電子帳簿保存法の改正

現在、コロナ禍の影響がDX進展の機運を高めています。実社会ではペーパーレスやキャッシュレスの動きが進み、電子帳簿保存法も何度かの改正を経て会社や事業所での運用が始まっています。そのような状況下での令和3年度改正(令和4年1月1日施行、以降 新法)は、実務に大きくかかわる改正となりました。以下4点のポイントを確認します。
今後も制度や運用方法についての情報も更新されると思われますので、国税庁の電子帳簿保存法取扱解説や電子帳簿保存法Q&A(一問一答)等で情報を得てください。

1. 事前承認制度の廃止
    現行法では電子帳簿保存法の適用範囲等を記載した申請により制度の適用を受けることとなっていますが、新法では事前承認は不要となります。よって現行法で事前に決めている適用範囲は、新法運用時には任意で決めることが出来ます。

2. 電子帳簿保存要件による2分類
    新法を適用して電子帳簿保存を行う場合には、『優良な電子帳簿』と『その他の電子帳簿』とに分類されます(保存要件の詳細は国税庁資料を参照)。
加えて過少申告加算税の軽減措置が整備され、当該措置の適用を受けるには、あらかじめ所轄税務署長に当該措置の適用を受ける旨を記載した届出書を別途提出することが必要です。

3. スキャナ保存制度の要件緩和
    事前承認制度が廃止され、また現行法でのタイムスタンプ要件が一定の要件を満たすシステムの利用で代替が可能となり、タイムスタンプが不要となる場合があります。

4. 電子取引データ保存制度の開始
    法人税法及び所得税法においては新法施行日より「電子取引データ」の書面での出力保存は認められないことになります。「電子帳簿保存」や「スキャナ保存」の適用の有無とは関係なく制度運用される点、消費税法での適用時期(仕入税額控除にかかる帳簿等保存要件)に注意が必要です。

令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて|国税庁(nta.go.jp)

 災害により損害を受けた場合の所得税の軽減

近年、たびたび起こる災害により多くの方に損害をもたらしていますが、損害受けた場合には、税務上の措置として「申告期限の延長・納税の猶予」や「所得税の全部又は一部の軽減」制度などがあります。今回は「所得税の全部又は一部の軽減」をご紹介します。

<「所得税の全部又は一部の軽減」について>
災害により住宅や家財などに損害を受けた場合は、確定申告を行うことで所得税法の雑損控除又は災害減免法の適用を受けることができます。
 地震、火災、風水害などの災害によって、住宅や家財などに損害を受けたときは、確定申告で1「所得税法」による雑損控除の方法、2「災害減免法」による所得税の軽減免除による方法のどちらか有利な方法を選ぶことによって、所得税の全部又は一部を軽減することができます。これら2つの方法には、次のような違いがあります。

1. 所得税法(雑損控除)
〇損失の発生原因
災害、盗難、横領による損失

〇対象となる資産の範囲等
 住宅や家財を含む生活に通常必要な資産(※1)

〇控除額の計算
控除額は次の①と②のうち、いずれか多い方の金額です。
① 損失額(※2)-所得金額の10分の1
② 損失額(※2)のうちの災害関連支出の金額-5万円
注:「災害関連支出の金額」とは、災害により滅失した住宅や家財などの取り壊し、除去、原状回復費用など災害に関連して支出したやむを得ない費用をいいます。

〇参考事項
その年の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後3年間(※3)に繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。
 災害関連支出の金額に係る領収証は、申告書に添付するか、申告書を提出する際に提示する必要があります。
  災害関連支出のうち、災害により生じた土砂などを除去するための支出、住宅や家財などの原状回復のための支出(資産が受けた損害部分を除きます。)、 住宅や家財などの損壊・価値の減少を防止するための支出については、災害のやんだ日から1年(やむを得ない事情がある場合には3年)(※4)以内に支出したものが対象となります。


※1 棚卸資産や事業用の固定資産、山林、生活に通常必要でない資産は、雑損控除の対象にはなりません。
 なお、生活に通常必要でない資産とは、別荘や競走馬、1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とう等をいいます。
※2 資産に生じた損害金額から保険金や損害賠償金などによって補てんされる金額を控除した金額をいいます。
※3 東日本大震災により住宅や家財などについて生じた損失について、その年分の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後5年間になります。
※4 東日本大震災に関連する から までの支出について、東日本大震災からの復興のための事業の状況その他やむを得ない事情により、災害のやんだ日から3年以内にその支出を行うことができなかった場合には、その事情がやんだ日から3年以内に支出したものも対象とみなされます。


2.  災害減免法
〇損失の発生原因
災害による損失

〇対象となる資産の範囲等
住宅又は家財の損失額(※2)が、その価額の2分の1以上である場合

〇所得税及び復興特別所得税の軽減額
軽減額等は次のとおりです。
その年分の所得金額:所得税及び復興特別所得税の軽減額
500万円以下:全額免除
500万円超 750万円以下:2分の1の軽減
750万円超 1,000万円以下:4分の1の軽減

〇参考事項
 原則として損害を受けた年分の所得金額が、1,000万円以下の方に限ります。
 減免を受けた年の翌年分以降は、減免は受けられません。


<国税庁HPより>

猶予制度

新型コロナウイルス感染症の影響により納付期限までに納税が困難な場合、税務署に申請をすることにより次の要件のすべてに該当するときは、原則として1年以内の期間に限り、猶予が認められます。

