コラム

消費税の準確定申告手続きとは?必要書類と手続きについて解説

消費税の準確定申告手続きとは?

個人事業者が亡くなった場合、その方が生前に行っていた事業に関して、消費税の申告や納付を相続人が引き継いで行う必要があります。これを「消費税の準確定申告」といいます。
亡くなった方(被相続人)が生前に得た売上や仕入れに対して発生した消費税をまとめ、税務上の区切りをつけるための手続きです。
この手続きが必要になるのは、被相続人が課税事業者であった場合です。
つまり、生前に一定以上の売上があり、消費税の申告義務があった方が亡くなった場合には、相続人がその年の死亡日までの取引分をまとめて申告する必要があります。
課税事業者でない場合(免税事業者など)は、原則として準確定申告は不要となります。

準確定申告手続きが必要な場合

消費税の準確定申告が必要になるのは、亡くなった方が生前に課税事業者として事業を行っていた場合で、課税事業者であったかどうかは、主に過去の売上規模や税務上の選択によって判断されます。

被相続人の課税の売り上げが1,000万を超えている場合

被相続人が生前に行っていた事業の課税売上高が1,000万円を超えていた場合、その年は原則として消費税の課税事業者に該当します。
課税売上高とは、課税対象となる取引の売上の合計を指しており、住宅の家賃収入など非課税取引は含まれません。
課税事業者かどうかの判定は、亡くなった年の前々年の課税売上高で行われます。たとえば、前々年に1,000万円を超える課税売上があった場合、被相続人が亡くなった年も課税事業者となります。また、前々年の売上が1,000万円以下であっても、前年の上半期(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えている場合には、その年は課税事業者とみなされます。

被相続人が課税事業者になっている場合

売上規模にかかわらず、被相続人が課税事業者として届出を行っていた場合にも、消費税の準確定申告が必要になります。たとえば、売上が1,000万円に満たない場合でも、節税や還付を目的として「課税事業者選択届出書」を提出していると、一定期間は課税事業者として扱われます。
その状態で亡くなった場合には、相続人が消費税の準確定申告を行う義務が生じます。
また、インボイス制度に登録していた個人事業者も、準確定申告を行う義務があります。インボイス登録をすると自動的に課税事業者となるため、その年度分の消費税について準確定申告を行う必要があります。登録を取り消す手続きは死亡後に相続人が行うことになりますが、それ以前の取引分は被相続人の課税期間として数えられます。
さらに、被相続人が簡易課税制度を適用していた場合も、課税事業者としての申告義務が生じます。
このように、売上高の基準を超えているかどうかに加え、被相続人が税務上「課税事業者」として扱われていたかどうかを確認することが、準確定申告が必要かどうかの判断をするために重要なポイントになります。

消費税の準確定申告の必要な書類

消費税の準確定申告を行う際には、被相続人の事業内容や税務状況に応じて複数の書類を準備してください。

消費税及び地方消費税の準確定申告書

「消費税及び地方消費税の準確定申告書」は、被相続人の死亡日までの課税売上や仕入れ、控除額を集計し、最終的な消費税額を確定させるための書類です。
通常の確定申告書とほぼ同じ形式ですが、被相続人が亡くなった場合には、申告書の「代表者欄」に相続人代表の氏名を記載し、亡くなった事業者の代わりに提出する形をとります。
申告書の内容には、課税売上額、課税仕入れ額、控除対象仕入税額、還付額などを明確に記載する必要があります。

死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書

この明細書は、一般的に「付表6」と呼ばれる書類で、被相続人の死亡により課税期間が途中で終わることを税務署に示すための書類です。
付表には、被相続人の氏名や住所、死亡日、事業の種類、課税期間の起算日と終了日、そして代表して申告する相続人の氏名を記載します。相続人が複数いる場合は、そのうちの1人が代表者となり、他の相続人の同意のもとに提出する形が一般的です。
この書類は、準確定申告書の「添付書類」として提出が求められるため、忘れずに準備しましょう。

