2022年

※コラムについては、コラム中に記載がない場合は更新現在の規則・法則・状況にもとづいております。

令和5年度税制改革大綱が発表されました

令和41216日に令和5年度税制改革大綱が発表されました。

内容は多岐にわたりますが、特に関心が高いと思われる贈与税の「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の見直しについて解説します。

 

1、現行の制度

 贈与税には①「暦年課税制度」と②「相続時精算課税制度」という2つの申告方法があります(わかりやすくするため適用要件の詳細については省略してあります)。

① 暦年課税の場合、年110万円までは「基礎控除」とされ贈与税は課税されません。ただし、亡くなった父から子が3年以内に財産の贈与を受けていたようなケースでは、父の相続税の計算の上その贈与財産は相続財産に加算されることとなります。

② 精算課税制度の場合には、一定の要件を満たす場合累計2,500万円までの贈与については相続税は課されません。例えば父からの贈与について子が精算課税制度を選択し届出を提出した場合には、年間1,000万円の贈与を受けたとしても累計2,500万円を超えなければ贈与税は課税されません。ただし、父が亡くなった場合には上記の1,000万円は相続財産に加算されます(亡くなる前3年以内に限りません)。

 

2、令和5年度大綱の概要

① 暦年課税については、死亡前の3年間に贈与した財産を相続財産に加算するとされていましたが、期間が7年に延長されます。なお、延長した期間については100万円の控除が認められます。

・・令和611日以後に贈与により取得する財産に係る相続税から適用されます。

② 精算課税制度を選択した場合、少額(例えば10万円)の贈与でも申告する必要があり、かつ相続税の課税対象とされていましたが、110万円までの贈与は申告不要にし、かつ非課税とすることとなりました。

・・令和611日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。

 

3、参考(大綱本文)

① 暦年課税について

「相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。」

② 相続時精算課税制度について

「相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除することができることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記控除をした後の残額とする。」

 

※令和5年度税制改革大綱は自民党のHPに掲載されています。
 https://www.jimin.jp/news/information/204848.html

                                                                                    PAGETOP◢


業務に係る雑所得の判定について(所得税基本通達 35-2 の修正)

R4.11現在の法令に基づいているため、今後の修正や改正にはご注意ください。

 

事業所得と業務に係る雑所得の所得区分の判定基準として、主たる所得かどうかで判定するのではなく、帳簿書類の保存の有無で判定するなどと修正されました。
これにより、収入金額が300万円以下であっても、帳簿書類の保存があれば、概ね事業所得に区分されることとなりました。

 

【所得税基本通達35-2 (業務に係る雑所得の例示)注書】

(注)事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と 称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収 入金額が 300 万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、 業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又 はその他雑所得)に該当することに留意する。

 

 なお、帳簿書類を保存している場合であっても、事業と認められるかどうかを個別に判断するケースもあるのでご確認ください。

【解説】一部抜粋

(注)その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存している場合であっても、次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断することとなります。

 ① その所得の収入金額が僅少と認められる場合
 例えば、その所得の収入金額が、例年、300 万円以下で主たる収入に対する割合が 10% 未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。
「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。


 ② その所得を得る活動に営利性が認められない場合
 その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、 「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます
「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは 所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。

 

 他方で、その所得に係る取引を帳簿に記録していない場合や記録していても保存していない場合には、一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有しているとは認め難く、また、事業所得者に義務付けられた記帳や帳簿書類の保存が行われていない点を考慮すると、社会通念での判定において、原則として、事業所得に区分されないものと考えられます。
ただし、その所得を得るための活動が、収入金額 300 万円を超えるような規模で行っている場合には、帳簿書類の保存がない事実のみで、所得区分を判定せず、事業所得と認められる事実がある場合には、事業所得と取り扱うこととしています。

 


国税庁:法第35条(雑所得関係)

 

                                                                                    PAGETOP◢


これを機に、今かけている生命保険を見直しませんか?

経営者(社長やその他役員等経営に関与している人)に対して生命保険をかけている会社も多いと思います。ただ、その内容を定期的に見直されている会社は少ないのではないでしょうか?一方で、「当社では生命保険なんて入っていないよ」という会社もあろうかともいます。今回は、生命保険の見直し、もしくは、活用のポイントについて説明します。

 

まず、保険の機能について確認しましょう。そもそも、保険とは発生する可能性が低いけれども、いざ、発生した場合に多額の損失が発生するリスクに備えるものです。ここで、会社が生命保険を経営者に対して設定するということは、経営者が死亡や就業不能等の状態となることにより、会社の運営や事業活動の継続、経営者やその家族の生活が脅かされるというリスクに備えるということになります。

 

見直しのポイントとしては、まずは、死亡保険に偏っているかどうかということです。従来、日本の生命保険の実務において主に死亡保険が販売されてきました。しかしながら、実際に経営者が会社の運営から離れる場合というのは、死亡だけに限った話ではありません。身体障がい等就業ができない状態に陥り(就業不能)、退職を余儀なくされることもありえます。やそこまでいかなくても、がん、心筋梗塞、脳血管障害等(重大疾病)にかかり、経営者の療養のため中長期的に事業運営に影響を与えてしまうということもあるでしょう。そういった、リスクに対する備えしての生命保険の活用が考えられます。また、会社によっては介護保険や入院保険に加入するということもありえます。

