令和5年9月7日
税理士 小野 貴裕
新型コロナウイルスの影響で業績が悪化し、また最近の物価高等により倒産する会社も多く出てきています。ここでは取引先が破産した時の金銭債権の処理を見ていきます。
売掛金や貸付金などの金銭債権に対し、決算の際に貸倒引当金を計上します。貸倒引当金は税務上将来発生する損失の見込み額として、一括評価金銭債権(通常の債権)と個別評価金銭債権(回収不能となる可能性が高い債権)に分けて計上します。
一括評価金銭債権に対しては、業種ごとに決められた繰入率を乗じて貸倒引当金を計算します。
一方で個別評価金銭債権に対しては、法人税法96条により取引先の状況によって引当計上できる金額が定められており、破産手続き開始の申立てがあった場合には50/100の割合を乗じて貸倒引当金を計算します。弁護士事務所から破産の案内が届いた時に「破産する見込み」と書かれていることがありますが、その案内の時点では手続きは開始されていないのでこの割合は使えません。
取引先の破産手続きが完了したとき、弁護士事務所から破産手続きが終了した旨の通知書が届きます。破産の状況にもよりますが、決定通知書という書面です。これ以降取引先からは全く回収できないことが確定したため、金銭債権の全額を貸倒損失として損金計上します。
貸倒損失は法人税法基本通達により法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ、形式上の貸倒れと区分されています。法律上の貸倒れには更生(又は再生)計画認可の決定や特別清算に係る協定の認可の決定などの類型がありますが、破産法に基づく破産の決定は入っていません。事実上の貸倒れは債務者の資産状況から全額が回収できないことが明らかになった場合ですが、破産の決定はここに入ると考えられます。
取引先の債権が破産となった場合に、以後取立てが望めないのであれば早く損金計上したいと考えると思われますが、以上のことから損金計上できるタイミングをまとめます。