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【確定申告】配当って本当に申告しない方がよくなったの?

最近、日経平均が5万円を超えるようになり、これまであまり興味がなかった方もちょっと株式投資で資産運用してみようかな、と思われることもあるのではないでしょうか?

株式投資をしていると、企業の業績によっては結構な額の配当をもらえることがあります。
この配当については、以前のブログで、上場株式の配当を受け取った場合の課税関係について記載したことがありますが、2023年分の申告より制度が変更になってしまいました。

変更によって、配当は申告しない方がよくなったと言われることもありますが、本当に申告しない方がよいのかを含め、あらためて、丁寧にご説明していきたいと思います。

※この記事は執筆時の情報を基に作成をしております。そのため、最新の情報とは異なる場合があることをご了承ください。

1.上場株式の配当を受け取った場合の課税関係(おさらい)

上場株式の配当を受け取った場合、所得税15%(復興税を含めると15.315%ですが、わかりやすくするため、ここからは所得税15%のみで記載いたします。)と住民税5%が源泉徴収されます。

そして、この配当に関する申告については、Ⅰ.源泉分離課税、Ⅱ.申告分離課税、Ⅲ.申告総合課税、の3つの方法で、いずれか一つを選ぶことができます。

一番多いのは「Ⅰ.源泉分離課税」だと思います。特に何もしなくてもいいので一番楽だからです。
でも、「Ⅱ.申告分離課税」や、「Ⅲ.申告総合課税」を選ぶとお得になる場合があります。

前提として、所得税の計算方法には、総合課税と分離課税があります。どちらの計算方法になるのかは所得の種類によって決まっていますが、上場株式の配当については、どちらでも納税者が選択することができるのです。

「Ⅱ.申告分離課税」を選択した場合には、上場株式の譲渡損失と相殺することができます。株式投資で損をしてしまった人は、申告分離課税を選択することで、その譲渡損を受け取った配当と相殺することができます。場合によっては、配当について源泉徴収された所得税が還付されることになります。

「Ⅲ.申告総合課税」を選択した場合には、配当控除という税額控除を受けることができます。税額控除ですから、これも場合によっては、源泉徴収された所得税が還付されることになります。

以上ここまでは、簡単なおさらいですが、もう少し詳しくは過去のブログをご覧くださいませ。


※過去のブログ記事はこちら
【税務】配当所得って申告した方がいいの? 

2.改正により何が変わったのか

何が変わったのかといいますと、変更があったのは、「Ⅲ.申告総合課税」を選択した場合の住民税の取り扱い部分のみです。「Ⅰ.源泉分離課税」と「Ⅱ.申告分離課税」の部分には変更がありません。

これまでは、「Ⅲ.申告総合課税」を選んだ場合、所得税ではもちろん申告したことになりますが、住民税では申告せず「Ⅰ.源泉分離課税」のまま5%の源泉徴収のみで終わらせることができていました。これが、2024年分の住民税から、所得税で「Ⅲ.申告総合課税」を選択して申告した場合には、住民税でも同じく総合課税で計算されることになってしまったのです。

住民税の総合課税の場合、一律で10%の税率で課税されます。所得税のように累進税率ではなく、一律で10%なので、1000円でも100万円でも10%です。配当で100万円も受け取っている方はそこまで多くはないかと思いますが、つまり、どんなに少額な配当だとしても、「Ⅲ.申告総合課税」の場合には10%の住民税率がかかってしまうのです。

「Ⅰ.源泉分離課税」なら5%の住民税率で済んでいたものが、総合課税10%の適用へと変更されたため、少額の配当だとしても結果的に負担が倍になってしまったのです。

3.具体的な計算根拠は?

