坂口恭平(著)・道草晴子(イラスト)
マガジンハウス、2024年5月
「生きのびること=今の生の向こう側へ超えていくこと(survive)」と「事務」-
この一見すると、まったく結びつきがなさそうな2つの言葉ですが、
本書を読むと、これらがむしろ分かちがたいものであることがわかります。
例えば、好きなことをして、お金を稼いで、生きていく。
多くの人にとって、起業の原点はここにあるのかなと思います。
そうして起業して、会計事務所の門戸を叩く人のなかには、
「私は事務がどうしても苦手で…、そちらに全部お任せすることはできますか?」
とおっしゃられる方がいます。
IT関係、飲食店、建設業、製造業などさまざまな職種があり、
その多くはものづくりや新しいサービスを提供するお仕事であり、
多かれ少なかれ、クリエイティブな側面があります。
その一方で、「事務」はクリエイティブさからは程遠い、場合によっては、
対極にあるというイメージがあります。
クリエイティブな「本来の仕事」に対し、
「事務」は些末で、面倒くさく、可能であれば脇に置いておきたい、
やらなくて済むならやらずに済ませたい、そう感じている人も多いのではないでしょうか。
しかし、この「生きのびるための事務」が語る「事務」はそうではありません。
「好きなこと」をする、「好きなこと」をやり続けて生きていくために、
時間とお金をどのように準備したらよいか、
それが「事務」であり、その理想の未来を現実にするための一番、入り口にある部分なのです。
逆にいうと、クリエイティブなお仕事を目指す人ほど、
「事務」が最初に必要なのであり、
もしかすると、本人が気づいていないだけで、
すでに「事務」に積極的に取り組んでいるのかもしれない―この本は、そんな「事務」の新しい見方を教えてくれます。
想像してみましょう。
10年後の自分は、朝、何時に起きて、何を思って、どんなことをして、何時に寝るのか。
そこから、スケジュールを組み立て、予算を作っていく。
「事務」は自分自身の夢を現実にしていくための不可欠なツールであり、
自分自身で最も時間と労力を費やすべきことなのです。
自分の「好きなこと」を仕事にしたいと思っている起業家の卵さんだけでなく、
会計事務所で「事務」を行う身にとってもとても勇気がもらえる一冊です。
四国中央支局の証明書発行業務の民間委託終了に伴い、令和6年10月1日(火)から、印紙売りさばき所が閉鎖されます。
あらかじめ、お近くの郵便局で収入印紙を購入する必要があります。
主な登記手数料は下記のとおりです。
※手数料は、「収入印紙」で納付いただく必要があります。
登記事項証明書(謄抄本)(※)1通600円
登記事項要約書(※)・登記簿等の閲覧 1件450円
地図等の証明 450円
印鑑証明書 1件 450円
登記識別情報に関する証明 1件 300円
※1通の枚数が50枚を超える場合には、その超える枚数50枚ごとに登記事項証明書は100円、登記事項要約書は50円が加算されます。
詳しくはこちら。https://houmukyoku.moj.go.jp/matsuyama/page000001_00401.pdf
「接待飲食費の上限金額」について令和6年4月1日から改正されました。
一人当たりの飲食費が5,000円以下であるかが交際費の判断基準の一つでした。
しかし、中小企業の経済活動を活性化させる目的等により、令和6年4月1日から
一人当たり1万円以下まで引き上げられることとなりました。
そもそも交際費は、原則として損金不算入ですが、
資本金の額に応じて、特例により一定の金額まで損金算入が認められています。
・資本金1億円以下の中小企業…800万円までもしくは接待飲食費の50%まで
・資本金1億円~100億円以下の大企業…接待飲食費の50%まで
・資本金100億円超の大企業…全額損金不算入
今回の改正により、交際費のうち「接待飲食費」に限っては、
上記の上限金額にかかわらず、一人当たり1万円以下のものは、その全額が損金算入ができるようになりました。
ただし、この規定には「次の事項を記載した書類を保存している場合」という要件があります。
①飲食等のあった年月日
➁飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
③飲食等に参加した者の数
④その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地
(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
➄その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
上限が上がり、接待飲食費の金額が増加するということは、
かりに税務調査で要件を満たしていないことを理由として否認された場合に、
その否認額もまた増加する可能性があるということになります。
これを機会に、改めて、自社の帳簿が適切に記載・保存されているか見直してみましょう。
今回は、定額減税の実務で押さえておきたいポイントをお伝えします。
あけましておめでとうございます。
さて、年末年始に読んだ本を1冊ご紹介したいと思います。
本書は、「事務」という視点から、文学、文化、社会を幅広く論じた論考集成です。
なるほど、「事務的」という言葉からは、どこか無感情で、人間的な温もりを失った、形式至上主義的、官僚主義的な響きが感じられます。
しかし、その一方で、「事務」は私たちの暮らしにとって不可欠であり(日本の全職種のうち20%は事務職!)、学校教育、市役所の手続き、法律、ひいては鉄道交通システムなど、ありとあらゆる生活の細部に入り込んでいます。
文学研究者である筆者は、「事務」に焦点を当てることによって、学歴社会、夏目漱石、発達障害、ディケンズ、自動車事故、権力、メルヴィル、三島由紀夫など、多岐多分野にわたって新たな論点を提示しています。