 

もう一点は、保険金の額の水準をどうするか、ということです。経営者が死亡したときや、就業不能に陥ったとき等にどの程度の金額を受け取れば持ちこたえることができるか、という観点から保険金の額を計算することになります。具体的には、

ü  借入金の額がどの程度あるのか、特に借入金に経営者保障はついているのであれば借入金が返済できる金額

ü  経営者が離れたことにより事業活動が止まる場合にはその時に必要となる運転資金や固定費

ü  経営者やその家族が安心して暮らすための経営者に対して支払う退職金

ü  保険金が収入として処理される場合における法人税等の税金負担額

等々を考慮することが必要です。こういった事情は各社ごとに異なるので、それぞれの状況に照らして必要な保険金の額を算出することが必要です。

 

上記の2点にあげたことをふまえ、生命保険の見直しをすることが必要です。また、まだ生命保険に取り組んでいない会社であれば、これを機に生命保険の加入を検討いただけるといいのではないでしょうか?

 

当事務所でも生命保険の見直しについて積極的にアドバイスさせていただきます。特に、上記において記載させていただいている、借入金の額、運転資金、固定費、退職金、税負担額等は会計事務所である当事務所にて適宜算定、見積もることができます。会社向けの生命保険のことで疑問に思われることがあれば当事務所までお問合せください。

 

参考となるリンク

働けなくなった場合にそなえる 重度の身体障がい (法人) | 保険加入をお考えの方へ | 大同生命保険 (daido-life.co.jp)

                                                                                    PAGETOP◢


相続登記の登録免許税の免税措置について

令和4年度税制改正により、令和4年4月1日により以下のとおり「土地」の相続登記の登録免許税の免税措置の期限が延長され、適用範囲が拡大しました。


1.相続により土地の所有権を取得した方が相続登記をしていなかった場合

2.相続登記の対象土地の価格が100万円以下の場合

  相続(相続人への遺贈も含む)による所有移転登記又は表題部所有者の相続人が所有権保存登記を受ける場合において、土地の価格(固定資産評価額)が

 100万円以下の土地の相続登記については登録免許税が免税となります。(不動産の所有権の持分の取得に係るものである場合は、当該不動産全体の価格に

 持分の割合を乗じて計算した額が不動産の価格)


適用期間 令和7年3月31日まで延長

                                                                                    PAGETOP◢


インボイス対応はまずは適格請求書発行事業者の登録から

 ご存知の通り、令和5年10月1日よりインボイス制度がスタートします。まだ1年後の話…と先延ばしにせず、早めの対応をお勧めします。請求書、納品書、領収書などどの書類をインボイス書類として発行するのか、インボイス対応システムの導入検討など考えることは色々あります。まずは課税事業者であれば適格請求書発行事業者の登録をするところからスタートしましょう。

令和5年10月1日からの対応に間に合わせるには、令和5年3月31日までには届出を提出するのが原則です。

また、インボイスの記載事項で見落としがちな点が消費税の端数処理です。税率ごとに1回端数処理をすることになり(下図Ⓑ)、1つの商品ごとに消費税の端数処理をすること(下図Ⓐ)は認められなくなります。(端数処理の計算方法は四捨五入、切り上げ、切り捨てどれでも構いません)下図のように端数処理を変えることにより請求額が変わることもありますので、今のうちにチェックしてみてはいかがでしょうか。


                                                                                    PAGETOP◢


財産債務調書制度等の見直し

  令和4年度税制改正において、財産債務調書等について、以下の事項について見直しが行われました。

1.       財産債務調書の提出義務者

2.       財産債務調書等の提出期限

3.       提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕措置

4.       財産債務調書等の記載事項

 

【改正の背景】

現行制度においては、どれだけ多額の資産を有していても、その年における所得金額が2,000万円を超えていなければ調書の提出義務がないため、課税側において、納税者の財産の異動状況等が十分に把握できる状況ではなかった。

 また、現行の提出期限である翌年315日までに、提出義務者が保有している財産の種類・数量・価額を正確に算出し、記載することが容易ではなかった。

 

【改正内容】

1.    財産債務調書の提出義務者の見直し

現行の提出義務者のほかに、その年の1231日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である方は所得金額に関係なく提出義務者となります。(令和5年分以後の財産債務調書について適用)

2.    財産債務調書等の提出期限の見直し

その年の翌年630(改正前:315)が提出期限となります。国外財産調書についても同様となります。(令和5年分以後の財産債務調書または国外財産調書について適用)

3.    提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕措置の見直し

その提出が、調査があったことにより更正または決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなす措置について、その提出が調査通知前にされたものである場合に限り、過少申告加算税等の特例が適用されます。国外財産調書についても同様となります。(令和611日以後に提出される財産債務調書または国外財産調書について適用)