順を追って考えてみましょう。
冒頭でご説明したとおり、「Ⅰ.源泉分離課税」の場合には、所得税15%、住民税5%、合計20%でしたね。

所得税も住民税も「Ⅲ.申告総合課税」になるとどうなるかといいますと、まず、所得税には5%~45%の累進税率がかかります。

課税される所得金額税率    控除額     
1,000円から1,949,000円まで5%  
0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%  97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%   427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%   636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%  1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%  2,796,000円
40,000,000円以上45%  
4,796,000円

(国税庁「No.2260 所得税の税率|国税庁」より抜粋)

そして、住民税には一律10%の税率がかかります。

ということは、所得税の累進税率5%~45%と住民税の税率10%とをあわせて「Ⅰ.源泉分離課税」の税率である合計20%よりも低ければ申告した方がお得ということになりますね。

「え?じゃあ、所得税10%と住民税10%で合計20%だから、課税所得3,299,000円以下のラインまでしかお得にならないのか・・・随分狭まってしまったな・・・」と失望されるかもしれません。

ここでポイントとなるのが配当控除です。
「Ⅲ.申告総合課税」の場合には、配当控除という税額控除の規定が適用されるのです。配当控除は、所得税では基本的に10%、住民税では2.8%と決まっています(高額な配当の場合には控除率が半分になりますが、ここでは割愛します)。

つまり、配当控除までを考慮して、合計20%以下になっていれば申告した方がお得ということになります。
配当控除まで考慮すると・・・

所得税率20%の場合には、

所得税率-所得税の配当控除+住民税率-住民税の配当控除

 20%  -         10%    + 10% -    2.8%    =17.8%

となり、合計20%以下となります。


その次のラインである所得税率23%の場合には、

所得税率-所得税の配当控除+住民税率-住民税の配当控除

   23%  -   10%    + 10% -    2.8%    =20.8%

となり、合計20%を超えてしまいます。

つまり、所得税率20%のラインまではお得ということになりますね。

ちなみに変更前は所得税率23%のラインまでお得でした。
計算根拠はといいますと、

所得税率-所得税の配当控除+住民税率(源泉分離課税の税率)

 23%  -   10%    +      5%       =18%

となり、所得税率23%のラインでも、合計20%以下となっていたからです。
(住民税を源泉分離課税とする場合には住民税の配当控除2.8%は適用されません。)

4.結局どうするのが一番お得なのか?

所得税率20%のラインは、課税所得6,949,000円までの人です。
変更前は23%のライン(課税所得8,999,000円)までの人がお得だったので、若干狭まってはしまいました。
それでも、「課税」所得が6,949,000円まで、ですので、「年収」が、ではないところがポイントです。

「課税」所得は、年収から給与所得控除や基礎控除等を考慮したの金額です。
給与所得控除の最低ラインは令和7年分から10万円増額されました。基礎控除も10万円増額されました。このあたりについて詳しくは、弊所の過去のコラムにて解説しておりますので、そちらもよろしければご覧くださいませ。


※過去の記事はこちら
【年末調整】令和7年度年末調整担当者のアクション・タイムライン


サラリーマンでいうと、年収900万円でも課税所得で見れば20%のラインでおさまります。
令和6年分民間給与実態統計調査によると、年収900万円超の割合は9%弱ですので、世の中の90%以上のサラリーマンは「Ⅲ.申告総合課税」で申告した方がお得ということになります。

つまり、変更によって影響があるのは、ほんの一部のサラリーマンだけといっても過言ではないのではないでしょうか?

ここで一つ注意点です。世の中の90%以上の「サラリーマン」は、これまで通り「Ⅲ.申告総合課税」で申告した方がお得、ということであって、サラリーマンではない人(自営業の人)は注意が必要です。

といいますのは、住民税で総合課税となってしまった場合、国民健康保険料等に影響してしまうからです。国民健康保険料を計算する際には、総合課税として申告した配当所得についても考慮されてしまいます。これによって住民税の所得が増えてしまうと、国民健康保険料も増えてしまうことになるのです。

まとめ

ここまで、配当に関する課税関係のおさらいから、変更によって結局どうなったのかを詳しく見てきました。

結論としては、世の中の大半のサラリーマンにとっては変更の影響はなく、変更後もこれまで通り、「Ⅲ.申告総合課税」を選択した方がお得ということがわかりました。

給与所得の他にも所得があって所得税率が23%のライン以上になる場合は別として、結局のところ、多くのサラリーマンは変更の影響を受けなかったのです。

サラリーマンではなく、自営業の場合には、「Ⅲ.申告総合課税」としてしまうと、国民健康保険料の計算にも影響してしまいますので、国民健康保険料が増えてしまう可能性があります。この点には十分ご注意ください。

以上、詳しく見てきましたが、税法はどんどん複雑化しています。これからの確定申告に向け、ご不明な点があれば、ぜひお気軽にご相談くださいませ。

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