換価の猶予(延滞税軽減)
要件
1.  一時の納税により、事業の継続・生活維持が困難となるおそれがあること。
2.  納税について誠実な意思があること。
3.  納期限から6カ月以内に申請があること。
4.  猶予を受けようとする税金以外の滞納がない事。
注1 担保の提供が明らかに可能である場合を除き担保は不要。
注2 すでに滞納がある場合や申請期限を過ぎた場合でも、状況に応じて税務署長の職権による猶予を検討してもらえる場合もあります。
猶予内容
1.  1年間納税猶予(状況に応じてさらに1年管猶予される場合もあり)
2.  猶予期間中の延滞税が軽減(通常 年8.8%→軽減後 年1.0%)
3.  財産の差押えや換価(売却)の猶予

更に次のような個別の事情に該当する場合は延滞税なしで納税猶予が認められる場合があります。

納税の猶予(延滞税免除又は軽減)
新型コロナウイルス感染症に関連するなどして以下のようなケースに該当する事
1.  新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した。
2.  納税者ご本人又は生計を同じにするご家族が病気にかかった。
3.  納税者の方が営む事業について、やむを得ず休廃業をした。
4.  納税者の方が営む事業について、利益の減少等により著しい損失を受けた。等
上記1~4のようなケースに該当することにより一時の納税が出来ない場合申請をすることにより納税の猶予が認められることがあります。(納税猶予の場合は滞納している国税が有っても猶予を受けることは可能)

コロナウイルス感染症の影響により資金繰りが厳しく納税資金にまで手が回らないから猶予をご検討したい方がいらっしゃいましたら、当事務所や各窓口にご相談ください。

相続登記が義務化されます

所有者不明土地問題を解消するための関連法が令和3年4月21日の参院本会議で可決、成立しました。一部を除き、公布から2年程度で施行される見込みです。関連する制度は多岐にわたりますが、以下3点に絞ってポイントを解説します。

1. 相続登記の義務化
今回の改正により、不動産の所有権の登記名義人について相続の開始のあったときは、当該相続により当該不動産の所有権を取得した者は、自己のために相続があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権移転の登記の申請をしなければならない、とされました(相続人に対する遺贈により所有権を取得した者も同様)。正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万以下の過料に処せられます。
国の調査によれば、登記簿の約20%が「所有者不明土地」であるとされ、その増加が大きな社会問題となっています。相続登記の義務化は所有者不明土地対策の一環としての意味があります。
2. 所有不動産を一覧で知ることができる制度の創設
相続登記を義務化する一方、登記手続きの円滑化のため「所有不動産記録証明制度」が創設されます。これにより相続人は登記官に対し手数料を納付して、所有不動産記録証明書の交付を請求することができることになり、相続登記の遺漏が発生しにくくなることが期待されます。
3. 土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設
相続により取得した土地のうち、建物や土壌汚染がないなど一定の要件を満たす場合に、その土地を手放して国の帰属とすることの承認を求めることができるようになります。相続人が相続財産である土地について価値を感じていない場合にその土地を放置することで所有者不明土地が発生しやすくなりますので、これに対処するためです。

登記は自分の権利を守るための重要な制度です。相続登記がなされないままの土地・建物がないか、これを機にチェックしてみてはいかがでしょうか。

インボイス制が免税事業者に与える影響

令和5年10月1日から適格請求書等保存方式が導入されます。適格請求書等保存方式のもとでは、税務署長に登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」(以下「インボイス」とする)の保存が仕入税額控除の要件となります。また、令和5年10月1日より登録を受けるためには、原則として令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。

ここで、適格請求書発行事業者でないと、インボイスを発行することはできません。さらに、消費税の課税事業者でないと、適格請求書発行事業者の登録を受けることができません。

そのため、今まで、基準売上が10,000千円以下等であったため消費税の申告納付を免除されていた事業主法人(以下「免税事業者])は以下の2つの選択肢を迫られることになります。
(1)課税事業者を選択し、インボイスを発行する。
(2)免税事業者を継続し、インボイスを発行しない。

(1)の場合においては、今まで免除されていた消費税の申告納付をする義務が発生します。そのため、納税資金、事務処理の負担が増加します。(2)の場合は、原則として取引先が仕入税額控除をとれなくなるため、取引先が難色をしめしたり、場合によっては取引を拒絶される可能性もあります。
インボイス制、特に、従前、免税事業者だった者に対しては大きな影響があります。早めに、インボイス制の影響を検討し、方針を決定しましょう。インボイス制について不明点がある場合は、当法人までご相談ください。

参考(国税庁発行リーフレット)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

消費税の価格表示についての総額表示の義務化

一般消費者を対象とした消費税の価格表示について、これまで表示する価格が税込価格だと誤認されないための防止措置を講じていれば税抜価格のみの表示を認めていた特例の期限が2021年3月31日で終了し、2021年4月1日からは、原則として商品等の価格は消費税等を含んだ総額である税込価格で表示しなければなりません。
総額表示とは、消費者に対して商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者が、値札やチラシ、広告などの価格表示において、あらかじめ消費税額を含めた価格を表示することをいいます。
なお、事業者間での取引については総額表示義務の対象外となります。

【総額表示の例】
税抜価格10,000円+消費税1,000円(税率10%)の場合
・11,000円
・11,000円(税込)
・11,000円(税抜価格10,000円)
・11,000円(うち消費税額等1,000円)
・11,000円(税抜価格10,000円 消費税額等1,000円)

総額表示を行うにあたり、1円未満の端数が生じるときは、その端数を四捨五入、切捨て又は切上げのいずれの方法により処理してもよいこととされています。