ただ「事務」という語が、あまりに広い意味を含んだ、いかんせんつかみどころのない言葉であるがゆえに、議論が広がりすぎて、それこそ、「事務」に興味を持つ几帳面な読者にとっては、事務的な整理がついていない印象が拭えないところもあるかもしれません。
また、「事務」を「机の上で行う書類仕事」という定義づけから論じ、近代における印刷技術の発達の影響については触れておきながら、製紙技術の近代化、大量の紙生産/紙消費時代としての20世紀からペーパーレス時代としての21世紀への流れについてはスルーというのも議論として物足りなさを感じられるかもしれません。
さらに言えば、ボールペン、タイプライター、ワープロ、一太郎、算盤、電卓といった「事務」にとって不可分な道具である文具や事務機器についてはまったく言及されておらず、続編に期待がかかるところです。
その一方で、単純に「事務」を無駄な作業として貶めることなく、「事務」と「芸術」、「事務」と人間の営みが不可分な関係にあることを明らかにしようとしている姿勢については、とても興味深く読ませていただきました。
2018年に、デヴィッド・グレーバーが「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」のひとつとして、「書類穴埋め人」の「事務」仕事を提唱してから6年が経とうとしていますが、「事務」に携わる一人にとっては、とても勇気を与えてくれる一冊でした。
今年も残すところあとわずか。気がつけば、大掃除の季節です。
私たち会計事務所の従業員スタッフは、日々、さまざまな事業所を訪問させていただいておりますが、利益の出ている企業のオフィスは、必ずと言ってよいほど、「整理整頓」が行き届いていることに気がつきます。
ところで、「整理整頓」とは、「整理」と「整頓」という2つのことを表しています。
「整理」とは、必要なものと不要なものを分けて、不要なものを捨てること。
「 整頓」とは、必要なものを使いやすい場所に置き、使い終わったら元に戻すこと。
「整理整頓」を実行することによって、広い意味での「コストカット」につながることもあるかもしれません。
つまり、「コストカット」とは、単に経済的にお金の支払いの無駄をなくすということだけでなく、時間や空間の無駄をなくすことも含めて考えるべきではないかとのいうことです。
物価の高騰、値上げが相次ぎ、それを価格転嫁することにはある程度やむをえないところがあるかもしれませんが、
コストカットという企業努力を怠ってしまっては、会社にとっても顧客にとっても、ひいては地域経済全体にとっても大きなマイナスになります。
小さくても気がついたところから「整理整頓」してみてはいかがでしょうか。
国税庁から、令和6年(2023年)3月1日以後終了事業年度用の勘定科目内訳明細書について
様式の変更が公表されました。
様式変更された勘定科目内訳明細書では、
インボイス登録番号または法人番号を記載する欄が設けられています。
インボイス登録番号または法人番号を記載した場合、
「名称(氏名)」および「所在地(住所)」の記載を省略することができるとされています。
この欄が設けられている科目は以下の通りとなっています。
受取手形
売掛金(未収入金)
仮払金(前渡金)
貸付金及び受取利息
固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)
支払手形
買掛金(未払金・未払費用)
仮受金(前受金・預り金)
土地の売上高等
地代家賃等
工業所有権等の使用料
雑益、雑損失等
参考:「国税庁関連ページ」
請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、
一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます
(国税庁「インボイス制度に関するQ&A」問101より)。
①公共交通機関特例
適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
②回収特例
適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)
③古物商特例
古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
④質屋特例
質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得
⑤宅地建物特例、宅建特例
宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
⑥再生資源特例
適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
⑦自動販売機特例
適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
⑧郵便切手等特例
適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
⑨出張旅費等特例
従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
上記9つをグループ分けすると、下記の3つになります。
(1)入場券等、郵便切手、出張旅費・通勤手当(金額制限なし)…②⑧⑨
(2)公共交通機関、自動販売機(税込3万円未満)…①⑦
(3)中古自動車販売業、質屋・リサイクルショップ、宅建業者、産廃業者による商品仕入れ…③④⑤⑥
また、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの6年間の経過措置として、
