については、その税負担を軽くするため特例が適用されます。
更地には適用されません。適用されているかは毎年届く固定資産税の納税通知書をしっかりとご自分で確認してみるのがいいと思います。
下の図は住宅用地特例の適用の土地の明細書(200㎡以下の居住用宅地)の見方です。
下記の場合は役所への書類提出が必要になる場合があるますので注意しましょう。
管轄の役所によって違うこともあるので、心配な方は役所のホームページや役所へ確認をしてみてください。
1.非住宅用地を住宅用地に変更した場合
例:住宅の新築(店舗や事務所、倉庫などを住宅に変更)
2.住宅用地の面積を変更したとき
例:住宅用地の買い増し
3.併用住宅で、居住部分とそれ以外の部分の床面積に変更があったとき
例:居住部分または店舗部分の増築、取り壊し
4.専用住宅を併用住宅に変更、または併用住宅を専用住宅に変更したとき
5.住宅用地の住宅戸数に変更があったとき
6.住宅用地を非住宅用地に変更したとき
例:住宅の取り壊し(住宅を店舗、事務所、倉庫などの非住宅に変更)
■空家等対策推進法
先の記載で基本的には住宅用地に適用されると書きましたが、例外もあります。
住宅用地は住宅用地でも、「空家等対策の推進に関する特別措置法」の「特定空家等」として勧告対象となると特例が適応されない場合があります。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」とは適正に管理されていない空家に関する問題を解決するため、平成26年国会で成立した特別措置法です。
次のいずれかに当てはまる空家とその敷地を「特定空家等」と定めています。
① そのまま放置すれば倒壊が著しく保安上の恐れのある状態
② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となる恐れのある状態
③ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
「特定空家等」に対し、市町村は除去、修繕、立木竹の伐採等の指導・助言、勧告、命令をすることができます。この除去等の費用は、所有者の負担となります。
そして「特定空家等」として勧告の対象となってしまうと、土地に対して住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例対象から除外されてしまいます。
繰り返しになりますが、「特定空家等」として勧告の対象となってしまった場合、この特例対象から除外されてしまうので、条件によっては敷地にかかる税金は約3.6倍あがる可能性があります。
■特例対象から除外された場合
【例:土地(200㎡未満)の固定資産税評価額が1,200万円の場合】
◆勧告前の住宅用地の特例措置が適用される場合
<固定資産税>
(土地)1,200万円 × 1/6 × 1.4% = 2.8万円
<都市計画税>
(土地)1,200万円 × 1/3 × 0.3% = 1.2万円
合計 40,000円(税額)
◆勧告後の住宅用地の特例措置が適用されない場合
<固定資産税>
(土地)1,200万円 × 70%※1 × 1.4% = 11.76万円
<都市計画税>
(土地)1,200万円 × 70%※1 × 0.3% = 2.52万円
合計 142,800円(税額)
※1 負担調整措置
40,000円と142,800円では約3.6倍の差があります。
これは敷地にかかる固定資産税と都市計画税のみを計算していますが、決して無視のできない内容だと思います。
■まとめ
住宅用地に係る固定資産税の課税標準の特例は、上記の例をみてわかる通り節税効果が大きな特例です。
この特例を正しく適応するためにも、提出や空家の管理等はしっかりと行うことをおすすめします。
固定資産税の納税通知書をあまり見てなかった方もいるかもしれません。
しっかり特例が適用されているかどうか確認し、もしおかしいと思うところがあるようなら各市区町村の固定資産税の担当課に問合せてみるのも一つの方法だと思います。
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■印紙税とは
印紙税とは、以前掲載した『第15回 不動産を取得した時にかかる税金』と似たような内容になってしまいますが、一定の文書を作成した時にかかる税金です。どんな文書でも税金がかかるわけではありませんが、領収書、建設工事請負契約書、不動産売買契約書など※1には印紙税が発生します。ただし、電子契約※2の場合は、印紙は不要※3となります。
一定の文書というのが、印紙税法で定められた課税文書です。
課税文書とは、以下の3つ全てが当てはまる文書のことをいいます。
(ア) 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(イ) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(ウ) 印紙税法第5条(非課税文書※4)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
例えば、得意先や取引先との飲食が5万円以上になった場合、発行した領収書には現金で会計した場合印紙が貼られているはずです。
当事者(お店とお客)の間で課税事項(飲食代)を証明する目的で作成された文書かつ、第17号文書「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」に当てはまり、第17号文書の非課税文書5万円未満に当てはまらないので、課税文書の作成となります。