4.    財産債務調書等の記載事項の見直し

財産債務調書への記載を省略できる財産の基準が以下の通り見直されました。

     家庭用財産(現金・書画骨董・美術工芸品・貴金属類を除く)

取得価額が300万円未満のもの(改正前:100万円未満のもの)

     事業用の未収入金(受取手形を含む)

その年の1231日における価額が300万円未満のもの(改正前:100万円未満のもの)

     借入金・未払金(支払手形を含む)・その他の債務

 用途を問わず、借入金・未払金(支払手形を含む)・その他の債務のうち、その年の1231日における金額が300万円未満のもの(改正前:事業または業務の用に供する未払金(支払手形を含む)・その他の債務のうち、その年1231日における金額が100万円未満のもの)

     その年の1231日における預入高(一口)50万円未満の預貯金

 口座番号を財産債務調書の「所在」欄または「備考」欄に記載することにより預入高の記載を省略できます。

     青色申告決算書または収支内訳書の「減価償却費の計算」欄に記載された減価償却資産

 資産ごとに区分して記載することを省略して総額で記載できます。

(令和5年分以後の財産債務調書または国外財産調書について適用)

 

参考:国税庁「財産債務調書制度等の見直しについて(令和4年7月)

                                                                                    PAGETOP◢


所得税(一時所得と雑所得について)

  少し前にお笑い芸人さんが、競馬の払戻金をめぐる巨額の所得税追徴課税により破産したと言うニュースが話題となりました。実際は納付のために借金を背負うことになったということでしたが、かなりの負担を負ったのは間違いないでしょう。無申告ではなくきちんと申告をしていたのになぜこのようなことが起こったのでしょうか?

 競馬や競輪などの払戻金は原則として一時所得に該当します。これを雑所得として申告したためこの様な事態が生じてしまったことになります。では一時所得と雑所得がどのようなものか、細かく見ていきましょう。


一時所得:営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得。具体的には以下のようなもの

1.         懸賞や福引の賞金品(業務に関して受けるものを除く)

2.         競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く)

3.         生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金

4.         法人から贈与された金品

5.         遺失物取得者や埋蔵物発見者の受ける報労金など 

計算方法

(収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除50万円)÷2

 

雑 所 得:ほかの所得に該当しないもの、

1.         公的年金

2.         副業に係る所得(原稿料、講演料等)

    計算方法

    総収入金額-必要経費

 

上記一時所得の具体例2を見ても払戻金は一時所得であることがわかりますが括弧書きの営利を目的とする継続的なものに当たるかが今回の論点であり、お笑い芸人さんは競馬の仕事やスポーツ新聞などでも予想もしておりそのために馬券も購入することもあったため雑所得でよいと判断したのでしょうが税務署としては、競馬がギャンブルである以上収益は偶然性が高く単発的なものであり一時所得と判断がくだされた。

ではなぜ雑所得で申告した税額と修正した一時所得の税額に誤差が生じるのでしょうか?上記の計算式に当てはめてみましょう


例題

競馬で年間計200万円の払い戻し(総収入金額)

購入した馬券 勝馬券50万円 負馬券150万円

 

一時所得

(200万円-50万円(勝馬券)-特別控除50万円)÷250万円(課税対象額)

雑所得

200万円-50万円(勝馬券)150万円(負馬券)0

 

公判等で雑所得と認められた事例もありますが、原則として払戻金は一時所得に当たるため日常的に競馬や競輪を楽しむ人で高額配当があった場合年間収支はマイナスでも申告義務がありますので注意が必要です。(但し50万円の特別控除があるためこの金額を超えない場合は申告の必要はありません)

 

高額配当の払戻しがあって申告等の不安がある方は当事務所にご相談ください。

                                                                                    PAGETOP◢


電子取引の取引情報に係る電磁的記録(電子取引データ)の保存方法についての宥恕措置

電子帳簿保存法に係る令和3年度改正(令和4年1月1日施行)の電子取引データ保存制度では、法人税法及び所得税法において法施行日より『電子取引データ』の書面での出力保存は認められないこととなっていました。しかし、令和3年12月27日公布の財務省令により上記改正に係る宥恕措置が講じられました。


●宥恕措置の概要

・ 令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間の取引にかかる電子取引データについては、一定の事情の場合、印刷した書面等での保存が可能。

・ 宥恕措置の適用について、税務署への事前の申請等を要しない。


なおこの宥恕措置は国の周知不足にはじまった、事業者の未対応の状況に鑑みた措置となっています。よって改正法施行日以降に電子取引データの保存についての対応準備が整った事業者については当該宥恕措置からは外れ、法の予定する電子取引データの保管を行っていただく必要があります。

また当該措置には期限があるため、令和5年12月31日までには対応策を講じる必要があります。令和5年10月からはインボイス制度も始まるので、両制度への準備を今から始めなければなりません。

対応策をご検討の際には、当事務所へご相談ください。


参考)

電子取引データの出力書面等による保存措置の廃止(令和3年度税制改正)に関する宥恕措置について : 財務省 (mof.go.jp)


令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて|国税庁 (nta.go.jp)

                                                                                    PAGETOP◢