個人事業者の死亡届出書

「個人事業者の死亡届出書」は、被相続人が行っていた事業を廃業したことを税務署に正しく知らせるための届出です。
亡くなった日をもって個人事業は終了するため、相続人はその旨を税務署に届け出る義務があります。この届出を行うことで、今後の消費税や所得税に関する申告義務が受け入れられ、不要な税務通知が届くことはなくなります。
届出書には、被相続人の氏名や住所、死亡日、事業の種類、事業所の所在地を記載します。
また、届出人の欄には相続人代表の氏名を記載し、続柄を明記する必要があります。届出の提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署です。

消費税の還付申告に関する明細書

被相続人の事業内容によっては、仕入税額控除の結果として消費税の還付が発生する場合があります。その場合に必要となるのが「消費税の還付申告に関する明細書」です。
この書類では、還付が発生した理由や、控除の対象となる仕入・経費の内容を正しく記載します。税務署はこの明細書をもとに、審査します。

消費税の準確定申告の手続きの流れ

消費税の準確定申告は、被相続人が生前に行っていた事業の税務処理を行うための大切な手続きです。提出期限が「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」と定められているため、早めに準備を進めることが大切です。

申告の方法を決定

まずは、どのような方法で申告を行うかを決めます。
消費税の準確定申告は、紙での提出とe-Tax(電子申告)のどちらでも可能です。
紙での提出を選ぶ場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に書類を持参するか、郵送で提出します。
提出期限に間に合うよう、郵送の場合は余裕をもって発送しましょう。

必要な書類を用意

主に準備するのは「消費税及び地方消費税の準確定申告書」や「死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書(付表6)」、さらに「個人事業者の死亡届出書」などです。これらは税務署の窓口や国税庁のホームページからダウンロードできます。
書類を準備する際には、被相続人が行っていた事業の帳簿、請求書、領収書、通帳、決算書なども整理しておく必要があります。

申告書を作成

通常の確定申告と同様に、課税売上や仕入れの金額、控除対象の仕入税額などを計算し、最終的な納付額または還付額を算出します。亡くなった方が簡易課税制度を利用していた場合は、簡易課税用の計算方法を用いて申告書を作成します。
作成時には、被相続人本人ではなく相続人代表が提出する形になるため、申告書の署名欄には代表者の氏名を記入します。また、申告書には必ず「付表6(死亡した事業者の明細書)」を添付し、被相続人の死亡日や課税期間の終了日を明記します。これにより、税務署が課税期間を正確に把握できるようになります。
還付が発生する場合は、「消費税の還付申告に関する明細書」もあわせて作成します。

申告書を提出

最後に、完成した申告書と必要書類を税務署に提出します。
提出期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。この期限を過ぎると延滞税や加算税が課されることがあるため、準備は早めに行ってください。
税務署への提出は持参・郵送・電子申告いずれでも構いませんが、提出後に控えが必要な場合は、必ず「控え」用のコピーを持参し、受領印をもらっておくと安心です。

準確定申告をする際の注意点

注意すべきは、申告期限を守ることです。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税などのペナルティが発生するおそれがあります。早めに必要書類をそろえ、代表相続人を決めて手続きを進めることが大切です。また、仕入税額控除や還付申告の扱いにも注意が必要です。
被相続人が仕入や経費を多く計上していた場合、申告の結果として還付金が発生することがあります。加えて、相続人の署名・押印漏れにも注意が必要です。申告書には被相続人本人ではなく、申告を行う代表相続人の署名を記入してください。

尼崎で消費税・相続税に関するご相談は佐藤会計事務所へ

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相続税の基礎控除とは?計算方法をわかりやすく解説!

「相続税ってどのくらいかかるの?」「基礎控除って何?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか?相続税はすべての人が支払うわけではなく、基礎控除額を超える財産を相続した場合にのみ課税されます。この記事では、相続税の基礎控除の仕組みと具体的な計算方法をわかりやすく解説します。

相続税の基礎控除とは?まずは基本を理解しよう!

相続税の基礎控除とは?