※1. 平成26年4月1日から令和2年(2020年)3月31日までの間に作成される、「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の契約書について一部印紙税の税率が軽減されます。細かく条件があります。すべての「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の契約書に適応されるものではありません。
※2.電子契約とは、インターネットなどを使って、契約に関する合意成立の証拠として、電子署名やタイムスタンプを付与した電子ファイルをデータセンターやクラウドで管理する契約手段のことです。
※3.印紙税法の第2条には「文書(略)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある」と規定があります。
課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することです。つまり紙媒体に書面を書き、交付することが「作成」行為となります。
電子契約書は電子データであり、紙ではありません。この電子データを印刷し、交付すれば課税文書の作成となりますが、電子データのままの場合は課税文書の作成には該当せず、印紙税が課税されることはありません。
※4. 次のいずれかに該当する文書をいいます。
(1)課税物件表の非課税物件欄に規定する文書
(2)国、地方公共団体その他の非課税法人が作成する文書
(3)日銀や独立行政法人など印紙税法別表第2(非課税法人の表)、印紙税法別表第3(非課税文書の表)
に掲げる者の作成する特定の文書及び国民健康保険法や厚生年金法などの特別法により非課税とされる文書
■文書種類と印紙税額
印紙税はどんな文書でもかかるわけではないと前述で述べましたが、文書の種類のよって課税文書、非課税文書の条件が変わります。
例えば、第1号文書は記載された契約金額が1万円未満の場合非課税文書となりますが、第17号文書では記載された受取金額が5万円未満の場合非課税文書となります。
この文書というのは、印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書のことをいいます。
上の表は、第17号文書の印紙税額の一覧表です。
印紙税額の一覧表(第1号文書から第20号文書まで)は、国税庁ホームページからダウンロードできます。
■領収書の作成と注意点
消費税の課税事業者が領収書や契約書等の課税文書を作成する際、課税文書の第1号文書、または第2号文書、第17号文書の場合は、消費税等の内訳の記載に注意をしましょう。
領収書や契約書等の消費税額等が区分記載されている又は、税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかとなる場合には、その消費税額等は印紙税の記載金額に含めないこととされています。
逆に、税込価格のみの記載や、消費税〇%を含むなどの記載は、消費税額等が必ずしも明らかであるとは言えないと判断されるので印紙が必要になります。
下記の3つの当てはまる場合は、注意しましょう。
イ) 課税文書の作成者が消費税の課税事業者
ロ) 消費税額等内訳が明確に記載されている
ハ) 課税文書が第1号・第2号・第17号文書であること
・ 第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)
・ 第2号文書(請負に関する契約書)
・ 第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)
ちなみにクレジットカードでの支払いの場合、第17号の1文書の金銭又は有価証券の受領事実がないので、表題が「領収書」となっていても、第17号の1文書には該当しません。
クレジットカードで支払いの場合、この領収書には印紙を貼付する必要はありません。
なお、クレジットカード利用の場合であっても、その旨を「領収書」に記載しないと、第17号の1文書に該当することになりますので、必ず記載を入れましょう。
■まとめ
印紙税は文書課税です。文書が課税文書に該当するかどうかは、その文書の記載内容等から判断します。判断はその文書に記載されている文言等の実質的な意味を汲み取って行います。
例えば印紙税法に定められた契約書の原本と整理目的で作成した控えの契約書がある場合、原本だけでなく控えにも印紙税が課せられます。
コピーや控えだからと印紙を貼り忘れた場合は、印紙税を納めなかったと判断される可能性があります。
その場合、罰金として過怠税が課せられます。納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額の合計額、すなわち当初に納付すべき印紙税の額の3倍※5に相当する過怠税が徴収されることになります。
他にも明確な金額等は記載されていなくても当事者間において記号や符号、文言から取引金額が計算できる、売掛金の請求書に「済」や「了」と表示してあり、その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば、その文書は、課税文書にあたります。
契約書等文書を作成する際には、それが課税文書に当てはまるのかどうかよく確認して作成しましょう。
※5 調査を受ける前に、自主的に不納付を申し出たときは1.1倍に軽減されます。
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