一定規模以下の事業者については、税込1万円未満の課税仕入れについても、
帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められることになりました。
※相手先が課税事業者・免税事業者であるかどうかを問いません。
適用対象者
・基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者
・特定期間の課税売上高が5千万円以下の事業者
令和5年10月から、いよいよインボイス制度が始まります。
インボイス制度について、1から学びたい、復習したいという方のために、国税庁がユーチューブで動画を配信しています。
また、インボイス制度の特集サイトが開設されています。
インボイス制度について、相談したい方のためには、コールセンターも用意されています。
インボイスコールセンター(インボイス制度電話相談センター)へのお問い合わせ
【電話番号】フリーダイヤル(無料) 0120-205-553
【受付時間】9:00から17:00(土日祝除く)
令和5年度の税制改正では、インボイス制度に関して4つのポイントについて改正がなされています。
最新の情報をチェックして、制度開始に備えていきましょう。
令和5年3月分(4月納付分)の健康保険料率が改定になっております。
参考(愛媛県)
介護保険被保険者に該当 …11.90%→11.83%(会社負担分を含む)
介護保険被保険者に非該当…10.26%→10.01%(会社負担分を含む)
※介護保険被保険者…40歳から64歳までの方が対象です。
また、令和5年4月1日から雇用保険料率は以下のとおりです。
一般の事業 1000分の5→1000分の6
農林水産業・建設業 1000分の6→1000分の7
あんしん給与、PX2などの給与ソフトをご利用の方は、
3月分・4月分給与の入力時に最新の版数に更新されているかどうか、ご確認をお願いいたします。
住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、購入または増改築等をした場合には、
その住宅ローン等の年末残高に応じて、その年分以後の各年分の所得税額から税額控除を受けられます。
その際には、以下の要件に注意しましょう。
1.所得要件
適用対象者の合計所得金額が2,000万円以下(特例対象者は3,000万円以下)であること。
(※床面積が40㎡以上50㎡未満である場合には、1,000万円以下)
2.居住要件
住宅の新築等の日から6か月以内に居住の用に供していること。
3.継続居住要件
この特別控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住の用に供していること。
4.床面積要件
次の①または➁のいずれかに該当すること。
①下記➁以外の場合
イ 住宅の床面積が50㎡以上であること。
ロ この特別控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下であること。
➁特例特別特例取得の場合
イ 住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満であること。
ロ この特別控除を受ける年分の合計所得金額が1,000万円以下であること。
5.用途要件
床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること。
6.返済期間要件
10年以上にわたり分割して返済する方法になっていること。
7.その他の要件
居住年およびその前2年の計3年間に一定の譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。
住宅ローン控除を受ける場合には、最初に居住した年の翌年3月15日までに確定申告を行う必要があります。
提出書類等については、下記のチェック表を参照してください。
役員貸付金とは、会社の役員が会社からお金を借りている状態をいいます。
経営者の方のなかには、自分がオーナーとなっている同族会社からお金を借りても
特に問題はないと思っている方もおられるかもしれません。
しかし、この役員貸付金には、会社の経営上、大きなデメリットを生み出す要因になります。
1.金融機関からの信用リスク
その会社に多額の役員貸付金があると、
会社が金融機関から新たに融資を申込む際に、信用評価が下がる恐れがあります。
金融機関は、会社が行う「事業」に対して貸付け、その「事業」から得た利益で返済を求めます。
しかし、実際にお金を貸しても、その事業にお金は使われず、
役員のプライベートな資金や使途がよくわからない資金に使われてしまうと、
きちんと返済してもらえるのだろうかという疑念が生じます。
実際に、業績は決して悪くないにもかかわらず、
多額の役員貸付金があるために、融資を断られるケースを少なからず目の当たりにしてきました。
2.利息計上による納税リスク
会社から役員にお金を貸しつける場合には、法人税法上、
原則として、適正な利息を設定しなければなりません。
実際に、お金で利払いがなされない場合においても、未収利息として利益に計上する必要があります。
(参考)国税庁「金銭を貸し付けたとき」
会社としては、受取利息は利益(益金)として計上されることになり、
その分だけ法人税等の負担が大きくなります。
役員貸付金が発生する原因はいくつかありますが、
そのひとつとして、会社のお金と役員個人のお金を公私混同しているケースがあります。
特に法人成りしてまもない時期には、個人事業時代のやり方をそのまま継続してしまっていたり、
現金管理がきちんとできていなかったりすることがあります。
まずは、会社のお金と役員個人のお金をきちんと区別して、
健全な会社運営を心がけ、金融機関から信頼を得られる財務状況を整備していきましょう。