相続税の基礎控除とは、相続財産のうち一定額までが非課税となる仕組みです。
つまり、基礎控除額以内の相続財産であれば、相続税は発生しません。
この基礎控除の目的は、少額の相続では相続税を課さず、一定以上の財産にのみ課税することにあります。
すべての相続に対して一律に課税してしまうと、相続人に過度な負担がかかってしまうため、ある程度の金額までは非課税とすることで、相続税の公平性を保っています。
しかし、基礎控除額を超える相続財産がある場合は、その超過分に対してのみ相続税が課税されるため、相続財産の総額が基礎控除額を上回るかどうかを事前に確認することが重要です。

基礎控除が適用される範囲

相続税の基礎控除は、相続人の人数によって金額が変わるのが特徴です。
具体的には、法定相続人が多いほど基礎控除額が増えるため、相続税の負担が軽減される可能性があります。

法定相続人とは?

法定相続人とは、民法で定められた相続する権利のある人のことを指します。
基本的には、以下の順位で決まります。

・第一順位:子(直系卑属)
被相続人の子が相続人となります。
すでに亡くなっている場合は、孫が代わりに相続(代襲相続)します。

・第二順位:親(直系尊属)(子がいない場合)
被相続人の親が相続人となります。
親がすでに亡くなっている場合は、祖父母が相続します。

・第三順位:兄弟姉妹(子も親もいない場合)
被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子(甥・姪)が代襲相続します。

相続税の基礎控除額はいくら? 計算方法を解説

相続税の基礎控除額は、次の計算式で求められます。

【相続税の基礎控除額の計算式】
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

【具体的な計算例】
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人(計3人)の場合、基礎控除額は次のようになります。

3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円

つまり、相続財産が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。
相続財産が基礎控除額を超えた場合にのみ、超えた部分に対して相続税がかかるのです。

相続税の計算方法をステップごとに解説

相続税の計算は、次の4つのステップで行います。

① 相続財産の総額を把握する

まず、被相続人(亡くなった人)が所有していたすべての財産の価値を計算します。
相続財産には、以下のようなものが含まれます。

不動産(土地・建物)
預貯金
株式や投資信託
貴金属や骨董品
生命保険の死亡保険金(一部対象外あり)

② 基礎控除額を引いて課税遺産総額を算出

相続財産の総額から、基礎控除額を引いた残りの金額が、課税対象となる遺産総額です。

課税遺産総額 = 相続財産の総額 - 基礎控除額

③ 相続税率を適用して税額を計算

課税遺産総額に、相続税の税率を適用して、各相続人が支払う相続税額を計算します。
相続税率は、課税遺産総額に応じて10%~55%の累進課税が適用されます。

④ 控除・特例を適用して最終的な税額を決定

相続税には、以下のような控除や特例があり、適用することで税額を抑えることができます。

配偶者控除(配偶者の相続分が1億6,000万円以下なら非課税)
小規模宅地等の特例(自宅の土地を相続する場合、最大80%評価減)
未成年者控除・障害者控除(相続人が未成年や障害者の場合、税額軽減)

相続税の基礎控除を最大限活用するポイント

相続税の負担を抑えるためには、基礎控除を最大限活用することが重要です。

① 生前贈与を活用する

生前に年間110万円までの贈与を行うことで、相続財産を減らし、基礎控除内に収めることができます。

② 生命保険を活用する

生命保険の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)を利用することで、課税対象額を減らせます。

③ 配偶者の税額軽減を利用する

配偶者が相続する財産は、1億6,000万円まで非課税となるため、できるだけ配偶者に相続させることで税額を抑えることが可能です。

■まとめ
相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」 で計算され、この控除額を超える部分に対してのみ相続税がかかります。
相続税の負担を軽減するためには、生前贈与や生命保険、配偶者控除などの制度を上手に活用することが大切です。
「自分の場合はどのくらいの相続税がかかるのか?」
「相続税をできるだけ抑えるにはどうすればいいのか?」

このようなお悩みがありましたら、尼崎市の佐藤会計事務所へお気軽にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なアドバイスをさせていただきます。